道州制ウイークリー(233)~(237)
■道州制ウイークリー(233)2021年1月2日
◆これが九州道州制ビジョン⑨
(西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)
◇なぜ地域主権型道州制が必要か(江口克彦氏)
なぜ、道州制が必要かというと、中央集権体制が諸悪の根源であるからで、この体制を改めない限りほどなく日本は衰退の一途をたどることになる。このままでは東京一極集中がますます進み、地方の人口は減少、東京を中心とする首都圏と地方の格差も想像を絶するほど大きなものとなろう。一刻の猶予も許されず、新しい国のかたち、都道府県を廃し、全国を10程度の州、また住民の納得する基礎自治体に再編し、それぞれの地域が税財源などを掌握し、主体的に住民密着の政治行政を行う「地域主権型道州制」を実現しなければならない。
広域行政に変えないと無駄が生じ、地域の負担もさらに増す。費用対効果を考えながら、広域でダイナミックに動かしていくことで行政も効率的になる。そうすることで人口が分散し、人々が自由闊達に活動できる「疑似国家」「分権国家」をつくり、少なくとも繁栄拠点を全国で十数か所つくる必要がある。そうしなければ国力は衰え、民力は低下し、日本はいずれ三流国家になる。
九州はもともと独立意識が強く、道州制の議論も活発だ。九州最大の都市である福岡を起点に考えると、距離的に上海と東京は変わらず、ソウルは名古屋より近い。一つの州になれば海外の国と対等に交渉でき、国際運輸物流においても東アジアのハブになれる。税収面でも自主的に決めることも可能だ。九州から日本を変える、若い人たちがそう思って考え行動すれば日本を動かす力になる。。グローバル化の中で生き残るためには、何としても道州制の導入が必要だ。
■道州制ウイークリー(234)2021年1月9日
◆これが九州道州制ビジョン⑩
(西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)
◇九州道州制が目指す将来ビジョン
九州地域戦略会議の道州制検討委員会が2009年にまとめた「九州が目指す姿、将来ビジョン」報告書では、道州制導入について、①国内外の急速な変化に対応し、21世紀においても持続的に発展することを目指す ②現行のわが国の統治機構、社会の仕組みを抜本的に見直し、新しい国のかたちを構想する、としています
その目指す国のかたちは、●国の役割を限定する ●内政に関しては地方が自律的・総合的に担うことを基本とする ●都道府県を廃止し、新たに全国に複数の道州を創設する ●道州制組織の在り方は道州と市町村の2層制で公選の議会と首長を持つ、というものです。
国の役割は、外交、防衛、通貨、金融、国際的な枠組みに関する地球環境対策、公的年金など国家の存立にかかわることに限定する。そのうえで道州には警察、広域防災、空港、港湾、鉄道、高速道路、情報通信インフラ、新産業創出、経済交流、産業振興、雇用保険、医療計画など幅広い分野で国から権限と財源を委譲し、道州全体にわたる広域的な事業を受け持つ。
基礎自治体となる市町村は、消防、まちづくり、上下水道、景観保護,ゴミ・し尿処理、介護、保育所、商店街対策といった住民生活に直接かかわる公共サービス全般に関わる。
教育に関しては、国は最低限の水準を保証、道州は小中高の学習内容の設定、州立高校・大学の設置運営など、基礎自治体は市町村立学校の設立運営、学級編成、幼稚園など役割を分担する。
道州と基礎自治体が主体となって地域政策に関して自らの権限と財源を持ち、地域ニーズに的確に対応した政策を企画立案から施行まで一貫して効率的かつ総合的に実施する。そして九州のことは九州が決めるシステムを構築する。
■道州制ウイークリー(235)2021年1月16日
◆これが九州道州制ビジョン⑪
(西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)
◇道州制下での医療
大都市に医師が集中、地方の医師不足が叫ばれて久しく、救急医療や高度・先端医療における広域連携の必要性も問われている。国から権限と財源を受けることで、まず医師不足の解消には、州立大学の医学部の定員を拡大することで医師数の絶対数を増やし、州が医学生に地方勤務を条件とした奨学金制度の充実を図るなどして、州内での定着を促進、離島、半島、中山間地の医師不足や小児科、産科の専門医不足に関しても、診療報酬を弾力的に運用することで手厚くし必要量の医師を確保する。
広域連携医療においては、県単位では県境がネックとなり、連携がスムーズに行われず、コストや医療設備の面からも整備を図ることが難しい。道州制であれば、例えば市町村が離党・僻地の中に過疎地域の医療拠点を設け、より高度な州立病院と一元的な運営を行うことで、過疎地域にも安定した医療を提供できる。各県で重なる医療機能を集約し、拠点病院と過疎地の病院を遠隔医療システムを結ぶことも可能となる。
救急医療でも道州制により大きく改善する。県単独では導入・維持が難しいドクターヘリを州の中で効率的に配備すれば、すべてのエリアをカバーできる。また、専門性の高い医療については、県単位ではそのレベルアップがなかなか難しいが、州でがんセンターや子ども病院、循環器センターなど専門性の高い期間を整備することで、最先端の医療の提供ができるようになる。その際、国の研究機関や諸外国の関連機関とも交流・連携を図ることで高度な医療体制をめざす。こうして医療を地域に暮らす人たちのニーズにきめ細かく対応、人の命を守るという基本的な地域医療のインフラを整備、より広域的なネットワークを構築することで、高度で最先端お医療を受けられるようにする。
■道州制ウイークリー(236)2021年1月23日
◆これが九州道州制ビジョン⑫
(西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)
◇道州制下での子育て支援
核家族化により地域社会全体で子育てを支援していく必要性が今後ますます高まる。道州制下で子育て支援策が、道州と市町村が連携して、地域の実情を踏まえた弾力的で総合的な施策を進めれば、より効果的で、安心して産み育てる社会の実現ができるようになり、出生率の増加をもたらす期待がもてる。
保育園での待機児童、幼稚園の定員割れというニーズとのミスマッチを解消し多様な保育ニーズへ対応するために、保育園や幼稚園の施設運営について、都市部など保育所需要が多いところで土地確保が困難な場合、保育施設や屋外遊技場の面積などの基準を緩和、児童数の減少で幼稚園の設置が難しい地域では、小学校などとの併設を認め、延長保育や短時間保育といったサービスの多様化により利便性を向上ささえる。
また、出産・育児期の経済的負担を減らすため、児童手当、妊婦健診費、保育料などについて、道州と市町村が連携して、地域の実情や子育て世帯のニーズを踏まえて、出産・育児期の一体的かつ効果的な制度設計を行うことで、安心して子どもを産み育てることができる社会を実現する。
女性の仕事と育児を両立させるために、女性の継続就労、再就職支援、中小企業への支援などを実施、就労環境を改善する。さらに、県ごとに実施している子育て応援事業を広域で取り組み、行政、企業、地域社会が連携、NPOも活用し、子育て支援を社会全体で応援していく気運を高めていく。
■道州制ウイークリー(237)2021年1月30日
◆これが九州道州制ビジョン⑬
(西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)
◇道州制での教育
小中学校では国語に方言を取り入れ、地域の言語文化の保護や維持を図り、九州と関係が深い東アジアを意識し、外国語では英語のほかに中国語や韓国語を学べるようにし、社会科でも東アジアとの交流史を教え、理科では地域の自然保護など、独自の教育内容を盛り込めるようになる。高校では農林水産、醸造、観光、デザインなど九州の産業構造にマッチした専門人材教育を展開する。
全国画一の学級編成、校舎整備基準がなくなるので、離島や中山間地集落が多い九州の特性に配慮し、分校制度を復活・強化、教育の機会をいままで以上に確保する。ハード面でも地元の木材を使用した校舎、農水産物を活用した給食も一層推進でき、地域の活性化の役割も担う。
大学は国立、県立大学を必要に応じて州立大学として各都市圏レベルで再編を実施、再編によって生まれた余剰をベースに新たに芸術、獣医、アジア言語などの大学、学部を創設する。十分な財源を確保し、米国のような世界水準の州立大学のような大学に育て、世界に通用する研究を維持する。さらに体育、看護、福祉といった九州独自の既存の専門大学も加えることで地域社会の多様な教育ニーズに応えていく。また、州立大学の教育学部に学生定員を定め、質の高い教員も安定的に確保する。