道州制ウイークリー

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(307)2022年6月4日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代① 脱「国民国家」

(大前研一著『経済参謀』より)

「どうしたら日本経済は低迷から抜け出せるのか」といった質問を受ける。――21世紀は「メガリージョン(大都市とその周辺都市で構成される新しい経済活動単位)の時代であり、もはや田中角栄的な「国土の均衡ある発展」は不可能である。にもかかわらず、いまだに政府は「日本」や「日本経済」という次元で考え、国家の均一的な発展を目指している。だから、いくら景気対策や経済政策をやっても効果がないのである。中国のような独裁国家は別として、アメリカにしろEUにしろ、繁栄は「国家」という枠組みの中で創り出せるものではなくなっている。新しい産業が興る完全な規制緩和を行い、世界から富・人材・企業・智恵を呼び込んだメガリージョンだけに繁栄が訪れるのだ。

「日本はどうすればよいのか」という問いに答えるなら、「国家という前提を」捨てよ、と言いたい。国防、外交、金融政策は国家が担うとしても、それ以外の領域は国民国家を卒業し、新たな地域国家像を模索すべきである。そうしなければ、21世紀にトランスフォームして、「繁栄の方程式」を手に入れることはできないのだ。もともと私は日本を11の地域に分けて立法、行政お、司法、徴税の権限を与える「道州制」の導入を提唱してきた。その考えは今も全く変わっていないが、道州レベルではなく1都市、1地域でもメガリージョンが誕生すれば、繁栄の起爆剤になると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(308)2022年6月11日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代② 繁栄の方程式

(大前研一著『経済参謀』より)

今、起きているのは経済のボーダーレス化、グローバル化です。モノ、カネ、情報が軽々と国境を飛び越えるようになれば、ビジネスも国境を越えて発想していかなくてはなりません。ネット隆盛の時代に国民国家という国境の中だけの枠組みで考えていたら、企業は死に絶えるしかない――というのが「ボーダレス・ワールド」の基本的な考え方です。ボーダレス化やグローバル化が進んだ今の世界では、「国家」の枠組みにしがみついて「あの国が我々の脅威だ」「移民・難民が仕事を奪う」と叫べば支持者が集まてくる、という状況がいたるところで見られます。「自国ファースト主義」や「ポピュリズム」がはびこっているのが現状です。現実を見れば、「ダイバーシティ(多様性)」が世界をリードしていて、国民国家という時代遅れの枠組みにこだわっていたら、富も人材も不足して、国が落ちぶれ、国民が貧しくなるだけです。

人・モノ・カネ・情報が国境を越えて集まってくる地域「メガリージョン」というものが世界にいくつか見え始めていて、アメリカ、中国、インドでそれぞれ3か所ぐらいに集約されます。繁栄に寄与する人材というものを、歴史的な流れから見てみると、18世紀から20世紀にかけて工業社会が広がり、国民国家というものが形成されました。そこでは、経済単位は国家(国境)となり、中央集権の政府主導ですべてのルールが決まっていました。

自分の国が反映するために富を生み出し、輸出して、また稼ぐ。稼いだカネを国民に分配する。大量生産・大量消費・輸出主導の経済システムの中では、指示通りに迅速・正確な作業をこなす均質な労働力が重宝されてきました。日本はこのルールの下で繫栄し、世界第2の工業大国となりました。

しかし、その次のフェーズではボーダレス・ワールドになって、かつ、インターネットが登場して情報化・ネットワーク化の時代となり、国家に代わって「メガリージョン」という新しい経済単位が生まれつつあります。ここでは、民間・起業家主導でルールが決まります。今後の繁栄の方程式を知るためにも、いま先行しているメガリージョンで何が起きているのかを知ることが重要です。

 

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■道州制ウイークリー(309)2022年6月18日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代③ アメリカの経済圏

(大前研一著『経済参謀』より)

アメリカの西海岸の「パシフィック・ノースウエストといわれるバンクーバーからシアトル、ポートランドなどを含む経済圏があります。この地域は、人によっては山脈名に由来する「カスカディア」と呼びます。ここはイノベーション産業がけん引する経済が好調で、ワシントン州とブリティッシュ・コロンビア州がイノベーション産業で相互補完的な連携により、さらなる経済発展を目指さす動きもあります。バンクーバー~ポートランド間で高速鉄道建設計画やバンクーバー~シアトル間で自動運転用高速道路構想もあります。

ベイエリア経済圏で拠点となっているのは、スタンフォード大学です。サンフランシスコからサンノゼまで車で1時間というエリアに世界中から人、カネ、モノが集まっています。代表的な企業は、アップル、グーグル、メタ、テスラなどです。これらの巨大企業に続く会社として次々とユニコーン企業が誕生しています。

GAFAMに続くような急成長をしているIT企業やユニコーン企業の創業者も移民や留学生が起業した例が多くなっています。大学や大学院が人材交流の場になっています。スタンフォード、UCLA,、ハーバード、MITといった大学をキャッチャーとして、そこに世界中から優秀な学生を集めます。アメリカにはスタートアップを助けるいろいろな仕掛けがあります。このホップ・ステップ・ジャンプというプロセスが大事なのです。日本の場合は、まず大学というのが単なるアカデミックな学びの場となっていて、世界から優秀な若者を呼び込みません。世界中から才能がある人材が集まってきて、彼らの欲望や野心を事業化していける場があるかどうかなのです。

 

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(310)2022年6月25日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代④ 道州制の先駆「九州」

(大前研一著『経済参謀』より)

中国にも3つのメガリージョンがあります。北京・天津・河北を含んだの京・津・冀の地域です。精華大学や北京大学、中国科学院などの研究機関、あるいはネット検索大手のバイドゥやパソコンメーカーのレノボなどの本社があります。次にグレーター上海。上海市と浙江省や江蘇省、安徽省の一部を含む長江デルタ地帯を高速鉄道網で結び、発展しています。アリババ、アントグループの本拠地です。もう一つが深圳を中心とするグレーターベイエリアです。隣の広州、珠海など珠江デルタに広がっています。深圳の人口は1400万人となり、1人当たりGDPは中国の都市としては、圧倒的に1位です。テンセント、ファーウェイ、ドローン最大手のDJIなど急成長を遂げたスタートアップ企業が集積しています。

インドでは、ニューデリー、ムンバイ、チェンナイ、コルカタを高速道路や高速鉄道で結んで、「黄金の四角形」とか「ダイヤの四角形」と呼ばれる壮大なインフラ拡充策が進められています。それらの大都市から離れた南部のベンガロールはインドのシリコンバレーとも呼ばれています。

日本では、東京、名古屋、大阪、福岡の中で元気なのは福岡です。商業の中心地・天神エリアで大規模な再開発プロジェクトが進行中です。しかも九州は、福岡だけが元気なわけではない。九州新幹線と高速道路網の整備により、九州としての一体感が醸成されて相乗効果が生まれてきている。さらに台湾の半導体メーカーTSMC(台湾積体電路製造)が熊本に工場を建設する。もともと九州は三菱電機、ソニー、東芝、NEC、沖電気などが各地に半導体工場を建設し、「シリコンアイランド」として成長したが、韓国への技術流失や製造コストが安い海外への工場移転などで徐々に寂れてきていた。しかTSMCの進出によって「シリコンアイランド」復活の足掛かりができたといえるだろう。九州は、韓国や中国、東南アジアに近いという「地の利」がある。ビジネスにおいても生産拠点としてもメリットが極めて大きい。道州制=クオリティ国家の延長線上にあるメガリージョンの最適モデルである。

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