月別アーカイブ: 6月, 2020

道州制ウイークリー(199)~(202)

■道州制ウイークリー(199)2020年5月2日

◆新しい国のかたち 4つのビジョン①

(関西州ねっとわーくの会『8州構想』より)

<1>国頼みから地域主導へ改革

 日本は大きな転換期に立っています。人口減少と高齢化、社会保障費増大、長引く経済停滞、地域間格差、そして深刻な財政難・・・。

 2040年の総人口は1618万人減少の1億1091万人となり、関西では330万人が減少します。65歳以上の人口が36%の3600万人になり、働き手の人口は1751万人減少、関西圏では304万人が減少します。地域によっては生活圏の存立が危ぶまれる事態になるでしょう。

 公務員も大幅に減少、行政改革は待ったなしです。高度に複雑化、多様化した社会では中央政府が全てを仕切るには限界があります。国の対応を待つのではなく、地域の実情に応じたスピーディな対応を自ら企画、決定できる政治行政体制が求められます。

 それには地域の財政基盤の確立が必要です。中央集権型の国頼み補助金行政から脱却し、地域の創意工夫を活かす地域主導の行財政体制に改革することが必要です。

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(200)2020年5月9日

◆新しい国のかたち 4つのビジョン②

(関西州ねっとわーくの会『8州構想』より)

<2>細切れ府県制から州制度に再編

交通通信の進展、府県境を超えて広域化する地域経済社会圏。山積する広域課題、東京一極集中の一方で沈滞する地方。47都道府県に細分化された地方制度は財政基盤も弱く国依存体質で地域解決力が不足。状況は一向に改善していません。

府県に対し中央政府が全国一律・画一的に政策を決めていく明治以来の中央集権制が制度疲労を起こし、現代に対応していないのは明らかです。危機管理からも東京一極集中は危険な状況です。この古い統治のかたちを断ち切らねばなりません。

 地域社会は広域化しているのにも拘わらず、行政圈は150年前の制度のまま変わっていません。ブロック広域圏「州」を単位とした国のかたちが国や地域の役割分担を明確にし、強い地域を創っていきます。

 かつて中央集権国家といわれたフランスも地方制度を何度も改革し、現在では本土を13の大地域圏(レジオン)に集約し、分権を進め経済社会の発展を図っています。日本も今こそ「体制変革」の時を迎えています。

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(200)2020年5月16日

◆新しい国のかたち 4つのビジョン③

(関西州ねっとわーくの会『8州構想』より)

<3>地域と世界を結ぶ大地域経済圏

 めざす地域の姿は大都市を核とした半径100キロ圏の大地域行政経済圏です。地域活性、経済再生、国際競争力を維持していくのは、国単位ではなく、機動的に動ける「地域」です。世界は「メガリージョン(大地域圏)」の時代です。地域から世界に挑みます。国家主導の時代ではありません。デジタル時代に明治の国のかたちは適合しません。

大地域圏である「州」は成長エンジンの拠点となります。地域が主体となり集中的な研究開発投資を通じて、イノベーションを進め、地域中核産業を興し、新産業集団への再編と、同時に雇用の安定を図る環境整備をしていきます。成長エンジンを各州に展開、地域経済圏を活性化していきます。情報社会に続く次世代社会「Society 5.0」実現の基盤にもなるでしょう。

「自ら地域を創る」という地域経営が日本再生の原動力となります。行政圏と経済圏を一体化した輝く大地域圏を創っていくことが、新しい時代に対応した日本の国のかたちです。

*Society 5.0(科学技術基本計画2016年)ICTの進化により社会、経済の構造が日々大きく変化する「大変革時代」が到来、エネルギー制約、少子高齢化、地域の疲弊、自然災害、安全保障環境の変化など国内外の課題が増大、複雑化している中で、目指すべき国の姿は何か。①持続的な成長と地域社会の自立的発展②国及び国民の安全・安心の確保と豊かで質の高い生活の実現などを提示、世界に先駆けた「超スマート社会」の実現を掲げたのがSociety 5.0構想。IOTで今までにない新たな価値観を生み出し、社会の変革を通じて閉塞感を打破し、希望の持てる社会の実現を目指している。地域主導による自律的・持続的なイノベーションシステム構築や中小・ベンチャー企業創出強化などを掲げている。

■道州制ウイークリー(201)2020年5月23日

◆新しい国のかたち 4つのビジョン④

(関西州ねっとわーくの会『8州構想』より)

<4>新しい国の姿:国・州・市町村

 新たな国のかたち「州制度」は単なる府県合併ではありません。ひとつは全国を8つの地域ブロックに再編する案です。8州案は、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州・沖縄です。中部を東海と北陸に分け、九州・沖縄を九州と沖縄に分けて10州とする案も考えられます。

 8州制は、国の分立や連邦制でなく、一つの憲法の下、皇室、議院内閣制、衆参両院制を維持する単一国家です。国と地域の役割分担を見直し、地域の多様性を活かした国づくりを目指します。

 国の役割は、国の存立、国政の根幹を担うとともに、内政の総合的調整を行い、戦略的機能を強化します。

 州は、大地域行政経済圏を統括、地域経営の司令塔として、地域戦略を迅速に実行し、必要に応じ市町村を補完します。

 市町村は、住民福祉の最前線として、現行府県の仕事も承継し、財政基盤を強化、市町村間の連携を進めながら地域課題に対応していきます。

*フランス地域圏(région レジオン)フランスにおける最も大きな地方行政区画で、州に相当。欧州本土領に13、海外領土に5の計18。欧州本土領は2016年に22から13に再編された。地域圏には近郊鉄道の運営権、教育、医療、社会インフラ整備、道路、港湾、空港の権限を移譲。地域圏議会議員選挙は、比例代表制かつ2回投票制。地域圏議会議長は議会議員の互選により選出。議長の権限は、①地域圏の執行機関で、議会の議案を準備し、議決を執行②地域圏の支出・収入の執行を命令③地域圏の諸部局の統括責任者として各部局の長に専決権を与える④地域圏の財産を管理⑤地域圏議会の決定に基づき地域圏を代表して全ての訴訟を行う、などとなっている。

■道州制ウイークリー(202)2020年5月30日

◆新しい国のかたち「二層の広域圏」①

(森地茂『人口減少時代の国土ビジョン』より)

わが国の人口は急速な少子高齢化の時代に突入、一方、中国をはじめとしたアジア諸国の経済的な台頭はめざましく、さらには地球温暖化などグローバルな規模での環境問題の深刻化、国・地方を通じた財政制約などの変化にも国土ビジョンは応えていく必要がある。

こうした大きな転換期と厳しい条件下にあっては、これまでの「均衡、配分の論理」の考え方だけでは、国土ビジョンを描くことはできない。わが国も、欧州諸国などの取り組みに見られるように、確固たる意思を持ち、一貫性を持って地域戦略を推し進めることなしには、地域の誇りある自立という、将来の地域目標を達成することができない時代に入っていることを認識すべきである。

その際、それぞれの地域が国内の地域との連携補完関係を深めるだけではなく、アジアの中での個性と魅力を引き出す地域独自のシナリオを描くことが重要である。そして、東アジアの経済的台頭の効果を地域の自立の絶好のチャンスと捉え、地域の持つ潜在的なリソースを再認識し、その効果を県境を越え、都市圏のみならず、中山間地域まで、どのように浸透させていくかという戦略性を持つ必要がある。

国際的にも競争力のある地域経済圏域となり得る『地域ブロック』、日常生活において都市的サービスなどを共有するまとまりである『生活圏域』からなる『二層の広域圏』が、これを実現するための重要な切り札である。

道州制ウイークリー(191)~(194)

■道州制ウイークリー(191)2020年3月7日

◆人口減少時代の国のかたち⑭州のイメージ<東海州>

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

総人口1500万人の岐阜、静岡、愛知、三重の4県からなる「東海州」は、名古屋を中心とする都市圏が核となり、日本全域をリードする圏域のひとつです。4県の製造品出荷額等は約76兆3000億円で全国の25%を占めています。東海地域の成長戦略とされる「TOKAI VIJON」によると、自動車関連産業、航空機産業、ヘルスケア産業、環境産業の4つが戦略分野とされ、それを下支えするものづくりマザー機能や、地域資源を活用した観光、農産物の高付加価値化に取り組むことが競争力強化の肝とされています。

東海州は2027年にはリニア新幹線(名古屋―品川間)も開通する予定で、大阪まで延伸されればこの太平洋ベルト地帯に約6000万人の巨大経済圏(スーパーメガリージョン)が誕生することになります。東海州は東京との一体化が進み、域内総生産も飛躍的に伸びていく可能性が高い。

この州は河川の水源となる広大な森林を擁しており、富士山や伊勢神宮など古くからの観光資源にも恵まれています。中部・北陸地方を南北に縦断する「昇龍道(ドラゴンルート」と呼ばれる観光コースもあります。

東海北陸自動車道が全線開通すれば、福井、石川、富山といった北陸地方へも経済圏が広がっていくでしょう。東海州は日本の航空機産業の集積地であり、航空機・部品の全国生産額の5割以上を占めています。トヨタグループを中心に、次世代に向けた遠隔型自動運転システムも実験が進み、人工知能(AI)を活用した次世代自動車産業の集積地になる可能性が高いでしょう。東海州として一体化すれば、地域のGDPシェアは現在の15%から20%近くまで高まるかもしれません。

 

 

■道州制ウイークリー(192)2020年3月14日

◆人口減少時代の国のかたち⑮州のイメージ<北陸州>

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

総人口約730万人の新潟、富山、石川、福井、長野の5県を区域とする北陸州は、東京、大阪、名古屋の三大都市圏から300キロ圏内に位置しており、東アジアとわが国を結ぶ「扇の要」、日本海のゲートウェイとしての役割を果たすことになるでしょう。北陸新幹線の開通に合わせて企業の進出も進んでいます。この地域の発展は、環日本海経済圏の発展にかかっています。新幹線、道路網の整備や新潟港を国際拠点としてより拡大すれば、この地域の強みはさらに活きることになるでしょう。

長野県を「北陸州」で括っていますが、実際の経済活動、生活圏においては、松本方面は東海州に深くかかわり、長野方面は関東州(北関東)に深くかかわるなど長野県は2分されているのが実態です。行政圏域の州の括りとして長野の位置づけを北陸州とする考えに対し、東海側に位置づけ中部州にする考え方もあります。

長野は伝統的に教育熱心で、かつて寺小屋数が日本一だったところで、北陸州が独自に学制を自由化し、現在の6・3・3の学生を変更するということも考えられます。特定の分野に特化した多種多様な中高一貫校の設立が行われるかもしれません。

富山は持ち家比率が高く、住宅面積も広く、「豊かさ指標」では日本一ともいわれますが、富山市の「コンパクトシティ」のように人口減少時代の都市のあり方も注目されています。石川は伝統工芸大国でありますが、電子工業、建設機械、繊維産業なども活発です。福井は女性の社会進出も進み、中小企業群が生産活動の中核を担っており、繊維、電子、メガネ産業が盛んです。新潟は、関東・首都圏の顔、北陸の顔、東北の顔、そして日本海の中核という国際的な顔を持っています。新潟は、今後、北陸州の中心となる可能性があります。北陸州は、高速インフラの整備が進み、潜在力が顕在化する時代が来ました。各県の持つ潜在力を1つの州にどうまとめられるかに発展がかかっています。

■道州制ウイークリー(193)2020年3月21日

◆人口減少時代の国のかたち⑯州のイメージ<関東州>

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

関東州は、関東地方の1都6県(東京都,神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県)に山梨県を加えた地域を指しています。人口規模で約4290万人と日本の総人口の3分の1を占めます。GDPは約190兆円で日本全体の4割近くを占め、経済規模はブラジル、イタリアに匹敵します。

これまでの道州制論議では、他の州に比べて突出して大きくなるので、関東域を2つに分ける議論が行われてきました。2つに分割した場合、北関東州の中心性のある大都市はどこに存在するか、南関東州でも東京区部を外すと、どこに中心性のある大都市があるか、よく見えなくなります。関東州を1つとしてみると、この地域は日本の政治・経済の中枢機能を擁するだけでなく、多様な自然環境や地域固有の歴史・文化を有する地域でもあり、国際的な会議やイベントなども多い。この経済圏は、世界でも10指に入るほどの大きさになります。今後これまで1都7県でバラバラに行われてきた政治行政を1つの州になって、より一体感を強めると、より伸びていく可能性が高いと思います。通勤通学、経済活動、水、食料、エネルギーなどここが1つの大都市圏として機能していることはあきらかです。

この州域には世界トップクラスの科学技術・研究機能、高度な製造技術や専門知識を有する優秀な人材が多く集まっており、新産業や雇用を創出する「我が国最大の苗床」機能があります。ただ、中枢機能が集中しているため大規模災害への対応は不可欠で、少子高齢化による「老いる東京」という問題もあり、高齢者対策のユニバーサルデザインの導入が必要となります。

 

 

 

■道州制ウイークリー(194)2020年3月28日

◆人口減少時代の国のかたち⑰州のイメージ<東北州>

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

総人口900万人の青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島を区域とする東北州は、本州の約3割の面積を占める広さで、太平洋と、日本海に面していますが、中国州に比べると、相互依存性が強い地域です。6件の産業構造を一つにまとめてみると、第一次産業が8%、第二次産業が26%、第三次産業が66%を占めます。現段階での東北州のGDPは30兆円で、デンマーク並みですが、太平洋側と日本海側に面する広域州として一体的に運営できるようになれば、域内総生産を2割、3割アップすることも夢ではありません。

東北州の農業産出額は1兆5600億円で全国の18%のシェアを占めています。豊富な農産品については北海道州や北陸州と連携し、海外に向けて高級農産物の輸出を強化するため、これまで各県で行ってきた小規模な農業試験場を、州として世界に誇れるような大規模農業試験場に変え、各県単位では取り組めなかった高度な品種改良に取り組み、コメや穀物の生産で世界有数の穀倉地帯に伸ばしていくことも可能です。

この地域は、保水力のあるブナ林など多くの自然林を有する豊かな水資源の源として、安全な食料の生産地・エネルギー基地としての重要な役割を担っています。さらに、機械加工、電子・電気、鋳造などの地場産業群の集積があり、「小さなトップ企業」が育っています。今後も域内外の交流・連携を強化し、内陸部と日本海及び太平洋側を結ぶ「横」のネットワーク(ランドブリッジ)の整備を進めることが重要です。

2011年3月に襲った東日本大震災の後遺症は、いまも残っています。特に福島原子力発電事故によって広範な放射能汚染の風評に苦しみ、いまだ復興のめども立たない地域が多くあります。大震災後に見られた日本海側と太平洋側の絆を大切にし、東北を一つの地域圏と捉え、一体的な地域づくりに励んでいくことが大切です。