ウイークリー「国のかたち改革」(5)~(8)
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革」(5)2023年2月4日
<どのような経済社会、地域にするのか④>
(飯田哲也・金子勝『メガリスク時代の日本再生戦略』より)
◆産業構造転換のために国家がなすべきこと
アメリカや中国での先端技術の研究・開発では、軍事利用を前提とするものが少なくありません。無人航空機(ドローン)、自動車の無人運転、コンピューターによる地形認証システムなどの基盤技術は、いずれも軍用目的でも利用されています。国防総省高等研究計画局が先端技術開発に重要な役割を果たしています。中国のファーウェイやZTEといった先端技術を担う民間企業も、軍事部門からスピンアウトしてきたもので、似たような流れがあります。こうした基盤技術の上に、シリコンバレーや中国の深圳や雄安は、市場調査を行うことで消費者のニーズをつかみ、IT関連企業が集中するようになったのです。こうした事例からも分かるように、国家によるサポートをテコにして、先端技術が集積するような拠点が生まれてこなければ、新しい産業はそう簡単には生まれてこないのです。
日本では、大学は依然として情報通信機器の基盤技術の開発から遅れた上に、予算が恒常的に削られています。こうした閉塞状況を打破するには情報公開と民主主義を大原則にして国家戦略を立てる必要があります。
昨今のイノベーションの特徴は、プラットフォームとなるスタンダードが変わると、市場が一変するという点にあります。このような大転換に際して、政府は、国有企業か、民間企業か、政府か、市場かといった、旧来的な二分法に囚われてはなりません。新しい産業のためのインフラ整備、研究開発投資を含む初期投資の赤字分をカバーするための制度設計、国際的なデファクト・スタンダードに育てるためのOSの選択と、これに関連するルールの標準化と外交交渉、関連産業の支援、知識産業化の推進、創造性を重視した教育の拡充などにおいて、国家戦略が重要になってくるのです。今の日本は、まるで倒産企業のように、未来を考えずに金を湯水のように使っているだけです。もはや日本は先進国とはいえなくなっています。だからこそ、オールジャパンで新しい産業を創り出す必要があるのです。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革」(6)2023年2月11日
<どのような経済社会、地域にするのか⑤>
(八幡和郎『日本の政治:解体新書』から
◆首都機能移転と地方分権
東京一極集中の排除のために、大阪・関西副都は有効であろうが、東京と大阪だけが栄えるのでは支持されない。他の地方の発展法方向も保障する必要がある。地方自治の仕組みにしても、明治維新の成功は、地方制度を統一整理したことにある。明治、あるいは戦後に始まった地方制度が老朽化しているので、国家的に再構築すべきことと、各地の自主性に任すことを使い分けることが正しい。
東京一極集中を解消するためには、道州制を含めた地方分権とか、首都機能の部分移転の方が現実的だという人もいるが、それだけでは首都にいる人や企業本位の社会システムのままになる構造的問題を解消できない。やはり、本命は国会、政府の移転である。
試案としては、①東京が災害やテロ、システム障害に大阪を官民の西日本センターとして機能させる。「NHK大阪からの全国放送」「東海道新幹線の管制」などはすでに準備されている。②東京で緊急事態が起こったら民間は大阪、国会や官公庁は京都を活用すべきだ。ホテルを臨時の各省庁として使える。大学・寺社の施設も同様。③「国立京都国際会館」を国会議事堂として、京都御所は臨時の皇居として使えるように機能を向上させておくべきである。④中央省庁の組織を見直し、職員の半数は道州に移行させる。都道府県と市町村は300~400の基礎自治体に再編して財政基盤を保証し、生活基盤の整備は任せる。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革」(7)2023年2月18日
<どのような経済社会、地域にするのか⓺>
(八幡和郎『日本の政治:解体新書』から
地方制度については、自民党が道州制を主張し、旧民主党が道州も都道府県も廃止して、全国を300ほどの基礎自治体に分けることを主張していたが、私は、両方同時にするという考えだ。ただし、それを地方分散につなげるためには、公務員をどこから持ってくるかが大事である。道州は基本的には霞が関から片道切符での移籍であるべきと思う。あくまで東京から広島や仙台に雇用を移すべきで、都道府県からの吸い上げは最小限でよい。政策立案は霞が関に残し、実施は道州に、全国統一政策は各道州の話し合いで決める方法もある。
ドイツは「地方分権の国」といわれるが、政策は全国一律が多く、むしろ「地方主義の国」である。教育も各州の文部省の話し合いで立案・実施している。ドイツの中央銀行のドイツ連邦銀行の理事にしても、過半数は各州代表である。また、EUも各国代表が相談して決めることが多いし、持ち回りの「議長国」という制度もある。日本でも、水道行政は主要な大都市の水道局の話し合いが重要な役割を演じてきた。
道州制を採用した場合、国土交通省や厚生労働省、農水省などは、プロパー職員はなくして道州からの出向者で構成してもいい。道州庁の最初の職員は中央省庁からの移籍者、出向者を中心にして、一部は地元で募集すればいいが、新規採用は道州がするので徐々に入れ替わるだろう。
現行の都道府県の枠組みをなくすことは、地域経済維持のためにも現実的でないので、基礎自治体の協議体としての道府県はあってもいい。都道府県議会議員は基礎自治体議員からの間接選挙でいい。職員は基礎自治体からの出向者で構成する。道州や基礎自治体の地域割りは、地元に任すのではなく、地元の意向を早朝しつつも、国会で決めるべきである。明治維新の時のように全国的なリシャッフルが必要だ。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革」(8)2023年2月25日
<道州制の議論をしていこう>
三木谷弘史『未来力』から
自動運転という「未来」が確実に来るとすれば、それが実現したときに国際社会に後れを取らないため、あらかじめ様々な規制を緩和しておかなければならない。そして民間が生み出していくイノベーションを、時には「失敗」も許容しながら支えることは、今の時代における政治や行政の重要な役割だろう。
その点、州ごとに法律や規制が決められるアメリカでは、イノベーションの進展が段違いに早い。ネバダ州では自動運転のテストを公道で積極的に進められるが、別の州ではできない――といった州による競争原理が働くからである。各自治体間での競争を促すという意味で、日本でも道州制の議論をするべきだというテーマも自ずとでてくるはずだ。
最近、アメリカのシリコンバレーで興味深い事態が起きている。そのイノベーションの「聖地」から企業や人材が離れ始めているというのだ。「頭脳」が流失しているという意味の「ブレイン・ドレイン」が起きている。なぜ、そうなったのか。背景にあるのは、新型コロナウイルスの流行に伴う働き方の大きな変化だ。リモート化による「ワーク。フロム・ホーム」だ。アメリカで一つのスタンダードになりつつあるのが「ノー・オフィス・カンパニー」という働き方である。そして快適な住環境を求め引っ越し先を探す。行き先は、シリコンバレーから、税金の低いテキサス州やネバダ州、あるいはフロリダ州だ。
日本国内では自治体同士の競争というものは起きえない。アメリカでは国が徴収する連邦所得税とともに、各州がそれぞれ所得税を徴収している。州によって税率は異なる。企業も同じで、テスラもカリフォルニア州からテキサス州に移転する計画を発表した。日本でも道州制の導入を抜本的に議論した方がいい。例えば、九州州は関東州よりもIT化が進んでいる。関西州は」税金の安さでは一番――。そうした選択があれば企業は様々な経営戦略を、人々は様々な働き方を検討することができる。それぞれの州が「未来」を見据えて多様な施策を打つような競争があった方が、地域の活力は結果的に増していくに違いない。現在のように全国一律の制度を「中央」が決めるのではなく、地域間競争を起こしていくべきだ