12州制ウイークリー(333)~(337)
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会
■12州構想ウイークリー(333)2022年12月3日
◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」⑧
(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)
「地方は国の下請け」といわれる理由
◆地方の仕事は国がつくった計画を実施するだけ
2000年4月に「地方分権一括違法」が施行されたことで、国と自治体の仕事の関係は新たなものになったが、現実的にはそれほど大きな変化はない。一括法依然の長期間にわたって維持されてきた国と自治体の関係は以下の通りだ。
一括法依然の自治体の仕事は、「機関委任事務」「団体委任事務」「行政事務」「固有事務」の4つに分類されていた。
「機関委任事務」は、国から自治体の長に委任された事務のことで、計画は完全に国によって立てられ、自治体はその実施だけを行うというもの。「団体委任事務」とは、国の事務のうち、ある一部を国からの委任を受けて自治体が実施する事務で、計画については国と自治体双方で行い、実施は自治体が行う。「行政事務」は、公権力を背景とする規制的な事務のこと。行政事務を計画するのは国と自治体双方だが、規制の基準などは国が決め、計画を実施するのは自治体となっている。「固有事務」とは、自治体の運営に関する事務や地域住民の生活・福祉などを向上させるための各種事務のことで、計画も実施もともに自治体が行う。
◆国の制度が自治体の活動を縛っている
これまで自治体が自分の裁量でできる仕事は「固有事務」だけで、その他の仕事は、国の関与があった。これら4つの仕事以外にも、国が自治体の独自の活動を縛る制度として「必置規制」というものがある。これは、国が自治体に対して設置しなければならない行政機関や施設、特別の資格を持つ職などを法令によって定め、その設置を義務付けるものである。この必置規制も、一括法によって一部緩和されたが、例えば、児童相談所や病害虫防除所、検定所、あるいは食品衛生監視員、児童福祉司、建築主事などを設置することが義務付けらてきた。自治体によっては、必要も余裕もないものを置くことにもなるわけで、この「必置規制」も長年にわたって自治体の自主的な組織運営を規制していた。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会
■12州構想ウイークリー(334)2022年12月10日
◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」⑨
(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)
財政を自前でまかなえない自治体
◆地方は使うお金を自由に集められない
国と自治体の財政を量的に比較すると、日本の自治体の歳出規模は非常に大きい。例えば令和元年度においては、国の歳出が73兆4200億円(全体の42.6%)で、地方が98兆8467億円(同57.4%)となっている。これはイギリスやフランスはもちろん、アメリカやドイツといった連邦制の国に比べても、日本は圧倒的に自治体の方が多い。歳出の量、執行の側面だけで見ると、日本はかなり「分権的」な国といえるのかもしれない。
もう一つの特徴は、自治体の歳出規模が大きいのにもかかわらず、自前の税収の割合は他国と比べて非常に少ないこと。つまり、自治体の仕事は多く、そのために使うおカネも多いが、自治体が自前で集めるおカネは少ない。そのギャップは、国からの財政移転で埋められている。これは地域的なサービスの供給が自己負担の原則からかけ離れていることを意味している。
なぜそうなっているかといえば、自治体には歳入に関する自治が制約されているからだ。自治体は、自分たちの歳入の規模と内容を自己決定できないのである。
◆自前で集められるのは地方税だけ
自治体の歳入項目は多岐にわたるが、主要なものは、「地方税」、国からの補助金と捉えられる。「地方交付税」と「国庫支出金」、そして借金である「地方債」である。この4項目によって、8割から9割の歳入がまかなわれている。
この4項目を自主財源と国への依存財源に分けると、地方税だけが自主財源で、残りはいずれも依存財源だ。それだけでも自治体は国に対して大きく依存していることがわかる。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会
■12州構想ウイークリー(335)2022年12月17日
◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」⑩
(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)
国が地方税を決めている
◆地方税の種類も税率も自由に決められない
地方税は自主財源だから、本来、税目(税金の種類)や税率はそれぞれの自治体が自由に決めるべきなのだが、現実は、国会で決められた地方税法によって細部まで定められており、自治体による自主裁量権はほとんどない。税目については、法定普通税が定められており、自治体はこれを義務として課税しなければならない。つまり、自治体が独自に税金を集めようというときには、国の許可が必要で、自治体が自由に税目を設定することはできなかった。
税率については、国が標準税率を設定している。自治体がそれ以上の税率を設定する(増税)のは問題ないが、税率を低く設定すると、地方債の発行が制限されたり、地方交付税・補助金の算定で不利益を受けたりするなど、「ペナルティ」が制度的に課される仕組みになっている。
◆国が地方税に関与する理由は税源の「偏在」と「重複」
国が地方税に関して自治体を制約する背景として、「税源の偏在」と「税源の重複」が指摘されている。
「税源の偏在」は、地域によって税収に大きな格差が生じていることで、例えば地方税の一人当たりの税収額をみると、東京と沖縄では3倍以上の開きがある。
「税源の重複」には、税源の分離という原則があるが、日本では所得、消費、資産、流通といったように、いくつかに分類できる税源に対して、それぞれ国、都道府県、市町村が重複して課税している。
このように税源に偏在と重複があることで、自治体の課税自主権を拡大すれば、地域によって受益と負担に大きな差が生じ、「均衡の原則」が破られる。それを理由に、国は自治体への制約を行ってきた。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会
■12州構想ウイークリー(336)2022年12月24日
◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」⑪
(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)
財源不足の自治体に配られる「地方交付税」
地方交付税は、広い意味での補助金であり、国と自治体及び自治体間の「財政調整」、そして自治体に対する「財源保障」という二つの機能を担っている。
◆国が集めたおカネを「財源難」の自治体に分配するシステム
地方交付税の基本的な仕組みは国が国税としておカネを集め、各自治体の財源不足額に応じて交付するというもの。この地方交付税の制度に関して問題点は、まず一つに、国が地方交付税に充てられる額と、地方が必要な額が合致しない点がある。地方交付税の財源には国税の一定割合があてられるために、全体の交付税額は国の予算で決定される。一方で、1800ほどある自治体それぞれで不足している額を合計すると、国の予算と一致する場合がほとんどない。そこで、調整が必要になる。
景気の明暗により、交付税額は変動する。昭和50年代以降、法定交付税率は30数%だったが、財政が厳しい時には、実質的には40数%が交付された。国が借金をして地方交付税の穴埋めを行ったのだが、これが財政を逼迫させる原因の一つになった。
◆金額は国が一方的に決定し、自治体の意思は反映されない
それぞれの自治体で必要な額をどう決めるかについては、三つの問題がある。一つ目に、実際に足りない額を支給するか、客観的な方法で不足額を計算するかという問題がある。実際の不足分を支給するようにすれば、自治体は税を集めるのを怠ったり、ムダ遣いをするようになる。二つ目は、人口や面積など一つのモノサシを使うのか、各自治体の条件を踏まえて額を算定するのかという問題。気象条件の違いなどを加味すると、余分の費用が加えられることや、政治家や官僚の介入の余地が大きくなる。三つ目は、意思決定の在り方の問題。自治体に交付される金額は国が一方的に決定し、自治体の意思がほとんど反映されない。自治体は国の言いなりにならざるを得ない。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会
■12州構想ウイークリー(337)2022年12月31日
(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)
◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」⑫
「国庫支出金」がムダと利益誘導を招いている
国庫支出金も地方交付税と同様に広い意味での補助金といえる。ただし、国庫支出金は、国と自治体が協力して事務や事業を行うときに使われるおカネで、地方交付税とは性格が異なる。国庫支出金には3種類ある。「国庫負担金」がその約70%、「国庫委託金」が約1%、「国庫補助金」が約30%ある。
「国庫負担金」は,国が自治体の活動の一部を負担するために交付する補助金である。例えば小中学校の先生の給料は自治体が支払っているが、義務教育に関しては国にも責任があるため、3分の1を負担している。「国庫委託金」とは、国が自治体の経費全部を事務の代行経費として自治体に交付するもの。例えば、国会議員選挙や外国人登録などは、本来は国の仕事だが、国の移管が行うにはコスト的にも事務的にも不合理なので、自治体に行ってもらっている。こうした仕事にかかる経費の負担分が国庫委託金である。「国庫補助金」は、国が特定の事業や事務の奨励や財政維持に交付するもので、廃棄物処理施設施設の整備、福祉事業の促進、道路整備などに対するものなどとなっている。
国庫支出金に関しては5つの基本的な問題がある。1点目は、責任の所在が不明確であること。2点目は、交付を通じて国が関与することで、自治体の自主的な運営を阻害すること。国庫支出金は交付に際して、使い方が細かく条件づけられているからである。3点目は、交付に当たっての細かな条件や煩雑な交付手続きなどが、行政の簡素化、効率化を妨げていること。100万円の補助金をもらうのに何度も上京しなければならず、その経費が100万円以上かかってしまうといった指摘がしばしばなされる。4点目はタテ割り行政の弊害を招くこと。国庫支出金は、各省庁から自治体に回ってくるため、国レベルでヨコの調整がほとんど行われない。その結果、同じような施設が重複して出来上がり、ムダが生じることになる。5点目は、どの自治体にどれだけ配分するのかという基準が曖昧なため、「陳情」の対象となってしまう。