道州制ウイークリー(160)~(164)

■道州制ウイークリー(160)2019年8月3日

◆地方経済再生への道⑤道州制は国民的課題

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

交通ネットワーク、空港・港湾、物流、環境、研究開発、観光等、県境を超えた地域課題は枚挙にいとまがない。「行政区域を広域化すれば、その中で一極集中が起こり、他は取り残されるのではないか」という不安が生まれるが、企業や労働者といった民間経済主体は行政区域を意識して活動しているわけではない。企業は収益性に優れた地域に立地するし、労働者は就業機会や高い報酬を求めて移動する。府県の壁がある限り一極集中の利益は、その地域が独占することになる。道州制によって行政区域が拡大すれば、区域内で利益を再分配することも可能になるし、利益をブロック内のネットワーク整備にも利用でき、連携強化に結び付く。

ますます複雑化する国際社会にあって、外交、国防、安全保障、治安維持といった国が果たすべき役割の重要性は高まっている。少子・高齢化の進行は年金や医療保険、生活保護といった国による所得分配機能の強化を求めているし、景気政策、地球環境保全、骨格的幹線道路・鉄道といった、地方が十分にその機能を果たし得ない行政分野も多くなっている。こうした国の機能を強化するためにも、国およびその出先機関は地域に関わる行政から撤退し、道州をはじめとした地方に権限を移すべきである。

一足先に道州制を実現した国がある。かつて「日本と並ぶ強力な中央集権国家」といわれたフランスだ。82年の地方分権法によって、地域経済圏を州(レジオン)として完全自治化した。ヨーロッパ統一後の国境を超えた地域間競争に勝てる強い地方を作ることが目的であった。国家財政の悪化による地方への手厚い保護が不可能になったこと、「パリと砂漠」とも言われ、首都一極集中による国土構造の歪み是正など、フランスが置かれていた状況は日本とよく似ている。異なるのは、フランスが原状に合わせて、確実に改革を前進させていることである。道州制を国民的課題としてとらえ、実現の道を探ることが、日仏間の差を縮めることになる。

■道州制ウイークリー(161)2019年8月10日

◆人口減少国家 日本の未来①2040年のクライシス

(河合雅司『未来の透視図』より)

令和時代は、間違いなく少子高齢化、人口減少が進む時代となる。人口が減りゆくことを前提として、日本社会をつくり直さない限り、われわれは真の意味での平和や繁栄は手にできないであろう。

ひとたび少子社会になると、これを脱却するのは極めて難しい。少子化が「次なる少子化」をまねく悪循環におちいるからだ。少子化は「未来の母親」を減らす。合計特殊出生率が現行の1.4台半ばの水準で推移したならば、25歳~39歳の女性数は今後、大幅に減っていく。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2040年には、2015年の4分の3ほどに減り、2060年代にはおよそ半減となる。多少のベビーブームが起こったところで、日本の少子化は止まらない。

人口減少社会とは、どういう社会なのであろうか。人口は40年後に9000万人を下回り、100年も経たないうちに5000万人ほどに減る。2042年までは高齢者が増える。特に80歳以上が増えていく。少子化の影響で勤労世代は大きく減る。働き手世代が著しく減るのだから、「大量生産・大量販売」という戦後の成功モデルは成り立たたなくなる。警察官や消防士、自衛官などは「若い力」を必要とするが、こうした職種の担い手が不足すれば、社会そのものが成り立たなくなる。すでに過疎化が進んだ地域では、出生数の減少に加えて、人口流失が拡大している。やがて自治体機能を維持できなくなる市町村が全国的に続出することだろう。

こうした難題に挑むには、これから起こる「不都合な真実」から目をそむけず、正しく理解する必要がある。「変えられない未来」と今後の努力次第で「変えられる未来」を選別し、戦略を立てて新たな状況に適応していくことだ。

 

 

■道州制ウイークリー(162)2019年8月17日

◆人口減少国家 日本の未来②超高齢者大国日本の現実

(河合雅司『未来の透視図』より)

日本はすでに4人に1人が高齢者(65歳以上)という超高齢社会に突入しているが、「高齢者の高齢化」は進行し続ける。2050年には推定総人口の約4人に1人に当たる2400万人が75歳以上となる。一方、働き手の15~65歳の人口は2015年の7728万人から2040年には1750万人減少の5978万人となる。

少子高齢化が進む中、食料品といった生活必需品を売っている店舗であっても、客が減って経営が厳しくなったり、後継者がいなくて廃業を余儀なくされたりする例は多い。「買い物難民」がすでに3人に1人になっている県もある。東京圏であっても例外ではない。頼みの綱であるインターネットショッピングも、買い物を届けてくれる宅配便業者が取扱量の急増と人手不足でパンク寸前なのである。買い物の足となる乗り合い路線バス路線廃止も8560キロとなっている。すべてにおいて便利さを追求してきた社会は今、転換期にある。変わる社会に我々の「暮らし方」も転換を迫られている。

介護される方も介護を担う方も高齢者という「老老介護」が増加している。救急車で運ばれる患者の約6割が高齢者で、患者を診る医師の高齢化も進んでいる。70歳以上の診療所医師の割合は全国平均で19.2%。京都では4人に1人が高齢医師となっている。

延び続ける平均寿命だが、お金が足りない高齢者は多い。生活保護世帯の過半数は高齢者世帯である。特におばあちゃんの年金は男性に比べ4割少なく、寿命が長い女性の貧困は特に深刻である。

高齢化で介護の需要は高まるが、介護人材の供給は追いついていない。2025年には35万人が足りなくなる。

 

 

 

■道州制ウイークリー(163)2019年8月24日

◆人口減少国家 日本の未来③勤労世代の激減で縮むニッポン

(河合雅司『未来の透視図』より)

「技術者不足」で経済が大渋滞? 技術で繁栄してきた「技術立国」の日本であるが、その足元が揺らいでいる。経済産業省の「IT人材最新動向と将来推計に関する調査結果」をみると、IT産業の労働者は2019年をピークに減少に転じる。IT産業は情報化が進む世界で欠かすことのできない分野だ。IT産業だけではない。経産省が2017年度に企業を対象に行ったアンケート調査では、5年後に技術者がもっとも足りなくなる分野として、「機械工学」を挙げる企業が多かった。技術立国を支えた団塊の世代が退職し、若手を十分に採用できないとなると、エアコンやテレビといった家電の修理すら難しい時代が来るかもしれない。

財務省財務総合政策研究所のデータでは、経営者の高齢に伴う引退によって廃業する企業の数は今後5年間で100万社以上、25年には200万社近くになると予想されている。

家計消費支出に占める60歳以上の割合は半数を占める。一方の若者は、洋服もお酒も買わず、「車離れ」や「居酒屋離れ」「テレビ離れ」が当たり前となり、30歳以上の男女の1か月の食糧費、特に外食費はどんどん減っている。

勤労世代の減少は地域力の低下を招く。地域の消防団員は1990年代に100万人を割りこんで以来、減少が続いている。「町の守り手」である警察官や自衛隊員といった若い力を必要とする仕事の人員確保が難しくなれば、国防や治安、防災機能は低下する。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(164)2019年8月31日

◆人口減少国家 日本の未来④地方に子どもがいなくなる

(河合雅司『未来の透視図』より)

地方自治体で現実に進んでいるのは「無子高齢化」である。人口動態調査(2016年)では、福島県昭和村、奈良県黒滝村、同上北山村で2016年の年間出生数がゼロだった。文部科学省の調査では、毎年400~500校もの小学校が廃校になっており、統廃合の流れは止まる気配がない。無子高齢化が進む自治体では、いずれ役場職員や議員のなり手もいなくなる。自治体の存立自体が危ぶまれる事態が確実に進行しているのだ。2016年の年間出生数は初めて100万人を割った。2060年の年間出生数は50万人を割るとされる。

生涯結婚しない人たちは増加の一途。生涯未婚率は2035年には男性の3人に1人、女性の5人に1人となると予想される。母親の8割に当たる25歳~39歳の「出産可能な女性」の数は今後も減り続ける。2015年には1087万人いたが、2040年には814万人、2065年には612万人とほぼ半減してしまう。

女性の減少が最も少ないとされる東京都にも落とし穴がある。未婚者が多く晩婚化が進む東京は2017年の合計特殊出生率が1.21と全国最下位なのだ。女性が減らないといっても、出生率が低ければ人口減少を止めることは出来ない。女性減少率が2番目に低い沖縄県が全国1位の出世率(1.94)だが、そもそも人口規模が東京都とは大きく違うため、出生数の増加に大きく寄与する可能性は低い。

 

 

道州制ウイークリー(156)~(159)

■道州制ウイークリー(156)2019年7月6日

◆地方経済再生への道①東京一極集中の是正

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

東京一極集中が進む中で、地方経済の衰退が顕在化している。東京を中心とした首都圏のみが栄え、他地域は再分配で維持されるというのは、国土の健全な姿ではない。日本経済の活性化は地方経済の活性化によって実現すると捉えるべきだ。地方経済の再生は、地域に存在する民間活力を強め、財政への依存度の小さい「足腰の強い」経済構造を創出することである。そのためには、地域がその特性を活かし、多様で魅力ある地域づくりを主体的に進め、その成果を競うという地域間競争によってこそ、真の地方経済の再生が実現する。

東京一極集中は基本的に市場メカニズムに基づいて起こっているという主張がよくなされるが、東京一極集中は東京の首都としての有利性を前提とした市場原理によって起こっているのである。中央集権的な行財政シスエムの下では、企業が東京に本社を移すことで収益をあげようとするのは自然の流れだ。

第2点の「市場メカニズム」の問題は、「市場は万能ではない」ということである。これには東京集中によって発生する社会的費用は含まれていない。企業集中による混雑、オフィスの賃貸料、高い人件費、人口を送りだす地方に発生する諸問題、人口減による行政サービスのコストなども無視できない。こうした社会的コストを放置したままの東京一極集中は望ましい資源配分を実現しない。

地方経済の再生には、地方分権の推進、東京一極集中による社会的費用の回収など、東京一極集中を抑制する仕組みを一刻も早く模索する必要がある。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(157)2019年7月13日

◆地方経済再生への道②地方中枢都市の戦略的育成

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

成長性の高い産業は、人口や産業、情報インフラ、研究開発機関など、地域の集積の利益を非常に強く受けるものである。地方が自立的な経済発展を遂げるためには、こうした成長性の高い産業の立地が必要なことは言うまでもないが、そのためには地方の集積を促進することが不可欠である。それには広域経済圏としての各ブロックにおいて、地方中枢・中核都市の戦略的育成が求められる。

たとえば、都市的な要素を地方の生活に取りこむという場合、隣接するすべての地域が同種の機能を持つ必要はない。むしろ、一体化した地域の中枢部分に都市的機能を集積立地させ、周辺地域からはアクセシビリティ(アクセス、利用のし易さ)を高めることが望ましい。中枢都市の成長は、それを取り巻く地域の成長なくしては起こり得ない。つまり、地域政策は拠点主義によるのではなく、ブロック内でのネットワークづくりをはじめとした面的な政策を実施しる中で、ブロック内各地域の連携を強化しなければならないのである。

たしかに、地方における集積のメリットは、まず地方中枢都市が享受することとなろう。しかし、圏域内での交通・情報ネットワークが整備されることによって、その効果は次第に周辺地域に波及するはずである。東京を核として、放射線状に地方中枢都市が結ばれ、情報や交通手段の発達による東京への近接性は、「ストロー現象」によって地方の活力を東京が吸い上げている。

本当の意味でのネットワークが圏域内で形成されることによって、地方のエネルギーは圏域内で増加し、中枢都市と後背地の相乗効果が発揮されることになる。

 

 

 

■道州制ウイークリー(158)2019年7月20日

◆地方経済再生への道③個性形成型の地域づくり

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

自治体のこれまでの政策課題は地域間格差を埋めることであった。その結果、「隣の町に会館ができたからわが町にも」といった「他地域なみに」の発想に基づいた没個性的な地域づくりが生まれたのである。これからは、他地域と比較して遅れている面、劣っている面を対症療法的に改善する「問題解決型」の地域づくりから、他地域と比べて進んでいる面、優れている面を発見し、これを地域の主体的な創意と工夫によってさらに伸ばすという「個性形成型」の地域づくりに比重を移していかねばならない。不足する部分はお互いに他地域の力を借りればよいのである。「あれもこれも」ではなく、真にその地域にとって優先度の高いものを住民が主体的に選択することが、個性ある地域づくりに求められる。

地域づくりを成功させるためには、地域の活動主体に地域づくりに関しての共通の認識を持たせることが必要であり、そのためにも、地域の個性を活かした「地域目標」と「地域づくり理念」を明確にし、PRする必要がある。

地域の産業政策において自治体の果たす役割は大きい。内発型の地域振興にはイノベーター的なリーダーの存在が重要である。しかし、あらゆる地域で、個人にしろ企業にしろ、地域づくりのリーダーが出現する保証はない。その場合、自治体自らが、リスクを抱えてでも戦略的で組織的な行動によって、その役割を果たしていかなければならない。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(159)2019年7月27日

◆地方経済再生への道④道州制と地域再生

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

地域づくりへの広域的な取り組みは、複数の自治体が共同歩調をとらなければならない。「道州制」は、広域的な地域づくりの環境整備と捉えることができる。省庁再編後も、依然としてタテ割り行政の実態は変わっていない。企業誘致も補助金や税制上の優遇といった純産業政策では限界がある。従業員の生活環境、福祉、文化といった総合的な地域メリットを前面に押し出さなくては、「企業が地域を選ぶ時代」には対応できない。政策間の有機的な連携や総合性を欠いた「パッチワーク的」地域政策を改め、地域にふさわしい「選択と集中」を実現できる総合行政主体を構成する必要がある。それが道州制だ。

「道州制のようなエリアの大きい自治体の設置は地方分権の流れに逆行するものだ」という主張がある。だが、この主張は道州制を広域行政として捉えたものでしかない。道州制は地域づくりの主体を国から地方に移すことを可能にするという意味で、地方分権の重要な推進力なのである。

経済活動のグローバル化が進んだ今日、各地域は国境を超えて交流し、また競争している。こうした環境で地域が生き抜くためには、相応の規模と経済力を持たなければならない。人口規模と経済力を持つ地域が、その特性に応じた経済戦略に基づいて政策を推進すれば、労働力の減少や貯蓄率の低下によって縮小が予想されるわが国経済のかさ上げにつながるとともに、東京一極集中というゆがんだ国土構造の是正にも寄与するはずだ。

道州制ウイークリー(151)~(155)

■道州制ウイークリー(151)2019年6月1日

◆大前研一「わが道州制案」②

(大前研一『世界の潮流2019―20』より)

日本の地方にはポテンシャルがあると信じている。少なくとも道州が自治権を得てお互いに競い合うようになれば、今までのように中央からの金と指示を待っているだけの自治体とは抜本的に違ってくる。そして、この道州制が機能すれば、日本はポルトガルのようにはならず、再び輝きを取り戻すことができるだろう。

今の世界はメガリージョンの競争によって、繁栄を呼び込む時代になっている。自分の税金で栄えているところはないのだ。世界へ、あるいは大きな国では他の地方からヒト、カネ、モノ、情報を呼び込んで栄えるのだ。自国民に税金をかけて繁栄しようとしたり、他国を搾取して栄える植民地支配の時代ではない、ということを改めて肝に銘じていただきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(152)2019年6月8日

◆堺屋太一「日本の未来」

(堺屋太一『三度目の日本』より)

堺屋太一氏の絶筆。この国のあるべき未来を描いている。

一度目の日本は明治の「強い日本」。二度目は戦後の「豊かな日本」。三度目は、「楽しい日本」を創る。

「楽しい日本」を創るためには、官僚主導を止めることが第一条件である。官僚主導には5つの基本方針がある。1、東京一極集中 2、流通の無言化 3、小住宅持ち家主義 4、職場単属人間の徹底 5、全日本人の人生の規格化である。

アベノミクスでも、成長戦略の一環として「岩盤規制」を緩和し、官僚主導から政治主導へ変えようと改革を試みているが、現実にはなかなか進まない。問題は戦後の官僚主導をどこでどう断ち切るか、だ。

戦後の官僚主導がどこから崩れてゆくか。私は5つの局面があると思う。1つは少子高齢化。2番目は地方行政の破綻。3番目は大不況。4番目は国際情勢。次々と難題に直面するトランプ大統領、そのアメリカに取って代わろうとする中国、EUのさらなる分裂、ミサイル発射実験を続ける北朝鮮・・・すでにその端緒は見えている。

そして最後の5番目は、第4次産業革命である。第4次産業革命とは、分かり易く言えば、ロボットとドローン、自動運転、そしてビッグデータによる変化だ。どういう社会変化が起きるか、誰も議論していない。国際的に見ても、世界経済は伸び悩み、資源や食糧が供給過剰気味になる。全体的に経済を冷え込ませるであろう。

この時、戦後の官僚主導が築いた、「東京一極集中」をはじめとする「5つの基本方針」の弱点があらわになる可能性が高い。2020年以後の危機を乗り越え、いよいよ「三度目の日本」を目指さなければならない。

■道州制ウイークリー(153)2019年6月15日

◆分権の核心は地方税財政改革

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

地域がその特性を踏まえて創意工夫を発揮するためには、政策は多様でなければならないが、中央集権システムの下では地域政策における実験や技術革新は実現しにくい。国が意思決定を行う場合には、最終的にすべての地域が新しい試みを受けいれるという確信を持つことがなければ、特定の地域だけに新たな試みを行うにしても、どの地域がそれを望んでいるかの情報を正確に得ることは困難だし、特定の地域にのみ政策を講じることは公平性という点から躊躇しがちになる。国が新たな試みを全国的に実施すると、それを望まない地方も足並みをそろえなくてはならなくなり、その結果、財政に無駄が生じる。

新しい試みは、国が独占的に政策を担う場合よりも、多くの自治体がそれぞれの地域住民の満足を最大にしようと競争を続けて入る場合の方が実現しやすい。つまり、分権的であるほど多くの実験や革新が可能になるのだ。国と地方が協働して地域づくりを行う場合でも、政策形成プロセスは、国から地方へというトップ・ダウン方式から、地方から国へというボトム・アップ方式に転換されるべきである。

地方分権改革は機能不全をきたしている現行の意思決定システムの改革である。だが、「地方ができることは地方で」というスローガンを何度唱えても現実は変わらない。真の分権改革を実現するためには、それを担保する制度が不可欠なのである。それが地方税財政制度の改革であり、補助金や地方交付税といった国の財源移転を縮減し、税を中心とした地方の自主財源を拡充することである。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(154)2019年6月22日

◆真の「三位一体改革」

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

地方分権の推進と地方行政改革はいわばコインの表裏の関係にあるのであり、いずれが欠けても国民福祉の向上は望めない。

国民が負担する税金のうち自治体が自由に使える割合を大きくすることが地方分権の本来の目的ではない。このように理解するから、「地方分権が進めば、いまよりも無駄が多くなって税金が高くなるのではないか」「国に任している方がましだ」ということになる。これには、日本人の多くが「税金は召し上げられるもの」と考え、負担が小さくなることには関心を払うが、税金の使い途については無関心であることも関係している。だから、役人や議員は国、地方を151問わず、税金を自分たちが稼ぎ出したものであるかのように錯覚する。その結果が政治や行政への不信につながり、無関心をさらに助長することになる。

地方分権はこうした悪循環を断ち切る絶好のチャンスである。自治体を取り巻く大きな環境変化の中で、地方は大改革を遂げなくてはならない。そのためにも、第一に、国と地方の上下・主従の関係を対等な関係に改め、それを担保するための地方税財政制度の改革(三位一体の改革)を実現すること、第二に、これまでの国家財政に依存した地方経済を分権時代にふさわしい自立型のものに変革すること。第三に、「官から民へ」を含めて自治体の行政改革を徹底して進めることである。

これら三つの課題は相互に関連しており、連立方程式なのだ。式を解くためには、どの課題の解決も欠くことは出来ない。その意味では、地方税財政制度改革、地域経済の活性化、地方行政改革の三つをもって、真の「三位一体改革」ととらえなければならない。

 

 

■道州制ウイークリー(155)2019年6月29日

◆補助金の弊害、何が問題なのか

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

国の行政が省庁の壁によってタテ割りになりがちなことは容易に想像できる。補助金の交付に厳しい条件が付けられると、タテ割り行政がそのまま地方に持ち越されかねない。

地域づくりには総合的な視点が要求される。家やマンションが建てば、学校、道路、福祉施設、文化、交通といった様々な都市装置が必要であり、これがバランス良く整備されて初めて地域の住機能は向上する。ところが、補助金は、事業ごとにその時々の便宜と必要から生み出され、積み重ねられてきたことから、そこには、総合的に地域づくりを進めるという発想は少ない。

補助金によって地方の予算編成が歪められるという声も多い。1億円の自己財源がある時、補助金のつかない単独事業では1億円の事業しかできない。ところが二分の一の補助金率を持つ事業であれば、2億円の事業が可能になる。このような場合、たとえ住民ニーズからすれば優先順位が低くても、地方の予算は補助事業に引っ張られる傾向がある。補助金が「お墨付き」の役割を果たすのである。これに対して補助金の付かない単独事業には厳しい予算査定が加えられる。このように、補助金獲得行動を通じて、事業に関する国の優先順位に地方は従うようになる。しかも補助金の交付によって地方は事業の細部にまで干渉され、地域の特殊性が事業に反映されないとなれば、資源の浪費はますます大きくなる。

 

道州制ウイークリー(138)~(142)

■道州制ウイークリー(138)2019年3月2日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ⑤

(関西経済同友会緊急アピールより)

一足飛びの「関西州」実現には困難が予想されるため、次のステップを踏むことを提唱する。

<ステップⅠ>

関西空港と伊丹空港の経営統合が成功している事例からわかるように、空港、港湾、道路などインフラの一体的整備と運用は、資源を有効に活用できる。総合力も発揮できる。関西には、多数の公設試験所や支援機関、大学、研究機関等があり、一元化された経済産業政策のもとに一体となって結束すれば、大きな効果を生む。インフラ整備や、経済産業政策等において府県と出先機関がそれぞれ独自に取りこむ仕組みを改め、一元的なビジョンと計画のもと、関西全域の資源を結合し、一体となって発展を目指すべきである。

(1)従来の委員に加え、国の出先機関の代表者を「関西広域連合」委員に委嘱する。

各出先機関の代表者も、メンバーに加わり、情報交換と協議の基盤をつくるとともに、関西全体の政策運営となって携わり、広域行政一元化の第一歩とすべきである。

(2)国に「関西広域担当相」(万博担当大臣と兼任とする)を創設し、「関西広域連合」委員に委嘱する。

大臣は、関西の政策実現にむけたパイプ役を担うべきである。

(3)「関西広域連合」にデジタル専門機関を創設し、ビッグデータの活用を目指す。

関西広域連合に、デジタル化・データ活用等の専門機関を創設し、政策や予算、投資の有効性・執行効率を高めるべきである。そして国・州・府県・市町村の行政サービスの再編成を目指すべきである。

 

■道州制ウイークリー(139)2019年3月9日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ⑥

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州へのステップⅡ>

(1)国の出先機関の業務を「関西広域連合」に移管し、自治体として執行する。

関西では関西広域連合が各出先機関の受け皿となり、「自治体」として一元的・一体的に広域行政(独自の広域産業政策、インフラ整備、保険・医療福祉、各種保険、環境政策など)を担う体制を目指すべきである。このうち、広域産業政策、インフラ整備については、国の出先機関の人員、権限、予算等をそのまま関西広域連合に移行する。なお、「道州制特別地域における広域行政の推進に関する法律」の適用を受けることで、関西は「道州制特別地域」となるべきである。

(2)府県を存続させ、必要業務を、府県から「関西広域連合」に移管する。

関西が関西州を目指すとしても、直ちに府県を廃止すべきでないと考える。①府県を廃止すると、市町村と「州」の間に大きな隔たり(距離及び規模)が生じてしまう。市町村と「州」の間で十分なコミュニケーションや協働をはかることは難しいと考える。②各府県には、歴史・文化・伝統・風土・気質などに根差す帰属意識があり、このような無形の価値は大切にすべきである。③府県業務のうち、本来的に府県レベルで担うべき業務があり、それらを「州」に吸い取ることは「近接性の原理」に反し、地方分権と言えない。④府県の廃止には府県の反対が強く、その意向を無視することは出来ない。

(3)デジタル化推進による行政効率化については次回に掲載。

 

■道州制ウイークリー(140)2019年3月16日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ⑦

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州へのステップⅡ>続き

(2)府県存続の補足

関西広域連合(ゆくゆくは関西州)で担う方が望ましい業務は、府県から関西広域連合に移管することが肝要である。すなわち、府県と関西広域連合の役割を見直し、再編成する。このことにより、スピード速い、効率的な、関西の更なる発展が期待される。府県を永続的に存続させるかについては、府県の役割が再編成される中で効率的な行政と住民サービスの観点で判断すべきと考える。

(3)デジタル専門機関によって、ビッグデータの解析を行い、政策立案への活用、電子政府による新サービスの提供、行政の効率化など、運用を本格化する。

デジタル専門機関を本格的に運用し、行政に活かす。行政効率を上げて、コストを下げる。住民サービスの向上をめざし、投資のアウトカムの検証をし、未来予測等を導入して政策決定に活かすことが重要である。行政サービスの効率を高め、新しいサービス、仕組みを創造するべきである。また、関西広域連合がデジタル技術を活用することにより、関西各自治体(府県・市町村)の業務を支援し、効率アップをはかることができる。特に、医療・介護・福祉においてビッグデータを活用し、効率化をはかることで、社会保障費の増大を抑えるべきである。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(141)2019年3月23日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ⑧

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州へのステップⅢ>

(1)フランスに見られるような議員兼任制度を採用し、公選議員による議会を設置する。

関西広域連合が関西の広域行政を一元的に担い、執行するに当たっては、その正当性が求められ、そのためには、住民による選挙で選ばれたる議員で構成される議会が必要になる。関西広域連合議員には、国会議員・地方議員との兼職を認め、幅広い視野から職務を遂行させる。複数の公選職を経験させることで、政治家としての力量を向上させる。兼職する議員の報酬は、所属自治体ないし国が折半するなど、歳費を抑える。

(2)首長を、議会から互選する。

首長は、準「議院内閣制」的に、議員から互選するのが望ましい。関西ほどの広いエリアの長を直接公選することは、政治的安定を損なう可能性もあり、慎重に考えるべきである。

(3)上記ステップを踏んで、「関西州」を樹立する。

上記ステップを踏んだ上で、必要に応じて法令の改正をはかり、「関西州」を樹立する。「州」の名に値するためには、自主課税権を持つこと、法律の上書き権を獲得すること、そして関西における諸大臣を設けることが目安となる。

まず、関西州を目指す議論と運動が盛り上がり、広く社会の理解を得ることが必要である。その上で、関西州の成立が成功を収め、そして全国に道州制への機運が高まることを期待する。

 

 

 

■道州制ウイークリー(142)2019年3月30日

◆新しい自治制の時代へ(関西州ねっとわーくの会)

激動する世界の中で、日本は発展か、衰退かの岐路に立っています。

国の再生と安定した社会基盤づくりには強靭な経済力が必須要件です。そのためには経済発展を展開する思い切った大地域圏を形成し、地域力を結合させなければなりません。経済拠点である大都市連携を包括するには、細切れの47都道府県から広域行政体への再編が必要です。大地域圏は少子高齢化による人口減少時代や経済社会の広域化にも対応し、競争力のある強い地域圏を形成する「広域行政経済圏」です。これが新しい自治の姿である「州制度」です。世界は今、メガリージョン(大地域圏)の時代です。

大地域圏「州」は、国主導型ではなく、連邦制でもなく、地域の自治による広域自治体です。各州で産業経済特区を形成し地域戦略を展開、公民学共同の産業技術総合研究センターを設置して一極集中ではない多軸、多様な高度技術研究開発を牽引し、さらに全国一律最低賃金の引き上げを段階的に行って地域格差是正をめざす改革です。府県再編、行政改革により行財政の効率化を図り、高齢社会を支える巨額の財政需要に対応していきます。州は広域地域戦略の司令塔となり、地域社会保障の基盤を強化、地域共同体が連なる新しい国づくりにつなげていきます。

州が大地域圏の広域行政を担う一方、現在の府県地域内に関わることは新たな中間的機関を設けず、関係市町村による広域連携部門を設置し、その地域に応じた施策をすすめていくのが望ましいでしょう。

新元号となり、2020東京五輪後の国策として、新しい国のかたちへ転換し、課題解決、改革へ進める時です。もはや「課題先送り」はできません。

 

道州制ウイークリー(134)~(137)

■道州制ウイークリー(134)2019年2月2日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ①

(関西経済同友会緊急アピールより)

関西経済同友会地方分権改革委員会は2018年7月に「関西州」を樹立し、地方分権の先駆けとなるべきという緊急アピールを発表しています。以下がその全文です。

2010年、関西では、地方自治体として「関西広域連合」が誕生し、府県をまたぐ広域業務に一定の成果を挙げてきた。しかし、府県の権限を持ちよる現在の組織や仕組みでは、機能を発揮するのに限界がある。とりわけ、府県の壁を越えた広域的なシナジー効果を発揮すべき産業振興政策を十分に打ち出せていないことに対して、その打開に向けては、政策決定に関する現状の権限や責任の抜本的な見直しが必要である。また広域連合委員会委員の出欠状況を見る限り、各委員が議論を積み重ね前進している状況とは言い難く、改善が必要である。

現在、「関西広域連合」では「広域行政のあり方検討会」が設置され、広域連合の役割や執行体制も含めた今後の方向性について、活発な議論が続けられている。

メガリージョンとしての世界との競争に勝ち、関西・日本が発展を遂げるためには、「関西広域連合」は、新しい責任と権限を拡大し、経済発展や持続可能な社会の構築等に前向きかつ実験的に取り組むべきである。また、デジタル技術の活用による、行政の効率化、政策の実効性評価、市町村の行政サービスバックアップを主導すべきである。そして近い将来委には、「関西州」を樹立し、地方分権の先駆けとなるべきである。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(135)2019年2月9日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ②

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州を目指すべき理由・1>

①インフラ整備や経済産業政策、医療福祉、各種保険など関西圏が一体となって取り組むことで、効率がよくなり成果が上がる。現在ように府県と出先機関がそれぞれ独自に取り組む体制は非効率である。

②関西圏全域を見渡した中で「全体最適」を目指して戦略的に投資ができる。「選択と集中」も可能になる。

③各府県の経営資源(公設試験所や支援機関、研究機関など)が有機的に一体化する中で、シナジー効果が生まれ、総合力を発揮できる。「知恵の囲い込み」がなくなる。例えば、研究機関から事業化まで橋渡しをする機能が格段に向上する。

④出先機関が自治体として一体化する中で、縦割り行政の弊害を極小化できる。住民に身近な存在となる中で、縦割りとならないよう住民の監視が効く。

⑤予算の執行にあたり投資効果をより厳格に見極める態勢になる。財政規律が働きやすくなる。

 

⑥から⑪までは次回に掲載

 

 

 

■道州制ウイークリー(136)2019年2月16日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ③

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州を目指すべき理由・2>

⑥自らの圏域(関西)のことを、「わが事」として自ら考え、自らがその結果責任を負うことにより、意欲が高まり、潜在能力が発揮される。関西のことをよく知っている人たちが政策立案に携わることにより、より関西に適した政策を遂行できる。

⑦全国一律に実施することが難しい政策を実験することができる。成功すれば、全国展開すればよい。失敗してもダメージは少ない。たとえば、ビッグデータを行政に活かすなど、デジタル技術の高度利用を実験していくべきである。

⑧関西という市場圏の中で、地産地消など互恵的な取り組み(生産・消費・流通・交換・融通など)が生まれやすくなり、新たなビジネスが生まれる。

⑨関西が反映することで、東京一極集中の各種リスク(災害リスク等)を分散できる。

⑩世界的な都市間競争を勝ち抜くためには府県単位の産業政策では不十分。また、国の政策では地域の独自性を活かせない。「関西」程度の大きな戦略を立案・推進していく自治体(=関西州)が不可欠。

⑪地方分権の必要性が主張されてから幾久しい。一定の地方分権は進んだが、目指す姿には程遠い。多くの地方が中央集権体制に順応してしまっている現在、全国一律に地方分権を進めたり、道州制を導入することは不可能である。関西にて、実験的に分権し、関西が地方の力を発揮して見せることで、全国への波及を期待する。

 

 

 

■道州制ウイークリー(137)2019年2月23日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ④

(関西経済同友会緊急アピールより)

緊急アピールは、具体的には次の様な姿を目指すべきと考える。

①府県を存続したうえで、関西広域連合を関西州に衣替えする。

②関西州は広域産業政策、広域インフラ整備につき、独自の調査・立案・調整・実行機能を持つ。

③関西州は、デジタル技術を行政に高度利用し、府県・市町村をサポートして、住民サービスの向上をはかる実験のプラットフォームとなる。

④②を満たすため、関西州と関連する地方出先機関とを融合、統合する。

⑤関西州が権限、財源を持てるよう、議員は公選とする。首長も選挙(互選など)で選ぶ。

道州制ウイークリー(134)~(137)

■道州制ウイークリー(134)2019年2月2日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ①

(関西経済同友会緊急アピールより)

関西経済同友会地方分権改革委員会は2018年7月に「関西州」を樹立し、地方分権の先駆けとなるべきという緊急アピールを発表しています。以下がその全文です。

2010年、関西では、地方自治体として「関西広域連合」が誕生し、府県をまたぐ広域業務に一定の成果を挙げてきた。しかし、府県の権限を持ちよる現在の組織や仕組みでは、機能を発揮するのに限界がある。とりわけ、府県の壁を越えた広域的なシナジー効果を発揮すべき産業振興政策を十分に打ち出せていないことに対して、その打開に向けては、政策決定に関する現状の権限や責任の抜本的な見直しが必要である。また広域連合委員会委員の出欠状況を見る限り、各委員が議論を積み重ね前進している状況とは言い難く、改善が必要である。

現在、「関西広域連合」では「広域行政のあり方検討会」が設置され、広域連合の役割や執行体制も含めた今後の方向性について、活発な議論が続けられている。

メガリージョンとしての世界との競争に勝ち、関西・日本が発展を遂げるためには、「関西広域連合」は、新しい責任と権限を拡大し、経済発展や持続可能な社会の構築等に前向きかつ実験的に取り組むべきである。また、デジタル技術の活用による、行政の効率化、政策の実効性評価、市町村の行政サービスバックアップを主導すべきである。そして近い将来委には、「関西州」を樹立し、地方分権の先駆けとなるべきである。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(135)2019年2月9日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ②

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州を目指すべき理由・1>

①インフラ整備や経済産業政策、医療福祉、各種保険など関西圏が一体となって取り組むことで、効率がよくなり成果が上がる。現在ように府県と出先機関がそれぞれ独自に取り組む体制は非効率である。

②関西圏全域を見渡した中で「全体最適」を目指して戦略的に投資ができる。「選択と集中」も可能になる。

③各府県の経営資源(公設試験所や支援機関、研究機関など)が有機的に一体化する中で、シナジー効果が生まれ、総合力を発揮できる。「知恵の囲い込み」がなくなる。例えば、研究機関から事業化まで橋渡しをする機能が格段に向上する。

④出先機関が自治体として一体化する中で、縦割り行政の弊害を極小化できる。住民に身近な存在となる中で、縦割りとならないよう住民の監視が効く。

⑤予算の執行にあたり投資効果をより厳格に見極める態勢になる。財政規律が働きやすくなる。

 

⑥から⑪までは次回に掲載

 

 

 

■道州制ウイークリー(136)2019年2月16日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ③

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州を目指すべき理由・2>

⑥自らの圏域(関西)のことを、「わが事」として自ら考え、自らがその結果責任を負うことにより、意欲が高まり、潜在能力が発揮される。関西のことをよく知っている人たちが政策立案に携わることにより、より関西に適した政策を遂行できる。

⑦全国一律に実施することが難しい政策を実験することができる。成功すれば、全国展開すればよい。失敗してもダメージは少ない。たとえば、ビッグデータを行政に活かすなど、デジタル技術の高度利用を実験していくべきである。

⑧関西という市場圏の中で、地産地消など互恵的な取り組み(生産・消費・流通・交換・融通など)が生まれやすくなり、新たなビジネスが生まれる。

⑨関西が反映することで、東京一極集中の各種リスク(災害リスク等)を分散できる。

⑩世界的な都市間競争を勝ち抜くためには府県単位の産業政策では不十分。また、国の政策では地域の独自性を活かせない。「関西」程度の大きな戦略を立案・推進していく自治体(=関西州)が不可欠。

⑪地方分権の必要性が主張されてから幾久しい。一定の地方分権は進んだが、目指す姿には程遠い。多くの地方が中央集権体制に順応してしまっている現在、全国一律に地方分権を進めたり、道州制を導入することは不可能である。関西にて、実験的に分権し、関西が地方の力を発揮して見せることで、全国への波及を期待する。

 

 

 

■道州制ウイークリー(137)2019年2月23日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ④

(関西経済同友会緊急アピールより)

緊急アピールは、具体的には次の様な姿を目指すべきと考える。

①府県を存続したうえで、関西広域連合を関西州に衣替えする。

②関西州は広域産業政策、広域インフラ整備につき、独自の調査・立案・調整・実行機能を持つ。

③関西州は、デジタル技術を行政に高度利用し、府県・市町村をサポートして、住民サービスの向上をはかる実験のプラットフォームとなる。

④②を満たすため、関西州と関連する地方出先機関とを融合、統合する。

⑤関西州が権限、財源を持てるよう、議員は公選とする。首長も選挙(互選など)で選ぶ。

道州制ウイークリー(130)~(133)

■道州制ウイークリー(130)2019年1月5日

◆地方創生の起爆剤としての「地方庁」構想

(山崎史郎・小黒一正編著『どうする地方創生』より)

平成の時代は戦後に築き上げた様々な仕組みが時代や環境変化に適応できず、漸進主義的で、抜本改革が進まず、もがく「30年」だった。特に人口減少への対応は、財政・社会保障改革を含めて「道半ば」だ。この大きな理由は何か。

人口増加で高成長の時代には、政治は成長で増えた富の分配を担うことで大きな力を発揮したが、人口減少で低成長の時代に突入して以降、政治の役割は「正の分配から負の分配」に急速に転換しつつあるものの、それに対応できない政治が機能不全に陥りつつあるからではないか。地方自治体や民間に問題を解決する知恵があっても、中央官庁の縦割りの規制や政治的利害が絡み、身動きがとれないケースも多い。

この脱却には、中央省庁が担う政治的な調整コストの一部を分散化する仕組み、すなわち道州制を含む地方分権が必要であり、その鍵を握るのが(広域地方計画を含む)国土形成計画やその基礎となる「地方庁」(仮称)の創設であると考える。

「国土形成計画」や「広域地方計画」では、集約エリアの指定や選択の集中の数値目標を定め、地方庁がその決定や道州制移行の受け皿となる機関として機能する。地方庁は各エリアの地方自治体のほか、各省庁の地方支分部局も束ねる機関で、道州制への移行も視野として、各エリアに地方庁を新設し、各地方庁にはそのエリアの知事と地方長官から構成される「コミッティー」を設置する。このコミッティーは、国の経済財政諮問会議に相当するものとし、各エリアの知事が様々な提案を行いつつ、それを地方長官が総合調整を行い、取りまとめる形で広域地方計画を定める。

 

 

■道州制ウイークリー(131)2019年1月12日

◆道州制移行、2035年頃を目標に

(山崎史郎・小黒一正編著『どうする地方創生』より)

地方庁の「コミッティー」では、広域地方計画を各エリアにおける「骨太方針」の様な位置づけに改め、地方庁は、国の予算編成や規制改革などと連携しつつ、各エリアの規制改革や予算編成も同時に方向づけるものとする。そのため、以下の政策についても推進する。

一つは、「地方交付税の分権化」。現在、地方交付税の配分基準は総務省が定めているが、地方交付税の一定割合(例:30%)を人口比で地方庁に移譲し、各地方庁が独自の配分基準で、各エリア版の地方交付税や広域地方計画に沿った一括交付金等として、各エリア内の地方自治体に配分する仕組みに改める。もう一つは、「規制改革の分権化」も進める。地方庁にも規制改革の法改正案を作成・提案する権限を付与し、当該法案は内閣府が地方庁の代理で法令協議を行ったうえで、国会に提出できる仕組みに改める。

急激な人口減少・超高齢化がもたらす影響が顕在化し本格化するのはこれからが本番であり、その現実を直視し、果敢に選択と集中をしない限り、日本に未来はない。その鍵を握るのが国土形成計画(広域地方計画を含む)や地方庁(仮称)の創設であり、地方創生の起爆剤として機能するはずだ。可能であれば、2035年頃を目標に道州制に移行する政治的なコミットメントを行い、新たに道州議会を設置するシナリオや工程表も同時に定めてはどうか。いま日本の叡智が試されている。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(132)2019年1月19日

◆道州制は国家統治のあり方を変える

(田村秀著『地方都市の持続可能性』より)

道州制の導入となれば、それは国家統治のあり方そのものの変革である。国の出先機関の業務を大幅に道州に移譲してスリム化した国は、グローバル化が進展する中で、国際社会において真に自立した国家としての役割を果たすべく、外交や安全保障などに総力を注ぎ込むことがその本務となる。国際情勢が激しく変化する中で、国の役割を重点化し、内政に関することは基本的には道州と市町村に任せ、真の意味での分権型社会を構築することが道州制導入のそのものの狙いである。

内政の要となる道州は、住民に身近なサービスを市町村に委ねつつ、高度なインフラ整備や経済産業振興、国土・環境保全、広域防災対策など、地域の実情に応じた広域的な行政需要に的確に対応することが可能となる。特に、人口減少社会の中で地域の活力を維持・向上させる観点から、自立的で活力ある圏域の実現に資することが期待されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(133)2019年1月26日

◆甦る道州制論議?

(田村秀著『地方都市の持続可能性』より)

道州制に関する論議は歴史を紐解けば明治から脈々と続けられてきたものではある。1945年に戦時下にできた地方総監府は全国を8つに分け、戦時行政を遂行するための組織だったが、我が国において唯一実現された道州制という評価もある。さらには2006年に道州制特区推進法が制定され、北海道を全国に先駆けた道州制のモデルとして特別な区域にしようとする道州制特区を定めている。

様々な動きがこれまであった中で、今後、道州制に向けた動きは進んでいくのだろうか。道州制が実現すれば、ただちに人口増に転じるといったことは考えられない。一定の産業振興は期待されるが、自治体の形を変えればすぐ成果が上がるといった期待は禁物である。

だが、2045年の人口推計に見られるように、地方ではもはや県ですら、その存在意義が問われるくらいに人口減少となるかもしれない、そうなると単独で行政を行えるのか、疑問の声が上がり、これを契機に一定程度道州制論議が進むということは考えられる。その可能性が一番高いのは高知県や島根県である。人口減少が進むことで広域自治体としての役割を果たせなくなり、周辺の県と合併し、さらには中国、四国、あるいは中四国といった大括りの広域自治体に変えていくことも起こり得るかもしれない。もともと、市町村合併だけでなく、都道府県の合併ということは地方自治法の中で手続きが定められている、想定内のものである。もしかすると、全国一律に、というのではなく、厳しい状況になった地域から順次という流れの中で道州制が実現するかもしれない。

道州制ウイークリー(125)~(129)

■道州制ウイークリー(125)2018年12月1日

◆最小の経費で最大の効果の実現

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

地域経済の活性化によって税源を大きくすることが重要だが、同時に自治体内部の行財政運営の効率化によって財源を捻出する努力も必要だ。地域経済の活性化と地方行政改革は地方創生の両輪である。

財政健全化への自治体の取り組みによって赤字団体数が減少するなど、地方財政は改善の兆しをみせている。しかし、財政健全化への取り組みの多くは緩い財政規律によって生まれた過去のツケの返済だ。地方財政健全化法は行財政運営に規律を与えようとするものだが、財政の収支尻を合わせることが真の財政再建ではない。

行政の非効率性を改善することを目的に1980年代以降、欧米諸国ではニュー・パブリック・マネジメントの考え方使われるようになり、実践されてきた。その中心となる考え方は、公共部門においても民間企業と同様の経営手法を取り入れるべきということである。

「最小の経費で最大の効果」という課題を実現するためには、次の2つの効率性が満たされなくてはならない。第1は、限られた地域資源を最も有効に活用して、住民に提供できる行政サービスを最高の水準にまで高めるという「生産の効率性」である。真っ先に思い浮かぶのは行政サービスの外部委託だ。

第2は、住民ニーズに合った行政サービスの組み合わせを選ぶという「配分の効率性」である。今日の組織別・性質別(人件費、補助費等)に編成される予算は、高度経済成長期のように税の自然増収が見込まれ、膨張する行政需要を取り込みながら組織の拡大や、職員数や予算の増分を行えた時代には意味があった。

現在の地方行政が抱える最大の問題は、行政サービスの便益と費用の捉え方が適切でないことだ。資源の効率的利用を図るためには政策目標を具体的に示すとともに、行政サービスの供給にかかる費用を計算することによって「事業の評価」を実施することなど、科学的な政策形成ルールを確立しなければならない。

■道州制ウイークリー(126)2018年12月8日

◆広域連携は地方創生の必須戦略

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

人や企業の経済活動が行政区域を超えて広がっているにもかかわらず、各自治体が近隣自治体と競合するような政策を単独で行うことは、政策効果を減殺するどころか、共倒れになる可能性も大きい。各自治体が強みを発揮できる政策に重点的に資源を投入し、他の自治体と一体となって圏域全体で多様性と規模の経済性を発揮する道を模索すべきである。大競争時代に生き残るためにも広域連携は必須戦略である。

地域経済の成長にとって特に重要な要素には、地域に産業が集積することによって生産能力が高まったり、輸送コストや情報コストが軽減されたりすることによって、産業活動の効率が良くなるという「集積の経済」がある。集積の経済を地域が手に入れるためには、経済活動が相応の規模を持たなければならない。

東京一極集中が進むなかで、首都圏以外の大都市圏が日本経済の牽引役を維持するためには、働く場を提供する大都市と居住の場を提供する郊外部との連携強化こそが大都市圏の広域連携のポイントである。企業のビジネス活動と、それを支える労働者の生活は不可分であり、大都市と周辺都市とがビジネスと生活という機能において補完関係を維持することが、大都市圏の広域連携の最も重要なポイントである。

大阪市には毎日100万人を超える人々が通勤や通学目的で市域外から流入しているし、名古屋市でも昼間流入人口は50万人弱に上る。大都市圏においては中心都市と周辺都市のどちらが欠けても地域は衰退する。

 

 

 

■道州制ウイークリー(127)2018年12月15日

◆広域連携、ライバルはパートナー

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

かつて道州制が大きな議論となったが、「なぜ道州制なのか」という機能論よりも、道州の「区割り案」が大きな関心を呼んだ。区割り案は道州制に何を期待するかによって決まるはずである。にもかかわらず、時代に合わなくなった府県制の改革、国からの権限移譲の受け皿づくり、地域経済政策の実施の広域化など、道州制にはさまざまな期待が錯綜し、ここに決着をつけないままに道州制論議が進んだこともあって、区割り案の議論がクローズアップされてしまった。圏域設定は広域連携に何を期待するかを決めてから議論すべきテーマだ。

国、地方ともに財政が厳しい現在、限られた資源を有効に活用するためには公共投資の重点化が不可欠である。その第1のメリットは、社会資本の有効活用が可能になることである。同種の小規模な施設を複数建設するよりもグレードの高いものができ、集客力がアップする。また、広域からの利用があるため、施設の稼働率を上げることもできる。第2は建設費・運営費の節約である。第3は地域(圏域)の中核施設づくりが可能になることである。第4は地域のイメージアップにつながることである。

「京都・大阪・神戸」、「富山・金沢・福井」、「福岡・北九州」、これらはライバル関係にあると考えられる都市だ。これからの時代、圏域内でライバル関係あるいは競争相手であった「まち」が手を結び、大きな相手に立ち向かうことが求められる。そのロジックは、「私の競争相手の競争相手は友達」である。1つの圏域に「核(コア)」が1つである必要はない。むしろ、既存の町が連携して1つの圏域を作り上げ、ポテンシャルを高めることが多くなっている。

 

 

 

■道州制ウイークリー(128)2018年12月22日

◆東京一極集中を抑える

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

東京一極集中の勢いを弱めない限り、地方がいくら努力しても激流に流される可能性が高い。「東京集中は市場のなせる技であり、ストップをかけてはいけない」という主張は本当に正しいのだろうか。市場以外の要因、とくに制度的要因が東京一極集中を促してはいないか。もし、こうした要因が存在するなら修正すべきだ。ヨーロッパでは現在、グローバル時代において国の競争力を強化するためにも、首都以外の都市とくに第二階層都市を活性化させることが必要だとする認識が強まり、都市政策に影響を与え始めている。東京一極集中の原因と問題を検証するとともに、地方創生の環境整備として東京一極集中を抑える勇気を持つべきである、

東京への人口集中は2010年代には29.2%に達し、ニューヨークの7%やパリ、ロンドン、ベルリンなどを大きく上回っている。先進国の中で1つの都市にこれほど集中している日本は異例である。「東京一極集中は日本全体の活性化のために不可欠だ」という考え方に落とし穴はないか。問題点の①は高コスト体質の固定化、②は混雑による「負」のコストである。①高コストでは、東京のオフィス賃貸料、地価、賃金は極めて高く、2014年になると、高賃金を高い生産性でカバーするというメリットが失われた。②負のコストでは、東京に人や企業が移動することで、すでに立地している企業や既存住民に対して混雑のコストが及ぶ可能性である。

情報インフラ整備による問題点もある。情報ネットワーク形成による地域の均質化で、全国各地を東京色で塗りつぶしてしまう可能性である。地方で生れた情報は「ストロー現象」によって東京に吸い上げられ、地方間の横のネットワークが形成されていない。既成が多い日本では中央集権という日本型行財政システムが東京一極集中の要因の一つとなっている。

 

■道州制ウイークリー(129)2018年12月29日

◆分権改革は地方創生の環境づくり

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

本来、地方あってこそ国のはずであるが、日本では「国あってこその地方」と考えられ、地方は国が描いた設計図にしたがって地域づくりを行ってきた。現在でも国に依存する地方の体質が残されたままだ。地方分権改革は住民ニーズに沿った行政サービスを提供するためだけのものではない。地域の問題に地方が主体的に取り組むための環境を整えることによって、地域力を強化するための地方分権改革が求められている。

グローバル時代は国境を越えて地域と地域が競い、一方で連携することが求められている。しかし、国の役割が消滅するわけでなく、新しい時代にふさわしい地域政策のパラダイムが求められている。旧パラダイムは停滞地域を補助金などの財政手段で支援するという格差是正型であり、国が中心となって再分配政策を実施するものであった。これに対して新しいパラダイムは地域のポテンシャルを掘り起し競争力を強化することを目的としている。

都市重視の地域政策は先進国のトレンドとなっているが、都市が持つ資源を十分に活用し、その特性を踏まえた政策を実現するために地方分権改革が進んでいる。地域経済成長にとって重要な役割を果たすイノベーションは、地域にとって外から与えられる外生的なものばかりでなく、地域内で生み出される内政的な部分もある。イノベーションにおいて安定的なマクロ経済情勢、税制や規制といった公共政策など、企業が活動しやすい環境を創造するための国レベルでの取り組みが重要であることはいうまでもない。しかし、異なった技術と資源の融合に必要な企業の集積、生産物の開発に伴うリスクの負担、研究・開発、企業間の取引は地域で行われるのであり、地方レベルでの取り組みが重要である。地域政策のパラダイムを変化させ、「地方が元気になってこそ、国も元気になる」という当たり前の考え方に立ち戻ることこそが重要。地方分権は地方創生の環境整備であり、成長戦略の効果を上げるためのものと位置付けるべきである。

道州制ウイークリー(120)~(123)

■道州制ウイークリー(120)2018年11月3日

◆域外から稼げる産業を育成

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

これまで地方の経済を支えてきた公共事業が地域経済の構造改革につながらなかったことは歴史が証明している。地方経済が再生するためには、域外から稼ぐことができ、持続可能で、かつ導入しやすい産業の育成を進めなければならない。公共投資という景気対策に過度に頼った地方の経済は自立型の経済構造を実現できず、むしろ、公共投資依存体質が地域の自立的発展を阻んできたともいえる。

80年代に入ると、国家財政の危機によって公共投資が抑制され、行政投資の地方圏シェアが縮小していく。すると、地域間の所得格差が大きくなり始める。90年代に入るとバブル経済は崩壊し、景気対策としての公共投資が大幅に増加するとともに、地方圏のシェアは拡大に転じ、それに応じて地域間格差は縮小している。2000年代に入ると、国の財政再建によって公共投資予算が再び削減されるようになると、地域間格差が拡大に転じる。このように、所得の地域間格差は行政投資の地域配分に左右されてきたといえる。今後、公共事業予算が大きく増加することは期待できない。このことは、地方の経済が財政に頼らない構造に変わらなければならないことを意味している。

域外(国外)にモノやサービスを売ることによって稼いできた産業の衰退が地元経済に大きな打撃を与えた事例は日本のいたるところに存在する。逆に考えるなら、域外から稼げる産業が育つことで地域経済が好循環的に成長する可能性があるということだ。このような産業(企業)が育つと、そこにサービスや資材を提供する産業が育ち、従業員向けの飲食店等も活気づく。それでは、地域に導入しやすい産業、中長期的に持続可能な産業とは何か。地域に導入しやすい産業はその産業が必要とする資源、人材、交通条件等の点で、他地域と比べてその地域が優位にあるような産業でなければならない。

 

 

 

■道州制ウイークリー(121)2018年11月10日

◆農村振興のアプローチ

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

農村地域において人口減少と高齢化は著しく、このままでは地域の持続可能性が危ぶまれる。しかし、農村部の振興というと、農業、自然、都会からの移住というステレオタイプのキーワードが出てくる。今や農村地域の進行は農業や自然のみを売りにする時代ではない。これまでの取り組みは農業政策以外の地域振興策との調整が十分でなく、政策効果が発揮されなかった。

地方分権改革を背景として英スコットランドでは様々な政策が展開されている。農村地域の発展政策もその一つで、農村地域におけるコミュニティのポテンシャルを発展させることによって、スコットランド全体の成長に結びつけようとしている。スコットランド政府は2011年に「農村の未来」を提出、そこでは、ハイスピード・ブロードバンドの整備、手ごろな価格の住宅供給、公共交通の充実、健康管理サービス、土地利用のあり方、コミュニティ間の連携強化、コミュニティ発展のための地域リーダーの能力とスキルの向上など、農村地域の発展戦略が示されている。

その背景には明確な発展戦略ビジョンが存在している。①多様な経済とアクティブなコミュニティを持つ、外向的でダイナミックな農村地域を創造すること ②所得と雇用を創り出すように地域の資産をコントロールし、地域サービスを供給しながら、コミュニティが自信をもって多様な成長を遂げること ③若者が自分の育った場所でキャリアを積み、豊かな未来が送れるチャンスをもつことなどで、その成果は着実に現れている。

わが国の地域活性化戦略の問題は、様々な政策が提案され、効果の分析や優先順位づけをせずにメニュー化され、プロジェクト提示前に将来ビジョンと地方戦略プランの策定が不十分なことにある。

 

■道州制ウイークリー(122)2018年11月17日

◆地方なればこその「地方経済開発戦略」

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

近年,地域経済政策で注目を集めているのが、「地方経済開発」。国レベルでの経済政策を補完するものとして地方のレベルで行われるミクロ経済政策のことである。しかし、これまでの経済政策の単なる地方版ではなく、地方なればこその開発を組織的・体系的に実施することに重要な意味がある。

地方経済開発において重要なことは、これまでの国土政策や地域政策のように公共部門が中心となって開発戦略を立てるのではなく、自治体(国)、企業、非政府部門がパートナーとして対等の立場で地域経済成長と雇用増のための条件を共同で創り出すことである。従って、その場しのぎの対処療法であってはならない。

世界銀行が2006年に発表した報告書では、地方経済開発戦略を成功させる5つの原則を示している。①は経済問題だけでなく、社会、環境等の問題も包合した統合的アプローチを取り入れること。②は関係するすべてのパートナーがビジョンを共有し、パートナーの総力で戦略を注意深くつくりあげること。③は戦略が非公式経済にも配慮すること。④は幅広のプロジェクトを視野に入れ、採用すること。ただし、多くのプロジェクトを同時並行的に実施するということではなく、「選択」と「集中」が原則。⑤は他のパートナーやステークホルダーからの信頼が大きく、ステークホルダーをまとめ上げる能力を持った行動力のあるリーダーが存在することである。

戦略計画がうまくいかなかった原因として、6点を指摘している。①政治的な要因であり、戦略において重要なカギを握るグループを排除してしまうこと、②プロジェクトの責任者がチーム内で大きな役割を果たしていないこと、③戦略的な思考に欠けていること、④資金、調査研究、モニタリング、評価が不適切なこと⑤補助金獲得が目的になっていること、⑥最新の流行を追いかけがちなこと。地域の活性化は目標を羅列するのではなく、組織的かつ体系的に計画を立てるプロセスこそが大切なのである。

■道州制ウイークリー(123)2018年11月24日

◆自治体経営のあり方

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

地方が創生を果たし持続的発展を遂げるためには、自治体を含むコミュニティが新たなインキュベーター(支援者)として機能したり、既存の産業を発展させたりする芽が地域に内在し、それに依存して発展することが不可欠である。自治体は行政サービスを効率的に供給するという従来型の課題に対処するだけでなく、政策プランナーとして企業家主義的な政策アプローチを身につけなければならない。

これまでにも多くの自治体が工業団地を整備し、加工組立型の大規模工場の誘致合戦を展開してきた。しかし、多くの場合、工場誘致それ自体が目的化し、地域振興のゴールであるかのように考えられた。また、これまでに自治体が行ってきた産業政策は、企業誘致を別にすれば既存産業に対する保護政策的な色彩が強いもの、あるいは多くの自治体がすでに行っているものの模倣が多い。

地方が持続的発展を遂げるためには、自治体を含むコミュニティが魅力ある生活環境を築くとともに、新たな産業のインキュベーターとして機能しなければならない。それは、自治体が従来の行政の守備範囲のなかで効率性をめざした「自治体経営」から、経済・産業、福祉、文化、教育などに関連する様々な資源を組み合わせることによって、人々が「住みたい」「住み続けたい」と思い、企業が「ここをビジネスの拠点にしたい」と考える地域を創るという意味での「地域経営」への転換ともいえる。

地域プロモーションに「ひな形」はない。にもかかわらず現実には、金太郎飴のような街並みや、類似した戦略が各地で見られる。地域間競争が激しさを増しているなかで、定型的なモデルに依存したり、他地域の成功事例を模倣したりするだけなら、例えば「わが町はどこよりも多くの補助金を支給する」といった量的競争に陥ることになる。地域経営というのは自治体運営の改革であり、マネジメントの改善である。

道州制ウイークリー(108)~(111)

■道州制ウイークリー(108) 2018年8月4日

◆日本再生8州構想2018年版(関西州ねっとわーくの会)①

関西州ねっとわーくの会は、今年設立10周年となり、2018年版道州制リーフレット「新しい国のかたち 日本再生8州構想」を発行しました。

日本を再生させるのは大地域行政経済圏(メガ・リージョン)の創設による自立的な多極発展にあり、その司令塔は「州」であるとアピールしています。人口減少、経済社会の広域化が加速する転換期、府県の時代から「州の時代」へ日本をリセットし、未来を開いていく時が到来していると考えています。

大転換期の日本

日本は大きな転換期に立っています。

人口減少と高齢化、社会保障費増大、経済の縮小、地域間格差、進まぬ財政健全化・・・。

高まる将来不安の第一は人口減少の加速です。2040年の人口は1億1091万人と予測され、今より1618万人減少、関西では330万人が減少します。65歳以上が国民の36%の3800万人になり、働き手の生産労働人口は1751万人減少、関西圏では304万人が減少します。働き手の人口減少率は約22.6%にもなります。

社会の根幹を揺るがす事態です。産業社会の変革は当然ですが、この減少率なら行政も激変、公務員は332万人から約75万人減り、256万人になります。国と地方自治体の改革は必至です。

 

 

■道州制ウイークリー(109) 2018年8月11日

◆日本再生8州構想2018年版(関西州ねっとわーくの会)②

輝く大地域圏メガ・リージョン

目指す地域の姿は大都市を核に半径100キロ程度の大地域行政経済圏です。地域活性、経済再生、国際競争力を維持していくのは、国単位ではなく、機動的に動ける「地域」です。世界は「メガ・リージョン」の時代です。

大都市の所得、税収を圏域内の中小自治体に循環させることも可能になります。

人口増と高度経済成長を前提にした国主導の戦後システムはすでに崩壊しました。「自ら地域を創る」という地域経営が原動力となります。「国を頼らず、国を支える」という気概で輝く大地域圏を創らなければなりません。

 

■道州制ウイークリー(110) 2018年8月18日

◆日本再生8州構想2018年版(関西州ねっとわーくの会)③

時代遅れ 中央集権の府県制

交通通信の進展、県境を越えて広域化する地域経済社会圏。山積する広域課題、そして東京一極集中の一方で沈滞する地方。細切れの府県体制で財政基盤も弱く、地域解決力が不足。地方はいまも国依存体質。状況は一向に改善していません。中央政府が全国一律・画一的に政策決定する明治以来の中央集権は制度疲労を起こしています。すでに時代遅れの制度です。危機管理からも東京一極集中は危険な状況です。この「日本衰退スパイラル」を断ち切らなければなりません。

 

 ■道州制ウイークリー(111) 2018年8月25日

◆日本再生8州構想2018年版(関西州ねっとわーくの会)④

地域が財政を握る

地域の自立には、自主財源の確立が要です。国頼みの補助金行政から脱却、地方の裁量度を高めることが必要です。予算獲得のための陳情政治から自前財源による政治へ変わらなければ、いつまでたっても地域自立は出来ません。

 現在の地方税収入比率は都道府県、市町村がともに歳入の32.6%で、いわゆる「3割自治」になっています。交付税比率は都道府県が17.2%、市町村では15.3%です。まずは、税源の地方分を増額することから始まります。新しい財政配分は国30、州30、市町村40%の地方重視に改革します。各州間には、なお財政格差の可能性があり、州間の財政調整は国が行います。国税の10%を共同税として州間調整財源とします。消費税、酒税の地方税化も課題となります。

◆道州制による財政削減効果は14兆円

NPO法人「地方自立研究所」の算定では、行政経費、補助金の重複などの整理で、都道府県分で5兆円、市町村分で9兆円の計14兆円の削減が可能としています。