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道州制ウイークリー(259)~(263)

           《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(259)2021年7月3日

◆日本再生のカギは30万都市経済圏④

(冨山和彦・田原総一郎『新L型経済』より)

◇東京から地方への分配が地方を衰退させる

 第二次安倍政権で地方創生を掲げたときに地方の首長たち、あるいは県知事たちは、国からもっとお金がほしいということを言っていたようだ。地方には金がないから結局、地方交付税という形で実質的には東京の税収を取るということになる。地方から人材が東京に集中していることのバランスを税の配分という形でバランスを取っているとも言える。だが、こうした構造がいいものとは言えない。

 首長だけでなく、今の古い世代の経営者は大半そうした発想で、いかにして行政からお金をもらうしか考えていません。田中角栄的な政策がその象徴ですが、基本的に日本の地方政治というのは、直接、間接と様々な形で中央から地方に事業なりお金をばらまく仕組みがたくさんあることでしょう。旧来のL型経済はいかに外の人にお金をもらうかという点に目が向けられていました。これは国全体でもそうで、外部から収入を得ないと経済は成長しないという、かつての加工貿易立国モデル、いわば重商主義的な発想から抜け出られない人が多い。

 国内においては、まだ東京にはお金があるので、そこから吸い上げて地方にばらまくという仕組みになってしまって、地方経済は維持できているわけですが 、東京の経済力を支えるグローバル企業がピンチになっている以上、このモデルは持続可能とは言えません。そして最大の問題は、地方に分配を続けることで地方で生産性を上げる努力をしなくなってしまうことにあります。

          《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(260)2021年7月10日

◆日本再生のカギは30万都市経済圏⑤

(冨山和彦・田原総一郎『新L型経済』より)

◇地銀ネットワークなしに地方再生はない

 地銀は多くの場合、融資先の企業と先代、先々代からつきあっていて、信頼関係を構築して内側に入っていますから、相手方の会社の何が問題かがよく分かっているケースが多い。彼らは何十回、何百回と顔を合わせているので、書類上でわかることの何百倍、何千倍という情報を得ている。地域の事情にも詳しいですから、どのような手続きを行えばプロジェクトが円滑に進むかを教えてくれます。

 地銀は債権者だから、地方で地銀から借りていない企業はほとんどない。むしろ、幹部を欲しがっている企業の多くは地銀がメインバンクだから、地銀と組んでしまえば、新しいニーズが生まれるし、地銀にとってもよいことが起きる。地銀の役割はすごく大事で、地方の個別の企業再生でカギを握っているのは、地銀です。地方の再生事業を地銀以外にやれるところはありません。行政はそんなことはわからないですから。行政は一つひとつの企業に足を運んでチェックなんかできないし、それこそ書類で見ているに過ぎない。

 本当に地域企業を救おう、地域を活性化したいというなら、地域にもともといる人たちのネットワークを使うしかないのです。地銀にもやはり課題を抱えています。一時期に比べ、明らかにお金も人もいなくなっています。東京でも地方でも曲がり角に来ており、地銀自身も自らの会社と事業のカタチの大改造を行うことで、競争力と持続性を確かなものにしていく必要があります。

           《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(261)2021年7月17日

◆一極集中から分権広域州制度へ①

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 社会は大きく変わりつつある。この1年、世の中を席巻したコロナ禍で大きく傷んでしまった日本、そして世界。その立て直しが大きな課題である。ここは底力を発揮して新しい国づくりをめざさなければならない。コロナ禍に翻弄された日本だが、それを契機に学んだこともある。一つは三密都市「東京」に依存しなくても仕事や生活が成り立つということだ。いま地方移住への関心が高まっている。在宅勤務やテレワークなどを経験し、ゆとりある暮らし、新しい働き方への意識変化が高まっている。脱東京の動きだ。

 これまでは、この国の発展を中央集権による一極集中と、大都市一極集中による効率北に求めてきたが、そのやり方はもう限界にきている。いまこそ脱東京、脱中央集権の国づくりだ。筆者は次の三つを柱に、この国のあり方をリセットすべきだと考える。一つ目は、道路、鉄道、航空の三大高速網の移動を実質タダにするフリーパス構想を実現すること。二つ目は、大胆な規制緩和と地方主権改革を進め、各地における地域づくりの主体性を確立することだ。三つめは、47都道府県を廃止し10州程度の広域州にくくり直すことだ。州政府が内政の地域づくりの拠点として国づくりを競う。

 日本はこれから歴史上経験のない本格的な人口減少期に向かう。日本創生会議(2014年)の予測ではおおむね8000万人となっている。問題は、20世紀に膨れるだけ膨れた国と地方の政府機構、行財政の仕組みをどこまで賢くたためるかだ。

           《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(262)2021年7月24日

◆一極集中から分権広域州制度へ②

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 米国カリフォルニア州一州の面積しかない日本。その7割が山林地であり、可住地は3割程度に過ぎない。可住地の2割に満たない東京圏、名古屋圏、大阪圏に人口の半数が集まる。人口の地域的偏在で一番大きな問題が東京一極集中だ。東京圏は国土の0.6%だが、ここに国民の1割以上が集まっている。政治、行政、経済、情報、教育、文化など日本のあらゆる分野の高次中枢機能が集中している。GDPの2割、国税収入の4割、株式取引高の9割、本社7割、外国企業の5割、情報サービス業の5割、銀行貸出残高の4割、商業販売額の3割を占有、大学生全体の4割が東京圏に学ぶ。主要テレビのキー局、大手新聞、出版社もみな東京。この集中は世界でも突出している。

その果実は東京に一極集中し、地方は疲弊するだけの状況にある。大ぶりの改革に挑む必要がある。分権改革を進め地方主権体制を目指す、広域圏を州として内政の拠点にする、すでにある三大高速交通網の移動コストを公共管理で下げ、動きを流動化することだ。

時代は大きく変わった。人口大減少期に入った日本の行政はどうあるべきか、1府12省庁体制、47都道府県体制、1718市町村体制、そして何層にもわたる類似の出先機関があり、重複行政、重複機構があまりにも多い。この国を「賢くたたむ」改革に挑む時ではないのか。ここは第三者機関である「第三次臨調」を設置するタイミングとみるがどうか。

 

           《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(263)2021年7月31日

◆一極集中から分権広域州制度へ③

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 国と地方の関係を改めて見直す時期にある。民間にできることは民間で、地方のことは地方で――これは自由主義体制の国では常識。よく<自助><共助><公助>といわれるが、日本はいつの間にか<公助>が肥大化し、その<公助>も身近な自治体より遠い中央政府が仕切りるかたちに戻っている。地方分権が後退している。今回のコロナ禍対策は各知事が現場責任者である。だが、国が「特措法」のガイドラインとする「基本的対処方針」で箸の上げ下ろしまで指示する動きとなり、結果として国と地方の役割分担が不明確になった。全国一律、一つのモノサシでしか法制やその制度運営ができない。

 分権化には多様化した地域、多元化した住民のニーズに合うような多様なモノサシで迅速に対応できる、そこに価値がある。2000年改革で、税財源の集権構造の解体はできなかった。税金は国が6割、地方が4割集め、使う方は地方が6,国が4という「ねじれ」の仕組みが残存した。このねじれギャップを国が補助金、地方交付税で埋め合わせるという仕組みだ。その際、国はそのカネで地方の施策や事業内容、人件費などをコントロールする。その税財政の集権構造がいまも変わらず残っている。本来なら、地方は歳出6にあわせ6の税を集め、国は歳出4に合わせ税も4詰める。そのかたちが望ましい。ただ極端に地方と都市部の間に格差がある。財政調整はいる。地方交付金のかたちでその使い方は地方の自由に任せる。そうした北欧型の「分権・融合型」へのシステム転換が日本に合うはずだ。