ウイークリー「国のかたち改革」(27)~(30)

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会

■ウイークリー「国のかたち改革」(26)2023年7月1日

<国・地域の再生に向けて⑨>

(総合研究開発機構『広域地方政府システムの提言』より)

*イタリア・フランス・ドイツの州制度比較(2)

 いずれの国の州も直接公選・一院制の州議会を持っている。執行機関はフランスでは、州議会により選出される州議会議長が執行機関となる。イタリアの執行機関は、州知事を長とする理事会である。従来、理事会を構成する州知事および理事は州議会の互選で選出されていたが、1999年の憲法改正により、州知事は直接公選となり、それに伴い理事も州知事が任命するようになった。ドイツの州の執行機関は、州首相と各省大臣で構成される州政府である。州首相は州議会が選出し、各大臣は州首相が任命する。

 州の財政は、フランスの州歳出は地方団体の歳出全体に占める割合が8.5%と小さい。イタリアの州は60.5%と大きい。ドイツの州はさらに大きく62.5%となっている。フランスでは、県4.2%、市町村47.8%、広域行政組織19.5%。イタリアでは、県4.2%、市町村35.3%、ドイツでは市町村36.3%、目的組合1.3%となっている。

 歳出構造は、個人への生活保護費、年金や企業への補助金などの移転支出が、イタリアでは82.5%を占め、人件費は3.9%と少ない。フランスの州も移転支出が33.7%と最も大きい。ドイツの州は移転支出が40%と大きいが、人件費も37%と大きい。これはドイツの州が教育・警察を中心に直接的な行政サービスを提供しているのに対し、イタリアやフランスの州は、主として事業計画や資金交付の主体であるため。

 歳入構造では、ドイツの州は地方税が70%を占め、交付金・補助金は18%となっている。フランスの州では地方税が53.8%で、交付金が30.2%である。イタリアでは、地方税が33%であるのに対し、移転収入が61.7%を占めている。ドイツの地方税収の大部分は共同税で、単独の州税はない。財政的自立性はドイツの州が一番で、フランス、イタリアの順になっている。

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会

■ウイークリー「国のかたち改革」(27)2023年7月8日

<国・地域の再生に向けて⑩>

(総合研究開発機構『広域地方政府システムの提言』より)

*イタリア・フランス・ドイツの州制度比較(3)

 州間の財政調整については、ドイツの州は三段階の財政調整が行われる。まず共同税である売上税の州取り分の最大25%が、財政力弱体州に対し優先的に配分される。つぎに財政力富裕州から財政力弱体州に対して調整交付金が交付される州間財政調整が行われる。さらに財政力弱体州には連邦から連邦補充交付金が交付される。さらに財政力弱体州に対しては、連邦から連邦補充交付金が交付される。

 フランスの州は、従来、財政力富裕州から財政力弱体州に対して交付する州間不均衡是正基金という水平的財政調整の制度があったが、2004年度から、国の経常費総合交付金に州分が創設されたことに伴い、廃止され、同交付金の平衡化部分(平衡化交付金)に移行した。すなわち、水平的財政調整から垂直的財政調整へと変化した。

 イタリアの州については、まず特別州では、当該州の区域において国税として徴収された税の一部の一定率が州の財源とされている。また経済的社会的不均衡の除去等のために国に追加的財源の配当を求める憲法119条第5項の規定があり、国からの交付金において州間の財政力格差が考慮されている。

 州内自治体の財政調整については、フランスでは州と同様に国が行っている。経常費総合交付金の県分の中に平衡化交付金と最低経常交付金があり、市町村分の中に平衡化分がある。イタリアでは州も自治体を財政的に支援しているが、国が普通交付税・総合交付金等とともに地方財政平衡化交付金を支出している。ドイツにおいては、国ではなく、州内自治体の財政調整(垂直的財政調整)を行っており。その中心は市町村の財政調整を目的とした基準交付金である。

 

 

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■ウイークリー「国のかたち改革」(28)2023年7月15日

<国・地域の再生に向けて⑪>

(総合研究開発機構『広域地方政府システムの提言』より)

*イタリア・フランス・ドイツの州制度比較(4)

 州に対する国の監督では、ドイツの州は連邦法の執行を州の固有行政として行う。連邦の監督を受けるが、その監督は合法性の監督に限定されている。フランスでは自治体としての州とは別に、国の機関である州地方長官が置かれ、州の重要な行為について合法性の監督(事後の監督)を行っている。イタリアでは州単位に国の政府監察官が置かれており、州の立法に対する審査を行っていたが、2001年の憲法改正で国は州の立法の憲法上の適法性について憲法裁判所へ提起できるだけとなった。

 州の国政への参加については、ドイツでは各州の首相及び大臣等で構成される連邦参議院が州の意向を国政に反映させるための強力な機関となっている。イタリアでは1997年から常設となった国家・州会議が国と州の調整機関として中心的な存在となっている。また、州議会は国会に国の法律案を提出することができる(憲法第121条第2項)。フランスでは国会議員と地方議員の兼職が認められており、上下両院とも地方議員とその兼職者が大半を占めている。州議会議員と兼職している国会議員も当然おり、彼らが州の意向を国会に反映させるルートとなっている。

 他の自治体との関係では、ドイツは州が自治体の監督を行っている。郡も州の下級行政官庁の立場で管内市町村の監督を行う。自治事務については合法性の監督に限定され、連邦及び州の委託事務については合法目的性の監督も行われる。イタリアでも各州に地方行政監督州委員会が設けられ州が自治体の監督を行っている。フランスでは州は県・市町村と対等の自治体であり、県や市町村の監督を行うことはできないとされ、県及び市町村の監督は国の機関である県地方長官により行われている。

 

 

 

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■ウイークリー「国のかたち改革」(29)2023年7月22日

<国・地域の再生に向けて⑫>

(総合研究開発機構『広域地方政府システムの提言』より)

*わが国の道州制への視点(1)

 わが国に道州制の導入を検討するにあたり、イタリア、フランス、ドイツの例みると,2層制だけではなく、3層制の地方制度も選択肢としてはあり得る。しかし、ドイツ及びイタリアでは、州は強力で大きな存在であり市町村も大きな役割を果たしている。中間団体の郡や県は影が薄い存在である。これに対し、フランスでは市町村が一番大きな存在であり、その次は県であり、州は一番軽い存在となっている。基礎自治体である市町村を重視する点では3か国とも共通している。

 わが国の市町村の規模は、これら3か国と比べて大きく、平成大合併によって1741であるのに対し、フランスは約37,000、ドイツは約14,000,イタリアは約8,000。このため、都道府県事務の多くは合併後の新市町村によって処理することが可能となり、都道府県の役割が縮小していくことが見込まれる。この状況を踏まえると、都道府県を残した3層制を導入するとしても、国から事務・権限を移譲された道州と大きくなった市町村の間にあって、限定された役割を果たす都道府県という姿が構想されるのではないか。

 州の区域については、イタリアでは現在の20州を経済収支においてより均衡する12州程度に再編し、ヨーロッパ市場において競争力を持った地域をつくるという考え方があることや、フランスの州が経済発展や地域整備のための区域として出発したことを踏まえると,道州の区域は、経済的合理性にも配慮したものであることが求められる。フランスやイタリアの例をみると、経済のグローバル化に対応した地域的競争力の向上、そのための経済開発や地域整備が道州の重要な事務となる。

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会

■ウイークリー「国のかたち改革」(30)2023年7月29日

<国・地域の再生に向けて⑬>

(総合研究開発機構『広域地方政府システムの提言』より)

*わが国の道州制への視点(2)

 ドイツ、フランス、イタリアの3か国とも直接公選の議員からなる議会を持っているが、いずれも一院制である。わが国で道州制を導入するにあたっても、一院制の議会を設ければよい。問題は執行機関である。

 州の執行機関(その長)はフランスおよびドイツでは州議会の間接選挙によって選ばれる。また、イタリアでは直接選挙により選出されるが、その選挙は州議会議員選挙と一緒にかつ州議会議員の候補者名簿と結びついた形で行われる。この3か国では、いずれの州の執行機関の長と議会の多数派が一致する議院内閣制的な仕組みが採用されている。州の執行機関の長は、現在の都道府県の知事よりもはるかに大きな政治的権力を持つ可能性がある。したがって、州の執行機関の長の直接公選は当然の事柄ではなく、州に付与する権限の程度や州議会との権限配分(長の議案提出権の有無等)なども考慮しながら慎重に検討する必要がある。

 歳入に占める地方税の割合は、ドイツが70%、フランス54%、イタリア33%である。ドイツについては、水平的財政調整制度と垂直的財政調整制度の両者がある。わが国に道州制を導入するにあたっては、まず州への十分な地方税源の付与が必要である。ドイツの州のように地方税が確保されると、豊かな州では余裕が出てくるため、州間の水平的財政調整が可能となってくる。経済開発や地域整備が州の重要な事務となるとすれば、それに対応して企業関係税が州の主要な税目の1つとなり、州の経済開発の成功。不成功によってその税収が大きく左右されることになる。その努力の成果は各道州に帰属させるべきものであるが、一方で、当初からある経済格差等から生じる道州間の不均衡を是正するために何らかの財政調整制度(国による垂直財政調整、州間の水平的財政調整、あるいはその両者)を導入することも必要になると思われる。なお、州内の自治体に対する財政調整はドイツでは州が行い、フランスやイタリアでは一部を除いて国により行われている。

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