道州制ウイークリー
よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会
■道州制ウイークリー(311)2022年7月2日
◆大変革の時代、「現状維持」思考からの脱却必要
(真壁昭夫著『ゲームチェンジ日本』より)
いま世界経済は「ゲームチェンジ」を迎えていますが、バブル崩壊後のわが国全体には現状維持を重視する心理が強く働いています。経済学で「現状維持バイアス」といいます。これまでの行動様式を改めることができなければ、経済はかなりのスピードで縮小均衡に向かう恐れがあります。その結果、日本が世界第3位の経済大国の座を維持することも難しくなるでしょう。
オンライン診療や感染症への対応力の向上という問題を考えただけでも、変化を過度に恐れるかのように、日本は過去の発想にしがみつく機関が長引き、それが当たり前になってしまったように思います。重要なことは変化を機敏に察知し、それに対応することです。政府の規制緩和が諸外国に遅れ、その結果として企業が旧来の発想から脱却できなければ,、わが国の経済の実力は低下するでしょう。
1990年初頭のバブル崩壊後、我が国の経済は失われた30年を超える長期の低迷に落ちりました。要因の一つは、世界経済の構造変化への対応が遅れたことです。特に、グローバルな規模でのデジタル化への対応の遅れは見逃せません。わが国では新しい、自由な発想を実現するよりも、雇用を守るために、リスクを取らないことが優先されてしまいました。問題は、日本の産業政策の発想が過去の成功体験から脱却できなかったことです。
いまわが国の社会心理を覆っているのは、「人口の減少によって,労働と資本の投入量が減少する、だから経済の成長は望めない」という考え方です。そこには。「イノベーション」の考え方が抜け落ちています。わが国の政治の意思決定を見ていると、口先では改革が重要であるとはいうものの、いざ規制などの改革を進めるとなると既得権益などの反対にあって抜本的な改革が難しくなるケースが続いてきました。「現状維持バイアス」にとらわれて、従来の発想を続けている限り、成長を目指すことはかなり困難と言わざるを得ません。
よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会
■道州制ウイークリー(312)2022年7月9日
◆現代社会に合わない47都道府県体制
(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)
戦後言われ続けてきた多極分散型の国土形成も、職住近接の地域づくりも、地方分権の推進もいつの間にか旗が下ろされている状態だ。改革なき政治が続く日本である。この先に何が来るか。
「東京頼み」をだらだら続けるばかりの政府。政府は「東京一極集中」が問題だと口では言うが、やっていることは東京減反どころか、いまだ東京は日本の機関車だと見立て、様々な特区指定や規制緩和のさらなる巣心を図っている。
日本は平成20年の1億2800万人をピークに人口減少期に入り、今は毎年数十万人単位で減っている。現在100万人以下の県は香川、鳥取、和歌山、佐賀、福井、山梨、徳島、島根、高知の9県だが、25年もするとそれに奈良、長崎、岩手、石川、大分、宮崎、青森、富山、山形、秋田の10県が加わる。政令市の指定要件である実質人口70万人にも届かない県の続出は何を意味するか。府県を広域自治体とし市町村を基礎自治体としてきた自治制度が根底から崩れていることを意味する。
明示23年(1890年)、交通機関が馬、船、徒歩の時代につくられた47都道府県体制は広域化、高速化の現代社会に合っていない。行政圏と生活圏(経済圏)が大きくズレてしまっている。
「隣にあるからウチにもつくる」という「フルセット行政」の横並び意識で不要なハコモノやサービスが増え、非効率な行政が続き、日本財政を悪化させている。こうした状況をどう打開するか。広域自治体と言いながら「狭域自治体」化した47都道府県を賢くたたみ、もっと力の発揮ができる少数の広域自治体に創り変えることだ。47都道府県を再編統合し、約10の広域圏からなる「州」とする「廃県置州」で東京一極集中は止まり、創意工夫で各地に元気と活力が湧き出てくる。その結果、ムダは省かれ企業も人口も地方分散が進む。
よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会
■道州制ウイークリー(313)2022年7月16日
◆これが「日本型州構想」①
(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)
その時代にふさわしい「国のかたち」を設計する。それが政治の役割である。明治維新から150年、時代は大きく変わった。本格的な人口減少時代を迎えた日本をどうするか。「新たな国づくり」を本格的に議論すべき時期ではないのか。いまの統治機構「国→都道府県→市町村」の三層制とそれに連なる膨大な出先機関、外郭団体をそのままにする限り、この先、何度増税を繰り返しても1200兆円を超える財政赤字は消えない。むしろ増えるばかりだ。
バブル崩壊後、日本の国と地方の歳出合計は160兆円を超える動きだが、一方、税収など歳入は100兆円に届かない。こうしたワニの口のように開いたギャップ(赤字)を借金(赤字国債・地方債)で穴埋めする財政運営が続く。歳出の160兆円が私たちへの行政サービスに回るならまだしも、その半分近くは公債費、人件費、管理費など統治機構を維持するための間接経費に消えている。何度増税しても国民に豊かさの実感がないのは、こうした背景による。
この先は「人口が右肩下がり社会」へ向かう。人口減少時代に合う簡素で効率的な統治機構に衣替えする改革が不可欠だ。100万人に達しない県が続出する見通しの中、80~100万人規模の政令市が20近くある。こうした広域自治体と基礎自治体が逆転する現象の続出は、自治制度を根底から揺るがす。130年前にスタートした47の都道府県は、広域化した現代に合っていない。
私たちの日常は、経済も生活も県境に関わりなく広いフィールドで行われている。地方自治のエリアは実際都市と行政都市が一致していることが大原則である。拡大した実際都市(圏)に会う新たな行政都市(圏)の創設、人口の大幅な減少のトレンドを加味した広域自治体の再構築は待ったなしだ。47都道府県体制を解体再編し、広域圏を単位に約10の州をつくり、日常生活に合った広域行政圏の仕組みを創るべきだ。それが道州制である。この改革で財政面だけでも20兆円近いカネが節約できるとされる。消費増税10%分をカットできるということだ。
よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会
■道州制ウイークリー(314)2022年7月23日
◆これが「日本型州構想」②
(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)
これまで「幻の改革」構想と揶揄されてきた道州制だが、実は日本はすでに道州制の素地はできている。20政令市、約60の中核市をそれぞれ政令市→特別市、中核市→政令市に格上げし、この都市自治体に多くの府県業務を移管する。その上で内政(厚労,、国交,文科など)に関わる本省業務、ブロック機関の業務、残存する都道府県の仕事を融合するかたちで「州」政府を創設し、内政の拠点とすれば道州制は実現できる。
ただ、手垢にまみれた「道州制」という表現に代え、日本型州構想という表現を使いたい。これまで北海道の「道」を意識し、「道州制」と呼んできたが、北海道州、九州州と「州」で呼称を統一すれば、もはや道州制と呼ぶ必要はない。
よく県がなくなるので反対だという人がいるが、日常に定着している都道府県名は地名として残るし、カウンティ(郡)という州の出先機関としてしばらくは残る。甲子園の47都道府県対抗高校野球も残る。なので生活上何の支障もない。自治体としての府県機能は即廃止というより、新特別市、新政令市区域外の市町村を補完するカウンティ(郡)として残し、これまでの県の下にあった「郡」が半世紀かけて次第に自然消滅したようにカウンティとしての府県を辿ればよいと考える。ソフトランディングの改革の進め方だ。
日本を「州構想」に移行させる狙いは3点にある。第一に、日本を地方分権の進んだ地方主導型の国家体制に変えること。第二に、東京一極集中を抑え、各圏域自立できる活力ある競争条件を整えること。第三に、国地方の統治機構を簡素化し、効率的で賢い統治システムに代えること。州構想移行で、各州は国から移された財源や立法権、行政圏、一部司法権をフルに使い、自立を始める。内政の拠点となる各州は広域政策の主体として、道路・空港・港湾などの広域インフラの整備、科学技術の振興、州立大学などの高等教育、域内経済や産業の振興、海外都市との交易、文化交流、雇用政策、州内の治安、危機管理、環境保全、医療保険など社会保障サービスを担当する。
よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会
■道州制ウイークリー(315)2022年7月30日
◆これが「日本型州構想」③
(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)
「州構想」への移行で国は外交、防衛など国家的な役割、州は広域政策を担い、市町村は基礎行政を担うように変わる。役割分担が明確になり、経営責任の主体もハッキリする。しかも三者は縦ではなく、役割の違う対等な横(水平)の関係に置き換わる。各州は、公選の州知事、州議会を別々に選出する二元代表制の政治機関を持つ地方自治体となり、国の出先機関や47都道府県が統合され、内政の総括権限や財源は各州に移る。国の地方へのかかわりは財源調整と政策のガイドラインを示す役割に限定され、各州が「内政の拠点」になる。
「州構想」への移行は日本各地を元気にする、それが大きなならいだ。各州は国から移った財源や立法権、行政圏、一部司法権をフルに使い、自立を始める。ただ、この州構想に対し、地域間格差が拡大し、勝ち組、負け組がはっきりする、小規模な町村が寂れるといって反対する意見もある。しかし、そうだろうか。現在の47都道府県のままで格差もなく町村も寂れないといえるのか。話は逆ではないだろうか。
広域州にすることで州内の核となる大都市がその州を潤し、町村は広域州の中で財政調整の恩恵を受ける訳で、細切れの47都道府県時よりむしろよくなる。 州制への移行で各州は課税自主権をフルに使い、州の意思で財源を集めることができる。場合によっては、政策減税も可能となる。こうして各州、各市町村は国から干渉されず、自らの意思によって課税し、税率を決定し、徴税できる。人や企業の流れを独自税源で呼び込むこともできる。