道州制ウイークリー(165)~(168)
■道州制ウイークリー(165)2019年9月7日
◆人口減少国家 日本の未来⑤全国で町が消えていく
(河合雅司『未来の透視図』より)
2015年を100とした時に30年後の2045年に人口がどのくらい減るのかを日本地図で示してみると、人口が半数以下になってしまう地域が、北海道から沖縄までかなりの地域に散らばっている。人口5000人未満の自治体が増えていけば、病院や銀行など地域に必要な社会インフラが存在できなくなる事態になりかねない。
北海道では、2045年に実に6割以上の自治体が人口5000人未満の小規模自治体となる。東北でも宮城を除く各県で、3割ほどが小規模自治体だ。北関東では群馬県の25%の自治体で5000人未満になる。東京都の周辺3県でも小規模自治体は確実に増えていく。
中部エリア9県では全県で人口減少が進む。小規模自治体が特に多い長野県では、45年には約半数の自治体が5000人未満となる。近畿エリアの三重、奈良、和歌山では小規模自治体の増加が顕著。奈良、和歌山は約4割が5000人未満となる。
四国4県もまた、人口減少が著しく進む。特に高知は5000人未満の自治体が6割を超える。中国エリアでは鳥取、島根で5000人未満自治体が約4割となり、人口規模全国12位の広島県でも1割の自治体が人口5000人未満となる。九州・沖縄でも全県で小規模自治体が増える。熊本は6割を超える自治体が5000人未満となる。
大都市圏は高齢化が目立ち、地方圏では高齢者の増加率は高くないが、労働者人口の減少が著しい。地域のサービスが消滅する人口規模をみると、2万人以下では美術館、研究機構、ペットショップ、英会話教室などが消える。1万人以下になると、救急病院、介護老人福祉施設、税理士事務所などがなくなり、5000人以下となると、一般病院、銀行などが消滅する。これまで当たり前だった生活ができなくなってしまう。
■道州制ウイークリー(166)2019年9月14日
◆人口減少国家 日本の未来⑥空き家急増、老朽化する生活インフラ
(河合雅司『未来の透視図』より)
誰も住んでいない家や集合住宅の空室が増えている。総務省の調査では、全国にある空き家は2013年時点で820万戸にものぼり、住宅総数(6063万戸)の13.5%を占める。このうち約6割に当たる471万戸はマンションなどの共同住宅だ。住宅が余っていながらも、都心部を中心にタワーマンションや集合住宅の着工は相次ぐ。野村総合研究所の試算(2016年)では、このままでいくと、2033年には住宅の3戸に1戸が空き家となってしまう。
全国には所有者が分からない、また連絡がつかない「所有者不明土地」が2016年時点で九州とほぼ同じ面積の約410万ヘクタールもある。これが年々拡大、2040年には16年の1.7倍に当たる約720万ヘクタールに増えると試算されている。北海道の面積の約9割に当たる。
1960年代に集中的に整備された社会インフラは一斉に老朽化が進む。2033年度には、道路橋の約63%、トンネルの約42%、水門などの河川管理施設の約62%が建設から50年以上となる。財政が悪化する中、インフラの刷新は難しい。インフラに係るコストは利用者が負担するが、人口減少に伴い利用者が減ると利用料だけでは賄いきれない事態が起きる。
水道管の法定耐用年数は40年だが、耐用年数を超えた水道管は、2014年に12%を超えた。それに対して水道の需要は2000年をピークにどんどん下がっている。2018年に成立した改正水道法により水道事業の民間委託がしやすくなったが、はたして参入する民間企業があるか、水道管の刷新を進めながら水道料金の大幅値上げを避けられるのか、見通しは決して明るくない。
■道州制ウイークリー(167)2019年9月21日
◆人口減少国家 日本の未来⑦戦略的に縮むための提言
(河合雅司『未来の透視図』より)
我々は発想を大胆に変えるときである。日本の人口減少はもはや避けられない。ならば、戦略的に縮むことだ。縮むことは必ずしも「衰退」を意味するものではない。戦略的に縮むには、日本人の総仕事量を減らすことだ。
第1のアイデアは、「便利すぎる社会からの脱却」である。24時間営業のコンビニエンスストアは当たり前の風景となった。だが、こうした「便利さ」を維持するには、膨大な人の手が必要である。すこし便利さを我慢することで、これらに携わっている人を減らし、その分、必要不可欠となる他分野へと人材をシフトすることができる。
第2のアイデアは、「国際分業の徹底」だ。賃金の高い国が「大量生産・大量販売」のモデルを続けることには無理がある。コンピューターの発達は、発展途上国の向上にあっても先進国の工場でつくるのと同じレベルの製品をつくることを可能にした。日本でしかつくれないもの、日本がつくった方がよいものに特化することだ。日本の得意分野に人材を集中させていくことで、成長分野を活性化させていくことが日本の豊かさを維持する上で不可欠といえよう。
第3のアイデアは、「居住エリアと非居住エリアの分離・明確化」だ。社会の支え手が減る時代おいては自治体の職員ですら十分に確保できなくなる事態が想定される。人口減少社会、少子化社会においては、住民がバラバラに住むエリアが広がっていく。こうしたエリアに行政サービスや公的サービスを届けるにはコストもかさむ。どのように届け続けるのかが大きな社会的問題となるだろう。行政マンや公共サービスの担い手が少なくなる中で,やりくりしていくには、住民側の割り切りも不可避だ。そこで、地域ごとに住民が集住するエリアをつくり、行政サービスや公共サービスはそこまで届ければよいことにする。
■道州制ウイークリー(168)2019年9月28日
◆人口減少国家 日本の未来⑧拠点国家を構想せよ
(河合雅司『未来の透視図』より)
第4のアイデアは、「働けるうちは働く」ということだ。60歳や65歳でリタイヤするのはあまりにももったいない。高齢になっても必要とされる人材となるには、スキルを磨き続けるしかない。働く期間を長くできれば、公的年金の受給を繰り下げることも可能となり、結果として年金受給額を増やすこともできる。
第5のアイデアは、「1人で2役をこなす」ことだ。空いている時間をうまく活用することで、勤労世代の不足の解消ともなる。人手不足による採用難が深刻化する中で、優秀な社員の流失を防ごうと思えば、複数キャリアを認めるしかない。
「大量生産・大量販売」というこれまでの成功モデルを投げ捨て、付加価値の高い商品やサービスを「少量生産・少量販売」するビジネスへとモデルチェンジすることだ。
「少量生産・少量販売」のモデルはヨーロッパに見つけることができる。そこで、人口が激減する日本においても、東京一極集中に代表されるような「集積の経済」一本槍のビジネスモデルから脱却し、「拠点国家構想」を目指すことを提言したい。
「拠点国家構想」とは、全国に人々が集まり住む拠点を定め、それぞれの地域の特性などを生かし、あるいは伝統工芸品などに使われてきた技術力を転用することによって、ヨーロッパのごとく高く売れる製品やサービスを少量生産する考えだ。「世界に通用するブランドづくり」に活路を見出そうというのである。
日本に残された時間はあまりに少ない。いま我々に求められているのは行動に移すことである。人口が減ってもなお、暮らしの豊かさが損なわれぬよう、この国をつくり替えることが急がれる。