道州制ウイークリー(259)~(263)

           《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(259)2021年7月3日

◆日本再生のカギは30万都市経済圏④

(冨山和彦・田原総一郎『新L型経済』より)

◇東京から地方への分配が地方を衰退させる

 第二次安倍政権で地方創生を掲げたときに地方の首長たち、あるいは県知事たちは、国からもっとお金がほしいということを言っていたようだ。地方には金がないから結局、地方交付税という形で実質的には東京の税収を取るということになる。地方から人材が東京に集中していることのバランスを税の配分という形でバランスを取っているとも言える。だが、こうした構造がいいものとは言えない。

 首長だけでなく、今の古い世代の経営者は大半そうした発想で、いかにして行政からお金をもらうしか考えていません。田中角栄的な政策がその象徴ですが、基本的に日本の地方政治というのは、直接、間接と様々な形で中央から地方に事業なりお金をばらまく仕組みがたくさんあることでしょう。旧来のL型経済はいかに外の人にお金をもらうかという点に目が向けられていました。これは国全体でもそうで、外部から収入を得ないと経済は成長しないという、かつての加工貿易立国モデル、いわば重商主義的な発想から抜け出られない人が多い。

 国内においては、まだ東京にはお金があるので、そこから吸い上げて地方にばらまくという仕組みになってしまって、地方経済は維持できているわけですが 、東京の経済力を支えるグローバル企業がピンチになっている以上、このモデルは持続可能とは言えません。そして最大の問題は、地方に分配を続けることで地方で生産性を上げる努力をしなくなってしまうことにあります。

          《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(260)2021年7月10日

◆日本再生のカギは30万都市経済圏⑤

(冨山和彦・田原総一郎『新L型経済』より)

◇地銀ネットワークなしに地方再生はない

 地銀は多くの場合、融資先の企業と先代、先々代からつきあっていて、信頼関係を構築して内側に入っていますから、相手方の会社の何が問題かがよく分かっているケースが多い。彼らは何十回、何百回と顔を合わせているので、書類上でわかることの何百倍、何千倍という情報を得ている。地域の事情にも詳しいですから、どのような手続きを行えばプロジェクトが円滑に進むかを教えてくれます。

 地銀は債権者だから、地方で地銀から借りていない企業はほとんどない。むしろ、幹部を欲しがっている企業の多くは地銀がメインバンクだから、地銀と組んでしまえば、新しいニーズが生まれるし、地銀にとってもよいことが起きる。地銀の役割はすごく大事で、地方の個別の企業再生でカギを握っているのは、地銀です。地方の再生事業を地銀以外にやれるところはありません。行政はそんなことはわからないですから。行政は一つひとつの企業に足を運んでチェックなんかできないし、それこそ書類で見ているに過ぎない。

 本当に地域企業を救おう、地域を活性化したいというなら、地域にもともといる人たちのネットワークを使うしかないのです。地銀にもやはり課題を抱えています。一時期に比べ、明らかにお金も人もいなくなっています。東京でも地方でも曲がり角に来ており、地銀自身も自らの会社と事業のカタチの大改造を行うことで、競争力と持続性を確かなものにしていく必要があります。

           《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(261)2021年7月17日

◆一極集中から分権広域州制度へ①

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 社会は大きく変わりつつある。この1年、世の中を席巻したコロナ禍で大きく傷んでしまった日本、そして世界。その立て直しが大きな課題である。ここは底力を発揮して新しい国づくりをめざさなければならない。コロナ禍に翻弄された日本だが、それを契機に学んだこともある。一つは三密都市「東京」に依存しなくても仕事や生活が成り立つということだ。いま地方移住への関心が高まっている。在宅勤務やテレワークなどを経験し、ゆとりある暮らし、新しい働き方への意識変化が高まっている。脱東京の動きだ。

 これまでは、この国の発展を中央集権による一極集中と、大都市一極集中による効率北に求めてきたが、そのやり方はもう限界にきている。いまこそ脱東京、脱中央集権の国づくりだ。筆者は次の三つを柱に、この国のあり方をリセットすべきだと考える。一つ目は、道路、鉄道、航空の三大高速網の移動を実質タダにするフリーパス構想を実現すること。二つ目は、大胆な規制緩和と地方主権改革を進め、各地における地域づくりの主体性を確立することだ。三つめは、47都道府県を廃止し10州程度の広域州にくくり直すことだ。州政府が内政の地域づくりの拠点として国づくりを競う。

 日本はこれから歴史上経験のない本格的な人口減少期に向かう。日本創生会議(2014年)の予測ではおおむね8000万人となっている。問題は、20世紀に膨れるだけ膨れた国と地方の政府機構、行財政の仕組みをどこまで賢くたためるかだ。

           《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(262)2021年7月24日

◆一極集中から分権広域州制度へ②

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 米国カリフォルニア州一州の面積しかない日本。その7割が山林地であり、可住地は3割程度に過ぎない。可住地の2割に満たない東京圏、名古屋圏、大阪圏に人口の半数が集まる。人口の地域的偏在で一番大きな問題が東京一極集中だ。東京圏は国土の0.6%だが、ここに国民の1割以上が集まっている。政治、行政、経済、情報、教育、文化など日本のあらゆる分野の高次中枢機能が集中している。GDPの2割、国税収入の4割、株式取引高の9割、本社7割、外国企業の5割、情報サービス業の5割、銀行貸出残高の4割、商業販売額の3割を占有、大学生全体の4割が東京圏に学ぶ。主要テレビのキー局、大手新聞、出版社もみな東京。この集中は世界でも突出している。

その果実は東京に一極集中し、地方は疲弊するだけの状況にある。大ぶりの改革に挑む必要がある。分権改革を進め地方主権体制を目指す、広域圏を州として内政の拠点にする、すでにある三大高速交通網の移動コストを公共管理で下げ、動きを流動化することだ。

時代は大きく変わった。人口大減少期に入った日本の行政はどうあるべきか、1府12省庁体制、47都道府県体制、1718市町村体制、そして何層にもわたる類似の出先機関があり、重複行政、重複機構があまりにも多い。この国を「賢くたたむ」改革に挑む時ではないのか。ここは第三者機関である「第三次臨調」を設置するタイミングとみるがどうか。

 

           《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(263)2021年7月31日

◆一極集中から分権広域州制度へ③

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 国と地方の関係を改めて見直す時期にある。民間にできることは民間で、地方のことは地方で――これは自由主義体制の国では常識。よく<自助><共助><公助>といわれるが、日本はいつの間にか<公助>が肥大化し、その<公助>も身近な自治体より遠い中央政府が仕切りるかたちに戻っている。地方分権が後退している。今回のコロナ禍対策は各知事が現場責任者である。だが、国が「特措法」のガイドラインとする「基本的対処方針」で箸の上げ下ろしまで指示する動きとなり、結果として国と地方の役割分担が不明確になった。全国一律、一つのモノサシでしか法制やその制度運営ができない。

 分権化には多様化した地域、多元化した住民のニーズに合うような多様なモノサシで迅速に対応できる、そこに価値がある。2000年改革で、税財源の集権構造の解体はできなかった。税金は国が6割、地方が4割集め、使う方は地方が6,国が4という「ねじれ」の仕組みが残存した。このねじれギャップを国が補助金、地方交付税で埋め合わせるという仕組みだ。その際、国はそのカネで地方の施策や事業内容、人件費などをコントロールする。その税財政の集権構造がいまも変わらず残っている。本来なら、地方は歳出6にあわせ6の税を集め、国は歳出4に合わせ税も4詰める。そのかたちが望ましい。ただ極端に地方と都市部の間に格差がある。財政調整はいる。地方交付金のかたちでその使い方は地方の自由に任せる。そうした北欧型の「分権・融合型」へのシステム転換が日本に合うはずだ。

道州制ウイークリー(250)~(254)

■道州制ウイークリー(250)2021年5月1日

◆地方分散型の国土づくり②(小磯修二『地方の論理』より)

◇首都直下型地震の危機

 政府の地震調査研究推進本部によると、今後30年以内におけるマグニチュード7,8クラスの地震発生率は、首都直下が70%、東海沖が88%、東南海・南海沖が60-70%と、非常に高い数値が示されている。これらの大都市圏地域には、国内のGDPの70%を超える生産機能があり、とりわけ首都東京には、国会や政府機関、大企業の本社・本店など行政、経済の中枢機能や大学等の高等教育機関が集中している。ミュンヘン再保険会社の世界大都市の自然災害リスク指数によれば、東京・横浜は世界主要50都市の中で最もリスクの高い都市となっている。

 首都を襲った大地震として、歴史的には1755年11月に発生したリスボン大地震が知られている。激震と津波でリスボンは壊滅し、大航海時代をリードしていた大国ポルトガルは首都機能が奪われ、それ以降は凋落の一途をたどっていった。

 今の日本社会には、目先の効率性を重視する政策がはびこり、それが首都に過度な機能集中を招いている。リスク分散の計画が進まないのは、集中させることが効率的であるという発想があるからだ。しかし、大規模災害のような非常時を経験すると、分散することで被害を低減する長期的な視点と効率性のバランスを考えざるを得ない。国づくりにおいても、平時と非常時を想定した、集中と分散のバランス感覚が大切であり、そのような視点で国のあり方を探る議論が必要であろう。

 

■道州制ウイークリー(251)2021年5月8日

◆地方分散型の国土づくり③(小磯修二『地方の論理』より)

◇分権型の国づくり

 地方の持つ多様な力を活かす国づくりのためには、大都市から地方への分散とともに、地方が主体的に政策をつくり、それを実施できる分権社会の仕組みをつくりあげていく必要がある。わが国では、90年代に地方分権改革が進められた。形の上では国と地方は、それまでの上下・主従の関係から対等・協力の関係に変わっていったが、実質的な権限の多くは中央に残されたままである。わが国が目指さす分散型、分権型の国づくりについては、欧州の経験の中に多くのヒントがある。フランスとイタリアはともにわが国と同じような中央集権型の国家であったが、1980年代以降は着実に産業政策分野を含めて大胆な地方分権を進め、それが経済発展を支えている。

 フランスの地方分権の取り組みで特に関心を引くのは、国の国土開発政策の管轄区域であった州(region)に時間をかけて権限移譲を進めて完全な地方自治体としたことだ。日本でいえば、九州、四国、東北のようなブロック単位で、完全な地方自治体をつくりあげたのだ。背景には、EU内での産業競争力を高めていくためには、機能的な広がりの単位で、地域の実態に合わせた要因に、分散型、分権型の国づくりに向けた政治の強いリーダーシップがあった。特にミッテラン大統領下では、思い切った州への権限移譲が進められた。そこにはパリに頼るだけでなく各地域の強みを活かしながら国全体で競争力を高めていかなければ欧州のなかで存在感を発揮できないという強い危機感が感じられる。

 

■道州制ウイークリー(252)2021年5月15日

◆地方分散型の国土づくり④(小磯修二『地方の論理』より)

◇地方の発想を活かす社会へ

地方で活動していると、中央がすべを決めるという社会の仕組みが、人々のモチベーションを阻害しているのではないかと感じることがある。「いくら頑張っても国のルールに合わなければ、ダメだ」というあきらめが潜在的なエネルギーを封印してしまっているようだ。地方の発想や思考を活かす社会に変革すれば、多くの人々のやる気を高め、その多様な力を国の活力につなげていくことができるだろう。

右肩上がりで成長を続けている時代は、中央が主導する画一的なルールに従っていれば、多少のほころびはつくろうことができた。しかし、本格的な人口減少の時代においては、限られた市場でより価値を高めていかなければいけない。また現場や地域の実態に柔軟に対応しながら解決していく多様な発想と思考の力が求められる。しかし、その挑戦は内外の各地域で実践されてきており、実はそこから多くのヒントを得ることができると感じている。「地方の論理」とは何かを考えると、それは抽象的な理論の構築ではなく、実践的な活動や挑戦の積み重ねから得られる多様な思想、発送、戦略を体系的に示していくことではないだろうか。

 

 

 

■道州制ウイークリー(253)2021年5月22日

◆地域衰退をどう食い止めるか①(宮崎雅人『地域衰退』より)

◇国による政策誘導をやめる

 地域衰退を食い止める方法としては、国による政策誘導をやめることである。「地方創生」も地域振興のための政策誘導の一つである。内閣府総合サイト「地方創生」によると、この政策は、人口急減・高齢化に対し、政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生することを目指しているとし、人口減少を克服し、将来にわたって成長力を確保し、「活力ある日本社会」を維持するため、「働く地域をつくるとともに、安心して働けるようにする」「地方のつながりを築き、地方への新しい人の流れをつくる」「結婚・出産・子育ての希望を叶える」「人が集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域を作る」という4つの基本目標と「多様な人材の活躍を維持する」「新しい時代の流れを力にする」という2つの横断的な目標に向けた政策を進めている。

 この政策の問題点は、第一に人口減少と地域経済縮小の克服を目指すという目標の達成の可能性とその結果の評価についてである。地方創生の取り組みにおいては現時点でも地域衰退は食い止められていない。自治体の人口を増加・維持、減少スピードを緩やかにすることは容易ではない。自治体の「自助努力」には限界がある。

 第二に、地域特性を考慮しない表面的な施策に終わる可能性がある。以前の地域活性化策について、大半の自治体が地方版総合戦略策定にあたり東京に本社がある業者に外部委託していた。国が行う地域活性化のための政策誘導は、地域特性を考慮しない「全国一律」の手法や、地域に浸透しない「表面的」な施策が用いられており、逆に地域を衰退させる可能性を秘めている。

■道州制ウイークリー(254)2021年5月29日

◆地域衰退をどう食い止めるか②(宮崎雅人『地域衰退』より)

◇地域に産業を興す

 地域衰退は基盤産業の衰退によって生じてきた。これを食い止めるには、地域に産業を興すことが必要である。地域における基盤産業の衰退は、その地域内部の問題によって生じたというよりも、外的要因によって生じてきた。大企業のリストラにtよって引き起こされた企業城下町の衰退、スキー客の減少によって危機に陥った村営スキー場、木材価格の低下や輸入生糸の台頭などによって衰退した養蚕や林業の村などである。観光開発や歴史的景観を保存することによる町づくりが必ずしも地域衰退を食い止めるとは限らない。成功しているように見えても小手先のことで、地域の屋台骨を支えるような雇用を生み出しはしない。新型コロナウイルスの感染拡大によって観光客が激減したことからも明らかなように、観光による地域活性化が、これまでのような形で地域経済に貢献するかどうかは不透明である。

 そうした中でも、筆者は農山村では小水力発電が地域経済にプラスの影響を与えることができるのではないかと考えている。小水力発電は①昼夜、年間を通じて安定した発電が可能②経済性が高い③太陽光発電と比較して設置面積が小さいなどの特徴がある。また、地元の土建業者との相性の良さが指摘されている。小水力発電建設の半分から7割が土木工事である、小水力発電は土建業者に安定収入をもたらし、農業や建設業のような産業を維持する重要な手段の一つになると考えられ、地域の基盤産業となりうる可能性を秘めている。すでに都市部への再生化のエネルギー供給も始まっている。地方から都市に電力を移出する新たな基盤産業の創出は地域の衰退を食い止めることにつながるかもしれない。

道州制ウイークリー(246)~(249)

■道州制ウイークリー(246)2021年4月3日

◆東京一極集中の危機①(高嶋哲夫『首都崩壊』より)

◇首都圏直下型巨大地震への備え

 首都直下型巨大地震を想定したこの危機管理小説では、日本の大混乱が描かれています。「東京に巨大地震が起こると、建物、道路、電気、水道、ガスなどのインフラが崩壊するばかりではなく、経済、生産、金融などの面において、総額100兆円を超える経済損失が出る」という試算が政府に報告されたことから物語は始まります。

 首都都機のマヒによる日本の崩壊から回避する方策が考え出された。一つは首都移転、もう一つは東京に一極集中する行政、経済機能などを地域拠点に分散する道州制。これを同時に行うという。

 「現在の日本はGDPの3位転落、国債発行1000兆円突破、貿易黒字の赤字転落、失業率上昇、生活保護者の急増、少子高齢社会には抜け道が見つからない。今後もますますひどくなる。国民も政府も疲弊しきっている。首都移転だ。国民の意識を変え、新たに出直すには一番いい方法だ。明治維新に匹敵する新しい動きを作らなければ、日本の生きる道はない」

 その道州制案によると、日本を1道7州に分ける。北海道。青森・岩手・秋田・山形・宮城・福島を一つにした東北州。東京・神奈川・埼玉・千葉・群馬・栃木・茨木の関東州。愛知・岐阜・静岡・山梨・長野・新潟・富山・石川・福井の中部州。大阪・京都・奈良・兵庫・滋賀・三重・和歌山の近畿州。岡山・広島・山口・鳥取・島根の中国州。さらに四国州と沖縄を含む九州州。

「地方分権を進めると,各州にも自立心が生まれ、今以上に真剣に地域の特性を生かした産業開発、発展に力を尽くすだろう」

■道州制ウイークリー(247)2021年4月10日

◆東京一極集中の危機②(高嶋哲夫『首都崩壊』より)

◇日本の未来を拓く国のかたち

「道州制と首都移転は、国会議員の定員半減、国家公務員の削減にも役立ちます」

中央政府、省庁の権限と規模を小さくする話なので、政治家と官僚の反対は目に見えていた。強力な指導者が必要だが、現れそうにもなかった。何より、地方にその意識がなかった。中央政府に任せておけば、何とかしてくれる。親方日の丸の意識が強く、独立心などなかった。知事を含め、地方の首長の最大の役割は、国からの補助金の確保なのだ。

「新生日本の建設なくして日本の未来はないと信じている。そのための遷都であり道州制だ。現在の都道府県は幕末276藩から廃藩置県で3府302県、そこから順次統合した結果にすぎません。それから幾多の戦争、敗戦を経て、近代日本となって70年以上が過ぎています。日本も一時は世界2位の経済大国になりました。そろそろ時代に合った日本の形に変えるべきだとは思いませんか」

 「現在の日本は東京一極主義、東京という一都市が一つの国家並みの経済を生み出し、それに名古屋、大阪が続いています。地方は一部の大都市に支えられながら、周辺で生きているにすぎません。これでは発展は望めない。日本を組み直して世界に対抗できる国に造り直さねば、日本に未来はありません。我々のやろうとしていることは、中央政府の権限と規模を縮小し、地方の独立を促すことだ」

 

■道州制ウイークリー(248)2021年4月17日

◆東京一極集中の危機③(高嶋哲夫『首都崩壊』より)

◇新首都候補地は岡山・吉備高原に

 「世界が変わっていくように、国も変わっていきます。変わらなければいずれ衰退していきます。さらに重要なことは、社会もそこに住む国民も変化していることです」

 「日本を現在より大きな地区に分けて、それぞれの特徴を生かしながら、政治力、経済力を強めて自治制を整える。責任ある地方区となってもらうことです。すすれば中央政府はコンパクトにすることができる。小さな政府の実現です。首都移転には欠かせないことです。明治以来続いているこの古い国の形を変えるのです」

 道州制の導入には、電子会議システムは確かに有効なものだ。道州制、そしてさらに重要になる中央政府とのコミュニケーションが密になり、距離感も目に見えて縮まる。

 この小説で新首都候補地に選ばれたのは、岡山県中部の吉備高原。「面積1800ヘクタール、南東30キロに新幹線駅、岡山空港まで車で30分余り。緑に包まれた美しい高原。温暖で、活断層もなく、地震や津波、さらには台風からも解放されます。北方領土と最西端の与那国島までの広さのある日本なら中心などどこでもいい。岡山といっても誤差の範囲です」

当然のことながら、議員の間には賛否の議論が起こった。しかし、意外なことに、大部分の議員は多くの議論もなく受け入れた。マスコミの議論も容認の方向だった。移転計画発表後3か月で国会審議が終わり衆参両院で可決、正式に認められた、という結びになっている。

■道州制ウイークリー(249)2021年4月24日

◆地方分散型の国土づくり①(小磯修二『地方の論理』より)

◇地方の多様な発想と力を活かす

地方の持っている多様な発想と力を活かしていくことこそが、これからの日本社会の成長、発展にとって欠かせないのではないか。しかし、現実には、政治、行政、教育、民間活動すべての分野で東京一極集中が進み、また大都市で醸成される。画一的で効率性を重視した「中央の発想」が支配的になり、それによって国全体が硬直的な思考に陥りつつあるのではないかという危機感が募ってきている。

新型コロナウイルスは世界を震撼させた。過密を排した分散の仕組みを社会に取り入れることが求められており、この機会に地方分散型の国土づくりに向けた思い切った議論を進めていこことが必要だろう。非常時の危機管理は中央主導が原則だが、日本では国のタテ割り、組織防御による硬直的な姿勢が目についた。地方自治体のほうが多様な状況に柔軟に対応しており、政策対応の力が高まってきているという印象を受けた。この機会に地方のことは地方の権限で推し進めることができる分権の仕組みに向けた議論をすることも大切であろう。 

わが国は元来さまざまな地域で成り立っており、それらの地域が相互に結びついて安定的な発展を遂げてきた。地域の多様な伝統・慣習や文化が積み重ねられて魅力のある国をつくり上げてきたが、いつの間にか経済効率を追い求めるなかで、すべてが中央に集積する中央の論理が蔓延しているように感じられる。あらためて、地方の持つ多様で柔軟な力を見つめ直して、その力を活かした健全な国づくりを進めていくことが必要ではないか。.

道州制ウイークリー(242)~(245)

■道州制ウイークリー(242)2021年3月6日

◆これが九州道州制ビジョン⑱

 (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制での生活圏の改善

 道州制の導入により環境保全の強化を目的とした九州独自の上乗せ基準の設定や整備計画の策定、大気汚染や水質汚濁状況の常時監視、許可、命令、指導などに関する権限を、国からより現場に近い道州や基礎自治体に移譲することで、地域の実情に即した生活環境の整備や一体的な環境保全を適時かつ的確に行うことができるようになる。森林保全対策として、政策連合では九州全県で森林環境税を導入済みだが、各県で趣旨や収入額が異なり、事業規模に格差が生じている。これを道州税として一元化、「九州環境税」を創設、事業を財政面で公平に支えることになる。

 地域の生活環境の改善には、権限や財源の移譲により、基礎自治体は必要に応じ近隣の基礎自治体や道州と連携、医療、副菜、教育、芸術、文化、スポーツなどのサービスを地域特性に合わせて中心都市から豊かな自然を持つ周辺地域に提供・波及させていくことにより都市と自然が一体となった圏域を九州全体に整備する。

 基幹となる都市圏には高度な医療・福祉施設や国際交流施設、大規模な商業施設、文化施設、大学・研究機関の集積が進み、個性的な都市としての機能を充実させる。これらと並行して、都市周辺や離島、半島、中山地域などは、生活に密着した医療・福祉施設、教育文化施設、環境関連施設の整備に重点的に取り組むことで生活環境が改善される。

 

■道州制ウイークリー(243)2021年3月13日

◆これが九州道州制ビジョン⑲

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制での成長戦略

 地域の活力を維持し、どう発展させていくか、九州地域戦略会議の道州制検討委員会では新たな成長戦略に向けて道州制導入による地域資源を生かして成長する将来ビジョン「九州八策」を提示した。そのビジョンは①九州一体となった産業政策の策定②カーアイランドの形成促進③ICアイランドの形成促進④フードアイランドの形成⑤産官学と地域特性を生かした研究開発の推進⑥九州の産業を支える高度な研究者の育成・確保⑦企業誘致を通じて九州の均衡ある発展をめざす⑧新産業の育成、となっている。

九州一体の産業政策の策定では、中央の各省庁や県単位で別々に行われている産業政策を道州制の下に統合し、道州が九州の視点に基づいて横断的で総合的な産業政策を実施する。一例として九州各地にそれぞれの地域の強みを生かした産業クラスターなどの戦略的な拠点を形成することにより、新たな市場を開拓するための高度な研究開発機関が整い、国際競争力の強化につながると主張している。

道州制移行による大きなメリットは、九州が一体となった産業政策が可能になり、九州が一丸となって発展することが可能になるというのが全体的な青写真である。リーディング産業としては、自動車、半導体、食品の3つを選び出している。

 

 

■道州制ウイークリー(244)2021年3月20日

◆これが九州道州制ビジョン⑳

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制での研究開発推進

 産業振興には研究・技術開発が必須であり、その成否が命運を左右するといっても過言ではない。道州制に移行する中で研究開発体制の見直しは急務の課題となる。経済がグローバル化し国際的な競争力の強化が叫ばれる中で九州における研究開発環境の整備は欠かせない。

 まず浮上してくるのが既存の研究機関の再編である。国と県の機関を産業集積や企業誘致の戦略拠点と位置づけ、新たに再編成し、研究の効率化と高度化を図り、先端技術にも対応できるようにする。こうした取り組みで、九州で優位性がありかつポテンシャルの高いと考えられる自動車、半導体、食品分野においての研究開発が充実、さらに地域特性を生かした効率的で効果的な研究開発も進めることが可能になり、圏域を越えた広域的な産学官の連携により研究開発機関のネットワーク化が進展する。このように研究開発体制が効率的に整備され各機関が連携されれば、九州における産業の技術的レベルの向上につながることになる。

 道州制検討委員会は具体例として各県に存在する農業試験場を挙げている。それぞれの試験場が有する優れた知識や技術等を集約化、円滑な情報の共有化も図ることにより、おいしくかつ収量が高いという農産物の開発も期待でき、九州の農産物の競争力が高まり、食料の一大供給地としてフードアイランド九州の機能をさらに高めることも可能になる。同時に重要なのは人材である。研究者の養成と優秀な人材の確保がなされなければならない。

■道州制ウイークリー(245)2021年3月27日

◆これが九州道州制ビジョン㉑

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制導入後の九州の経済社会

 20XX年、道州制が採用され、国のかたちは大きく変わり、道州に大きく権限と財政が移譲された。九州は次々と改革を実行、新しい取り組みも進んで、生活、経済、文化にわたり大きな変化が見られた。九州地域戦略会議の第二次道州制検討委員会が描く道州制後の九州がとるべきスタンスと実現可能な施策は次のようなものである。

  • 九州で暮らす住民の満足度と企業活動の自由度を高め、東アジアの拠点として繁栄するための独自の政策目標を掲げ、その実現に向けた施策を戦略的に打ち出していく。
  • 道州が独自の経済見通しを策定し、九州全体の資源を最適に活用する産業政策とアジア戦略を推進するとともに、国公立大学や研究機関の再編・統合を通じて研究開発の選択と集中を図ることにより、九州の産業政策にマッチした科学技術の振興を目指す。
  • 九州の役割にふさわしい独自の財源が確保され、財政効率化により、住民生活の向上と産業活性化のためのソフト・ハード両面の社会基盤整備に重点的に投資する。
  • 環境産業の育成や森林等自然環境の保全により、低炭素社会の実現と経済政長の両立を実現させる。
  • これらの政策を通じ、九州は道州制を導入しかった場合よりも高い成長を遂げ、魅力のある地域を形成、人口の社会増をもたらし、ひいては東京一極集中型国土構造の是正を図る。

道州制ウイークリー(238)~(241)

■道州制ウイークリー(238)2021年2月6日

◆これが九州道州制ビジョン⑭

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制での雇用政策

 雇用施策は全国一律となっているが、これを道州制の導入により、国から権限と財源の移譲を受けて、地方自らが雇用施策を決められるようになれば、道州は基礎自治体(市町村)と連携して、対象事業や雇用調整などを独自に設定、状況の変化に応じて迅速かつ機動的に財源を投入し、雇用情勢が悪化した場合でも、地域の実情に合った効果的な対策を実行できるようになる。

 雇用のセーフティネットも同様で中小企業大学校や各地域の職業訓練学校なども道州で一元管理し、産業構造の転換や、新たな技術やサービスの導入に必要な職業訓練システムも再編強化することで、地域の雇用実態にあった取り組みを進めていく。

 失業者や高齢者や障がい者世帯、母子家庭などに対する社会保障と自立支援を充実させるために、国、道州、基礎自治体の三者が連携、雇用対策、生活保護、介護・医療保険といった社会保障施策を総合的に行っていく。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(239)2021年2月13日

◆これが九州道州制ビジョン⑮

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制での災害防止対策

 道州制に移行した場合、自然災害多発地域の九州は、防災と危機管理には重点的に取り組む。まず、九州の地域特性に応じた事前の予防対策から応急対策、復興などの事後対策、再発防止まで、迅速かつ総合的に立案・実行する専門組織を新たに立ち上げる。

 この専門組織は関係する行政分野を横断的に結ぶことで災害や危機発生時に指揮命令系統を一元化、国と基礎自治体と連携し、九州全域の自衛隊、警察、消防、各種ライフライン機関、放送機関などとの間で緊密な情報伝達や協力体制を整えることができる。道州だけでは対応しきれない大規模災害では国全体で協力体制を作り上げる。

 火山噴火など自然災害の予知、防災訓練の在り方。鳥インフルエンザ対策などの危機管理について九州の地域性を加味して道州立大学や研究機関で研究を実施、研究成果を基礎自治体などに還元する。

 広域河川は道州、地域河川は地元の基礎自治体が一元的に管理し、従来必要だった国との調整が不要となり、地域と適合性のある治水対策や流域管理ができるようになる。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(240)2021年2月20日

◆これが九州道州制ビジョン⑯

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制の治安対策

 治安対策を担う警察組織は中央に警察庁、地方にはそれぞれの都道府県警察が存在する。組織としては一元化されているが、都道府県警察はそれぞれの地域を管轄、広域的な連携という点では必ずしも十分に機能していないことも事実である。

そこで道州においては、安全な地域の実現に向けて、九州各県が行ってきた安全対策は、道州のもとに一本化され、引き続き、国、道州、基礎自治体、地域コミュニティらが連携する体制を築き上げる。

海上では広範囲に国境と接し、アジアを中心にヒト、モノ、カネの流れも国際化が進む中で、国境をまたぐ犯罪に対して、道州と国の入国管理局や税関、検疫機関などが緊密に連携することで、危機発生時において迅速な対応を行う。

また、区内の犯罪も広域化、組織化する傾向がみられることか、現在の県境を越えて警察の管区区域の再編成に着手、道州、基礎自治体、地域コミュニティなどが一丸となって犯罪防止に向けてのトータルな対策を講じる。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(241)2021年2月27日

◆これが九州道州制ビジョン⑰

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制での環境政策

 環境に優しいライフスタイルへの転換を推進するためには国と地方が一体となって取り組みながら、道州が中心となって地域の特性に応じた効果的な対策が重要となる。国の役目は地球温暖化防止計画策定に関わる基本政策や排出権取引の仕組みの創出といった大枠の問題を担う。道州は具体的な施策や部門別目標値設定、住民の省エネ促進のためのインセンティブ制度の創設などに取り組む。基礎自治体は住民に対する啓発活動、中小企業を対象にした相談窓口の設置・運用を図る。こうして役割分担を明確にすることで、現状の成果が十分に上げられていない都道府県単位での取り組みの限界を突破し、効率的な防止策で九州の環境を守っていく。

 環境保全に関する大気、水質、ダイオキシンなどの規制は、道州は全国より厳しい基準を設定する一方、局地的には基準を緩和を行うことで、観光面などの利用・活用を視野に入れ、日本一クリーンで美しい九州をめざす。海洋保全においても複数の省庁や県などにまたがる複雑な調整が不要となり、海洋自然環境、水産資源の回復の改善・保全などの課題に対し、迅速かつ戦略的に取り組むことができるようになる。産業廃棄物処理においても九州全体を見通した統一戦略に基づき、広域的な連携・協力が容易になる。

 

道州制ウイークリー(233)~(237)

■道州制ウイークリー(233)2021年1月2日

◆これが九州道州制ビジョン⑨

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇なぜ地域主権型道州制が必要か(江口克彦氏)

 なぜ、道州制が必要かというと、中央集権体制が諸悪の根源であるからで、この体制を改めない限りほどなく日本は衰退の一途をたどることになる。このままでは東京一極集中がますます進み、地方の人口は減少、東京を中心とする首都圏と地方の格差も想像を絶するほど大きなものとなろう。一刻の猶予も許されず、新しい国のかたち、都道府県を廃し、全国を10程度の州、また住民の納得する基礎自治体に再編し、それぞれの地域が税財源などを掌握し、主体的に住民密着の政治行政を行う「地域主権型道州制」を実現しなければならない。

 広域行政に変えないと無駄が生じ、地域の負担もさらに増す。費用対効果を考えながら、広域でダイナミックに動かしていくことで行政も効率的になる。そうすることで人口が分散し、人々が自由闊達に活動できる「疑似国家」「分権国家」をつくり、少なくとも繁栄拠点を全国で十数か所つくる必要がある。そうしなければ国力は衰え、民力は低下し、日本はいずれ三流国家になる。

 九州はもともと独立意識が強く、道州制の議論も活発だ。九州最大の都市である福岡を起点に考えると、距離的に上海と東京は変わらず、ソウルは名古屋より近い。一つの州になれば海外の国と対等に交渉でき、国際運輸物流においても東アジアのハブになれる。税収面でも自主的に決めることも可能だ。九州から日本を変える、若い人たちがそう思って考え行動すれば日本を動かす力になる。。グローバル化の中で生き残るためには、何としても道州制の導入が必要だ。

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(234)2021年1月9日

◆これが九州道州制ビジョン⑩

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇九州道州制が目指す将来ビジョン

九州地域戦略会議の道州制検討委員会が2009年にまとめた「九州が目指す姿、将来ビジョン」報告書では、道州制導入について、①国内外の急速な変化に対応し、21世紀においても持続的に発展することを目指す ②現行のわが国の統治機構、社会の仕組みを抜本的に見直し、新しい国のかたちを構想する、としています

その目指す国のかたちは、●国の役割を限定する ●内政に関しては地方が自律的・総合的に担うことを基本とする ●都道府県を廃止し、新たに全国に複数の道州を創設する ●道州制組織の在り方は道州と市町村の2層制で公選の議会と首長を持つ、というものです。

国の役割は、外交、防衛、通貨、金融、国際的な枠組みに関する地球環境対策、公的年金など国家の存立にかかわることに限定する。そのうえで道州には警察、広域防災、空港、港湾、鉄道、高速道路、情報通信インフラ、新産業創出、経済交流、産業振興、雇用保険、医療計画など幅広い分野で国から権限と財源を委譲し、道州全体にわたる広域的な事業を受け持つ。

基礎自治体となる市町村は、消防、まちづくり、上下水道、景観保護,ゴミ・し尿処理、介護、保育所、商店街対策といった住民生活に直接かかわる公共サービス全般に関わる。

教育に関しては、国は最低限の水準を保証、道州は小中高の学習内容の設定、州立高校・大学の設置運営など、基礎自治体は市町村立学校の設立運営、学級編成、幼稚園など役割を分担する。

道州と基礎自治体が主体となって地域政策に関して自らの権限と財源を持ち、地域ニーズに的確に対応した政策を企画立案から施行まで一貫して効率的かつ総合的に実施する。そして九州のことは九州が決めるシステムを構築する。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(235)2021年1月16日

◆これが九州道州制ビジョン⑪

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制下での医療

 大都市に医師が集中、地方の医師不足が叫ばれて久しく、救急医療や高度・先端医療における広域連携の必要性も問われている。国から権限と財源を受けることで、まず医師不足の解消には、州立大学の医学部の定員を拡大することで医師数の絶対数を増やし、州が医学生に地方勤務を条件とした奨学金制度の充実を図るなどして、州内での定着を促進、離島、半島、中山間地の医師不足や小児科、産科の専門医不足に関しても、診療報酬を弾力的に運用することで手厚くし必要量の医師を確保する。

 広域連携医療においては、県単位では県境がネックとなり、連携がスムーズに行われず、コストや医療設備の面からも整備を図ることが難しい。道州制であれば、例えば市町村が離党・僻地の中に過疎地域の医療拠点を設け、より高度な州立病院と一元的な運営を行うことで、過疎地域にも安定した医療を提供できる。各県で重なる医療機能を集約し、拠点病院と過疎地の病院を遠隔医療システムを結ぶことも可能となる。

 救急医療でも道州制により大きく改善する。県単独では導入・維持が難しいドクターヘリを州の中で効率的に配備すれば、すべてのエリアをカバーできる。また、専門性の高い医療については、県単位ではそのレベルアップがなかなか難しいが、州でがんセンターや子ども病院、循環器センターなど専門性の高い期間を整備することで、最先端の医療の提供ができるようになる。その際、国の研究機関や諸外国の関連機関とも交流・連携を図ることで高度な医療体制をめざす。こうして医療を地域に暮らす人たちのニーズにきめ細かく対応、人の命を守るという基本的な地域医療のインフラを整備、より広域的なネットワークを構築することで、高度で最先端お医療を受けられるようにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(236)2021年1月23日

◆これが九州道州制ビジョン⑫

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制下での子育て支援 

 核家族化により地域社会全体で子育てを支援していく必要性が今後ますます高まる。道州制下で子育て支援策が、道州と市町村が連携して、地域の実情を踏まえた弾力的で総合的な施策を進めれば、より効果的で、安心して産み育てる社会の実現ができるようになり、出生率の増加をもたらす期待がもてる。

 保育園での待機児童、幼稚園の定員割れというニーズとのミスマッチを解消し多様な保育ニーズへ対応するために、保育園や幼稚園の施設運営について、都市部など保育所需要が多いところで土地確保が困難な場合、保育施設や屋外遊技場の面積などの基準を緩和、児童数の減少で幼稚園の設置が難しい地域では、小学校などとの併設を認め、延長保育や短時間保育といったサービスの多様化により利便性を向上ささえる。

 また、出産・育児期の経済的負担を減らすため、児童手当、妊婦健診費、保育料などについて、道州と市町村が連携して、地域の実情や子育て世帯のニーズを踏まえて、出産・育児期の一体的かつ効果的な制度設計を行うことで、安心して子どもを産み育てることができる社会を実現する。

 女性の仕事と育児を両立させるために、女性の継続就労、再就職支援、中小企業への支援などを実施、就労環境を改善する。さらに、県ごとに実施している子育て応援事業を広域で取り組み、行政、企業、地域社会が連携、NPOも活用し、子育て支援を社会全体で応援していく気運を高めていく。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(237)2021年1月30日

◆これが九州道州制ビジョン⑬

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制での教育

 小中学校では国語に方言を取り入れ、地域の言語文化の保護や維持を図り、九州と関係が深い東アジアを意識し、外国語では英語のほかに中国語や韓国語を学べるようにし、社会科でも東アジアとの交流史を教え、理科では地域の自然保護など、独自の教育内容を盛り込めるようになる。高校では農林水産、醸造、観光、デザインなど九州の産業構造にマッチした専門人材教育を展開する。

 全国画一の学級編成、校舎整備基準がなくなるので、離島や中山間地集落が多い九州の特性に配慮し、分校制度を復活・強化、教育の機会をいままで以上に確保する。ハード面でも地元の木材を使用した校舎、農水産物を活用した給食も一層推進でき、地域の活性化の役割も担う。

 大学は国立、県立大学を必要に応じて州立大学として各都市圏レベルで再編を実施、再編によって生まれた余剰をベースに新たに芸術、獣医、アジア言語などの大学、学部を創設する。十分な財源を確保し、米国のような世界水準の州立大学のような大学に育て、世界に通用する研究を維持する。さらに体育、看護、福祉といった九州独自の既存の専門大学も加えることで地域社会の多様な教育ニーズに応えていく。また、州立大学の教育学部に学生定員を定め、質の高い教員も安定的に確保する。

 

 

 

 

道州制ウイークリー(229)~(232)

■道州制ウイークリー(229)20年12月5日

◆これが九州道州制ビジョン⑤

 (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇九州地域戦略会議が挙げる道州制導入を目指す6つの理由(下)

⑤国と地方の危機的な財政状況を改善する

 現在、国と地方の財政は危機的な状況にあり、国と地方の双方が徹底した歳出削減を断行し、持続可能な財政システムを構築することが求められている。そのためには、道州制の導入を通じて国と地方の役割分担と財源配分の在り方を見直し、大幅な税源移譲 によって地方自治体の税収と歳出の乖離を縮小し、地方自治体における財政の自己責任を高めていくことが重要だ。同時に、地方財政の透明性を確保し、住民のチェック機能の働くシステムの構築が必要だ。

  • 九州が東アジアの拠点として繁栄する

九州はアジアの都市・地域との厳しい競争に直面している。九州は、一つの国に匹敵するほどの人口と経済規模を有するなど優れたポテンシャルを持っているが、各種の規制等の存在や海外との交流が各県単位で行われていることなどから、そのポテンシャルを十分に」生かすことができていない。「九州に行けば豊かになるチャンスがある」という地域にしていくには各県単位ではなく九州一体となって、魅力あるマーケットを形成し、海外にアピールすることが極めて重要だ、国の全国一律・画一的な政策によるのではなく、九州のことは九州が決める独自の国際交流を展開して東アジアの拠点として繁栄するためには道州制の導入によって地域の創意工夫を生かすことのできるシステムの構築が必要不可欠だ。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(230)20年12月12日

◆これが九州道州制ビジョン⑥

 (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇現行制度で浮かびあがる問題点

 九州地域戦略会議の道州制検討委員会は、九州7県の企業や行政機関、個人、NPOなど55主体からヒアリングを実施、1100社の企業を対象に道州制に関するアンケートを実施327社から回答を得た。国の中央集権システムの課題としてよく指摘されているものに次のような問題がある。

  • 国への権限の集中と地方への過剰な関与(地方道路事業への国の関与等、地方に自由がない)②国の全国一律の施策が地方の実情に適合しない(建築基準法の全国一律適用のため個性あるまちづくりができない) ③国の縦割り行政の非効率性(新産業振興策を各省庁が縦割りで行っている) ④国と地方の危機的財政状況と地方の自主財源脆弱性 ⑤東京一極集中と地方の疲弊(都市と過疎地の地域間格差の拡大、人材の東京流失) ⑥国際競争力のある社会資本整備の遅れ、政策の欠如(国際空港、国際港湾,循環型高速交通体系の整備等の遅れ ⑦既存の枠を超えた連携意識の欠如(県、市、民間がそれぞれ海外にミッションを派遣していて非効率) ⑧産業政策、雇用政策、社会資本整備等の非効率性(国と県それぞれによる産業クラスター形成事業は非効率)⑨選択と集中による効率的な投資や施策意識の欠如(各県単位の企業誘致活動、フルセット主義の弊害)⑩都道府県単独では解決できないにニーズへの対応力不足(地球環境問題への対応は県単位では効果は不十分

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(231)20年12月19日

◆これが九州道州制ビジョン⑦

 (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇中央集権制度で浮かび上がる産業政策の問題点

 九州戦略会議道州制検討委員会事務局が2006年に実施したヒヤリング結果から具体的な問題点が浮かび上がっている。まず国の中央集権システムの問題点としては地方には進出企業に対する法人税や消費税優遇の自由度がないことが、企業誘致が地方振興の有力手段であるという現状からすると大きな問題である。世界を見渡しても経済特区では様々な優遇措置が施されている。現状では法人税や消費税の権限は国にあり地方にはない。道州制になり、税務権限が移譲されれば、九州独自で税率を決められ、大きなインセンティブを与えることができる。国内のみならず、アジア・世界に広く門戸を成長産業開いて九州を魅力ある地域にし、持続的発展を可能にさせていく。

 経済発展には新産業の振興やベンチャーの育成が必要不可欠だ。半導体、バイオ、情報、健康といった成長産業として可能性のある企業は、所管する官庁が経済産業省、総務省、農林水産省などに分かれており、産業政策が縦割り行政によって行われ、極めて非効率である。

 国による全国一律の規制も問題化している。消防法は工場や倉庫は1000平方メートル単位で防火壁を設置しなければならないなど規制は非常に厳しいが、地域ごとのケースバイケースな対応による弾力的運用を行うことで効率的なスペース利用やコスト削減が図れる。建物の高さ制限や建ぺい率などを定めた建築基準法も地域の個性あるまちづくりには大きな障害となっている。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(232)20年12月26日

◆これが九州道州制ビジョン⑧¥

 (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇都道府県制度の問題点の「どこを変えるのか」

 九州戦略会議道州制検討委員会が行ったアンケート結果によると、現行制度の問題点を変えていくには、行政の窓口一本化、許認可・新生基準の統一・規制緩和、広域での連携、より広域な行政組織の必要性が求められている。九州の国際競争力に不安があると思っているのが約半数あり、「内外の企業意を誘致、九州への投資促進のためには各県が競争するよりも九州が一体となって、あるいは複数の県が連携して行ったほうが効果的」と回答した企業が74.3%に達し、広域連携への期待が大きいことがうかがえる。

 これらの問題を解決する方法として、道州制検討委員会は、A・道州制、B・県合併、C・政策連合、D・個々の法改正や運用改善、規制緩和、権限移譲などに分類して検討した。B・県合併とC・・政策連合は、広域行政システムの構築が必要で国の権限と財源の移譲があってはじめて効果的なものになるもので、それは道州制の実現なくして不可能である。D法改正等の問題は国の中央集権システムに起因するものが大半であり、国の権限と財源を地方に大幅に委譲し、国と地方の役割分担を抜本的に見直して地方の自由度を拡大することが必要である。地域の活性化のために地方が地域連携や社会資本の充実にいくら取り組もうとしても、中央集権という大きな壁が立ち塞がっている。したがって、道州制を導入するという国家意思に基づき関係する法令を一括して改正しなければ効果は上がらないと結論づけている。

 

 

 

道州制ウイークリー(211)~(228)

■道州制ウイークリー(211)2020年8月1日

◆地域経済活性化への地方分権改革①

 (経団連「2019年提言」から)

 国内GDPの7割を占める地域経済は可能性にあふれ、イノベーションを通じて成長する余地がある。農業においては、大規模化・スマート化を通じて生産性向上が可能であり、ブランド農・畜産物の展開や六次産業化による高付加価値化も見込める。自然文化などの特性を踏まえながら、地域特有の資源を活用した基盤となる産業を振興し、その集積・育成を図れば、地域への人の流れが生まれ、新たなイノベーション創出も期待できる。

 高齢化・少子化による生産年齢人口の減少と大都市圏への人口流失、CPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)や日欧EPAの発効といった経済のグローバル化、AT,IoT、ロボットをはじめとする技術革新の進展など、地域経済を取り巻く環境変化を受け入れ、地域自らが創りたい社会を描きながら変革を遂げることでその真価が発揮され、わが国経済の持続的成長へとつながっていく。

 実際、自治体の中には国家戦略特区等を最大限活用しながら、首長の強いリーダーシップの下に先進的な取り組みを進め、課題解決・活性化へとつなげるところも出てきている。地域経済の土台である行政システムについても、多様性を認め、自由度を高めた制度・体制へと改革すれば、大きなインパクトをもたらす課題を乗り越えてさらなる発展が可能となろう。

 「第二期まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定を機に、これまでの地方創生・分権改革に関わる課題を踏まえた上で、同戦略を含め、政府において重点的に取り組むべき制度改革等について提言する。こうした改革を推し進めることが、経団連が提唱する道州制への道筋をつけることにもなろう。

 

 

■道州制ウイークリー(212)2020年8月8日

◆地域経済活性化への地方分権改革②

 (経団連「2019年提言」から)

 地域の特性に基づいた施策を進める上で何より重要なことは、地域経済圏の担い手の中心である住民はもとより、各自治体や地元経済界、大学などが一体となって、関係機関との連携、外部からの人材受け入れなども図りながら、自立性・主体性を発揮できる体制・制度を整備することである。そのためには、必要な権限・財源・人材の移譲、広域連携の推進、即ち地方分権改革が必要であるが、地域が求める施策・発意を体現できるまでには至っていないのが実情である。

 例えば、各自治体からそれぞれが抱える課題等を解決するための提案を募集し、その実現を図る「提案募集方式」も、新たな地方分権改革の手法として位置付けられているが、その多くは手続きなど個別事務の改善にとどまっている。運用面においても、各自治体からの事前相談の段階で関係府省との調整対象外とされる。自治体側に支障事例の立証責任が課されている。支障が顕在化していない案件の提案ができない。検討するとされた案件もフォローが十分でないといった課題が存在している。

まち・ひと・しごと創生総合戦略を始め、地方創生・地域経済の活性化を後押しする施策・KPI(重要業績評価指標)について、その効果や妥当性・有効性・施策とKPIとの関係性等に関する検証が不十分であるといわざるを得ない。

 地域が抱える課題は一様ではない中、自主的な地域経営を促すためには、地域特性に応じて、きめ細かく施策を展開する必要がある。しかしながら、地方創生推進交付金を含め、中央省庁が用意したパッケージから各自治体が選択し、国が計画を認定する仕組みであるため、地域の主体性が発揮しにくい。加えてその体制も、まち・ひと・しごと創生本部事務局や地方制度調査会など多岐にわたるうえ、縦割りで中央集権的なため、相互の施策の一貫性・整合性を確保しにくい状況にある。

 

 

■道州制ウイークリー(213)2020年8月15日

◆地域経済活性化への地方分権改革③

 (経団連「2019年提言」から)

各地域が、主体性をもって積極的に改革を進めるのは当然であるが、政府においては、地域自らが自立的・持続的に、創意工夫をこらした独自の経営ができる体制の構築、地域経営を担える人材の確保・育成に尽力し、意欲ある自治体を制度面で支えるべきである。そのために不可欠な4つの改革等について提言する。

<1>分権改革の徹底、権限・財源・人材の移譲

・意欲ある自治体の発意を実現すべく、各自治体が求める権限を全面的に移譲

・地方創生推進交付金の運用の弾力化

・地方創生人材支援制度の機能拡充および同趣旨の制度の整理・統合

①権限  意欲ある自治体の発意を最大限尊重し、地域の実情に沿った施策を実施できるよう、自治体が求める権限は移譲すべきである。現行の提案募集方式は抜本的に見直す必要があり、検討するとされた項目については早急に着手し結論を得るのはもちろん、担当省庁が規制の必要性を立証できない限り、提案は原則全て認めることとすべきである。

②財源  自治体が独自の戦略を実行に移し、資源の最適配分を自ら決定できるよう、財源確保に努める必要がある。具体的には、国として地方が行政上の役割を果たす上で、必要な財源を確保しつつ、地方の自主性や創意工夫を促す観点から、国庫支出金を必要最低限にとどめるべきである。

③人材  地域経営を担う人材も,権限・財源と合わせて移譲・確保し、その育成が図らなければ、最大の効果を発揮しえない。まずは地域が、その特性や実情に基づき必要な人材を明確にした上で、民間人材の活用など、機能を拡充していくことが望ましい。

■道州制ウイークリー(214)2020年8月22日

◆地域経済活性化への地方分権改革④

 (経団連「2019年提言」から)

<2>国家戦略特区制度の見直し

 国家戦略特区は「岩盤規制の突破口」としての役割を担う一方、区域を指定して特例措置が実施されることから、その地域特有の課題を解決し、活性化を図るうえでも有効である。国も各自治体に特区の活用を提案しているが、現行制度では、区域内で活用できる特例措置は法律により規定され、区域を国が指定する仕組みとなっている。このため、メニューにない項目は実行することができず、特例措置を追加的に実施しようにも、法改正や区域指定が必要となるため、改革の実現まで相当期間を要している。

  地域が抱える課題へのきめ細かな対応が求められるにもかかわらず、特例措置を個別に規定していては、スピーディーな地域経営の足かせとなる。すでに特区制度については「規制改革の推進体制の在り方に関する提言」(2019年3月19日)において、区域の追加指定や全国展開のさらなる推進等を提言したが、今後はより一歩進めて、特区の認定制を届け出制にする、あるいは特例措置の内容も法では包括的な規定に留めて柔軟性を高めるなど、各地域の特性・特色に応じた取り組みを全面的に実施できるようにすべきである。

 *注*道州制においては、各地域(州)が創意工夫を活かし、独自に「特区」制度を設け、発展戦略を進めることが可能となります。(関西州ねっとわーくの会)

■道州制ウイークリー(215)2020年8月29日

◆地域経済活性化への地方分権改革⑤

 (経団連「2019年提言」から)

<3>広域連携の推進

・デジタル・ガバメントの実現

・「連携中枢都市圏構想」、「定住自立都市圏構想」、「地方版総合戦略」の一体的推進

 経済活動の広域化、インバウンドの拡大、グローバルな都市間競争の強化などを踏まえると、地域においても、観光を始め地域の中核となる産業について広域で振興を図るとともに、一定規模を有する経済圏域を軸として、ビジョン・戦略を策定していく視点が重要となる。また、環境問題等、個々の自治体だけでは解決できない行政課題に対応するにも、現行の行政単位を超えた広域での連携が欠かせない。

 広域連携には自治体ごとの業務プロセスの標準化が不可欠なことから、デジタル・ガバメントの実現を強力に推進する必要がある。各自治体で異なる情報システムについて、国主導の下で集約的に取り組むとともに、行政機関・自治体間の情報連携を進めなければならない。

 さらに総務省が進める「連携中枢都市圏構想」「定住自立都市圏構想」、まち・ひと・しごと創生本部が各自治体に策定を促す『地方版総合戦略』について、一体的推進・運用を図るべきである。例えば、第二期まち・ひと・しごと創生総合戦略においては、1741の市町村それぞれに地方版総合戦略の策定を促すのではなく、むしろ各地域が主体的に広域連携を目指せるよう、両構想で策定された圏域の戦略・ビジョン等をもって地方版総合戦略とすることも有効である。その際、施設の統廃合や行政機能の集約化などにも踏み込んだものとすることが重要である。なお、地方支分部局については、分権改革を徹底する観点から、整理・廃止を進めるとともに,権限・財源移譲の受け皿となりうる広域行政体の形成を促す必要がある。

 

 

 ■道州制ウイークリー(216)2020年9月5日

◆地域経済活性化への地方分権改革⑥

 (経団連「2019年提言」から)

<4>地域の主体性発揮につながる推進体制の整備

 ・地方創生に関する機関等について、整理・廃止など機能の一元化・統合化

 地域経営は住民はじめ、自治体、経済界、大学などの各経済圏の担い手が主体となって取り組むものであり、国はサポ―ト役、すなわち、行政手続きシステムの整備・一元化、国家戦略特区で実現した措置の全国展開など、地域が進める改革の後押しに徹することが原則である。

 しかしながら現状は、関係省庁が縦割りで用意した施策を地域が選択する仕組みであるなど、中央集権的な手法が取られているのが実態である。加えて、地方制度調査会やまち・ひと・しごと創生本部、地方創生推進事務局、地方分権改革推進室を始め、施策ごとに対応する本部・省庁が細分化されているため一体性を欠いており、地方創生全体の責任主体もわかりにくい。

 したがって、こうした機関等については、中央依存からの脱却を促し、各自治体の主体性発揮・独自施策の展開の後押しへとつなげられれるよう、整理・廃止も含め、その機能に関する一元化・統合化を図るべきである。

 

 ■道州制ウイークリー(217)2020年9月12日

◆菅義偉氏の地方分権論①

(菅義偉「政治家の覚悟」から)

 <1>地方交付税について

 地方自治体には、税収が多いところもあれば少ないところもあるので、新型交付税のように簡素化するだけでなく、ていねいに財政調整する制度は不可欠です。それでも私は交付税制度について、いくつかの問題意識を持っていました。

 一つは、交付税制度で財源を保障することが、結果的には自治体の自助努力を削いでいるのではないか、という問題です。税収が少ない自治体ほどたくさんの交付税が配分され、努力して地域を活性化して税収を増やすと、逆に交付税は減ってしまいます。その弊害を防ぐ仕組みもありますが、やはり努力する地方自治体がもっと報われるようにすべきです。

 交付税の算定においては、地方税の25%は算定の対象外にしています。すべてを算定対象にすると、税収が増えた分だけ交付税が減ってしまい、地方自治体に経済を活性化させて税収を上げようとする意欲を失わせてしまいます。

 さらに、交付税の金額の規模も問題です。平成23年度の交付税の総額は16兆4千億円です。交付税額が巨額すぎることが、交付税に頼る気持ちを助長させる本質的な原因であると思います。全国どこでも同じようなサービスを受けられる仕組みとしての交付税制度の意義は否定しません。しかし、これが60年以上続いていることによって結果的に交付税頼みの体質をもたらしてはいないでしょうか。どんな素晴らしい制度も、時間が経てば、時代に合わなくなり、ほころびが出ます。国から配分される金ではどうしても依存心が生まれます。交付税での財源調整も必要ですが、やはり自前の税収である地方税の割合を思い切って引き上げなければなりません。地方分権は、権限とともに税源を地方に移譲することからはじまるのです。

 

■道州制ウイークリー(218)2020年9月19日

◆菅義偉新首相の地方分権論②

(菅義偉「政治家の覚悟」から)

<2>税収配分は国5:地方5に

 民主党(2009年当時)が高らかに掲げ、「改革の一丁目一番地」としたのが地域主権改革でした。地方に権限、税源、財源を委譲し、住民に身近な自治体が自らの責任で物事を決めて実行する。当然のことです。

 国の出先機関は、自治体との二重行政の無駄があり、更に国会の監視からも非常に遠いため不祥事が多く発生していました。

「出先機関の廃止や自治体へ移管する」という方針も遅々として進んでいません。

 また、国からの補助金を廃止し、地方の裁量を高める目玉政策として(当時の民主党が)打ち出した一括交付金は、当初9割が継続事業に使用され、事実上,国の「ひも付き」であり、これでは地方自治体は中央省庁の影響から逃れることはできません。

 中央省庁が財源を握っている限り影響力が残るため、一括交付金化ではなく、財源を移譲すべきなのです。

 現在、国と地方の仕事の割合は4対6ですが、税収は6対4。まずは税収を5対5にすることが、分権への第一歩です。

 

■道州制ウイークリー(219)2020年9月26日

◆菅義偉首相の地方分権論③

(菅義偉「中央公論10月号」から)

<3>国と地方の権限には再検証が必要

 国と地方の権限は再検証が必要です。中央と地方の権限を考える際に災害対策が参考になりますが、災害時の司令官は都道府県の知事になります。しかし、政令指定都市の場合、市長に権限を委ね、実際の仕事も市長が担った方がよいように思います。なぜなら地域ごとの被害状況に応じて細かい対応が必要だからです。

 私は2016年の熊本地震の時の経験を踏まえて、政令指定都市に権限を移譲しなければならないと考え、そのための法律を作りました。ところが政令市の市長にもいろいろな考えがあって必ずしも移譲されればよいという考えでもなかった。結果、政令指定都市に権限移譲するか否かは、手挙げ方式にしました。 

 (感染症対策も)場合によっては政令市にまで権限を委譲し、きめ細かい対応をすべきだと思います。一方でそれは、地方間の実力差が出る対応でもあります。今のコロナでも、地方自治体の対応がうまくいっているところもあれば、いろんな問題にぶつかっているところもあります。

 もちろん国は枠組みを作ることに責任があります。大きな基本方針を決める、交付金などのお金の対応をする、マスクなどの物資対応をする。それが国の仕事だと思います。その枠組みの中で、災害でも感染症でも、地域の実情に応じて各自治体が対応する。もちろん地方が対応に困る場合には国は支援する。問題が発生すればすぐ手を挙げて、国に相談してほしい。

 

 

■道州制ウイークリー(220)2020年10月3日

◆今、改めて問われる道州制①

(江口克彦江口オフィス代表「月刊 事業構想10月号」から)

 大都市部を中心に流行が拡大した新型コロナウイルス感染症だが、緊急事態宣言は全国一律。宣言が解除された後も、国と都道府県では方針の食い違いがみられ、感染拡大が止まらない。コロナ危機は、道州制の導入を再び、真剣に検討するきっかけになりそうだ。

○国土を細切れにする時代は終わった

 コロナウイルス感染拡大症対策は東京基準で、また、国の思惑で考えることができないはずである。都道府県を改編し、道州制に改め、広域行政を考えるべきではないか。38万平方キロの国土を47区分すれば、1区分がまことに狭小過ぎることが分かるだろう。47区分にしたのはおおよそ140年前(明治21年)。300藩を47区分したのは、当時の英知であろうが、その区分を今なお維持している弊害は大きい。コロナウイルス感染症対策が,経済的にも行き詰まるのは当然である。このコロナ禍を機に、47区分を12区分前後にし、それぞれの区分に、かなりの主体性を持たせる国のかたちにすべきではないか。

○道州制は分担統治

 ここでいう道州制は、中央集権的かつ東京一極集中の国のかたちではない。日本を分断するのかという人もいるが、「分割統治」ではない。「分担統治」である。「国」と「広域自治体(道州)」と「基礎自治体」の役割を明確にしようということだ。国は、例えば、①皇室②外交・国際協調③国家安全保障・治安④通貨発行・金利⑤通商政策⑥資源エネルギー政策⑦移民問題⑧大規模災害対策⑨最低限の生活保障⑩国家的プロジェクト⑪司法・基本法⑫市場競争の確保⑬財産権の保障⑭国政選挙⑮国の財政⑯国の統計・記録の16項目を担当。広域自治体は、広域の公共事業、経済産業の振興、警察治安、雇用対策等を担当。基礎自治体は、保育所・幼稚園、小中学校など住民に密着したすべての行政を担当する。

 

■道州制ウイークリー(221)20年10月10日

◆今、改めて問われる道州制②

(江口克彦江口オフィス代表「月刊 事業構想10月号」から)

繁栄拠点が1箇所から複数カ所

 もし、広域自治体、すなわち地域が主体の道州制を採っていたならば、コロナ感染症対策も、対策費(大規模災害対策適用)とワクチン、治療薬の開発(国家的プロジェクト適用)は、国の責任として取り組み、具体的な対策は、道州が担当ということになっていたならば、それぞれの道州で、国や東京基準でぐずすることなく、もっと迅速にコロナ対策をとることができたはずだ。

 その迅速さが感染を今よりもかなり抑え、経済も、とりわけ、各地域の町の飲食業、零細小企業も活性化していたのではないかと思う。感染症陽性者も、例えば、関西州ということであれば、大阪の受け入れ病院だけでなく、和歌山や滋賀、京都の病院をも活用できるということになる。47分割統治の国のかたちを12前後の分担統治体制にすることが、これからの我が国の危機管理だけでなく、繁栄拠点の分散化による、「日本の驚異的な成長」につながることは必定である。

 新型コロナウイルス感染症は、いずれは終息するであろう。そのとき、今の都道府県単位ではなく、広域自治体、すなわち道州制に国のかたちを変えれば、少なくとも、繁栄の拠点が一カ所から複数カ所になる。道州が12なら、12の繁栄拠点ができる。それならば、それぞれの道州がその望むところの拠点づくりをすればいい。これからは、AIを組み入れたロボット産業、高度医療産業、再生エネルギー産業、バイオ・ナノテクノロジー産業、新素材開発産業、高齢者快適産業、環境関連産業、ワーケーション産業、超農業等々、いままでにない新々産業が急速に進展することは誰もが指摘するところだろう。

 また、コロナ禍によって新しい改革、革命的な働き方、考え方に気づいた人たちもいるだろう。であるとすれば、国のかたちを変えなければならない。道州制に改めなければならないと気づき始めた人が出てきている。

 

 ■道州制ウイークリー(222)20年10月17日

◆今、改めて問われる道州制③

道州の開発例――北海道・東北州・東海州・関西州

(江口克彦江口オフィス代表「月刊 事業構想10月号」から)

 各道州をどうするか。北海道は、ワーケーション(観光地やリゾート地で労働と休暇を組みあわせ、働きながら休暇をとる過ごし方)産業の拠点になればいい。コロナで働き方の選択として、ワーケーションが注目されているが、梅雨のない、また、雪質のいい北海道は、日本だけでなく、世界中のワーケーションの拠点に最適である。世界中からビジネスマンが集まってくる。彼らが、北海道の経済を活性化してくれる。

 東北州は、超農業の拠点。米はもちろん、農産物は、東北州が一手に引き受ける。しかも、AIを組み込んだロボットをフルに使い、生産性の高い農業をする。農地というより農業工場というか、ワンフロアが東京ドームほどの数階建てのビルを建て、各層にそれぞれ作物を作る。1階は米を、2階は野菜を、3階はトマトを作る、というようにする。水耕栽培、無農薬ということを売り物にして世界中に輸出すればいい。

 東海州は、AIロボット産業の拠点。もともとこの地域は、飛行機から自動車までのものづくりの下地がある。だから、大抵のAIロボットを生産する拠点をここにつくればいい。多くのビジネスマン,ワーカーが、それぞれの技術を持って集まってくる。

 関西州は、高度先端医療産業の拠点として、発展するように舵をとる。病院公園をつくり、内科棟、外科棟、産婦人科棟、総合医療棟、感染症棟、ガン治療棟など、モノレールで結ぶ。病院と高度先端医療産業とスーパードクターのいる病院群が一体であることは、医療機器の開発を敏速に行うことを可能にする。

 

 

■道州制ウイークリー(223)20年10月24日

◆今、改めて問われる道州制④

道州の開発例――四国州・中国州・九州・沖縄州・東京特別州

(江口克彦江口オフィス代表「月刊 事業構想10月号」から)

 道州制になって、最も面白い州は四国州かもしれない。四国州は、フランスとスペインを結ぶサンティアゴ・デ・コンポ―ステーラ、通称サンティアゴ巡礼ルートに匹敵する四国八十八ヶ所のお遍路ルートがある。これを活用しない手はない。整備して、世界中から「お遍路さん」に来てもらう。単なる観光ではなく、「心の道」「瞑想の道」になるだろう。もちろん旅館も意識して昔風にしてみる。

 2045年頃、技術が人間を超える、いわゆるテクニカル・シンギュラリティになるといわれている。だからこそ、人々は、心、精神に感心を持つ。四国は世界の「精神のメッカ」になる。まして、四国州で相続税を一律10%にすれば、日本の富裕層は、四国に移住するだろう。空港も、四国州の中央に作り、放射線状に道路を走らせる。

 中国州は、広島を中心に、国際平和研究所を創り、ノーベル賞クラスの知識人を招聘する。九州は、観光地を主眼とすればいい。温泉もあるし、風向明媚。沖縄州は、九州と連携して、観光立州。

 東京特別州は、芸術・文化の都になればいい。いずれも、AI、ロボット、IoT、ナノテクノロジーなどの超高度先端技術を組み入れることが前提であることは言うもでもない。

 

 

 

■道州制ウイークリー(224)20年10月31日

◆今、改めて問われる道州制⑤

中央集権、一極集中は限界

(江口克彦江口オフィス代表「月刊 事業構想10月号」から)

 広域自治体、道州制、即ち分担統治にすれば、各州に繁栄拠点ができるだけという批判もあるが、ならば、いま、東京一極だけが繁栄しているのを拱手傍観でいいのか。道州制にすれば、繁栄拠点が10なり、12に増えることは確実である。

 そして、自分たちの地域を自分たちで決めていくことになる。人が決めることに従うより自分が決めることにチャレンジしていく道州制にすることが、これからの若い国民にとっても面白いだろうし、日本という国の活性化、繁栄につながっていくだろうと思う。

 既に「中央集権、一極集中」は「体制疲労」をし、「体制の限界」に来ている。そのことを、国民一人ひとりが自覚すべきだと思う。まさに、福沢諭吉の「一身独立して、一国独立す」という言葉を実行実践すべきだ。新型コロナウイルス感染症を機に、我々国民は、国のかたちを変えること。そこまで徹底しなければ、このままでは、コロナが終息しても遠からず、日本は沈むだろう。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(225)20年11月7日

◆これが九州道州制ビジョン①

 (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

 ▽膨大な無駄が指摘される中央集権の弊害

 「いまなぜ、九州に道州制なのか」という問いかけは「国のかたちを変えなければ日本に明日はない」という切実な訴えとワンセットになっており、現在の日本の国のかたちに大いに問題があり、国民の生活に悪影響を及ぼし、経済の活力をそぎ、膨大な無駄を生じさせているという認識があるからである。その問題とは、過度の中央集権、都道府県と市町村という現在の地方行政区域の狭さであり、官僚制による縦割り行政などで、こうした問題は現行の行政の組織を大きく変えない限り問題の解決はないのである。そこで浮上してくるのが道州制による改革である。九州においては、1960年代から「九州はひとつ」の理念のもとに「九州府構想」などの九州共同体の提唱がなされ、様々な観点から論じられてきた。

▽「九州のことは九州で決めるしくみ」

 九州を国内外の企業が自由に活動でき、魅力ある地域にし、住人が住みよい地域にするには、九州が地域発展の政策に関して自らの権限と財源、人材を持ち、国に依存せず、国の介入を受けず、政策の優先順位を自ら決定し、地域文化に根付いた地域本位の施策を行うシステムを構築する必要があり、東アジア経済圏の拠点として繁栄していくためにも九州自治州すなわち道州制の実現が必要である。

 

 

■道州制ウイークリー(226)20年11月14日

◆これが九州道州制ビジョン②

     (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

  九州では21世紀に入り道州制の議論が活発化、02年2月には九州7県と沖縄の知事が集まる九州地方知事会が「道州制等都道府県の在り方を考える研究会」を設立。05年5月10月には九州・山口経済連合会(九経連)など経済団体と九州地方知事会が「九州地域戦略会議」を設立、「九州はひとつ」の理念のもと、官民一体となって、九州独自の発展戦略の研究や具体的施策の推進に取り組むことになり、経済界、知事会の各県の部局長、学識経験者らで構成する「道州制検討委員会」が発足した。同委員会は06年10月に「道州制に関する答申」を報告、翌年5月には矢田俊彦委員長が委員長となる第2次道州制委員会が設立され、08年10月には道州制の「九州モデル」が、09年6月には「九州の目指す姿、将来ビジョン及び住民・国の関心を高めるためのPR戦略の検討」が答申され、一応の結論が出た。

 九州市長会でも06年10月に、九州における道州制等の在り方研究会が「九州府構想」を発表、09年5月には実現に向けた計画案を提示、九州地域戦略会議などとも連携していく考えを示した。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(227)20年11月21日

◆これが九州道州制ビジョン③

     (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇九州地域戦略会議が挙げる道州制導入を目指す6つの理由(上)

  • 九州を活性化し、住民の暮らしを豊かにする

地域の文化や歴史、特性に根付いた地域づくり、生活空間づくりのような施策はその地域に暮らす人々に身近な行政でなければできない。九州の活性化と住民満足度を高める施策を実現していくためには、道州制を導入して九州が一体となり、産業政策や社会資本整備などに関する権限と財源を持つとともに、一つの国に匹敵する経済圏としてスケールメリットを発揮できるシステムを構築することが必要だ。

  • 中央集権システムを改革する

グローバル化が急速に進み、人々の価値観が急速に変化していく中で、これまでの中央集権システムでは、激変する国際社会への対応や東京一極集中の是正、個性豊かな地域社会の形成、少子高齢化・人口減少社会への対応など、新しい時代の諸課題に対する迅速・的確な対応が困難になっている。国を補助金配分などのこまごました事務から解放して、その役割を外交、防衛、通貨管理など主として国家の存立にかかわるものに重点化することで、国家として必要な問題解決力を高めるとともに、国民の行政に関する行政の多くを地方に移譲し、地方に任せるシステムを構築することが求められている。道州制は地方分権の有効な手法である。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(228)20年11月28日

◆これが九州道州制ビジョン④

     (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇九州地域戦略会議が挙げる道州制導入を目指す6つの理由(中)

③市町村制度と都道府県制度を改革する

 急速なグローバル化に伴って住民や企業の活動圏が拡大するとともに、環境問題や少子高齢化・人口減少社会への対応、高速交通整備など、都道府県や市町村の区域を越える広域的課題が増加している。しかしながら、現在の都道府県や市町村は、機能・規模の両面で時代に合わなくなり始めている。これらの問題に対応していくためには、道州制を導入して、市町村は基礎自治体として住民サービスの大部分を担い、道州は広域自治体としてより専門的、広域的、戦略的な機能を担うことを基本とする新しい地方自治の姿を目指すことが必要だ。

  • 国と県の二重行政を解消する

国と県の二重行政や、許認可などの申請手続きの煩雑さによる行政の非効率性が強く指摘されて入れる。同じような施策は一本化し、窓口を統一して、効率性、有効性を高めることが求められている。国の役割は国家的見地から行うべきものに重点化し、地域に密着した行政サービスは企画立案から管理執行までを一貫して地方が担うようにすることが必要だ。このような国と地方の抜本的な役割分担の見直しを実現するためには道州制の導入が必要。

道州制ウイークリー(207)~(210)

■道州制ウイークリー(207)2020年7月4日

◆「一極集中」から「多極集中へ」

(広井良典『人口減少社会のデザイン』より)

近年の東京圏への人口流入がしばしば問題なっているが、しかし他方で。札幌、仙台、広島、福岡といった地方都市についてみると、これらの都市の人口増加率はかなり大きく、中には福岡のように東京をしのぐケースも見られるという事実がある。実際たとえば、2010→2015年の人口増加率は、東京23区が3.7%であるのに対し、札幌2.1%、仙台3.5%、広島1.8%、福岡5.1%という状況になっている。従って、現在進みつつあるのは「一極集中」というよりもむしろ「小極集中」とも呼べる事態ではないだろうか。

今後の展望としては、「一層の小極集中」に向かうか、「多極集中」に向かうかの分岐点に私たちは立っているという見方が可能と思われる。「多極集中」とは、「一極集中」でも、その対概念としての「多極分散」のいずれとも異なる都市・地域のあり方であり、国土あるいは地域の「極」となる都市やまち・むらは多く存在するが、しかしそうした極となる場所は、出来る限り「集約的」で歩行者中心の「コミュニティ空間」であること重視した姿になっているというものである。

「一極集中」と、その反対の「多極分散」とは、いずれも高度成長期ないし人口増加の時代に提起されたコンセプトで、かつ東京等の大都市への移動が進む中で、それを「一極集中」として批判しつつ、その逆として「多極分散」が唱えられたわけだが、現在のような人口減少時代にあっては、「多極分散」という姿はかえって低密度すぎる、拡散的な地域を招いてしまうことになる。そうであるがゆえに「多極集中」、つまり多極的でありつつ各々の極は集約的であるような都市・地域像が「人口減少時代社会のデザイン」の基本思想の一つとして重要なのである。

 

 

■道州制ウイークリー(208)2020年7月11日

◆道州制への提言①    (森地 茂『国土の未来』より)

▽道州制の目的

 地方分権に向けてフランスは憲法改正を行っている。先進国の中で日本と並ぶ中央集権国家フランスの動きは注目に値する。その目的は、より住民に近いところで意思決定がなされるべきだという民主主義論と地域戦略を画一的に設定するのではなく多極化しておくことが、国としての柔軟性と総体としての魅力を高める意義を有すると考えられる。

 我が国では、市町村合併が進む中で、地方分権の受け皿として都府県では小さすぎるため広域圏を行政単位とすべきであるとの意見から従来よりは現実味を帯びた議論がされるようになった。

 道州制の今日的意味は、第一に住民の目が届きやすい政治、行政の仕組みが求められていること、第二に地域の財政的自立の必要性、第三にそのためには全国一律ではなくそれぞれの地域に合った制度や資源配分が不可欠であること、第四に日本の各地域がアジアの中でそれぞれの個性を持った位置づけを目指す必要があることなどである。

 上記第二の目的(財政的自立)のためには、第四、また第二および第四のためには第三が必要である。なにより重要なことは、アジアの中で個性を持った地域として、国内投資や、海外資本の直接投資を誘致し、観光地として内外から来訪者をリピーターとして集め、人材や、産業、歴史・文化、自然など多様な地域資源を活用して、良好な域際収支で、生活の質を高めることである。

 *フランス地域圏(région レジオン)フランスは1980年代から数度にわたり地方分権改革が進められ、最も大きな地方行政区画である地域圏(州に相当)を2016年に欧州本土領で22から13に、海外領土は5の計18に再編された。

 

 

■道州制ウイークリー(209)2020年7月18日

◆道州制への提言②    (森地 茂『国土の未来』より)

▽道州制のサイズ

 道州制の目的を達成するためには、①財政規模、②国際機能集積、③地域の魅力の多様性、④自立経済圏としての産業の多様性と市場規模、⑤歴史・文化の一体性、⑥海外からの地域認知性、⑦太平洋・日本海への展開可能性の諸案件から見たサイズを検討する必要がある。それに加えてこれらの条件を満たすための自治体としての能力を有しうる規模、すなわち予算をはじめとする資源の配分の自由度が問われることとなる。

 この中で①に関しては、三つの予算配分機能が重要である。第一に公平性である。最低限のサービスを個人や地域に保証できる能力を有する財政規模が必要である。第二は逆に、重点配分の魅力を有する財政規模である。例えば小さな自治体では全部の資源を使っても高速道路は整備する余裕はない。第三は、リスク負担能力である。ある規模がないとリスクを負担する余裕は持てず、保険等に頼るとその分コスト高となる。起債の規模や利率にも限界がある。これらの限界があると結局住民サービスには限界があり、居住希望者や、立地希望企業も少なくなり、財源不足を招くという悪循環に陥る。

この間店は予算のみならず、人的資源や制度も含めた資源配分全般に関して必要な機能である。もちろん、地方自治野本来の目的である住民の身近な政治的決定システムでこれらの志願配分を決められることが前提となる

 これらを考えると、道州制の自治体サイズは、日本を7,8地域に分割した地域であろうか。

 

 

 

■道州制ウイークリー(210)2020年7月25日

◆道州制への提言③    (森地 茂『国土の未来』より)

▽地域内の個性と開放性

 海外から見た広域行政圏の個性、明解なイメージ、知名度は重要である。明快さと同時に多様性も重要だ。地域(ブロック)全域で中心的機能を一都市に集めて初めて国際都市としての競争力がつき、それが地域全体の競争力強化につながる。ブロック内の20~30万人程度の合併都市、県庁所在都市、ブロック中心都市のそれぞれが異なる機能と魅力を発揮する。合併都市の中でも中山間地の農山村や漁村もその存在がブロックの魅力の重要な構成要素である。各ブロックが同一の価値軸上ではなく、異なる個性を競い、そのうえで企業誘致や観光、技術開発、生活の質等を競うこととなる。企業誘致のための資源配分が地域内競争のために分散化され、集中的に対応した他ブロックに負けては意味がない。ブロック内の各地域がそれぞれの産業を有し、結果的に多様な産業があることが強みである。

 時代の変化で産業構造が変わることへの対応力、ブロック内の経済循環による地域内所得の確保、新たな企業立地の魅力要因となる関連産業の種類、ブロック内の需要規模と等々が重要である。

 ブロック間の競争とは言っても、もちろん各ブロックが独立国になるのではない。ブロック間でも、また異なるブロック内の都市の間でも連携や協調が、従来の地域間競争以上に大きな意味を持つ。

 官と民の間も、また上位行政機関と下位行政機関の間も、役割分担や補助金による誘導ではなく、健全な競争や自主的努力を引き出すインセンティブをいかに制度化するかが課題となる。

 道州制への移行は、単に都府県の合併ではなく、また地域ごとに異なる個別制度創出だけでなく、行政のあり方そのものの変革を伴うことが重要である。国の機能の地方移管や、財源移管のみから議論することは適切ではない。地域戦略と目標設定をした上で、その実行体制や制度変更、行政マネジメントのあり方等も含めて、多様なシミュレーションを通してなされるべきであろう。

道州制ウイークリー(203)~(206)

■道州制ウイークリー(203)2020年6月6日

◆新しい国のかたち「二層の広域圏」②

(森地茂『人口減少時代の国土ビジョン』より)

<ビジョン座談会>森地茂・大石久和・葛西敬之・寺島実郎各氏

○否応なくアジアとの関係が緊密化し、国を超えて資本、人口が移動する時代になって、日本という国の単位ですべての意思決定をしていたのでは、それぞれの地域の特性を活かした観光流動やビジネスを行うことはできません。それをきちんと行うためには、むしろ「地域ブロック」単位で意思決定を行い、海外との交流がより密に行える、そうした戦略に進める必要があると思います。

○インフラというのは、社会のある仕組みの中の一つですから、社会の動きによって当然変質していかないといけない。インフラはもっとダイナミック(動的)なもので、時代に合わせたインフラが必要で、これに伴って経済・社会活動などを大きく変化させていくものです。インフラ整備には「国家百年の計」が欠かせない。「均衡ある発展」というのが高度成長期の所産だとしても、縮小するパイの中では、戦略的に重点化を考えていかないと日本の将来は明るいものではありません。戦略性とは何かというと、常に新しいもの、より進んだものにチャレンジすることにある。これからの国土づくりも、ぜひ戦略性をもって、長期スパンを考えた鋭角を立てていただきたい。

○地域の自立と競争力を生む制度と装置にーーこれまでの「日本の施経済成長の成果をわが地方・県にもください」ではなくて、それぞれの地域が国全体に対してどういう役割を果たすのか、という積極的な意味で、強靭で柔軟な地域をそれぞれにつくることによって国全体を強くする施策が必要なのではないでしょうか。我が国は「競争力の構築」という理念に基づいて、新たな「制度」と「装置」を開拓していく必要があります。構造改革を進め、時代にあわなくなった制度的な壁を破る必要がある。

 

 

■道州制ウイークリー(204)2020年6月13日

◆新しい国のかたち「二層の広域圏」③

(森地茂『人口減少時代の国土ビジョン』より)

わが国の交通ネットワークが全国的に形成されたことによって、経済・社会活動が広域化し、地域同士の相互補完、依存関係が深まり、地域の人々の圏域意識も変化しています。このような国民の価値観、圏域意識の変化に対応した新しい国土ビジョンが必要です。

人口減少下にあっても、人々が誇りを持って生活できる場を整えていくことが重要です。そのためには、定住面や交通面などで条件の不十分な地域は、これまでの定住人口の定着を目指した地域ずくりの視点だけでなく、国民の多様なニーズ、ライフスタイルに応えられる地域づくりを進め、交流人口、情報交流人口を獲得し、拡大していくことが重要です。

そこでは、既存の行政区域を超えた、戦略的・広域的な対応が必要とされます。このビジョンを具現化したのが『二層の広域圏』です。『二層の広域圏』は、『地域ブロック』と『生活圏域』の2つの視点で、日本や地域社会のあり方を考えるものです。

第一の視点の『地域ブロック』は、東アジアを交流・連携の視野に入れ、複数の都道府県から構成される広域の地域のあり方を考える、ちょうど人工衛星から俯瞰する視野のようにユーラシア大陸を眺め、国家並みの大局的なビジョンを考えるものです。第二の『生活圏域』は、複数の市町村から構成される、交通1時間・人口30万人ほどの地域を考える、ちょうど鳥の飛ぶ高さから身近な地域のあり方を考えるものです。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(205)2020年6月20日

◆新しい国のかたち「二層の広域圏」④

(森地茂『人口減少時代の国土ビジョン』より)

▽国際的・広域的な視点による「地域ブロック」

人口600万~1000万人規模の「地域ブロック」であれば、海外から見た地域の一体感と独自性を明確にすることができます。そして、地域の国際ゲートウェイの成立に求められる集客人口などが確保でき、多様な人材の育成、重層的で多彩な地域社会の形成や活発な経済活動も実現できます。こうしたことから、「地域ブロック」の圏域は現状の地域間の結びつき、今後の東アジア諸国などとの交流関係、経済力や財政力のマスメリットが活かせる、自立的な圏域となるよう戦略的に設定する必要があります。

その際,脊梁山脈を横断する交通網を活かし、日本海側と内陸部、太平洋側の交流・連携により、地域の産業力や観光資源を有効活用できます。すなわち、国土を横断する連携によって地理的な特性などを発掘し、独自性のある東アジア戦略が立案可能となります。そのためにも、日本海と太平洋の2つの海に面した圏域を考えていくことが重要な論点となるでしょう。さらに、国際競争力のある産業構造、国内外からの投資先、訪日外国人や国内観光客など、海外や国内他地域から見た存在感と特性を有し、自立した圏域としていくためには、「地域ブロック」の戦略的なマネジメント計画を立てる必要があります。

国際競争力があり、自立した「地域ブロック」とするためには、国際人の育成、「世界を相手にするリーディング産業」の創出、産業の集積、起業を促進する環境を整える必要があります。「地域ブロック」内の大学などの学術・研究機関と、企業そして行政など、産学官民の連携を強化するための交通ネットワークの整備が必要となってきます。ソフト・ハード両面にわたるインフラを国家戦略として位置づけて、推進することが重要です。

 

 

■道州制ウイークリー(206)2020年6月27日

◆新しい国のかたち「二層の広域圏」⑤

(森地茂『人口減少時代の国土ビジョン』より)

▽生活密着の視点による『生活圏域』

人々が交通手段を用いて無理なく都市部に移動できる時間距離を1時間(交通1時間圏)とし、現在の県庁所在地並みのサービスが受けられる30万人前後の圏域を「生活圏域」の目安として見ると、概ね82の都市圏(生活圏域)が成立し、ここに全人口のほぼ9割が居住しています。「生活圏域」は概ね同じ水利共同域にあり、自然、歴史、文化など生活を取り巻く環境を共有しています。また、「生活圏域内に居住する人々は、同じ域内に通勤・通学先を求め、医療、買い物、公共サービスなど都市的サービシも同じ圏域内で受けることができます。

1つの「生活圏域」の中には、様々な圏域が重層的に存在しています。静岡生活圏域のように圏域内の複数の都市(静岡、焼津、藤枝、島田の4市)が相互に補完し合う構造(ポリセントリック)、帯広生活圏域のように中心都市(帯広市)に一極集中している構造(モノセントリック)など、多様な形態が見られることから、生活圏の交通ネットワークなどの検討では、圏域構造を十分に考慮する必要があります。「生活圏域」を生活に密着した、利便性の高い、暮らしやすい圏域としてかたちづくっていくには、移動目的別の圏域の広がりや産業構造、都市機能・サービスの配置、それらへのアクセス条件などを踏まえ、それぞれの地域の特性に応じた将来ビジョンを創り出していくことが大切です。

日本の人口が2050年には約20%減少すると予想されている中、「生活圏域」人口が同程度減少した場合でも、引き続き、現在の都市的サービスや文化的サービスが、維持される必要があります。そのためには、圏域内の市町村が積極的に連携し、都市的サービス、文化的サービスを互いに分担できる地域構造にしていくことが必要です。