道州制ウイークリー(169)-(172)

■道州制ウイークリー(169)2019年10月5日

◆道州制につながる実行プラン①

(橋下徹『実行力』より)

国と地方の行政の仕組みの改革は、行政組織のメンバーである官僚がリーダーシップを発揮することは無理なことで、大阪都構想のように政治家が政治力をフルに駆使するほかありません。日本にごまんと存在する役所はそれぞれ権限と財源を持ち、それらを前提にして人や団体が山ほどあるので、現状の役所の仕組みの維持を望む勢力が非常に強く、その改革には凄まじい抵抗が生じます。その抵抗を抑え、時には打ち崩して、改革を進めるのが政治家の役割です。

現在の日本の行政・役所の仕組みは、中央の政府と自治体の役割分担が適切ではありません。例えば、待機児童対策は、本来なら中央政府が実務を担当するような問題ではありません。国は、地方自治体に待機児童の解消を義務化し、義務違反の場合のペナルティーを定める法律を制定すればいいだけの話です。待機児童の解消のための実務は地方自治体にやらせればいい。その代わりに、保育所行政の権限もすべて地方に渡す。保育所の設置・運営に関するルールも地方ですべて決めさせる。国は自治体に待機児童解消の義務を負わせるだけ。地方に責任を負わせる代わりに実務を行うための権限とお金のすべてを与えるのです。それが国家運営のマネジメントというものです。

森友学園の土地の問題も、所詮は私立小学校の敷地を巡る問題。議論される場は、本来は国会ではなく、地方議会であるべきです。近畿財務局という国の出先機関が地方の土地を所管しているから、国の問題になってしまう。これらの土地を大阪府庁の所管にするか、近畿財務局を関西の府県や関西広域連合の下に移していれば、森友問題は国会ではなく大阪府議会か関西広域連合議会で議論されていたでしょう。

 

 

 

■道州制ウイークリー(170)2019年10月12日

◆道州制につながる実行プラン②

(橋下徹『実行力』より)

関西広域連合は、関西全体の政策を実行する行政機関ですが、それにとどまらず、国の地方の出先機関を譲り受けるビジョンを実行するための積極的な活動も行いました。単に議論をすることだけで終わらせず、僕も民主党政権時の地域主権戦略会議のメンバーに参加し、国と激しく折衝しながら、関西広域連合において国の地方出先機関を譲りうける具体的な実行プランを作っていきました。

当初は近畿財務局(財務省)、近畿地方整備局(国土交通省)、近畿地方環境事務所(環境省)、近畿経済産業局(経済産業省)の全てを関西広域連合の下に移す構想でしたが、国が猛反対、当時の政権与党であった民主党政権とガンガンやり合いましたが、結局、近畿財務局を除いた三つの機関をまず関西広域連合に移すことが決まりました。

それから数年をかけて、大阪都構想の実行プランと同じように、国の地方出先機関を関西広域連合に組み込む組織体制プランをつくりあげました。あとはこのプランについて閣議決定をして法律を制定させればいいというところまでいったのですが、2012年に政権交代が起こり、自民党政権でこの実行プランの法案は棚ざらしになってしまいました。実行プランまでできているので、あとは法律でGOとなりさえすれば、いつでも国の地方出先機関を関西広域連合に移すことが現実に実行できるわけです。

「地方分権だ」「国の出先機関を地方に譲れ」という政治学者や評論家は多いですが、そのようなビジョンを口にするのは簡単です。しかし実行プランを作らなければ何も進みません。この実行プランの作成が一番大変なんです。反対する人たちと激しく折衝しなければなりませんし、場合によっては選挙による政治決断を挑まなければなりません。

 

■道州制ウイークリー(171)2019年10月19日

◆道州制につながる実行プラン③

(橋下徹『実行力』より)

関西広域連合は、国全体の中央省庁制、都道府県制、市町村制を抜本的に作り直す道州制に向けた動きの第一歩です。道州制は、国と地方の役所組織の役割分担を整理して、国がやらなくてもいい仕事や地方がやるべき仕事は地方に移し、国は国本来の仕事に集中してもらって日本という国をより強くするための大改革です。この道州制もかれこれ40年以上も、インテリたちの間では議論され続けてきました。しかし、提案や議論だけではダメなのです。実行しなければなりません。大阪都構想も関西広域連合も、道州制を口だけではなく実行するためのプロセスの一つでした。

国のトップがこれほど国会に拘束される国は、日本以外に世界でも類を見ません。その理由は、国である中央政府があらゆる仕事を抱え込み、それらすべてが国会で議論されるからです。中央政府が抱えている仕事のうち、内政問題は出来る限り地方自治体に移譲する必要があります。中央政府は外交・安全保障などの仕事に集中し、国会の議論も絞り込むべきです。

現在の47都道府県を9から13の道州にまとめ直し、内政問題は基本的には道州が担当する。今の都道府県だと力が弱くて、結局国・中央政府を頼ることになってしまうので、そこを抜本的に改革し、明治維新の廃藩置県に匹敵する廃県置州を断行すべきだと思います。大阪都構想や道州制は、国や地方のリーダーが、適切なリーダーシップを発揮できる組織体制にするものです。

日本全体の政治行政をしっかりと実行できる行政組織にするためには道州制の実現が不可欠だと考えています。大阪都構想の政治運動を道州制につなげて新しい日本の統治機構を築き上げてくれる次世代の政治リーダーが誕生してくれることを願ってやみません。

 

 

■道州制ウイークリー(172)2019年10月26日

◆道州制で繁栄を呼び込め

(大前研一『国家の衰退からいかに脱するか』

21世紀の繁栄は、世界と直接つながることでもたらされる。国も地方も世界中から人、カネ、企業、情報を呼び込むことが富を生むのであり、それが、“繁栄の方程式”なのだ。戦後日本が成長してきたのは、まだ途上国だった時期には中央集権が効率よく機能したからである。しかし、今や中央政府の単発エンジンは老朽化して出力が衰えてしまい、地方自治体の多発エンジンを起動しなければにっちもさっちもいかない状況になっている。だから今頃になって慌てて「地方創生」などと言っているわけだが、地方自治体には立法権も徴税権もなく、自前の財源もないため、いっこうにエンジンがかからないのである。

これを打開する方法は、廃藩置県ならぬ「廃県置道」、すなわち私が30年前から提唱している道州制への移行しかないと思う。

その定義を改めて説明すると、47都道府県を統合して10か11の道州を置き、その下に人口30万人ぐらいのコミュニティをつくる(道州ごとに30~40前後)。そして道州は国から立法権、行政権、司法権、徴税権のかなりの部分を委譲してもらい、経済活動を司る。コミュニティは初等・中等教育や医療・福祉などの生活基盤を提供する役割を担う。

道州制の目的は、前述した“繁栄の方程式”を使い、各地方がボーダーレスに人、カネ、モノ、企業、情報の出入りを自由にして、世界から繁栄を呼び込むための産業基盤を創設する単位になることだ。そうやって経済的に自立するには、どうしても1000万人単位の人口が欲しい。それゆえの「道州」なのだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です