道州制ウイークリー(104)~(107)

■道州制ウイークリー(104) 2018年7月7日

◆道州制の設計と分析(4)                     (江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽道州制設計上の諸論点③国の省庁改革も同時進行

<第5論点=税財政の設計、格差調整をどうするか>難問と思われるのは、新たな税財政制度の構築である。道州制移行に反対する一つの理由として、財政力格差の拡大を懸念する声も強い。例えば、税還元率(納税額に対するサービス等のの比率還元額)で計算すると、島根県が3.0、東京都は0.3である。財政格差の是正は不可欠なのが日本の現状である。ただ、道州制移行に伴う税財政システムの最大の変化は、道州を構成する各州が独自の課税権を持つことにある。

<第6論点=道州政府の組織設計をどうするか>立法権、行政権の大幅な権限移譲を前提とした道州政府の設計を考えなければならないが、司法権については、どうするのか。基礎自治体、道州レベルに限定される道州条例違反などの裁判は「道州高等裁判所」で処理できるようにしたらどうかという考えも成り立つ。また、道州の統治機構については、議会制度、選挙制度、道州知事の権限など統治機構の設計だけでも論点は多数に及ぶ。

<第7論点=国の省庁改革をどうするか>道州制移行は地方制度改革に止まらない。国の省庁廃止、再編といった国政改革も視野に入る。省庁の改廃だけに焦点を当ててみると、①国土、農林、厚労、文部といった内政省は廃止し、道州へ移管、②外交、安全保障、危機管理、マクロな経済政策、財政金融政策といった機能は強化し、それにふさわしい省庁体制に再編する、③国会のあり方も問題となる、④会計検査院は外部監査制度に変えるのか、人事院は廃止するのか、⑤国と地方財政の切り分けを行う仕組みとしての「地方財政計画」を残すのか、などがあげられる。道州制は国家制度、国政のあり方の大改革を同時進行で実現する「明治維新」に匹敵する大改革となることが想定される。

 

■道州制ウイークリー(105) 2018年7月14日

◆道州制と社会的・経済的効果(1)                     (江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽道州は広域政策の中核

明治維新以来続いてきた中央集権的な統治システムから、地域が自己責任と独自の判断に基づいて政策を展開していく地域住民主体の体制へと根本的に変えていく、それが「地域主権型道州制」である。

これには、①現在の行政単位は狭すぎる、②人口減少時代の到来、③中央集権体制がムダと堕落を生んだ、④国際社会で競争に敗れてしまう、といったさまざまな背景がある。「地域主権型道州制」は、中央政府の再編を前提に、基礎自治体を補完し、そこではやれない広域行政を展開する地域に根を下ろした広域行政地域・道州をつくっていくという、現行の日本国憲法下で実現可能な改革を指している。

財源や立法などの権限を国から大幅に移譲する広域圏の道州は、道路・空港・港湾などの広域社会インフラ整備、科学技術振興・高等教育、域内経済・産業の振興、対外経済・文化交流、雇用政策、域内の治安・危機管理、リージョナルな環境保全、広域的な社会保障サービス(医療・保険)といった広範な公共サービスや仕組みづくりを担当する。

道州の人口規模は、現行の都道府県・市町村をゼロベースで見直し、700万~1000万人をベースに、例えば12道州に再編することができる。人口規模は、財政的自立が可能となりうる規模を見る上で、経済社会として同等レベルのEU加盟各国の人口規模が一つの目安となる。また、地域経済圏でみた場合、経済圏それぞれがEUの一つの国に匹敵する経済規模、人口、面積を有している。国際競争力を維持する上で、日本1州当たりの経済規模は、アメリカ1州あたりのGDP2500億ドル~EU1国当たりのGDP4500億ドルの規模であれば、世界で十分通用するであろう。

 

 

■道州制ウイークリー(106) 2018年7月21日

◆道州制と社会的・経済的効果(2)                     (江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽地域が変わる、日本にダイナミズム創出

日本ではバブル経済崩壊後、ひたすら政府が主導して内需拡大政策をとれば、景気は回復し、日本経済は再生すると考えられてきた。そのために、毎年、国債、地方債を大量発行し、需要創出による「夢」を国民にばら撒いてきた。しかし、ソビエトなど社会主義国家が崩壊したように、こうした行政社会主義的な政策志向が、日本の活力を失わせ、国民、地域の創意工夫の意欲を萎えさせ、もはや再起不能とさえ思われる「大きな借金」を作りだしてしまった。この方法を何度繰り返しても、日本は再生しない。

ここは、全く違う、日本再生の方法がいる。それが、「地域主権型道州制」への移行なのである。競争力を高め、全国各地が活気づかなければ、近い将来のうちにも日本経済は弱体化していく。道州などが、拡大された条例制定権、法律の上書き権、徴税権などの権限と自主財源を持つことで地域戦略の自由度が増す。これまで地方自治体では不可能だった取り組みができるようになる。

「地域主権型道州制」は次のように日本を元気にできる提案である。

①成長、安心、安全、そして活力ある楽しい日本へ

②各道州が道州外、海外との直接貿易、観光誘致を積極化できる

③イノベーションと税対策による産業の日本回帰と外資の参入

④美しい国、道義道徳の再興、安心安全社会の回復へ

⑤自由な発想、自由な行動、自由な成果が得られる社会へ

⑥個人が人間的才能を十分に発揮できる社会へ

⑦楽しい生活、生きがいのある生活ができる

⑧国際社会を舞台に活躍、貢献できる日本国民に変わる

■道州制ウイークリー(107) 2018年7月28日

◆道州制と区割り

(江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

道州制は新たな区域を創出し、各区域が経済的にも財政的にも一定の自立性を保てるよう、設計する必要がある。どのような道州制区割り案が考えられるか、研究され、設計されなければならないが、内閣官房道州制ビジョン懇談会(江口克彦座長)が2008年3月に出した「中間報告」ではその狙いを次の5点あげている。

①繁栄の拠点の多極化と日本全体の活性化

②国際競争力の強化と経済・財政基盤の確立

③住民本位の地域づくり

④効率的、効果的な行政と責任ある財政運営

⑤(大規模災害などからの)安全性の確保

これは、内外に開かれた道州であると同時に競争力の強い地域の創出を意味しており、道州の区割りは、この狙いが実現できるものでなければならないと考える。道州の区域は、経済的、財政的に自立が可能な規模であることは当然として、新たな区域に住民が自分の地域という帰属意識を持てるような地理的一体性、歴史、文化、風土の共通性や生活面、経済面での交流などの条件を有していることが望ましい。

区割り案の1例として2006年の第28次地方制度調査会では次の3案を提示している。

①9道州案=ほぼ国のブロック機関の管轄区域に相当する例で、北海道、東北、北関東甲信越、南関東、中部、関西、中四国、九州,沖縄 ②11道州案=北海道、東北、北陸、北関東、南関東、東海、関西、四国、中国、九州、沖縄 ③13道州案=11道州案をベースに九州を北九州と南九州に分けている。

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