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道州制ウイークリー

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(311)2022年7月2日

◆大変革の時代、「現状維持」思考からの脱却必要

(真壁昭夫著『ゲームチェンジ日本』より)

 いま世界経済は「ゲームチェンジ」を迎えていますが、バブル崩壊後のわが国全体には現状維持を重視する心理が強く働いています。経済学で「現状維持バイアス」といいます。これまでの行動様式を改めることができなければ、経済はかなりのスピードで縮小均衡に向かう恐れがあります。その結果、日本が世界第3位の経済大国の座を維持することも難しくなるでしょう。

 オンライン診療や感染症への対応力の向上という問題を考えただけでも、変化を過度に恐れるかのように、日本は過去の発想にしがみつく機関が長引き、それが当たり前になってしまったように思います。重要なことは変化を機敏に察知し、それに対応することです。政府の規制緩和が諸外国に遅れ、その結果として企業が旧来の発想から脱却できなければ,、わが国の経済の実力は低下するでしょう。

1990年初頭のバブル崩壊後、我が国の経済は失われた30年を超える長期の低迷に落ちりました。要因の一つは、世界経済の構造変化への対応が遅れたことです。特に、グローバルな規模でのデジタル化への対応の遅れは見逃せません。わが国では新しい、自由な発想を実現するよりも、雇用を守るために、リスクを取らないことが優先されてしまいました。問題は、日本の産業政策の発想が過去の成功体験から脱却できなかったことです。

いまわが国の社会心理を覆っているのは、「人口の減少によって,労働と資本の投入量が減少する、だから経済の成長は望めない」という考え方です。そこには。「イノベーション」の考え方が抜け落ちています。わが国の政治の意思決定を見ていると、口先では改革が重要であるとはいうものの、いざ規制などの改革を進めるとなると既得権益などの反対にあって抜本的な改革が難しくなるケースが続いてきました。「現状維持バイアス」にとらわれて、従来の発想を続けている限り、成長を目指すことはかなり困難と言わざるを得ません。

 

 

 

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(312)2022年7月9日

◆現代社会に合わない47都道府県体制

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

戦後言われ続けてきた多極分散型の国土形成も、職住近接の地域づくりも、地方分権の推進もいつの間にか旗が下ろされている状態だ。改革なき政治が続く日本である。この先に何が来るか。

「東京頼み」をだらだら続けるばかりの政府。政府は「東京一極集中」が問題だと口では言うが、やっていることは東京減反どころか、いまだ東京は日本の機関車だと見立て、様々な特区指定や規制緩和のさらなる巣心を図っている。

日本は平成20年の1億2800万人をピークに人口減少期に入り、今は毎年数十万人単位で減っている。現在100万人以下の県は香川、鳥取、和歌山、佐賀、福井、山梨、徳島、島根、高知の9県だが、25年もするとそれに奈良、長崎、岩手、石川、大分、宮崎、青森、富山、山形、秋田の10県が加わる。政令市の指定要件である実質人口70万人にも届かない県の続出は何を意味するか。府県を広域自治体とし市町村を基礎自治体としてきた自治制度が根底から崩れていることを意味する。

明示23年(1890年)、交通機関が馬、船、徒歩の時代につくられた47都道府県体制は広域化、高速化の現代社会に合っていない。行政圏と生活圏(経済圏)が大きくズレてしまっている。

「隣にあるからウチにもつくる」という「フルセット行政」の横並び意識で不要なハコモノやサービスが増え、非効率な行政が続き、日本財政を悪化させている。こうした状況をどう打開するか。広域自治体と言いながら「狭域自治体」化した47都道府県を賢くたたみ、もっと力の発揮ができる少数の広域自治体に創り変えることだ。47都道府県を再編統合し、約10の広域圏からなる「州」とする「廃県置州」で東京一極集中は止まり、創意工夫で各地に元気と活力が湧き出てくる。その結果、ムダは省かれ企業も人口も地方分散が進む。

 

 

 

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■道州制ウイークリー(313)2022年7月16日

◆これが「日本型州構想」①

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

その時代にふさわしい「国のかたち」を設計する。それが政治の役割である。明治維新から150年、時代は大きく変わった。本格的な人口減少時代を迎えた日本をどうするか。「新たな国づくり」を本格的に議論すべき時期ではないのか。いまの統治機構「国→都道府県→市町村」の三層制とそれに連なる膨大な出先機関、外郭団体をそのままにする限り、この先、何度増税を繰り返しても1200兆円を超える財政赤字は消えない。むしろ増えるばかりだ。

バブル崩壊後、日本の国と地方の歳出合計は160兆円を超える動きだが、一方、税収など歳入は100兆円に届かない。こうしたワニの口のように開いたギャップ(赤字)を借金(赤字国債・地方債)で穴埋めする財政運営が続く。歳出の160兆円が私たちへの行政サービスに回るならまだしも、その半分近くは公債費、人件費、管理費など統治機構を維持するための間接経費に消えている。何度増税しても国民に豊かさの実感がないのは、こうした背景による。

この先は「人口が右肩下がり社会」へ向かう。人口減少時代に合う簡素で効率的な統治機構に衣替えする改革が不可欠だ。100万人に達しない県が続出する見通しの中、80~100万人規模の政令市が20近くある。こうした広域自治体と基礎自治体が逆転する現象の続出は、自治制度を根底から揺るがす。130年前にスタートした47の都道府県は、広域化した現代に合っていない。

私たちの日常は、経済も生活も県境に関わりなく広いフィールドで行われている。地方自治のエリアは実際都市と行政都市が一致していることが大原則である。拡大した実際都市(圏)に会う新たな行政都市(圏)の創設、人口の大幅な減少のトレンドを加味した広域自治体の再構築は待ったなしだ。47都道府県体制を解体再編し、広域圏を単位に約10の州をつくり、日常生活に合った広域行政圏の仕組みを創るべきだ。それが道州制である。この改革で財政面だけでも20兆円近いカネが節約できるとされる。消費増税10%分をカットできるということだ。

 

 

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■道州制ウイークリー(314)2022年7月23日

◆これが「日本型州構想」②

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

これまで「幻の改革」構想と揶揄されてきた道州制だが、実は日本はすでに道州制の素地はできている。20政令市、約60の中核市をそれぞれ政令市→特別市、中核市→政令市に格上げし、この都市自治体に多くの府県業務を移管する。その上で内政(厚労,、国交,文科など)に関わる本省業務、ブロック機関の業務、残存する都道府県の仕事を融合するかたちで「州」政府を創設し、内政の拠点とすれば道州制は実現できる。

ただ、手垢にまみれた「道州制」という表現に代え、日本型州構想という表現を使いたい。これまで北海道の「道」を意識し、「道州制」と呼んできたが、北海道州、九州州と「州」で呼称を統一すれば、もはや道州制と呼ぶ必要はない。

よく県がなくなるので反対だという人がいるが、日常に定着している都道府県名は地名として残るし、カウンティ(郡)という州の出先機関としてしばらくは残る。甲子園の47都道府県対抗高校野球も残る。なので生活上何の支障もない。自治体としての府県機能は即廃止というより、新特別市、新政令市区域外の市町村を補完するカウンティ(郡)として残し、これまでの県の下にあった「郡」が半世紀かけて次第に自然消滅したようにカウンティとしての府県を辿ればよいと考える。ソフトランディングの改革の進め方だ。

日本を「州構想」に移行させる狙いは3点にある。第一に、日本を地方分権の進んだ地方主導型の国家体制に変えること。第二に、東京一極集中を抑え、各圏域自立できる活力ある競争条件を整えること。第三に、国地方の統治機構を簡素化し、効率的で賢い統治システムに代えること。州構想移行で、各州は国から移された財源や立法権、行政圏、一部司法権をフルに使い、自立を始める。内政の拠点となる各州は広域政策の主体として、道路・空港・港湾などの広域インフラの整備、科学技術の振興、州立大学などの高等教育、域内経済や産業の振興、海外都市との交易、文化交流、雇用政策、州内の治安、危機管理、環境保全、医療保険など社会保障サービスを担当する。

 

 

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■道州制ウイークリー(315)2022年7月30日

◆これが「日本型州構想」③

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

 「州構想」への移行で国は外交、防衛など国家的な役割、州は広域政策を担い、市町村は基礎行政を担うように変わる。役割分担が明確になり、経営責任の主体もハッキリする。しかも三者は縦ではなく、役割の違う対等な横(水平)の関係に置き換わる。各州は、公選の州知事、州議会を別々に選出する二元代表制の政治機関を持つ地方自治体となり、国の出先機関や47都道府県が統合され、内政の総括権限や財源は各州に移る。国の地方へのかかわりは財源調整と政策のガイドラインを示す役割に限定され、各州が「内政の拠点」になる。

「州構想」への移行は日本各地を元気にする、それが大きなならいだ。各州は国から移った財源や立法権、行政圏、一部司法権をフルに使い、自立を始める。ただ、この州構想に対し、地域間格差が拡大し、勝ち組、負け組がはっきりする、小規模な町村が寂れるといって反対する意見もある。しかし、そうだろうか。現在の47都道府県のままで格差もなく町村も寂れないといえるのか。話は逆ではないだろうか。

広域州にすることで州内の核となる大都市がその州を潤し、町村は広域州の中で財政調整の恩恵を受ける訳で、細切れの47都道府県時よりむしろよくなる。 州制への移行で各州は課税自主権をフルに使い、州の意思で財源を集めることができる。場合によっては、政策減税も可能となる。こうして各州、各市町村は国から干渉されず、自らの意思によって課税し、税率を決定し、徴税できる。人や企業の流れを独自税源で呼び込むこともできる。

 

道州制ウイークリー

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(307)2022年6月4日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代① 脱「国民国家」

(大前研一著『経済参謀』より)

「どうしたら日本経済は低迷から抜け出せるのか」といった質問を受ける。――21世紀は「メガリージョン(大都市とその周辺都市で構成される新しい経済活動単位)の時代であり、もはや田中角栄的な「国土の均衡ある発展」は不可能である。にもかかわらず、いまだに政府は「日本」や「日本経済」という次元で考え、国家の均一的な発展を目指している。だから、いくら景気対策や経済政策をやっても効果がないのである。中国のような独裁国家は別として、アメリカにしろEUにしろ、繁栄は「国家」という枠組みの中で創り出せるものではなくなっている。新しい産業が興る完全な規制緩和を行い、世界から富・人材・企業・智恵を呼び込んだメガリージョンだけに繁栄が訪れるのだ。

「日本はどうすればよいのか」という問いに答えるなら、「国家という前提を」捨てよ、と言いたい。国防、外交、金融政策は国家が担うとしても、それ以外の領域は国民国家を卒業し、新たな地域国家像を模索すべきである。そうしなければ、21世紀にトランスフォームして、「繁栄の方程式」を手に入れることはできないのだ。もともと私は日本を11の地域に分けて立法、行政お、司法、徴税の権限を与える「道州制」の導入を提唱してきた。その考えは今も全く変わっていないが、道州レベルではなく1都市、1地域でもメガリージョンが誕生すれば、繁栄の起爆剤になると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(308)2022年6月11日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代② 繁栄の方程式

(大前研一著『経済参謀』より)

今、起きているのは経済のボーダーレス化、グローバル化です。モノ、カネ、情報が軽々と国境を飛び越えるようになれば、ビジネスも国境を越えて発想していかなくてはなりません。ネット隆盛の時代に国民国家という国境の中だけの枠組みで考えていたら、企業は死に絶えるしかない――というのが「ボーダレス・ワールド」の基本的な考え方です。ボーダレス化やグローバル化が進んだ今の世界では、「国家」の枠組みにしがみついて「あの国が我々の脅威だ」「移民・難民が仕事を奪う」と叫べば支持者が集まてくる、という状況がいたるところで見られます。「自国ファースト主義」や「ポピュリズム」がはびこっているのが現状です。現実を見れば、「ダイバーシティ(多様性)」が世界をリードしていて、国民国家という時代遅れの枠組みにこだわっていたら、富も人材も不足して、国が落ちぶれ、国民が貧しくなるだけです。

人・モノ・カネ・情報が国境を越えて集まってくる地域「メガリージョン」というものが世界にいくつか見え始めていて、アメリカ、中国、インドでそれぞれ3か所ぐらいに集約されます。繁栄に寄与する人材というものを、歴史的な流れから見てみると、18世紀から20世紀にかけて工業社会が広がり、国民国家というものが形成されました。そこでは、経済単位は国家(国境)となり、中央集権の政府主導ですべてのルールが決まっていました。

自分の国が反映するために富を生み出し、輸出して、また稼ぐ。稼いだカネを国民に分配する。大量生産・大量消費・輸出主導の経済システムの中では、指示通りに迅速・正確な作業をこなす均質な労働力が重宝されてきました。日本はこのルールの下で繫栄し、世界第2の工業大国となりました。

しかし、その次のフェーズではボーダレス・ワールドになって、かつ、インターネットが登場して情報化・ネットワーク化の時代となり、国家に代わって「メガリージョン」という新しい経済単位が生まれつつあります。ここでは、民間・起業家主導でルールが決まります。今後の繁栄の方程式を知るためにも、いま先行しているメガリージョンで何が起きているのかを知ることが重要です。

 

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(309)2022年6月18日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代③ アメリカの経済圏

(大前研一著『経済参謀』より)

アメリカの西海岸の「パシフィック・ノースウエストといわれるバンクーバーからシアトル、ポートランドなどを含む経済圏があります。この地域は、人によっては山脈名に由来する「カスカディア」と呼びます。ここはイノベーション産業がけん引する経済が好調で、ワシントン州とブリティッシュ・コロンビア州がイノベーション産業で相互補完的な連携により、さらなる経済発展を目指さす動きもあります。バンクーバー~ポートランド間で高速鉄道建設計画やバンクーバー~シアトル間で自動運転用高速道路構想もあります。

ベイエリア経済圏で拠点となっているのは、スタンフォード大学です。サンフランシスコからサンノゼまで車で1時間というエリアに世界中から人、カネ、モノが集まっています。代表的な企業は、アップル、グーグル、メタ、テスラなどです。これらの巨大企業に続く会社として次々とユニコーン企業が誕生しています。

GAFAMに続くような急成長をしているIT企業やユニコーン企業の創業者も移民や留学生が起業した例が多くなっています。大学や大学院が人材交流の場になっています。スタンフォード、UCLA,、ハーバード、MITといった大学をキャッチャーとして、そこに世界中から優秀な学生を集めます。アメリカにはスタートアップを助けるいろいろな仕掛けがあります。このホップ・ステップ・ジャンプというプロセスが大事なのです。日本の場合は、まず大学というのが単なるアカデミックな学びの場となっていて、世界から優秀な若者を呼び込みません。世界中から才能がある人材が集まってきて、彼らの欲望や野心を事業化していける場があるかどうかなのです。

 

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(310)2022年6月25日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代④ 道州制の先駆「九州」

(大前研一著『経済参謀』より)

中国にも3つのメガリージョンがあります。北京・天津・河北を含んだの京・津・冀の地域です。精華大学や北京大学、中国科学院などの研究機関、あるいはネット検索大手のバイドゥやパソコンメーカーのレノボなどの本社があります。次にグレーター上海。上海市と浙江省や江蘇省、安徽省の一部を含む長江デルタ地帯を高速鉄道網で結び、発展しています。アリババ、アントグループの本拠地です。もう一つが深圳を中心とするグレーターベイエリアです。隣の広州、珠海など珠江デルタに広がっています。深圳の人口は1400万人となり、1人当たりGDPは中国の都市としては、圧倒的に1位です。テンセント、ファーウェイ、ドローン最大手のDJIなど急成長を遂げたスタートアップ企業が集積しています。

インドでは、ニューデリー、ムンバイ、チェンナイ、コルカタを高速道路や高速鉄道で結んで、「黄金の四角形」とか「ダイヤの四角形」と呼ばれる壮大なインフラ拡充策が進められています。それらの大都市から離れた南部のベンガロールはインドのシリコンバレーとも呼ばれています。

日本では、東京、名古屋、大阪、福岡の中で元気なのは福岡です。商業の中心地・天神エリアで大規模な再開発プロジェクトが進行中です。しかも九州は、福岡だけが元気なわけではない。九州新幹線と高速道路網の整備により、九州としての一体感が醸成されて相乗効果が生まれてきている。さらに台湾の半導体メーカーTSMC(台湾積体電路製造)が熊本に工場を建設する。もともと九州は三菱電機、ソニー、東芝、NEC、沖電気などが各地に半導体工場を建設し、「シリコンアイランド」として成長したが、韓国への技術流失や製造コストが安い海外への工場移転などで徐々に寂れてきていた。しかTSMCの進出によって「シリコンアイランド」復活の足掛かりができたといえるだろう。九州は、韓国や中国、東南アジアに近いという「地の利」がある。ビジネスにおいても生産拠点としてもメリットが極めて大きい。道州制=クオリティ国家の延長線上にあるメガリージョンの最適モデルである。

道州制ウイークリー(303)~(306)

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(303)2022年5月7日

◆道州制の推進が少子化対策につながる

(村井嘉浩宮城県知事『人口急減と自治体消滅』より)

 地方が人口減少・少子化対策に取り組むには、地域特性を生かした施策の展開や街づくりが重要。国から地方への大幅な権限移譲が必要で、東京一極集中を改善し、東北全体で人を呼び込むには道州制の推進が重要だ。

 人口の減り方は県内でも市町村別、地域間で差があります。東京一極集中といわれますが、宮城も仙台一極集中です。仙台一極集中というのは、仙台都市圏は力があるということで、仙台から離れれば離れるほど問題が深刻になっています。これはまさに日本の縮図です。

 東京一極集中是正のために、知事会などは会社が集積しづらい地域の法人税率を低くして、企業を地方へと誘導した方がいいのではと主張しています。確かに一つの考え方と思います。しかし、東京や大阪や愛知など大都市圏などは猛反対するでしょう。そんなに問題は簡単ではないのではないかと思っています。企業はもっと有利な法人税率の地域が世界中にいくらでもあります。そうした中で本社機能が東京にあるのは、東京に魅力があるからです。それよりも地方が自ら力をつけていくことが重要と思います。東北6県だと1000万人の規模になります。東北が一つになるぐらいの大同団結ができれば、東京に勝てるような地域づくりをすることは十分可能です。

 地方自治体でできることがあるとすれば、道州制の推進です。東北を一つにまとめれば、例えば空港機能は、現在の9つの空港をA空港とB空港に集約して他の空港をなくす、また港もいずれかを選択的に大きくする、大学も集約することでレベルの高い大学をつくることができます。そうすれば、若い人がこぞって田舎に集まってくるでしょう。国が一律に「こうすればうまくいく」と示すのではなく、地方が自分の頭で考えられるように権限を移譲する、地方公共団体のスケールを大きくするということが、長い目で見れば少子化対策につながると思います。県単位でやろうとすると、国が決めたこと以外何もできません。権限と財源がないからです。

 

 

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■道州制ウイークリー(304)2022年5月14日

◆人口の一極集中は権力が一極集中だから

(佐竹敬久秋田県知事『人口急減と自治体消滅』より)

 産業構造の変化をとらえた地方の産業の活性化――国も我々地方自治体も、なかなかそのための解決策を見いだせないでいます。企業誘致活動はしても、企業はなかなか来ない。内発的な産業をどう生かすかが県に求められています。当然、企業誘致もありますが、ある程度、地域の中のいろいろな基盤や可能性を産業化するというのが、大きな流れです。産業は創意工夫で成り立つものではありません。今の産業政策であっても、地方への産業の再配置をする。思い切って企業や大学の地方への再配置までしないと、難しいのではないでしょうか。

 産業政策なしの人口の地方分散はあり得ません。日本の場合、産業の分散と人口分散を相当意識的にやらないと、黙っていたら東京に行ってしまいます。例えば、地方自治体で農地転用許可権限を国から市町村に移譲してほしいと言っていますが、国は岩盤規制の緩和は頑として認めません。これでは市町村の特性を生かせません。思い切って相当なところまで市町村に権限を任せると、市町村の責任でやらざるを得なくなります。権限があると、やる気も出てきます。今、権限はほとんどなく、この範囲でやりなさいとなっているから、やることの精度が低いんです。

 人口が東京一極集中になっているのは、権力の一極集中になっているから、そうなるのです。人口は権力のある所に集まります。結局、分権が必要なんです。自分たちの町だから自分たちで何とかしなければならないと、権力が自分たちの近くにあればそういう発想が出てきます。上から目線でああしろ、こうしろと言ったって、全然動きません。権力の集中の影響がまわりまわって人口減少となっているんです。

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(305)2022年5月21日

◆地方の特性生かした取り組み推進

(吉村美栄子山形県知事『人口急減と自治体消滅』より)

人口減少の歯止めには、地方の特性を生かした取り組みの推進が重要だと思っています。山形は3世代同居率が最も高い県です。家族を中心に、子育てや介護など福祉的な機能を内包しています。人口減少の中で経済成長するためには、女性も男性もともに働き、育むことができる社会の構造が必要です。具体的な取り組みとして、「ものづくり産業」で働く女性の異業種間交流を進め、付加価値の高い製品開発や販路開拓につながるような施策を考えています。

人口減少は、国家的な喫緊の課題です。政府を挙げての少子化対策、女性の活躍促進に向けた施策の充実化を図ることが大事です。中央主導で一律にやるのではなく、地方の実情にあわせた独自の取り組みに対し、財政支援を含め、国策で取り組んでいただきたいと思います。

中央一極集中を是正し、地方への人口分散を進めるため、政府は十分なリーダーシップを発揮し、産業の分散、再配置を強く推し進めることが極めて重要です。企業の本社や研究開発機能、デザイン、マーケティングといった事業所関連サービス産業を支援対策に追加するなど、「企業立地促進法」の大幅な拡充をしていただきたいと考えます。また、法人関係税の税率を大都市圏より低くするなど地方へ企業分散を促す制度を求めます。移転こそが企業の最大メリットとなるような制度拡充や創設が必要です。税制度改革の一方で、日本海側の社会資本整備を合わせて進めるべきです。社会資本整備は産業分散の基盤であり、災害時の太平洋側と日本海側の補完性や代替性確保にもつながり、地方創生には 欠かせません。

 

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(306)2022年5月28日

◆東京一極集中に歯止めをかける

(片山善博慶応大学教授『人口急減と自治体消滅』より)

20年以上前に国会等の移転に関する法律、いわゆる首都機能移転法ができて、首都機能の移転、分散という国の方針を決めている。その着眼は、東京一極集中は地方の疲弊を招き、国全体のバランスが取れなくなるという点と、首都直下型地震などが起きた時のリスクがあまりにも高いので、分散させようという機運が一時期盛り上がりました。しかし現在、それがほとんどできていない。この法律をもう一回見直すというか再生させ、実行することを政府がまずやるべきだと思います。

いろんな政策には地方に対する植民地政策のような側面があります。例えば農業では、地方は原材料をつくり、付加価値をつけるのは都会という、あたかもプランテーション農業のようなことをやってきました。第二次産業なんかも全部そうです。本社は東京にあり、地方には工場を移転しよう、支店をつくろうという支店経営でした。何が問題かというと、付加価値の高いもの、そういう分野は全部東京に残し、付加価値のつかない生産性の低い部分だけ地方に移そう。まるで中国や東南アジアに製造拠点を移すのと同じような発想です。

この政策は変えないといけません。地方で付加価値の高い仕事をする。そうすると、試験研究機能とか高等教育機能が必要になります。そうすると、それを支える国立大学や道府県の試験研究機関がありますから、そこにもっと光を当てる、こういうことをやらねばならないと思います。いま、地方の国立大学では、運営交付金を減らされています。そこで何を削るかというと、図書費と研究費ということになる。そうではなくて、そういうところにおカネをつけて、地方で試験研究機能、研究開発機能、高等教育機能とかさらに活気が出るような手を打つことが、ベーシックな部分での一極集中を防ぐことにつながるのではと思います。