ウイークリー「国にかたち改革・選」(34)~(41)

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会

■ウイークリー「国のかたち改革・選」(34)2024年9月7日

◆地域間競争に勝つには(1)自治体ごとのバラバラ対応に限界

(細川昌彦著『メガ・リージョンの攻防』より)

経済活動の基本単位は国ではなく、地域。その地域とは大都市を中心に50キロから200キロ圏にネットワーク化された広域経済圏である「メガ・リージョン」。そして目指すは「道州制」。地域の競争力を高める処方箋が示されています。

いま、地方では「掛け声だけの広域連携」が横行する。国際競争のためにも究極の目標は「道州制」であろう。しか実現までには少なくとも10年はかかる。その間、東アジアにおける熾烈な地域間競争は待ってはくれない。東アジアではシンガポール、香港、中国の沿海部、韓国の釜山などの国、地域が人材と企業を呼び込む、熾烈な競争をしている。日本の地域も、そのような競争に打ち勝たなくてはならない。しかし自治体ごとのバラバラの対応では、太刀打ちできない。各産地がバラバラに海外で売り込みしていても限界がある。

「日本」そしてその中の「地域」が世界との競争に打ち勝つにはどうすればよいのか。

日本、更には地域も立ち止まっていては取り残される。点と点をつなぐ線の延長に、いま進むべき方向が見えてくるのではないだろうか。これから日本がめざすべき「国のかたち」も浮かび上がってくるのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会

■ウイークリー「国のかたち改革・選」(35)2024年9月14日

◆地域間競争に勝つには(2)

国際競争力の単位は「地域」=メガ・リージョン

(細川昌彦著『メガ・リージョンの攻防』より)

「国の競争力」とは一体何を意味するのか。IMD(国際経営開発研究所)が発表するランキングでは、「企業の競争力を維持する環境を提供する国家の能力」を意味するとしている。要するに「ビジネス環境のランキング」である。しかし、国際的な競争力を測る単位として、果たして「国」が適当なのだろうか。国際的な経済活動の実態を考えれば、「国」ではなく、「地域」という単位が適当ではないか。グローバルな経済の下では、企業と人材は活動する場所を選んで、国境を超えて移動する。グローバリゼーションの下では、「国」という単位は消えて、「地域」という単位が直接、前面に出てくる。

地域とはどれぐらいの広がりをイメージすればよいのだろうか。経済活動の現実を見ると、都市は単位としては小さすぎる。国際的に競争力のある地域の実態をみれば、洋の東西を問わず、中核の大都市を中心として、半径50キロから200キロメートル圏内が一つの経済圏として有機的にネットワーク化している。これが一つの競争単位になって、自立し経済圏をつくっている。企業と人材もそういう前提で場所を選んでいる。

最近「メガ・リージョン」という概念が注目されている。「グローバル・シティ・リージョン」という類似の概念で論じている論者もいる。大都市を中核とした一つの経済圏である都市地域がグローバルなプレーヤーとして発展したものである。これがグローバル経済の下で、経済的に繁栄する単位なのだ。

作家の塩野七生さんは「21世紀には都市国家の時代がもう一度やってくる」と指摘している。私はこれを「21世紀はメガ・リージョンの大競争時代」と言い換えたい。

 

 

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■ウイークリー「国のかたち改革・選」(36)2024年9月21日

◆地域間競争に勝つには(3)京阪神の競争力を高める

(細川昌彦著『メガ・リージョンの攻防』より)

日本で東アジアにおける地域間競争に参画できるメガ・リージョンは北部九州圏、京阪神、グレーター・ナゴヤ、東京の各経済圏などがある。この中で、京阪神は「多様性あるモザイク地域」を特色としている。東京、名古屋が環状道路に沿って同心円状に立地しているのに対して、固有の歴史・文化を持った多様性のある都市が相互に近接してモザイク状に立地している。「多様性」と「分散」がキーワードで、この持ち味をどう活かして地域戦略を立てるかが、京阪神地域のポイントである。

もう一つのキーワードは、「伝統、文化、景観」。「本物の日本」「日本ブランド」の集積地で、「クール・ジャパンのメッカ」としての文化ブランド力がある。

問題は海外との関係で、京阪神が一つにまとまるかである。「多様性」はバラバラとなる危険性を持っている。これだけの人口集積がありながら、「一つの地域力」として結集していないところが、この地域の最大の問題。

海外からみれば一つの経済圏である。にもかかわらず、行政はそれぞれ独自路線を歩む。海外への情報発信もバラバラで行われ、結果的に十分な効果を得られない。地域全体が一体となって共同プロモーションにもっと真剣に取り組めば事態も変わろう。東アジアを視野に入れた広域ネットワークによる観光戦略も有効である。各都市で機能を分担し合った、一体的な戦略デザインが必要だ。

 

 

 

 

 

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■ウイークリー「国のかたち改革・選」(37)2024年9月28日

◆地域間競争に勝つには(4)日本列島輪切りの発想

(細川昌彦著『メガ・リージョンの攻防』より)

日本海側の位置づけが大きく変化し始めた。日本海側の主要港の取り扱い量が大幅に伸びている。中国経済の急成長、ロシア経済の発展が大きく世界を変えつつある。日本海側をいかに戦略的に活用するかが重要な経営戦略となってきた。例えば、関西にとって舞鶴港、敦賀港に重要性が増してきている。関東にとっても新潟港は物流拠点として重要だ。東北にとっても新潟港は戦略的拠点になっている。

中部地域でも、北陸の意味合いが大きく変化しつつある。金沢港、富山港、敦賀港も戦略的な目で再評価されている。石川県にある建設機械最大手のコマツはキャタピラーと世界市場で熾烈な競争をしているが、中国ビジネスの上で金沢港は大きな戦略的意味を持ってきている。名古屋港と金沢港を戦略的に使い分けている。また東海北陸自動車道も開通、観光、物流などを考えると、グレーター・ナゴヤと北陸を一体的に見る戦略観が必要だ。

道州制の議論の一環で区割りもテーマになっている。様々な区割り案が飛び交っているが、日本海側をどう位置づけるかが戦略的にも政治的にも最大のポイントであろう。やはり「日本列島を輪切りにしていく発想」「日本海側と太平洋側を一体的に捉える戦略性」が不可欠だ。

 

 

 

 

 

 

 

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■ウイークリー「国のかたち改革・選」(38)2024年10月5日

◆地域間競争に勝つには(5)横行するフルセット主義

(細川昌彦著『メガ・リージョンの攻防』より)

地域の経営力を決めるのは、「多様性」「開放性」「広域性」である。勝ち組の3点セットだ。

多様性で重要なのが、地域にも異質な者、「よそ者」の存在だ。外国人、女性など多様な人材が活躍する強靭な組織に脱皮することが大事。地域も企業と同様、グローバル競争にさらされている。活力ある地域づくりのためには、多様性を活かした経営が地域にも求められている。

地域にとってイノベーションのピントは何か。それを生み出しやすい「社会的な生態系の存在」、「開放性」である。端的な例が米シリコンバレーだ。そこには日常的に多様な情報が行きかっている。何気ないコミュニケーションから自然と情報を得、刺激を得る。まさに「わいわいがやがやの空間」だ。地域の中にも「わいがや空間」を創る工夫をすることだ。このような空間での多様な交流こそが地域にイノベーションと創造性を生み出す神髄である。

第三のポイントは「広域性」。自治体の行政区画というのは企業と人材にとっては意味がない。にもかかわらず同じ経済圏にありながら、それぞれの自治体ごとにバラバラな対応では国際競争に打ち勝てない。日本では伝統的に「自治体のフルセット主義、自前主義」が横行している。同じような施設がひと通りそろっているのだ。それが自治体の中で自己完結している。しかし広域で見れば、重複投資になっていて非効率極まりない。部分最適の集合が全体最適になっていない。試験研究機関も県ごとに公設の試験場がある。隣接県でそれぞれの試験場が得意分野に特化して連携する発想があってもよい。各県ごとにそれぞれ総合大学としてフルセット主義になっている。必要なのは大学版の「選択と集中」と「ネットワーク化」だ。広域経済圏で複数の国立大学をひとつの法人の参加において戦略的経営があってもよい。

 

 

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■ウイークリー「国のかたち改革・選」(39)2024年10月12日

◆地域間競争に勝つには(6)日本はリージョン(地域)の集合体

(細川昌彦著『メガ・リージョンの攻防』より)

国際的な地域間競争が激化する中で、地域は国に頼らずダイナミックな戦略で自立することが求められている。まさに地域の経営力が問われている。

国土政策は大きく転換しようとしている。これまでの日本の国土政策は「国土の均衡ある発展」を旨としてきた。ここにきて旗印は「均衡」から「個性」「多様性」へシフトしている。地域は自らの地域を主体的に考え、策定する立場にある。いま、それぞれの地域は自らをデザインする力量が問われている。

そうした中で、まず「自らの立ち位置」を明確にしておかなければならない。日本の地域は大きく三つに類型化される。第一に、モノづくりなど実物経済の世界で主要プレーヤーを目指す地域。第二に、金融、情報、文化、ファッションなどソフト・パワーにおいてグローバル・プレーヤーである東京。第三に小さくても地域資源を活用して自立し、きらりと輝く地域を目指す地域。これは「自立循環型の地域」と呼ぶことができる「ローカル」に属する地域である。

道州制の議論が行われているが、まずは地域では「広域連携の実態」を創っていかなければならない。これからの地域は「自立」と広域連携を経ての「統合」が車の両輪になって成長していくだろう。日本という国は、そういう地域の集合体として構成されていく。いわゆる「ユナイテッド・リージョンズ・オブ・ジャパン」である。これからの日本は、個性と魅力ある地域(リージョン=Region)の集合体である。

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会

■ウイークリー「国のかたち改革・選」(40)2024年10月19日

どのような経済社会、地域にするのか①>

(飯田哲也・金子勝『メガリスク時代の日本再生戦略』より)

「失われた30年」は、人々の暮らしを直撃し、大都市への集中が進む一方で、地域は衰退するという、地域間格差が拡大していった。この危機から脱するには、再生エネルギーを軸にした産業構造の転換が必要であり、目指すべきは、分散革命ニューディールによる地域分散ネットワーク型の社会であることを示しています。

 日本の経済成長がストップし、長期停滞から抜け出せずにいる最大の原因は、バブル崩壊後の産業構造にあります。その背景には。無責任体制から生み出された「失われた30年」の間に研究開発のための投資額が減少し、アメリカや中国から大きく引き離されてしまったということがあります。産業の競争力がどんどん低下していったのです。

 1991年の日米半導体協定の後、先端産業について政府が本格的な産業政策を展開することはタブー化し、「規制緩和」を掲げる「市場原理主義」が採用されるようになった。しかし、規制を撤廃し、価格メカニズムに任せれば新しい産業が生まれていくなどというのは、根拠のないイデオロギーです。90年代にバブルが崩壊し、金融危機に見舞われたスウェーデンやフィンランドでは、巨額の公的資金を投入して不良債権を一気に処理しています。さらに、先端産業化を進めるための国家戦略を立てて、イノベーションに対する研究開発投資と教育投資を増加させ、知的集約産業への移行が図られた結果、フィンランドにはノキアができ、スウェーデンにもエリクソンなどのIT企業が生まれ、デンマークには世界的な風力発電メーカーであるヴェスタス社が誕生します。ここで重要なのは、これらの国が産業政策を立てて、新しい産業への投資や技術開発を国が支援する政策を打ち出したということです。

 イノベーションが新たに生まれ、産業構造が変化するような時期には、明らかに一定の政府の役割なしに産業はうまれません。

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会

■ウイークリー「国のかたち改革・選」(41)2024年10月26日

どのような経済社会、地域にするのか②>

(飯田哲也・金子勝『メガリスク時代の日本再生戦略』より)

「失われた30年」は、人々の暮らしを直撃し、大都市への集中が進む一方で、地域は衰退するという、地域間格差が拡大していった。この危機から脱するには、再生エネルギーを軸にした産業構造の転換が必要であり、目指すべきは、分散革命ニューディールによる地域分散ネットワーク型の社会であることを示しています。

 日本の経済成長がストップし、長期停滞から抜け出せずにいる最大の原因は、バブル崩壊後の産業構造にあります。その背景には。無責任体制から生み出された「失われた30年」の間に研究開発のための投資額が減少し、アメリカや中国から大きく引き離されてしまったということがあります。産業の競争力がどんどん低下していったのです。

 1991年の日米半導体協定の後、先端産業について政府が本格的な産業政策を展開することはタブー化し、「規制緩和」を掲げる「市場原理主義」が採用されるようになった。しかし、規制を撤廃し、価格メカニズムに任せれば新しい産業が生まれていくなどというのは、根拠のないイデオロギーです。90年代にバブルが崩壊し、金融危機に見舞われたスウェーデンやフィンランドでは、巨額の公的資金を投入して不良債権を一気に処理しています。さらに、先端産業化を進めるための国家戦略を立てて、イノベーションに対する研究開発投資と教育投資を増加させ、知的集約産業への移行が図られた結果、フィンランドにはノキアができ、スウェーデンにもエリクソンなどのIT企業が生まれ、デンマークには世界的な風力発電メーカーであるヴェスタス社が誕生します。ここで重要なのは、これらの国が産業政策を立てて、新しい産業への投資や技術開発を国が支援する政策を打ち出したということです。

 イノベーションが新たに生まれ、産業構造が変化するような時期には、明らかに一定の政府の役割なしに産業はうまれません。

 

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