月別アーカイブ: 10月, 2021

道州制ウイークリー(264)~(271)

■道州制ウイークリー(264)2021年8月7日

◆一極集中から分権広域州制度へ④

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 2000年に分権改革が行われた。しかし「未完のまま」放置されている。このところ、改革のエネルギーは萎え、地方創生も集権化のなかにある。枕詞として地方分権を唱えるが、それは総論として言っているだけ。各論となると官僚と手を組んで抵抗勢力に回る与党議員も少なくない。しかし世界で、高度産業国家、民主化の進んだ先進国で中央集権の国はない。もっとも地方分権を進めても、地方にできない領域はある。外交や防衛、危機管理、司法、金融、通貨管理、景気対策、国土形成、さらに福祉や医療、教育、文化、農政、インフラ整備など政策の骨格をつくる役割がそれであり、国家経営の観点から国が主導することが望ましい。ただ、国が地方に仕事を義務付け、すべての政策領域に微に入り細に入り関与するやり方は、自治体の政策能力が乏しかった時代の産物だ。

 日本の自治体は、裁量的な政策環境が整えば自立可能なところが多い。この先の主な改革課題を挙げると、①地方税財源の充実・確保、新たな地方財政秩序の再構築、②法令による義務付け、枠づけの縮減・廃止、法令による規律密度の緩和、③事務権限の移譲.④広域化をにらんだ地方自治制度の再編成、⑤住民自治の拡充、⑥地方自治法の廃止、地方自治基本法の制定などだ。地方自治を営む基盤は大きく変わっている。府県制度の大胆な見直しを含め、令和の時代は地方主権を目指す改革を進めるべきだ。究極の分権国家の姿、ゴールは、約10州の地方政府(州政府)がそれぞれ内政の拠点として自己決定、自己責任、自己負担の原則で地方自治を営む姿であろう。

 

■道州制ウイークリー(265)2021年8月14日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑤

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 東京一極集中を解消し分散化を図る、地域のことは地域で決める地方分権国家の究極の姿、大きく膨らんだ国・地方の財政の無駄排除、130年前からの狭域化した都道府県を広域政策のできる広域自治体に変える―――これらを総合的、俯瞰的に実現するには日本を「州制度」の国に変える。それが切り札だ。

 いまや生活圏、経済圏は交通・情報・通信手段の飛躍的発達で大きく広がっているにも関わらず、新型コロナウイルスの大流行においては、あたかも各県が鎖国のように県内目線で、「わが県に来ないでください」「わが県を出ないでください」と叫ばざるを得なかった。国は都道府県制度を足場に知事を手足のように使った。また「国の指示待ち」知事の姿もあった。

 その時代にふさわしい「国のかたち」を設計する。それが政治の基本的な役割だ。時代は大きく変わった。本格的な人口減少時代を迎えた日本をどうするか、「新たな国づくり」を本格的に議論すべき時期に来ている。いまの統治機構「国―都道府県―市町村」の三層制とそれに連なる膨大な出先機関等をそのままにする限り、この先、何度増税を繰り返しても1300兆円を超える財政赤字は消えない。日本の国・地方の歳出合計は170兆円を超える方向にある。歳出の約半分は交際費、人件費、管理費など統治機構を維持するための間接経費に消えている。明治23年以来ほとんど無傷できた47都道府県体制は抜本から見直さなければならない。 

 

■道州制ウイークリー(266)2021年8月21日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑥

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 この先、人口が減り、都道府県の中でも人口が100万人に届かない県が続出する。国立社会保障・人口問題研究所の2045年予測によると、現在100万人以下の件は、香川、和歌山、佐賀、福井、山梨、徳島、島根、高知、鳥取の9県だが、25年後はこれに奈良、長崎、石川、大分、岩手、宮崎、青森、富山、山形、秋田の10件が加わるという。この予想より人口減少が進むと、47都道府県の半数近くが100万人以下になるかもしれない。一方、100万人規模の政令市などの大都市が20近く存在する。こうした広域自治体と基礎自治体が逆転する現象の続出は地方制度を根幹から揺るがす。130年前につくられた47の府県割りは、広域化した現代に合っていない。

 47都道府県は狭域化しているにもかかわらず、行政の活動はあたかもそれぞれが一つの国であるかのようなフルセット行政にいそしむ。横並び意識のフルセット行政の蔓延が、日本全体の財政を悪化させ、不要なハコモノを増やし、行政を非効率化している。今回のコロナ対策で、一度目の緊急事態宣言解除の場面になって、ようやく国は「京阪神」「首都圏」という言い方で広域圏を対象にした判断を求めた。もはや県単位では対応しても限界に近い。広域圏連携を強める制度措置が不可欠との認識からだ。

 そう遠くない将来、10州程度にくくり直し、そこを内政の拠点にする「州制度」への移行は不可欠だろう。まず広域圏で連合議会をつくり、連合代表を知事から選んでグレーター広域連合を特別地方公共団体として法制化し、徐々に国の出先機関も権限も吸収し、広域圏がバーチャル州のような動きになる制度措置がいるかもしれない。

                《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(267)2021年8月28日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑦

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 県内に政令市を抱える県庁は、その政令市と張り合い、人口減で行政需要が大幅に減るにもかかわらず、同じモノ、同じようなサービスを創り続ける。統治の仕組みが二重、三重行政の無駄を生んでいる。都道府県は2000年の分権改革で各省の機関委任事務を大量に処理する役割もなくなり空洞化している。私たちの日常は、経済も生活も県境にかかわりなく広いフィールドで行われている。地方自治のエリアは実際都市と行政都市が一致していることが原則、だが、現在の47都道府県体制はそこから大きくズレ、社会の広域化が進む一方で各府県域は狭域化している。47都道府県という旧体制を解体再編し、広域圏を単位に約10の州をつくり、日常生活に合った広域圏行政の仕組みを作るべきだ。それが道州制だ.。ただ、筆者は、それを大都市・中都市をベースとする新たな「州構想」と呼ぶ。

 州構想移行に積極的な論者は次のようなメリットを挙げる。①行財政基盤を強化する(県庁職員、国の出先機関職員の大幅削減ができる)②行政サービスが向上する(フルセット行政の回避、スケールメリットが働く)③魅力ある地域圏、都市圏が形成できる(特色ある地域圏による都市間競争が成立)④経済生活圏と行政圏を一致させる(府県廃止、地方政府の一元化で広域戦略が可能)⑤大都市圏の一体的運営で経済活力も向上できる(首都圏はイギリス並みの力)。

 

 

                《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(268)2021年9月4日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑦

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 州構想のメリットとされる、①地域圏の一体的整備、②魅力ある広域圏の形成、③行財政基盤の強化、という話は地方自治でいう「団体自治」を重視する立場からの主張だ。他方、デメリットとされる、①住民の声が届かなくなる、②府県で育まれた文化を喪失、③勝ち組、負け組がはっきりし、州内でも州都から遠い地域は地盤沈下する、という話は、「住民自治」を重視する立場からの主張といえよう。間違いなく、広域化に伴いスケールメリットは働く。広域政策、広域業務を州政府に任せる一方で、旧府県や一定規模の市を生かしながら「住民自治」を充実させる方策を講じたらどうか。州制度問題は新たな行政制度をどう創設するかという制度設計の問題であるが、同時に地方が抱える構造的な集権体制をどう解体するかという改革手段の問題でもある。「州構想」は日本再構築の切り札である。

 この州構想改革で、これまで47都道府県制度で巣食ってきた無駄な財政だけでも20兆円近く排除できる。消費税10%分カットできるとみる。日本はこの十数年、中央集権に代え地方分権体制が望ましいとし、様々な制度改革を進めてきた。2000年に47本の法律を一括改正した「地方分権一括法」の施行は、その意思の表れだ。分権国家の究極の姿は「道州制」だとし、それに向けた改革構想も練ってきた。15年前の第一次安倍政権は道州制担当大臣を置き、道州制ビジョン懇談会は2018年までに道州制へ完全移行すべきと提言し、法整備を求めた。自民党は「道州制推進基本法」をまとめたが、国会提出を見送った。その後は、鳴かず飛ばずとなっている。

                《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(269)2021年9月11日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑧

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 世の中の事態はより深刻な方向に進んでいる。人口減少は加速し、累積債務は1300兆円に達し、市町村の半数以上が人口半減などの危機にある。現在の細切れンフルセット体制と、国民から遠い中央政府がセンターとして仕切る中央集権体制はどう見ても時代に合わない。その改革方向は州構想への移行にある。日本全体を約10の広域州とし、各州政府が内政の拠点となるよう大胆に分権化する。身近なところで税が集められ、使われていく。結果としてムダは省かれ人口・企業の地方分散は進み、日本全体の元気を取り戻すことになる。

 日本は既に州制度移行の素地は相当できている。20政令市、60中核市をそれぞれ政令市⇒特別視、中核市⇒政令市に格上げし、この都市自治体にほとんどの府県業務を移管する。そのうえで内政(厚労省、国交省、文科省など)に関わる国の本省業務、ブロック機関の業務、残存する都道府県の業務を融合するかたちで「州」政府を創設し、内政の拠点とするなら州構想は実現できる。

 よく都道府県がなくなるのは心配だという。しかし、それは行政区分上の話であって地域がなくなる訳ではない。州構想が実現しても、日常生活に定着している都道府県名は地名として残るし、甲子園の都道府県対抗高校野球も残る。生活上なんの支障もない。日本はこれ以上の東京一極集中も地方過疎の進行も望まない。次代を見据えた賢い統治システムを生み、人口減少時代でも元気な日本を目指す時だ。

 

                《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(270)2021年9月18日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑨

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 日本を広域圏に見合った州制度に変える理由は大きく三点ある。一つ目は、人口減少の右肩下がり時代に応じて国、地方の政府機構を賢くたたむためだ。二つ目は、地方分権を進め地方主権の国を創るためだ。都道府県を廃止し、市町村も必要なところは再編する。政令市、中核市、特別区などの都市制度を強化充実し、そこへの権限、財源を府県から移したうえで、国からは内政の権限、財源を各州に移し、内政の拠点とするのである。三つ目は、財政再建、健全化のためだ。幾重にも重なる国、地方の行政機関を賢くシンプルにたたみ、国民の税負担をこれ以上増やさない前提で行財政の仕組みを再構築する。

 「州構想」の実現で、各州は国から移された財源を立法権、行政圏、一部司法権をフルに使い地域的に自立を始める。内政の拠点となる各州は広域政策の主体として、道路・空港・港湾など広域インフラの整備、科学技術の振興、州立大学などの高等教育、域内経済や産業の振興、海外都市との交易、文化交流・雇用政策、州内の治安、危機管理、環境保全、医療保険など社会保障サービスを担当する。政策減税で企業を呼び込むことも可能になる。日本が一極ではなく、10極の多極分散型の国に変わる。

 道州制(州構想)は30年前の国鉄改革に似ているとみてもよい。日本の中に自らの意思と知恵による地域間競争が起こる。海外との交易も窓口は国(外務省等)ではなく、各州に移る。そのことでグローバリゼーションへの対応も十分可能となる。

                《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(271)2021年9月25日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑩

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 州制度移行のメリットはどのようなものか。州制度移行を単に行政改革の面だけでとらえるのは間違いである。民間活動を府県単位に縛り付けているくびきを外し、より経済活動にダイナミズムを生み出す。日本を東京一極集中ではなく多極分散の国にかえていこというものだ。日本を元気にすることだ。具体的に州制度のメリットを示すと大きく次の三点となろう。

 第一は、政治システムを変えること。多元化、多様化したニーズに応えるには、遠い政府の判断を待つまでもなく、身近な政府が意思決定する時代だ。身近な市町村を第一の政府に据え、補完性の原理および近接性の原理に基づいて行政を行う。政治や行政が身近なものになり、公共サービスの受益と負担が明確になる。住民参加による政策決定が可能となり、政策決定の透明性が増す。

 第二は、日本全体の経済の活性化につながること。各州圏域が自立的で活力ある競争的発展の可能な国土構造に変え、国際競争力を高めていく。国と地方の事務配分を抜本的に見直し、税財政の仕組みを変える。一定規模と権限を持つ州による広域圏経済で、広域の経済文化圏が形成され、相互に切磋琢磨によるダイナミズムが生まれる。

第三は、無駄の排除だ。国と地方を通じ簡素で効率的な統治システムに変えていくこと。州政府が企画立案から管理執行まで一貫してその役割を果たせる。日本再生はこうした統治機構の大改革からしか生まれない。