ウイークリー「国のかたち改革」24年4月
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革・選」(12)2024年4月6日
<国・地域の再生に向けて④>
(総合研究開発機構『広域地方政府システムの提言』より)
*究極の単一国家型地方分権システム
単一国家体制を維持しながらも、極力、補完性の原理に基づき中央政府の権能を選択的に重点化し、中間政府(メゾ・ガバメント)及び基礎的自治体に分権した状況を想定してわが国の地方政府システムをデザインしていくと、近年、急ピッチで分権化を進めている、イタリア・フランス型の地方政府システムの考え方に近似していくことがわかる。EU諸国は多少のバラツキはみられるものの、総じて中間政府の創設・強化や基礎的自治体等の整備など自治権の強化に努め、同時に国家としてのパフォーマンス強化も実現してきた。
その典型例が、イタリア及びフランス、スペインであろう。EUにおいても、3層制を採用するこれら3国は、地方分権制度という意味では連邦制に次ぐ位置づけを与えており、いわば、限りなく連邦制に近い単一国家型地方政府システムを採用した国といえるかもしれない。
イタリア・フランス型というタイプが、現時点では単一国家形態の中で、地域の主体性を反映し、国民・市民の政府に対する民主的統制を担保するための最も現実的な政治システムと考えられ、わが国の地方政府システム改革案の参考とすべき原型としても相応しい姿ではないだろうか。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革・選」(13)2024年4月13日
<国・地域の再生に向けて⑤>
(総合研究開発機構『広域地方政府システムの提言』より)
*イタリアの地方制度(1)
地方自治の構造は、州(regione)、県(provincia)、
コムーネ(comune)による三層制からなる。この他、大都市、大都市圏、地区、山岳共同体などが地方行政を支援する。イタリア憲法は、いくつかの条文に地方自治を規定している。憲法第5条で、地方自治の認知と推進をうたっており、「一にして不可分の共和国は、地方自治を承認しかつ促進する。共和国は国の事務において、最も広範な行政上の分権を行い、その立法の原則及び方法を、自治及び分権の要請に適合させる」と規定する。
州は、15の普通州と5の特別州からなる。第二次大戦後に制定された共和国憲法に規定されたものの、実際には1970年代になって本格的に始動した州は、比較的新しい自治の単位であるが、その地域的な広がりについては、1861年の国家統一以前にあった諸公国、王国のそれを基本的に踏襲しており、歴史的、伝統的な背景がまったくないというわけではない。緩やかな連邦制の導入、地方分権化にあたって、州を強化することは現実的かつ妥当なアイデアであったと考えられている。
州政府は、かつては国の政府と同様の議院内閣制モデルに基づいていたが、州代表が市民による直接選挙によって選出されるようになり、現在は大統領制モデルといえる。市民から選挙によって選出される州代表及び議会、議会によって任命される執行機関である評議会からなる。州のトップであるプレジデンテは、評議会の議長を務めるが、議会の議長は別に議会の中から選出される。
州の機能としては、第一に社会サービスの提供があり、医療、社会保障事業、保育、学校保健、文化事業、職業訓練などが含まれる。第二は、都市計画、特に土地利用計画に関する機能である。州は公共事業や都市基盤整備の計画、市の策定する都市計画の認可を行う。第三は、経済の統治。観光、商業、農業、水産業、手工業,鉱業などに関与する。
よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会
■ウイークリー「国のかたち改革・選」(14)2024年4月20日
<国・地域の再生に向けて⑥>
(総合研究開発機構『広域地方政府システムの提言』より)
*イタリアの地方制度(2)
州税は、州生産活動税、州個人所得付加税、州自動車税、州許認可税、メタンガス国家消費税に対する州付加税、固形廃棄物処理料、自動車登録税に対する州税、国家許認可に対する付加税、州有地その他の州産業の占有料、州の行政事務手数料、委託事務手数料なども自主財源となる。
1998年導入の州生産活動税は、外形標準課税の地方法人課税で、第一に、州を課税団体とする科目の創設による財政の分権化の促進という意味を持つと同時にこれまでの複雑多岐にわたる税を統廃合し合理化する必要に迫られたものであった。第二の意義は、全国保険基金及び州ごとに徴収されているにもかかわらず中央集権的に運営されていた保険分担金によって営まれていた医療保険行政の改革、分権化である。第三の背景は、家族経営の中小、零細企業の多いイタリアにおいて、借入金に依存する従来の経営形態を変え、自己資本を高める必要性であった。99年、国からの財源移転が一部廃止され、替わって2000年より個人所得税の州付加税の税率が増加された。また、付加価値税の一部を州が得ることを認められた。特別州の財政は、一種の地方交付税に依存している。
県は、廃止論に晒されながらも現在102あり、適正規模の政策単位として注目されている。県政府は、議会、評議会、県代表からなる。県代表(プレジデンテ)は議会と同日に直接選挙によって選出される。評議会の議長、議会の議長を兼任する。県の機能は、学校の運営、教員以外の人材管理、剣道の管理、環境保護、地域計画、運輸などに関する市政の調整機能であるが、自治の実態は千差万別で、大規模な市が存在する大都市圏において有名無実という県も少なくない。
県の主要な機能は、土地の保全、環境の保護、災害の予防、水源やエネルギー減の確保、文化財の評価、道路行政と公共交通、動植物・公園・自然の保護、狩猟や農業、保健医療事業、中等教育、芸術教育、職業訓練、学校関連の営繕、地方自治体の技術的・行政的な補助、州計画作成への参画、県の全体計画・地域調整計画の作成と実施などである。
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■ウイークリー「国のかたち改革・選」(15)2024年4月27日
<国・地域の再生に向けて⑦>
(総合研究開発機構『広域地方政府システムの提言』より)
*イタリアの地方制度(3)
県の財政規模は州、市と比べて著しく小さく、活動が限定される。税収は、県自動車登録税、県自動車保険税、環境保護おとび環境衛生行政のための県税、県有地の占有料及び地下通路建設に関わる料金、個人所得税付加税などである。歳出において大きなウエイトを占めているのは、教育・文化、科学研究、運輸・通信などの行政分野である。
コムーネは現在8000を数え、人口、面積、地域性にかかわらず同一の法的主体である。住民が100人に満たない小さな市から、300万人のローマ市までが、同一の基準によって規定されている。人口が3000人に満たない市が全体のおよそ6割を占めている。コムーネは、イタリアの地方意識を規定する共同体や基礎自治体を強く擁護する地域主義の伝統を体現している行政単位であり、地域共同体のアイデンティティは極めて高い。政府は、議会、評議会、首長からなる。首長は直接選挙によってえらばれる。議会は首長会派にプレミアムのついた比例代表性によって選出される。評議会は首長の任命する評議員から構成される。人口1万5千人以下の市の場合、首長が議会の議長を兼任するが、1万5千人を超える場合は議会内から選出される。
コムーネの主要な機能は、都市警察、学校教育と保育、文化行政、見本市や市場を中心とする商業や事業の推進と監督、観光行政、手工業、農業、都市計画、公共交通と道路行政、水の供給、電気供給、ごみ収集、下水処理、都市基盤整備、公共事業、公園、住宅政策、環境保護など。州と国家が、社会サービス、社会福祉事業、教育、保健医療の分野に関与するようになった後、コムーネはこれらに対する権限の一部を失った。
コムーネの財政基盤は、独自の税収及び国庫支出金からなるが、90年代の地方財政改革に先駆けて市不動産税ガ導入されたことによって、独自財源が国家ゕらの補助を上回るに至った。