道州制ウイークリー(211)~(228)
■道州制ウイークリー(211)2020年8月1日
◆地域経済活性化への地方分権改革①
(経団連「2019年提言」から)
国内GDPの7割を占める地域経済は可能性にあふれ、イノベーションを通じて成長する余地がある。農業においては、大規模化・スマート化を通じて生産性向上が可能であり、ブランド農・畜産物の展開や六次産業化による高付加価値化も見込める。自然文化などの特性を踏まえながら、地域特有の資源を活用した基盤となる産業を振興し、その集積・育成を図れば、地域への人の流れが生まれ、新たなイノベーション創出も期待できる。
高齢化・少子化による生産年齢人口の減少と大都市圏への人口流失、CPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)や日欧EPAの発効といった経済のグローバル化、AT,IoT、ロボットをはじめとする技術革新の進展など、地域経済を取り巻く環境変化を受け入れ、地域自らが創りたい社会を描きながら変革を遂げることでその真価が発揮され、わが国経済の持続的成長へとつながっていく。
実際、自治体の中には国家戦略特区等を最大限活用しながら、首長の強いリーダーシップの下に先進的な取り組みを進め、課題解決・活性化へとつなげるところも出てきている。地域経済の土台である行政システムについても、多様性を認め、自由度を高めた制度・体制へと改革すれば、大きなインパクトをもたらす課題を乗り越えてさらなる発展が可能となろう。
「第二期まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定を機に、これまでの地方創生・分権改革に関わる課題を踏まえた上で、同戦略を含め、政府において重点的に取り組むべき制度改革等について提言する。こうした改革を推し進めることが、経団連が提唱する道州制への道筋をつけることにもなろう。
■道州制ウイークリー(212)2020年8月8日
◆地域経済活性化への地方分権改革②
(経団連「2019年提言」から)
地域の特性に基づいた施策を進める上で何より重要なことは、地域経済圏の担い手の中心である住民はもとより、各自治体や地元経済界、大学などが一体となって、関係機関との連携、外部からの人材受け入れなども図りながら、自立性・主体性を発揮できる体制・制度を整備することである。そのためには、必要な権限・財源・人材の移譲、広域連携の推進、即ち地方分権改革が必要であるが、地域が求める施策・発意を体現できるまでには至っていないのが実情である。
例えば、各自治体からそれぞれが抱える課題等を解決するための提案を募集し、その実現を図る「提案募集方式」も、新たな地方分権改革の手法として位置付けられているが、その多くは手続きなど個別事務の改善にとどまっている。運用面においても、各自治体からの事前相談の段階で関係府省との調整対象外とされる。自治体側に支障事例の立証責任が課されている。支障が顕在化していない案件の提案ができない。検討するとされた案件もフォローが十分でないといった課題が存在している。
まち・ひと・しごと創生総合戦略を始め、地方創生・地域経済の活性化を後押しする施策・KPI(重要業績評価指標)について、その効果や妥当性・有効性・施策とKPIとの関係性等に関する検証が不十分であるといわざるを得ない。
地域が抱える課題は一様ではない中、自主的な地域経営を促すためには、地域特性に応じて、きめ細かく施策を展開する必要がある。しかしながら、地方創生推進交付金を含め、中央省庁が用意したパッケージから各自治体が選択し、国が計画を認定する仕組みであるため、地域の主体性が発揮しにくい。加えてその体制も、まち・ひと・しごと創生本部事務局や地方制度調査会など多岐にわたるうえ、縦割りで中央集権的なため、相互の施策の一貫性・整合性を確保しにくい状況にある。
■道州制ウイークリー(213)2020年8月15日
◆地域経済活性化への地方分権改革③
(経団連「2019年提言」から)
各地域が、主体性をもって積極的に改革を進めるのは当然であるが、政府においては、地域自らが自立的・持続的に、創意工夫をこらした独自の経営ができる体制の構築、地域経営を担える人材の確保・育成に尽力し、意欲ある自治体を制度面で支えるべきである。そのために不可欠な4つの改革等について提言する。
<1>分権改革の徹底、権限・財源・人材の移譲
・意欲ある自治体の発意を実現すべく、各自治体が求める権限を全面的に移譲
・地方創生推進交付金の運用の弾力化
・地方創生人材支援制度の機能拡充および同趣旨の制度の整理・統合
①権限 意欲ある自治体の発意を最大限尊重し、地域の実情に沿った施策を実施できるよう、自治体が求める権限は移譲すべきである。現行の提案募集方式は抜本的に見直す必要があり、検討するとされた項目については早急に着手し結論を得るのはもちろん、担当省庁が規制の必要性を立証できない限り、提案は原則全て認めることとすべきである。
②財源 自治体が独自の戦略を実行に移し、資源の最適配分を自ら決定できるよう、財源確保に努める必要がある。具体的には、国として地方が行政上の役割を果たす上で、必要な財源を確保しつつ、地方の自主性や創意工夫を促す観点から、国庫支出金を必要最低限にとどめるべきである。
③人材 地域経営を担う人材も,権限・財源と合わせて移譲・確保し、その育成が図らなければ、最大の効果を発揮しえない。まずは地域が、その特性や実情に基づき必要な人材を明確にした上で、民間人材の活用など、機能を拡充していくことが望ましい。
■道州制ウイークリー(214)2020年8月22日
◆地域経済活性化への地方分権改革④
(経団連「2019年提言」から)
<2>国家戦略特区制度の見直し
国家戦略特区は「岩盤規制の突破口」としての役割を担う一方、区域を指定して特例措置が実施されることから、その地域特有の課題を解決し、活性化を図るうえでも有効である。国も各自治体に特区の活用を提案しているが、現行制度では、区域内で活用できる特例措置は法律により規定され、区域を国が指定する仕組みとなっている。このため、メニューにない項目は実行することができず、特例措置を追加的に実施しようにも、法改正や区域指定が必要となるため、改革の実現まで相当期間を要している。
地域が抱える課題へのきめ細かな対応が求められるにもかかわらず、特例措置を個別に規定していては、スピーディーな地域経営の足かせとなる。すでに特区制度については「規制改革の推進体制の在り方に関する提言」(2019年3月19日)において、区域の追加指定や全国展開のさらなる推進等を提言したが、今後はより一歩進めて、特区の認定制を届け出制にする、あるいは特例措置の内容も法では包括的な規定に留めて柔軟性を高めるなど、各地域の特性・特色に応じた取り組みを全面的に実施できるようにすべきである。
*注*道州制においては、各地域(州)が創意工夫を活かし、独自に「特区」制度を設け、発展戦略を進めることが可能となります。(関西州ねっとわーくの会)
■道州制ウイークリー(215)2020年8月29日
◆地域経済活性化への地方分権改革⑤
(経団連「2019年提言」から)
<3>広域連携の推進
・デジタル・ガバメントの実現
・「連携中枢都市圏構想」、「定住自立都市圏構想」、「地方版総合戦略」の一体的推進
経済活動の広域化、インバウンドの拡大、グローバルな都市間競争の強化などを踏まえると、地域においても、観光を始め地域の中核となる産業について広域で振興を図るとともに、一定規模を有する経済圏域を軸として、ビジョン・戦略を策定していく視点が重要となる。また、環境問題等、個々の自治体だけでは解決できない行政課題に対応するにも、現行の行政単位を超えた広域での連携が欠かせない。
広域連携には自治体ごとの業務プロセスの標準化が不可欠なことから、デジタル・ガバメントの実現を強力に推進する必要がある。各自治体で異なる情報システムについて、国主導の下で集約的に取り組むとともに、行政機関・自治体間の情報連携を進めなければならない。
さらに総務省が進める「連携中枢都市圏構想」「定住自立都市圏構想」、まち・ひと・しごと創生本部が各自治体に策定を促す『地方版総合戦略』について、一体的推進・運用を図るべきである。例えば、第二期まち・ひと・しごと創生総合戦略においては、1741の市町村それぞれに地方版総合戦略の策定を促すのではなく、むしろ各地域が主体的に広域連携を目指せるよう、両構想で策定された圏域の戦略・ビジョン等をもって地方版総合戦略とすることも有効である。その際、施設の統廃合や行政機能の集約化などにも踏み込んだものとすることが重要である。なお、地方支分部局については、分権改革を徹底する観点から、整理・廃止を進めるとともに,権限・財源移譲の受け皿となりうる広域行政体の形成を促す必要がある。
■道州制ウイークリー(216)2020年9月5日
◆地域経済活性化への地方分権改革⑥
(経団連「2019年提言」から)
<4>地域の主体性発揮につながる推進体制の整備
・地方創生に関する機関等について、整理・廃止など機能の一元化・統合化
地域経営は住民はじめ、自治体、経済界、大学などの各経済圏の担い手が主体となって取り組むものであり、国はサポ―ト役、すなわち、行政手続きシステムの整備・一元化、国家戦略特区で実現した措置の全国展開など、地域が進める改革の後押しに徹することが原則である。
しかしながら現状は、関係省庁が縦割りで用意した施策を地域が選択する仕組みであるなど、中央集権的な手法が取られているのが実態である。加えて、地方制度調査会やまち・ひと・しごと創生本部、地方創生推進事務局、地方分権改革推進室を始め、施策ごとに対応する本部・省庁が細分化されているため一体性を欠いており、地方創生全体の責任主体もわかりにくい。
したがって、こうした機関等については、中央依存からの脱却を促し、各自治体の主体性発揮・独自施策の展開の後押しへとつなげられれるよう、整理・廃止も含め、その機能に関する一元化・統合化を図るべきである。
■道州制ウイークリー(217)2020年9月12日
◆菅義偉氏の地方分権論①
(菅義偉「政治家の覚悟」から)
<1>地方交付税について
地方自治体には、税収が多いところもあれば少ないところもあるので、新型交付税のように簡素化するだけでなく、ていねいに財政調整する制度は不可欠です。それでも私は交付税制度について、いくつかの問題意識を持っていました。
一つは、交付税制度で財源を保障することが、結果的には自治体の自助努力を削いでいるのではないか、という問題です。税収が少ない自治体ほどたくさんの交付税が配分され、努力して地域を活性化して税収を増やすと、逆に交付税は減ってしまいます。その弊害を防ぐ仕組みもありますが、やはり努力する地方自治体がもっと報われるようにすべきです。
交付税の算定においては、地方税の25%は算定の対象外にしています。すべてを算定対象にすると、税収が増えた分だけ交付税が減ってしまい、地方自治体に経済を活性化させて税収を上げようとする意欲を失わせてしまいます。
さらに、交付税の金額の規模も問題です。平成23年度の交付税の総額は16兆4千億円です。交付税額が巨額すぎることが、交付税に頼る気持ちを助長させる本質的な原因であると思います。全国どこでも同じようなサービスを受けられる仕組みとしての交付税制度の意義は否定しません。しかし、これが60年以上続いていることによって結果的に交付税頼みの体質をもたらしてはいないでしょうか。どんな素晴らしい制度も、時間が経てば、時代に合わなくなり、ほころびが出ます。国から配分される金ではどうしても依存心が生まれます。交付税での財源調整も必要ですが、やはり自前の税収である地方税の割合を思い切って引き上げなければなりません。地方分権は、権限とともに税源を地方に移譲することからはじまるのです。
■道州制ウイークリー(218)2020年9月19日
◆菅義偉新首相の地方分権論②
(菅義偉「政治家の覚悟」から)
<2>税収配分は国5:地方5に
民主党(2009年当時)が高らかに掲げ、「改革の一丁目一番地」としたのが地域主権改革でした。地方に権限、税源、財源を委譲し、住民に身近な自治体が自らの責任で物事を決めて実行する。当然のことです。
国の出先機関は、自治体との二重行政の無駄があり、更に国会の監視からも非常に遠いため不祥事が多く発生していました。
「出先機関の廃止や自治体へ移管する」という方針も遅々として進んでいません。
また、国からの補助金を廃止し、地方の裁量を高める目玉政策として(当時の民主党が)打ち出した一括交付金は、当初9割が継続事業に使用され、事実上,国の「ひも付き」であり、これでは地方自治体は中央省庁の影響から逃れることはできません。
中央省庁が財源を握っている限り影響力が残るため、一括交付金化ではなく、財源を移譲すべきなのです。
現在、国と地方の仕事の割合は4対6ですが、税収は6対4。まずは税収を5対5にすることが、分権への第一歩です。
■道州制ウイークリー(219)2020年9月26日
◆菅義偉首相の地方分権論③
(菅義偉「中央公論10月号」から)
<3>国と地方の権限には再検証が必要
国と地方の権限は再検証が必要です。中央と地方の権限を考える際に災害対策が参考になりますが、災害時の司令官は都道府県の知事になります。しかし、政令指定都市の場合、市長に権限を委ね、実際の仕事も市長が担った方がよいように思います。なぜなら地域ごとの被害状況に応じて細かい対応が必要だからです。
私は2016年の熊本地震の時の経験を踏まえて、政令指定都市に権限を移譲しなければならないと考え、そのための法律を作りました。ところが政令市の市長にもいろいろな考えがあって、必ずしも移譲されればよいという考えでもなかった。結果、政令指定都市に権限移譲するか否かは、手挙げ方式にしました。
(感染症対策も)場合によっては政令市にまで権限を委譲し、きめ細かい対応をすべきだと思います。一方でそれは、地方間の実力差が出る対応でもあります。今のコロナでも、地方自治体の対応がうまくいっているところもあれば、いろんな問題にぶつかっているところもあります。
もちろん国は枠組みを作ることに責任があります。大きな基本方針を決める、交付金などのお金の対応をする、マスクなどの物資対応をする。それが国の仕事だと思います。その枠組みの中で、災害でも感染症でも、地域の実情に応じて各自治体が対応する。もちろん地方が対応に困る場合には国は支援する。問題が発生すればすぐ手を挙げて、国に相談してほしい。
■道州制ウイークリー(220)2020年10月3日
◆今、改めて問われる道州制①
(江口克彦江口オフィス代表「月刊 事業構想10月号」から)
大都市部を中心に流行が拡大した新型コロナウイルス感染症だが、緊急事態宣言は全国一律。宣言が解除された後も、国と都道府県では方針の食い違いがみられ、感染拡大が止まらない。コロナ危機は、道州制の導入を再び、真剣に検討するきっかけになりそうだ。
○国土を細切れにする時代は終わった
コロナウイルス感染拡大症対策は東京基準で、また、国の思惑で考えることができないはずである。都道府県を改編し、道州制に改め、広域行政を考えるべきではないか。38万平方キロの国土を47区分すれば、1区分がまことに狭小過ぎることが分かるだろう。47区分にしたのはおおよそ140年前(明治21年)。300藩を47区分したのは、当時の英知であろうが、その区分を今なお維持している弊害は大きい。コロナウイルス感染症対策が,経済的にも行き詰まるのは当然である。このコロナ禍を機に、47区分を12区分前後にし、それぞれの区分に、かなりの主体性を持たせる国のかたちにすべきではないか。
○道州制は分担統治
ここでいう道州制は、中央集権的かつ東京一極集中の国のかたちではない。日本を分断するのかという人もいるが、「分割統治」ではない。「分担統治」である。「国」と「広域自治体(道州)」と「基礎自治体」の役割を明確にしようということだ。国は、例えば、①皇室②外交・国際協調③国家安全保障・治安④通貨発行・金利⑤通商政策⑥資源エネルギー政策⑦移民問題⑧大規模災害対策⑨最低限の生活保障⑩国家的プロジェクト⑪司法・基本法⑫市場競争の確保⑬財産権の保障⑭国政選挙⑮国の財政⑯国の統計・記録の16項目を担当。広域自治体は、広域の公共事業、経済産業の振興、警察治安、雇用対策等を担当。基礎自治体は、保育所・幼稚園、小中学校など住民に密着したすべての行政を担当する。
■道州制ウイークリー(221)20年10月10日
◆今、改めて問われる道州制②
(江口克彦江口オフィス代表「月刊 事業構想10月号」から)
繁栄拠点が1箇所から複数カ所
もし、広域自治体、すなわち地域が主体の道州制を採っていたならば、コロナ感染症対策も、対策費(大規模災害対策適用)とワクチン、治療薬の開発(国家的プロジェクト適用)は、国の責任として取り組み、具体的な対策は、道州が担当ということになっていたならば、それぞれの道州で、国や東京基準でぐずすることなく、もっと迅速にコロナ対策をとることができたはずだ。
その迅速さが感染を今よりもかなり抑え、経済も、とりわけ、各地域の町の飲食業、零細小企業も活性化していたのではないかと思う。感染症陽性者も、例えば、関西州ということであれば、大阪の受け入れ病院だけでなく、和歌山や滋賀、京都の病院をも活用できるということになる。47分割統治の国のかたちを12前後の分担統治体制にすることが、これからの我が国の危機管理だけでなく、繁栄拠点の分散化による、「日本の驚異的な成長」につながることは必定である。
新型コロナウイルス感染症は、いずれは終息するであろう。そのとき、今の都道府県単位ではなく、広域自治体、すなわち道州制に国のかたちを変えれば、少なくとも、繁栄の拠点が一カ所から複数カ所になる。道州が12なら、12の繁栄拠点ができる。それならば、それぞれの道州がその望むところの拠点づくりをすればいい。これからは、AIを組み入れたロボット産業、高度医療産業、再生エネルギー産業、バイオ・ナノテクノロジー産業、新素材開発産業、高齢者快適産業、環境関連産業、ワーケーション産業、超農業等々、いままでにない新々産業が急速に進展することは誰もが指摘するところだろう。
また、コロナ禍によって新しい改革、革命的な働き方、考え方に気づいた人たちもいるだろう。であるとすれば、国のかたちを変えなければならない。道州制に改めなければならないと気づき始めた人が出てきている。
■道州制ウイークリー(222)20年10月17日
◆今、改めて問われる道州制③
道州の開発例――北海道・東北州・東海州・関西州
(江口克彦江口オフィス代表「月刊 事業構想10月号」から)
各道州をどうするか。北海道は、ワーケーション(観光地やリゾート地で労働と休暇を組みあわせ、働きながら休暇をとる過ごし方)産業の拠点になればいい。コロナで働き方の選択として、ワーケーションが注目されているが、梅雨のない、また、雪質のいい北海道は、日本だけでなく、世界中のワーケーションの拠点に最適である。世界中からビジネスマンが集まってくる。彼らが、北海道の経済を活性化してくれる。
東北州は、超農業の拠点。米はもちろん、農産物は、東北州が一手に引き受ける。しかも、AIを組み込んだロボットをフルに使い、生産性の高い農業をする。農地というより農業工場というか、ワンフロアが東京ドームほどの数階建てのビルを建て、各層にそれぞれ作物を作る。1階は米を、2階は野菜を、3階はトマトを作る、というようにする。水耕栽培、無農薬ということを売り物にして世界中に輸出すればいい。
東海州は、AIロボット産業の拠点。もともとこの地域は、飛行機から自動車までのものづくりの下地がある。だから、大抵のAIロボットを生産する拠点をここにつくればいい。多くのビジネスマン,ワーカーが、それぞれの技術を持って集まってくる。
関西州は、高度先端医療産業の拠点として、発展するように舵をとる。病院公園をつくり、内科棟、外科棟、産婦人科棟、総合医療棟、感染症棟、ガン治療棟など、モノレールで結ぶ。病院と高度先端医療産業とスーパードクターのいる病院群が一体であることは、医療機器の開発を敏速に行うことを可能にする。
■道州制ウイークリー(223)20年10月24日
◆今、改めて問われる道州制④
道州の開発例――四国州・中国州・九州・沖縄州・東京特別州
(江口克彦江口オフィス代表「月刊 事業構想10月号」から)
道州制になって、最も面白い州は四国州かもしれない。四国州は、フランスとスペインを結ぶサンティアゴ・デ・コンポ―ステーラ、通称サンティアゴ巡礼ルートに匹敵する四国八十八ヶ所のお遍路ルートがある。これを活用しない手はない。整備して、世界中から「お遍路さん」に来てもらう。単なる観光ではなく、「心の道」「瞑想の道」になるだろう。もちろん旅館も意識して昔風にしてみる。
2045年頃、技術が人間を超える、いわゆるテクニカル・シンギュラリティになるといわれている。だからこそ、人々は、心、精神に感心を持つ。四国は世界の「精神のメッカ」になる。まして、四国州で相続税を一律10%にすれば、日本の富裕層は、四国に移住するだろう。空港も、四国州の中央に作り、放射線状に道路を走らせる。
中国州は、広島を中心に、国際平和研究所を創り、ノーベル賞クラスの知識人を招聘する。九州は、観光地を主眼とすればいい。温泉もあるし、風向明媚。沖縄州は、九州と連携して、観光立州。
東京特別州は、芸術・文化の都になればいい。いずれも、AI、ロボット、IoT、ナノテクノロジーなどの超高度先端技術を組み入れることが前提であることは言うもでもない。
■道州制ウイークリー(224)20年10月31日
◆今、改めて問われる道州制⑤
中央集権、一極集中は限界
(江口克彦江口オフィス代表「月刊 事業構想10月号」から)
広域自治体、道州制、即ち分担統治にすれば、各州に繁栄拠点ができるだけという批判もあるが、ならば、いま、東京一極だけが繁栄しているのを拱手傍観でいいのか。道州制にすれば、繁栄拠点が10なり、12に増えることは確実である。
そして、自分たちの地域を自分たちで決めていくことになる。人が決めることに従うより自分が決めることにチャレンジしていく道州制にすることが、これからの若い国民にとっても面白いだろうし、日本という国の活性化、繁栄につながっていくだろうと思う。
既に「中央集権、一極集中」は「体制疲労」をし、「体制の限界」に来ている。そのことを、国民一人ひとりが自覚すべきだと思う。まさに、福沢諭吉の「一身独立して、一国独立す」という言葉を実行実践すべきだ。新型コロナウイルス感染症を機に、我々国民は、国のかたちを変えること。そこまで徹底しなければ、このままでは、コロナが終息しても遠からず、日本は沈むだろう。
■道州制ウイークリー(225)20年11月7日
◆これが九州道州制ビジョン①
(西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)
▽膨大な無駄が指摘される中央集権の弊害
「いまなぜ、九州に道州制なのか」という問いかけは「国のかたちを変えなければ日本に明日はない」という切実な訴えとワンセットになっており、現在の日本の国のかたちに大いに問題があり、国民の生活に悪影響を及ぼし、経済の活力をそぎ、膨大な無駄を生じさせているという認識があるからである。その問題とは、過度の中央集権、都道府県と市町村という現在の地方行政区域の狭さであり、官僚制による縦割り行政などで、こうした問題は現行の行政の組織を大きく変えない限り問題の解決はないのである。そこで浮上してくるのが道州制による改革である。九州においては、1960年代から「九州はひとつ」の理念のもとに「九州府構想」などの九州共同体の提唱がなされ、様々な観点から論じられてきた。
▽「九州のことは九州で決めるしくみ」
九州を国内外の企業が自由に活動でき、魅力ある地域にし、住人が住みよい地域にするには、九州が地域発展の政策に関して自らの権限と財源、人材を持ち、国に依存せず、国の介入を受けず、政策の優先順位を自ら決定し、地域文化に根付いた地域本位の施策を行うシステムを構築する必要があり、東アジア経済圏の拠点として繁栄していくためにも九州自治州すなわち道州制の実現が必要である。
■道州制ウイークリー(226)20年11月14日
◆これが九州道州制ビジョン②
(西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)
九州では21世紀に入り道州制の議論が活発化、02年2月には九州7県と沖縄の知事が集まる九州地方知事会が「道州制等都道府県の在り方を考える研究会」を設立。05年5月10月には九州・山口経済連合会(九経連)など経済団体と九州地方知事会が「九州地域戦略会議」を設立、「九州はひとつ」の理念のもと、官民一体となって、九州独自の発展戦略の研究や具体的施策の推進に取り組むことになり、経済界、知事会の各県の部局長、学識経験者らで構成する「道州制検討委員会」が発足した。同委員会は06年10月に「道州制に関する答申」を報告、翌年5月には矢田俊彦委員長が委員長となる第2次道州制委員会が設立され、08年10月には道州制の「九州モデル」が、09年6月には「九州の目指す姿、将来ビジョン及び住民・国の関心を高めるためのPR戦略の検討」が答申され、一応の結論が出た。
九州市長会でも06年10月に、九州における道州制等の在り方研究会が「九州府構想」を発表、09年5月には実現に向けた計画案を提示、九州地域戦略会議などとも連携していく考えを示した。
■道州制ウイークリー(227)20年11月21日
◆これが九州道州制ビジョン③
(西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)
◇九州地域戦略会議が挙げる道州制導入を目指す6つの理由(上)
- 九州を活性化し、住民の暮らしを豊かにする
地域の文化や歴史、特性に根付いた地域づくり、生活空間づくりのような施策はその地域に暮らす人々に身近な行政でなければできない。九州の活性化と住民満足度を高める施策を実現していくためには、道州制を導入して九州が一体となり、産業政策や社会資本整備などに関する権限と財源を持つとともに、一つの国に匹敵する経済圏としてスケールメリットを発揮できるシステムを構築することが必要だ。
- 中央集権システムを改革する
グローバル化が急速に進み、人々の価値観が急速に変化していく中で、これまでの中央集権システムでは、激変する国際社会への対応や東京一極集中の是正、個性豊かな地域社会の形成、少子高齢化・人口減少社会への対応など、新しい時代の諸課題に対する迅速・的確な対応が困難になっている。国を補助金配分などのこまごました事務から解放して、その役割を外交、防衛、通貨管理など主として国家の存立にかかわるものに重点化することで、国家として必要な問題解決力を高めるとともに、国民の行政に関する行政の多くを地方に移譲し、地方に任せるシステムを構築することが求められている。道州制は地方分権の有効な手法である。
■道州制ウイークリー(228)20年11月28日
◆これが九州道州制ビジョン④
(西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)
◇九州地域戦略会議が挙げる道州制導入を目指す6つの理由(中)
③市町村制度と都道府県制度を改革する
急速なグローバル化に伴って住民や企業の活動圏が拡大するとともに、環境問題や少子高齢化・人口減少社会への対応、高速交通整備など、都道府県や市町村の区域を越える広域的課題が増加している。しかしながら、現在の都道府県や市町村は、機能・規模の両面で時代に合わなくなり始めている。これらの問題に対応していくためには、道州制を導入して、市町村は基礎自治体として住民サービスの大部分を担い、道州は広域自治体としてより専門的、広域的、戦略的な機能を担うことを基本とする新しい地方自治の姿を目指すことが必要だ。
- 国と県の二重行政を解消する
国と県の二重行政や、許認可などの申請手続きの煩雑さによる行政の非効率性が強く指摘されて入れる。同じような施策は一本化し、窓口を統一して、効率性、有効性を高めることが求められている。国の役割は国家的見地から行うべきものに重点化し、地域に密着した行政サービスは企画立案から管理執行までを一貫して地方が担うようにすることが必要だ。このような国と地方の抜本的な役割分担の見直しを実現するためには道州制の導入が必要。