ウイークリー「国のかたち改革・選」24年11月2日~12月28日
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革・選」(42)2024年11月2日
<どのような経済社会、地域にするのか③>
(飯田哲也・金子勝『メガリスク時代の日本再生戦略』より)
◆「地域分散型ネットワーク社会」へ
20世紀は、重化学工業を軸にした大量生産・大量消費の「集中メインフレーム型」の時代でした。それは、市町村や都道府県などの地方自治体を国の出先機関とする中央集権的な行財政システムと適合してもいました。この集中メインフレーム型のシステムは、人口が増加傾向にあり、内需も拡大し続け、輸出額も増加していくような社会でないと、集中メインフレーム型のシステムはうまく機能しません。しかし、すでに日本企業の国際競争力は衰えており、少子高齢化も進み、実質賃金が停滞もしくは低下し続けていますから、とてもこのシステムが持たないのは明らかです。
目指すべきは、「集中型メインフレーム型」ではなく、「地域分散ネットワーク型」の社会なのです。クラウド・コンピューターやIOT、ICTの発達によって、それぞれは小規模で分散していても、瞬時にニーズを把握し、きめ細かく供給することが可能です。しかもそれを効率的に行うことができるのです。各国でこうした動きが始まっています。これが21世紀の新たな産業革命なのです。
医療や福祉、介護の世界は、今後どうあるべきでしょうか。高齢化が進む現在、単身世帯が増加しています。これに対応して、医療や福祉、介護の分野も、地域分散ネットワーク型に変革していく必要があります。具体的には、中核病院、診療所、介護施設、訪問介護・看護・介護などをネットワークで結びつけ、地域医療・介護のシステムを構築するのです。
このように地域分散ネットワーク型へと転換することは、中央集権的な意思決定システムから、分権・自治型の合意形成システムへの転換を伴うものでもあります。重要なのは、中央集権的な「上から下へ」のガバナンスではなく、それぞれの地域を基本とし、地域では対応できないものを上位の行政機関に委ねる「補完性の原理」に立脚するということです。その上で、地域同士でネットワーク形成し、中央政府からの独立性を確保するのです。地域住民が主権者であることを前提とした民主主義の実践といえるでしょう。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革・選」(43)2024年11月9日
<どのような経済社会、地域にするのか④>
(飯田哲也・金子勝『メガリスク時代の日本再生戦略』より)
地域分散ネットワーク型への転換は、実は食と農の分野でも進んでいます。大規模専業農家をモデルとする農業基本法以来の経営モデルは、これまで一度として主流になったこともないし、これからもありえないと思われます。農業でも兼業が現実的で、かつ小規模分散ネットワークの仕組みが必要となっています。それを象徴するのが、農産物直配所へのPOSシステムの導入です。販売所で農産品が売れるたびに、バーコードでその情報が読み取られ、どこで何が売れたのかガ瞬時に分かるようになります。大量仕入れ、大量販売でなく、きめ細かな販売が可能になるのです。それに加えて、ネットワーク化を進めることで、より付加価値の高い農産品を各地で提供することができるようになります。
現在、農産物直配所は全国に1万数千か所(季節営業店も含めると2万余)あり、年間総売上高は約1兆324億円にも上ります(2018年)。ここにPOSシステムを導入し、ITCの活用によりネットワーク化を進めて相互に結びつくようになれば、さらなる発展が期待できるのです。そのポイントとなるのが「営農ソーラー」です。ドイツやデンマークでは、地域エネルギーの担い手の中心は農家です。「農産物もエネルギーも、太陽と土地から生まれる」という基本原理から考えても、農業と再生可能エネルギーはとても相性がよい組み合わせです。農業を営むのに加え、再生可能エネルギー発電事業にも取り組むという、「エネルギー兼業農家」となることで収入も安定します。
「6次産業化」+「エネルギー兼業農家」という農家経営モデルは、地域経済のあり方も大きく変える可能性を秘めています。これまでは地域経済の活性化を図るために、外部から工場を誘致し、兼業農家のために雇用を作り出すということをしていました。しかし、その場合、収益の大半は地域外へ流失してしまっていました。「6次産業化」+「エネルギー兼業農家」というモデルは、地域の資源を多角的に活用し、雇用を創出し、収益をもたらし、それが地域を循環するという、自律的な経済圏を生み出します。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革・選」(44)2024年11月16日
<どのような経済社会、地域にするのか⑤>
(飯田哲也・金子勝『メガリスク時代の日本再生戦略』より)
◆産業構造転換のために国家がなすべきこと
アメリカや中国での先端技術の研究・開発では、軍事利用を前提とするものが少なくありません。無人航空機(ドローン)、自動車の無人運転、コンピューターによる地形認証システムなどの基盤技術は、いずれも軍用目的でも利用されています。国防総省高等研究計画局が先端技術開発に重要な役割を果たしています。中国のファーウェイやZTEといった先端技術を担う民間企業も、軍事部門からスピンアウトしてきたもので、似たような流れがあります。こうした基盤技術の上に、シリコンバレーや中国の深圳や雄安は、市場調査を行うことで消費者のニーズをつかみ、IT関連企業が集中するようになったのです。こうした事例からも分かるように、国家によるサポートをテコにして、先端技術が集積するような拠点が生まれてこなければ、新しい産業はそう簡単には生まれてこないのです。
日本では、大学は依然として情報通信機器の基盤技術の開発から遅れた上に、予算が恒常的に削られています。こうした閉塞状況を打破するには情報公開と民主主義を大原則にして国家戦略を立てる必要があります。
昨今のイノベーションの特徴は、プラットフォームとなるスタンダードが変わると、市場が一変するという点にあります。このような大転換に際して、政府は、国有企業か、民間企業か、政府か、市場かといった、旧来的な二分法に囚われてはなりません。新しい産業のためのインフラ整備、研究開発投資を含む初期投資の赤字分をカバーするための制度設計、国際的なデファクト・スタンダードに育てるためのOSの選択と、これに関連するルールの標準化と外交交渉、関連産業の支援、知識産業化の推進、創造性を重視した教育の拡充などにおいて、国家戦略が重要になってくるのです。今の日本は、まるで倒産企業のように、未来を考えずに金を湯水のように使っているだけです。もはや日本は先進国とはいえなくなっています。だからこそ、オールジャパンで新しい産業を創り出す必要があるのです。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革・選」(45)2024年11月23日
<どのような経済社会、地域にするのか⑥>
(八幡和郎『日本の政治:解体新書』から
◆首都機能移転と地方分権
東京一極集中の排除のために、大阪・関西副都は有効であろうが、東京と大阪だけが栄えるのでは支持されない。他の地方の発展法方向も保障する必要がある。地方自治の仕組みにしても、明治維新の成功は、地方制度を統一整理したことにある。明治、あるいは戦後に始まった地方制度が老朽化しているので、国家的に再構築すべきことと、各地の自主性に任すことを使い分けることが正しい。
東京一極集中を解消するためには、道州制を含めた地方分権とか、首都機能の部分移転の方が現実的だという人もいるが、それだけでは首都にいる人や企業本位の社会システムのままになる構造的問題を解消できない。やはり、本命は国会、政府の移転である。
試案としては、①東京が災害やテロ、システム障害に大阪を官民の西日本センターとして機能させる。「NHK大阪からの全国放送」「東海道新幹線の管制」などはすでに準備されている。②東京で緊急事態が起こったら民間は大阪、国会や官公庁は京都を活用すべきだ。ホテルを臨時の各省庁として使える。大学・寺社の施設も同様。③「国立京都国際会館」を国会議事堂として、京都御所は臨時の皇居として使えるように機能を向上させておくべきである。④中央省庁の組織を見直し、職員の半数は道州に移行させる。都道府県と市町村は300~400の基礎自治体に再編して財政基盤を保証し、生活基盤の整備は任せる。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革・選」(46)2024年11月30日
<どのような経済社会、地域にするのか⑦>
(八幡和郎『日本の政治:解体新書』から
地方制度については、自民党が道州制を主張し、旧民主党が道州も都道府県も廃止して、全国を300ほどの基礎自治体に分けることを主張していたが、私は、両方同時にするという考えだ。ただし、それを地方分散につなげるためには、公務員をどこから持ってくるかが大事である。道州は基本的には霞が関から片道切符での移籍であるべきと思う。あくまで東京から広島や仙台に雇用を移すべきで、都道府県からの吸い上げは最小限でよい。政策立案は霞が関に残し、実施は道州に、全国統一政策は各道州の話し合いで決める方法もある。
ドイツは「地方分権の国」といわれるが、政策は全国一律が多く、むしろ「地方主義の国」である。教育も各州の文部省の話し合いで立案・実施している。ドイツの中央銀行のドイツ連邦銀行の理事にしても、過半数は各州代表である。また、EUも各国代表が相談して決めることが多いし、持ち回りの「議長国」という制度もある。日本でも、水道行政は主要な大都市の水道局の話し合いが重要な役割を演じてきた。
道州制を採用した場合、国土交通省や厚生労働省、農水省などは、プロパー職員はなくして道州からの出向者で構成してもいい。道州庁の最初の職員は中央省庁からの移籍者、出向者を中心にして、一部は地元で募集すればいいが、新規採用は道州がするので徐々に入れ替わるだろう。
現行の都道府県の枠組みをなくすことは、地域経済維持のためにも現実的でないので、基礎自治体の協議体としての道府県はあってもいい。都道府県議会議員は基礎自治体議員からの間接選挙でいい。職員は基礎自治体からの出向者で構成する。道州や基礎自治体の地域割りは、地元に任すのではなく、地元の意向を早朝しつつも、国会で決めるべきである。明治維新の時のように全国的なリシャッフルが必要だ。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革・選」(47)2024年12月7日
<「州府制」導入の提言①「州府制」とは>
(『日本再編計画――無税国家への道』より)
松下幸之助提案の「無税国家論」のアイデアをベースに立ち上げた「無税国家研究プロジェクトチーム」がPHP研究所創設50周年を記念して、1996年に新しい国のかたちとして「日本再編計画」をまとめました。少子高齢化・人口減少時代の今、改めて見つめなおしていきたいと思います。
地域の改革を「州府制」の導入によって実行する。この「州府制」とは「地域主権」を実際に展開する地域の新しい受け皿として、現行の都道府県・市町村をゼロベースで見直し、新たに「12州257府」へと再編・改組するものである。
「州府制」の前提としては、「地域主権」の前提である①住民と行政の距離を近づける、②税金を通じた住民参加と選択、③行政の意欲と活力の向上、が当てはまる。これらの三つの要件を満たす、新しい自治体を創り出すことが、改革の最大の目的である。「州府制」は、「支配―従属」という従来の国と地方の関係を温存したままで、現行地域制度の改善を行うものではない。
「府」は生活行政の核として現行の市町村を再編し、人口15~35万人を目安に257府を創設する。「府」は福祉、教育、保健衛生、消防などの独立した権限と、課税自主権、税率決定権を持つ。行政の実態が住民に完全に公開され、住民の選択と監視を基に行政が実施される「見える自治体」とする。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革・選」(48)2024年12月14日
◆「州府制」導入の提言②257府再編への基本方針
(『日本再編計画――無税国家への道』より)
①より効率的な行政運営につながる「人口規模」
人口規模が増えるにしたがって行政経費は低下、より効率的な自治体運営、行政コストの低下が図れるが、人口一人当たり歳出額が最低になる人口規模は15万4000人となった。この15万人を基本に再編を行った。ただし、島や山間部など地理的理由から、別の自治体と一つにすることが現実的でないところは例外的に15万人を下回っている。
②経済的・財政的に自立した単位
住民生活の核として、自前で生活関連サービスを供給していくためには府はある程度の経済力と財政力を有した単位でなければならない。府のイメージは、国の保護・指揮を当てにせず、自主的に地域の運営を行い、独自に税率を決め、必要な政策の意思決定を自由に行うことのできる基礎的自治体である。
③地域相互の交流と連携
道路、橋、鉄道などの発達による地域相互の交流と連携を重視する。旧来の狭い行政区画が交流可能圏域の拡大に追いつけず、行政単位と実際の生活単位とのミスマッチが発生している。ただし、政令指定都市など都市部ですでに自立可能な経済圏が形成され、都市基盤や公共施設など一体的な整備が行われているところについては、現在の行政区域を踏襲していくことが妥当とした。
④小選挙区及び地域の歴史的つながりの尊重
基本的には小選挙区との一致を試みた。また、地域間の土着的な結びつきや歴史的つながりを考慮し、江戸時代の「藩」や「国」などを調べ、「府」が地域性から全くかけ離れたものにならないように工夫した。この基本方針に則り検討した結果、「257府」となった。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革・選」(49)2024年12月21日
◆「州府制」導入の提言③広域行政の主体となる「州」
(『日本再編計画――無税国家への道』より)
現行の都道府県を再編し、新たに10州プラス2特別州を創設する。「州」は「府」の後見役として、「府」単独ではできない仕事、あるいは広域に及ぶ行政事項についてのみ担当する。
想定しているの「12州」は、北海道、東北州、北陸信越州、北関東州、南関東州、東海州、関西州、中国州、四国州、九州と東京特別州、大阪特別州。県が廃止され州ができたことで、より広域的な視点から地域内のネットワークのあり方を考えることができるようになったり、各府がそれぞれ得意とする分野を持ちつつ、これまでの県境を越えて競争できるようになる。
州は20~30の府が集まって形成される単位であり、現行の都道府県より広域な新しい行政単位である。具体的には、公共事業、危機管理、警察などの仕事を行う。課税自主権および税率決定権を持ち、他州と「善政競争」を行う。
仕事の第一の公共事業は、地域別、あるいは地域内のネットワーク(道路、鉄道、空港、s港湾など)の構築については国主導でなく、地域主導で進める方が、地域のニーズに合った計画策定や柔軟な整備を行うことができると考えられる。州が地域内の役割分担や域内のネットワークの在り方などを考慮し、広域的な視点から整備を進めることを基本とすべきである。整備費用については、広域的なローカル・ネットワークの整備は州の公共事業として、州税や州債により財源を調達する。
州が行う第二の仕事は、地震、津波、火事などの災害に対する危機管理の仕事である。現場での行政の対応は、市や都道府県という」行政区画や霞が関の省庁のタテ割りによって実施され、地域内の連携が思うように進まない事態後起こっている。こうした危機管理は府では小さすぎ、機動的な復旧も、経済的負担の重い復興も思うに任せない。そこで要となるのが州である。
仕事の第三は警察である。州警察に再編し、より機動的、広域的な操作が行えるようにすべきである。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革・選」50)2024年12月28日
◆「州府制」導入の提言④行財政効率化で歳出30兆円削減
(『日本再編計画――無税国家への道』より)
国と地方の新しい役割とシステムをゼロベースから見直し、新しい姿に再編成、国と地方の徹底した行政改革や民営化の推進によって、歳出の2割削減を図ることを目標に年次別歳出削減計画を策定した。計画初年度の6.6兆円の削減を皮切りに、漸次削減額を増加させ、計画達成時(10年後)には年間30兆円の削減を行う。
削減の前提は、「効率性の高い歳出」と「メリハリのきいた歳出」の2点。これを基にした歳出削減構想の基本方針は①再編と行革による行政の効率化、②市場介入の撤廃、③民営化(民間活力の重視)。
①再編と行革による行政の効率化――「市町村―都道府県」体制の改革による行政の効率化で歳出を削減。推計では257府の歳出総額は、現行市町村に比べ7.9兆円減少する。州トータルの歳出額の推計では、現都道府県より8兆円の歳出減になった。計16兆円の削減の半分の7~8兆円が、地方制度再編による「規模の経済」が働いた再編効果である。
②市場介入の撤廃――国や地域が産業振興や価格安定を目的として支出している予算の廃止および業界や地域に対する規制撤廃である。今後は、市場での自由な競争を通じ、民間の活力と自由な選択が最大限に尊重される創造的で多様性に満ちた社会の構築を目指すべきであり、そのためには市場ルールの貫徹が不可欠。歳出削減額は8兆円。
③民営化(民間活力の活用)――教育現場をより創造的で豊かなものに変えていくには、行政関与を減らし、学校間競争を促す必要がある。科学技術関連費用についても客観的な評価の下に研究費が配分されるようになれば、競争原理が働き、研究分野全体が活性化する。民営化効果に国レベルの行政効果を加えればⅯ、歳出削減額は9兆円。
以上のように年間30兆円の歳出削減により、福祉の充実や活力維持、財政健全化のための未来創造財源として「21世紀活力基金」に蓄積される。