道州制ウイークリー(130)~(133)

■道州制ウイークリー(130)2019年1月5日

◆地方創生の起爆剤としての「地方庁」構想

(山崎史郎・小黒一正編著『どうする地方創生』より)

平成の時代は戦後に築き上げた様々な仕組みが時代や環境変化に適応できず、漸進主義的で、抜本改革が進まず、もがく「30年」だった。特に人口減少への対応は、財政・社会保障改革を含めて「道半ば」だ。この大きな理由は何か。

人口増加で高成長の時代には、政治は成長で増えた富の分配を担うことで大きな力を発揮したが、人口減少で低成長の時代に突入して以降、政治の役割は「正の分配から負の分配」に急速に転換しつつあるものの、それに対応できない政治が機能不全に陥りつつあるからではないか。地方自治体や民間に問題を解決する知恵があっても、中央官庁の縦割りの規制や政治的利害が絡み、身動きがとれないケースも多い。

この脱却には、中央省庁が担う政治的な調整コストの一部を分散化する仕組み、すなわち道州制を含む地方分権が必要であり、その鍵を握るのが(広域地方計画を含む)国土形成計画やその基礎となる「地方庁」(仮称)の創設であると考える。

「国土形成計画」や「広域地方計画」では、集約エリアの指定や選択の集中の数値目標を定め、地方庁がその決定や道州制移行の受け皿となる機関として機能する。地方庁は各エリアの地方自治体のほか、各省庁の地方支分部局も束ねる機関で、道州制への移行も視野として、各エリアに地方庁を新設し、各地方庁にはそのエリアの知事と地方長官から構成される「コミッティー」を設置する。このコミッティーは、国の経済財政諮問会議に相当するものとし、各エリアの知事が様々な提案を行いつつ、それを地方長官が総合調整を行い、取りまとめる形で広域地方計画を定める。

 

 

■道州制ウイークリー(131)2019年1月12日

◆道州制移行、2035年頃を目標に

(山崎史郎・小黒一正編著『どうする地方創生』より)

地方庁の「コミッティー」では、広域地方計画を各エリアにおける「骨太方針」の様な位置づけに改め、地方庁は、国の予算編成や規制改革などと連携しつつ、各エリアの規制改革や予算編成も同時に方向づけるものとする。そのため、以下の政策についても推進する。

一つは、「地方交付税の分権化」。現在、地方交付税の配分基準は総務省が定めているが、地方交付税の一定割合(例:30%)を人口比で地方庁に移譲し、各地方庁が独自の配分基準で、各エリア版の地方交付税や広域地方計画に沿った一括交付金等として、各エリア内の地方自治体に配分する仕組みに改める。もう一つは、「規制改革の分権化」も進める。地方庁にも規制改革の法改正案を作成・提案する権限を付与し、当該法案は内閣府が地方庁の代理で法令協議を行ったうえで、国会に提出できる仕組みに改める。

急激な人口減少・超高齢化がもたらす影響が顕在化し本格化するのはこれからが本番であり、その現実を直視し、果敢に選択と集中をしない限り、日本に未来はない。その鍵を握るのが国土形成計画(広域地方計画を含む)や地方庁(仮称)の創設であり、地方創生の起爆剤として機能するはずだ。可能であれば、2035年頃を目標に道州制に移行する政治的なコミットメントを行い、新たに道州議会を設置するシナリオや工程表も同時に定めてはどうか。いま日本の叡智が試されている。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(132)2019年1月19日

◆道州制は国家統治のあり方を変える

(田村秀著『地方都市の持続可能性』より)

道州制の導入となれば、それは国家統治のあり方そのものの変革である。国の出先機関の業務を大幅に道州に移譲してスリム化した国は、グローバル化が進展する中で、国際社会において真に自立した国家としての役割を果たすべく、外交や安全保障などに総力を注ぎ込むことがその本務となる。国際情勢が激しく変化する中で、国の役割を重点化し、内政に関することは基本的には道州と市町村に任せ、真の意味での分権型社会を構築することが道州制導入のそのものの狙いである。

内政の要となる道州は、住民に身近なサービスを市町村に委ねつつ、高度なインフラ整備や経済産業振興、国土・環境保全、広域防災対策など、地域の実情に応じた広域的な行政需要に的確に対応することが可能となる。特に、人口減少社会の中で地域の活力を維持・向上させる観点から、自立的で活力ある圏域の実現に資することが期待されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(133)2019年1月26日

◆甦る道州制論議?

(田村秀著『地方都市の持続可能性』より)

道州制に関する論議は歴史を紐解けば明治から脈々と続けられてきたものではある。1945年に戦時下にできた地方総監府は全国を8つに分け、戦時行政を遂行するための組織だったが、我が国において唯一実現された道州制という評価もある。さらには2006年に道州制特区推進法が制定され、北海道を全国に先駆けた道州制のモデルとして特別な区域にしようとする道州制特区を定めている。

様々な動きがこれまであった中で、今後、道州制に向けた動きは進んでいくのだろうか。道州制が実現すれば、ただちに人口増に転じるといったことは考えられない。一定の産業振興は期待されるが、自治体の形を変えればすぐ成果が上がるといった期待は禁物である。

だが、2045年の人口推計に見られるように、地方ではもはや県ですら、その存在意義が問われるくらいに人口減少となるかもしれない、そうなると単独で行政を行えるのか、疑問の声が上がり、これを契機に一定程度道州制論議が進むということは考えられる。その可能性が一番高いのは高知県や島根県である。人口減少が進むことで広域自治体としての役割を果たせなくなり、周辺の県と合併し、さらには中国、四国、あるいは中四国といった大括りの広域自治体に変えていくことも起こり得るかもしれない。もともと、市町村合併だけでなく、都道府県の合併ということは地方自治法の中で手続きが定められている、想定内のものである。もしかすると、全国一律に、というのではなく、厳しい状況になった地域から順次という流れの中で道州制が実現するかもしれない。

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