道州制ウイークリー(104)~(107)

■道州制ウイークリー(104) 2018年7月7日

◆道州制の設計と分析(4)                     (江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽道州制設計上の諸論点③国の省庁改革も同時進行

<第5論点=税財政の設計、格差調整をどうするか>難問と思われるのは、新たな税財政制度の構築である。道州制移行に反対する一つの理由として、財政力格差の拡大を懸念する声も強い。例えば、税還元率(納税額に対するサービス等のの比率還元額)で計算すると、島根県が3.0、東京都は0.3である。財政格差の是正は不可欠なのが日本の現状である。ただ、道州制移行に伴う税財政システムの最大の変化は、道州を構成する各州が独自の課税権を持つことにある。

<第6論点=道州政府の組織設計をどうするか>立法権、行政権の大幅な権限移譲を前提とした道州政府の設計を考えなければならないが、司法権については、どうするのか。基礎自治体、道州レベルに限定される道州条例違反などの裁判は「道州高等裁判所」で処理できるようにしたらどうかという考えも成り立つ。また、道州の統治機構については、議会制度、選挙制度、道州知事の権限など統治機構の設計だけでも論点は多数に及ぶ。

<第7論点=国の省庁改革をどうするか>道州制移行は地方制度改革に止まらない。国の省庁廃止、再編といった国政改革も視野に入る。省庁の改廃だけに焦点を当ててみると、①国土、農林、厚労、文部といった内政省は廃止し、道州へ移管、②外交、安全保障、危機管理、マクロな経済政策、財政金融政策といった機能は強化し、それにふさわしい省庁体制に再編する、③国会のあり方も問題となる、④会計検査院は外部監査制度に変えるのか、人事院は廃止するのか、⑤国と地方財政の切り分けを行う仕組みとしての「地方財政計画」を残すのか、などがあげられる。道州制は国家制度、国政のあり方の大改革を同時進行で実現する「明治維新」に匹敵する大改革となることが想定される。

 

■道州制ウイークリー(105) 2018年7月14日

◆道州制と社会的・経済的効果(1)                     (江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽道州は広域政策の中核

明治維新以来続いてきた中央集権的な統治システムから、地域が自己責任と独自の判断に基づいて政策を展開していく地域住民主体の体制へと根本的に変えていく、それが「地域主権型道州制」である。

これには、①現在の行政単位は狭すぎる、②人口減少時代の到来、③中央集権体制がムダと堕落を生んだ、④国際社会で競争に敗れてしまう、といったさまざまな背景がある。「地域主権型道州制」は、中央政府の再編を前提に、基礎自治体を補完し、そこではやれない広域行政を展開する地域に根を下ろした広域行政地域・道州をつくっていくという、現行の日本国憲法下で実現可能な改革を指している。

財源や立法などの権限を国から大幅に移譲する広域圏の道州は、道路・空港・港湾などの広域社会インフラ整備、科学技術振興・高等教育、域内経済・産業の振興、対外経済・文化交流、雇用政策、域内の治安・危機管理、リージョナルな環境保全、広域的な社会保障サービス(医療・保険)といった広範な公共サービスや仕組みづくりを担当する。

道州の人口規模は、現行の都道府県・市町村をゼロベースで見直し、700万~1000万人をベースに、例えば12道州に再編することができる。人口規模は、財政的自立が可能となりうる規模を見る上で、経済社会として同等レベルのEU加盟各国の人口規模が一つの目安となる。また、地域経済圏でみた場合、経済圏それぞれがEUの一つの国に匹敵する経済規模、人口、面積を有している。国際競争力を維持する上で、日本1州当たりの経済規模は、アメリカ1州あたりのGDP2500億ドル~EU1国当たりのGDP4500億ドルの規模であれば、世界で十分通用するであろう。

 

 

■道州制ウイークリー(106) 2018年7月21日

◆道州制と社会的・経済的効果(2)                     (江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽地域が変わる、日本にダイナミズム創出

日本ではバブル経済崩壊後、ひたすら政府が主導して内需拡大政策をとれば、景気は回復し、日本経済は再生すると考えられてきた。そのために、毎年、国債、地方債を大量発行し、需要創出による「夢」を国民にばら撒いてきた。しかし、ソビエトなど社会主義国家が崩壊したように、こうした行政社会主義的な政策志向が、日本の活力を失わせ、国民、地域の創意工夫の意欲を萎えさせ、もはや再起不能とさえ思われる「大きな借金」を作りだしてしまった。この方法を何度繰り返しても、日本は再生しない。

ここは、全く違う、日本再生の方法がいる。それが、「地域主権型道州制」への移行なのである。競争力を高め、全国各地が活気づかなければ、近い将来のうちにも日本経済は弱体化していく。道州などが、拡大された条例制定権、法律の上書き権、徴税権などの権限と自主財源を持つことで地域戦略の自由度が増す。これまで地方自治体では不可能だった取り組みができるようになる。

「地域主権型道州制」は次のように日本を元気にできる提案である。

①成長、安心、安全、そして活力ある楽しい日本へ

②各道州が道州外、海外との直接貿易、観光誘致を積極化できる

③イノベーションと税対策による産業の日本回帰と外資の参入

④美しい国、道義道徳の再興、安心安全社会の回復へ

⑤自由な発想、自由な行動、自由な成果が得られる社会へ

⑥個人が人間的才能を十分に発揮できる社会へ

⑦楽しい生活、生きがいのある生活ができる

⑧国際社会を舞台に活躍、貢献できる日本国民に変わる

■道州制ウイークリー(107) 2018年7月28日

◆道州制と区割り

(江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

道州制は新たな区域を創出し、各区域が経済的にも財政的にも一定の自立性を保てるよう、設計する必要がある。どのような道州制区割り案が考えられるか、研究され、設計されなければならないが、内閣官房道州制ビジョン懇談会(江口克彦座長)が2008年3月に出した「中間報告」ではその狙いを次の5点あげている。

①繁栄の拠点の多極化と日本全体の活性化

②国際競争力の強化と経済・財政基盤の確立

③住民本位の地域づくり

④効率的、効果的な行政と責任ある財政運営

⑤(大規模災害などからの)安全性の確保

これは、内外に開かれた道州であると同時に競争力の強い地域の創出を意味しており、道州の区割りは、この狙いが実現できるものでなければならないと考える。道州の区域は、経済的、財政的に自立が可能な規模であることは当然として、新たな区域に住民が自分の地域という帰属意識を持てるような地理的一体性、歴史、文化、風土の共通性や生活面、経済面での交流などの条件を有していることが望ましい。

区割り案の1例として2006年の第28次地方制度調査会では次の3案を提示している。

①9道州案=ほぼ国のブロック機関の管轄区域に相当する例で、北海道、東北、北関東甲信越、南関東、中部、関西、中四国、九州,沖縄 ②11道州案=北海道、東北、北陸、北関東、南関東、東海、関西、四国、中国、九州、沖縄 ③13道州案=11道州案をベースに九州を北九州と南九州に分けている。

道州制ウイークリー(99)~(103)

■道州制ウイークリー(99) 2018年6月2日

◆道州制の背景と要因(8)

(江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽税源移譲なくして「分権なし」

「地方分権一括法」が施行され、自治体の裁量は確かに増え、自治体自らの創意と工夫で地方行政を行える範囲は多少拡大したものの、分権はやはり中途半端だ。現在の地方自治の大きな課題の一つは、行制サービスを巡る受益と負担の関係が途絶しているために、つねに財政支出がふくれあがる傾向になってしまうところにある。分かり易く言えば、霞が関の中央政府が国税として全国から税金を集め、それをまた各自治体に分配しているために、自治体住民が何のためにどのくらい自分が税金を払っているかが不明瞭になっていることである。

重要なのは、より多くの権限と独自の税財源を地域が掌握しない限り、地域の経済を活性化させるのは難しいということである。いくつもの権限が国から自治体に移譲された。しかし、その中身といえば、非常に細かな権限ばかりで、特定政策領域のごく一部について権限を認められたというだけに留まっている。

家づくりに例えるならば、その家に住む人の判断に全てまかせるということにすることである。つまり、政策領域にける権限の一部を移譲するのではなく、その政策領域ごとすべて権限を移譲すべきだということである。同時に重要なのは、自分の自由になるカネで実行するということである、国からお金が回ってきても、それが自分の自由にならないのであれば、地域のニーズや地域の活性化に相応しい使い方はできない。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(100) 2018年6月9日

◆道州制の背景と要因(9)                     (江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽構造改革特区の試みと限界

権限の移譲については、小泉内閣時代に進められた構造改革特区があるが、その目的は各地域の特性に応じて産業の集積や新規産業を創出することによって地域経済を活性化し、それを日本中に広げて国全体の経済活性化を図ろうというところにあった。

具体的にいえば、経済・教育・農業・社会福祉などの分野において自治体や民間事業者が自発的な立案を行い、それが具体的であり法令にも適合している場合、その立案に基づいて一定の地域に限定して規制を撤廃・緩和する制度だが、これまでの経済政策と違って国からの財政支援はない。また、特区で行われた政策が期待された効果を上げた場合、全国に拡大されることになっており、地方分権や規制緩和の実験場という位置づけがなされていた。

2002年7月の最初の募集から2007年4月までに13回の募集があり、3500を超える提案が寄せられた。しかし、回を重ねるごとに提案数も認定数も減少傾向になった。理由としては、一度どこかが申請して却下された提案に対しては、次に申請しても却下されることがわかるので申請が行われなくなる。特区に認定されても、次の段階でまた新たに手続きが必要になるので面倒になってしまう、などがあげられる。

構造特区の試みは、確かに権限の移譲や規制の緩和の特例という、地方分権にとって非常に重要な要素を盛り込んだものであったが、それもまた限定的な移譲や緩和であり、十分に効果を出しているとは言い難い。結局、構造特区の試みは尻すぼみになってしまった。現在の中央集権体制では、いかなる改善策を講じようと、おのずと限界が出てくるということであろう。

 

 

■道州制ウイークリー(101) 2018年6月16日

◆道州制の設計と分析(1)                     (江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽新たな「国のかたち」道州制の定義

これまで、東京一極集中、中央集権体制の功罪、そして地方分権改革とその限界について論じてきたが、その狙いは、こうしたわが国の状況を打破する、次に来るべき新たな「国のかたち」として道州制国家への移行を提言する布石であった。これからの国家のあり方に関する視点は、中央集権体制に代わる新たな国家像は地域主権型国家である、というのが筆者の基本的考えである。

「地域主権型道州制」はヨコ型の地域間競争メカニズムを作動させることで、従来のタテ型の「集権的統治システム」から地域圏を開放し、元気な日本をつくろうという、ある種公共分野に市場メカニズムの発想を持ち込もうという考え方に立脚している。

道州制(地方制)という言葉は、戦前の1927年(昭和2年)に田中義一内閣の行政制度審議会における「州庁設置案」をめぐる時からの論議である。そろそろ100年経とうとする。戦後になると、さまざまな機関や団体から道州制構想が繰り返され提唱されてきた。それらの道州制構想に共通していたのは、「道または州と呼ばれる新しい機関または団体の管轄区域として都道府県の区域よりも原則として広い区域を予定していた」ことだ。こうしたことから、道州制とは、まず大雑把に「現在の47都道府県に代わる10程度の道州を広域自治として置き、そこを内政の拠点とするもの」と定義しておきたい。

平成大合併を契機に府県は一方で「空洞化」にさらされ、他方、府県機能の純化の過程で「広域連携」の要請に遭遇することになった。府県はこれから、府県固有の仕事である広域的事務、大プロジェクトの実施について、より「広域化」という軸を基礎に隣接府県と協力する形をとる必要が生ずると同時に国のブロック機関との二重行政の批判や同ブロック機関や国の本省機能の移管要請が強まり、府県再編と道州制がセットで行われていく、一つの道筋が考えられる。

■道州制ウイークリー(102) 2018年6月23日

◆道州制の設計と分析(2)                     (江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽道州制設計上の諸論点①明治以来の都道府県を再編

道州制を設計する際、さまざまな角度からそのイメージを構想していく必要がある。

<第1論点=道州の区割りをどうするか>明治時代の初期の廃藩置県後、47都道府県の枠組みは大きく変わっていない。これを10程度の道州に括り直す「区割り」の問題は、国民が最大の関心を示すと思われる論点である。第28次地方制度調査会が示した区割り案は,例として3つあげている。第1は9道州。国のブロック機関の管轄区域に相当する例で、北海道、東北、北関東甲信越、南関東、中部、関西、中四国、九州、沖縄の9つ。第2は11道州。北海道、東北、関西、九州、沖縄は第1と同じだが、北陸、北関東、南関東、東海、四国、中国という区割り。第3は13道州。11道州を基礎にして、東北を北と南に、九州を北と南に分けている。

9道州の区割り例でいうと人口を約1000万人、経済規模で40~50兆円となっているが、いずれの例も「東京」をどう扱うかが問題となっている。人口や経済規模だけに着目し、それを平均化しようという区割りが絶対的に望ましいとは考えない。物流、人流など都市圏のエリアをひとつに捉えることが道州を有効に機能させることにつながるからである。東京圏の4都県は1つの都市圏として一体的に活動しており、日常の生活圏として相互補完関係から成り立っている。これを分離した場合、果たして広域政策はうまくいくのかどうか。

<第2論点=道州の所掌事務をどうするか>道州制に移行するなら、あらゆる仕事に国がくちばしを挟む、すなわち、補助金によってコントロールする体制は採用しないことである。国の役割を外交など対外政策と国内統一事務に限定し、あとは道州と基礎自治体に委ねるという考え方である。ただ、年金、医療、介護などの社会保障制度の骨格を決めるのは、国民共通に関わる問題なので国の役割といえよう。

■道州制ウイークリー(103) 2018年6月30日

◆道州制の設計と分析(3)                     (江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽道州制設計上の諸論点②道州制移行は全国一斉で

<第3論点=市町村と道州の関係をどうするか>基礎自治体に可能な限り大きな役割を与えるべきで、道州の役割は広域政策と基礎自治体の補完に限定されるべきと考えるが、いくつもの論点が生じてくる。第1に、道州へ移行する際、都道府県から市町村への所掌事務の移譲をどう進めるべきか。第2に、政令市、中核都市、特例市も加え国民全体の50%をカバーするまでになった都市自治体の扱いをどうするか。第3に、逆に小規模な自治体として残る町村と道州の関係をどうするかも問題となる。今後、どのような方策を講じようと、地理上の理由などから小規模町村が残ることは認めざるを得まい。いま以上に広域化した自治体に補完機能を求めることが適切なのか、近隣の都市自治体の水平補完方式が有力な選択肢になるのか。いずれにせよ、筆者は、地元の選択に任せたらどうかと考える。

<第4論点=制度の柔軟性、移行方式をどうするか>道州制を全国一律の「標準型」にするのか、東京圏や北海道、沖縄といった地域については「特例型」を認めるのか、東京特別州の様な例外を認めるのか、といった制度の柔軟性も論点となる。また、移行手順についても、①国は道州の予定区域を示す、②都道府県はその区域の市町村の意見を聞き、一定期限内に協議により意見を定めて国に提出できる、③国は当該意見を尊重して区域に関する法律案等を作成するといった流れが想定されるが、国主導で一斉に移行せず、「条件の整った区域から順次道州に移行すべきである」との考え方もある。筆者は、「条件の整った地域から」という考えはとらない。国が定めた法律によって一斉に移行するという考え方に賛成である。もし現行の47都道府県の中から「合併しない宣言」の県が出てきたらどうするか。そうしたことで、新たな国のかたちができるかどうか大いに疑問である。漸進的な移行方式ではなく、究極的には「道州設置法」といった一般法の制定で全国一斉に移行する方式が望ましいのではないか。

 

道州制ウイークリー(95)~(98)

■道州制ウイークリー(95) 2018年5月5日

◆道州制の背景と要因(4)

(江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽特殊法人という奇妙な企業

中央集権は各省庁の下に特殊法人という奇妙な企業を生み出してしまった。特殊法人は、公共性が高く、国ガ行うべきと思われる仕事を、企業的経営で行った方が馴染むということで特別な法律によって成立されたもので、公社、公団、事業団、特殊法人、公庫、金庫、特殊会社といったものがある。

特殊法人の問題点は、第一に、企業的経営といっても、自らの判断ではなく、国からの「命令」によって事業計画が決められる。損失を出しても公的資金によって補填される仕組みになっている。一言でいえば、「親方日の丸」といわれる放漫経営になってしまう。

第二は特殊法人が自分の傘下に子会社や孫会社などをつくり、それらに仕事を発注することで仕事を独占し、民間企業のビジネスチャンスを妨害し、一般消費者に高い商品やサービスを供給し、「不当」な利益をあげていることである。

さらに、特殊法人が官僚OBの天下り先になっていること。この結果、特殊法人やその傘下の企業をいくつも渡り歩いて、高額の給与、退職金を「稼ぐ」人がいる。この給与も退職金も結局は、消費者であり納税者である国民が払っているのである。

特殊法人に対しては、こうした批判が集まったため、「特殊法人等改革基本法」が施行され、廃止、民営化、独立行政法人への移行などの措置が取られつつある。しかしながら、廃止、民営化はともかく、独立行政法人に移行し、名前が変わったとしても、中央集権体制がなくならないかぎり、その性質が変わるはずはない。

 

 

■道州制ウイークリー(96) 2018年5月12日

◆道州制の背景と要因(5)

(江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽高度化・高速化時代に対応できない中央集権体制

政府による必要以上の「規制」や「保護」も中央集権のマイナス面である。現在のようにボーダーレス化した経済社会においては、規制や保護は企業の独創性を阻害するばかりでなく、市場における自由な競争と発展を抑制する。自由な競争にさらされていないことが、日本企業・産業の競争力を弱めていると同時に、消費者も優れた商品やサービスを享受できなくなっている。

縦割り行政、無駄な社会資本整備、天下り、特殊法人、規制、保護といった問題についてはバブル崩壊以降の歴代政権が取り組んできた。しかしながら、国の中央集権的統治制度そのものが継続される限り、いかに努力を重ねたとしても改革の効果はおのずと限界が生じる。

中央集権体制は、今となっては日本を破滅に向かわせていると言える。その理由は2つある。まず一つは、中央集権的な国家体制では、複雑かつ高速化し、さらに統合化されつつある国際社会、特に経済活動に対応できなくなっている。現在の国際社会は、国と国という関係でなく、異なった国の地域と地域、国民同士が国境を超えて直接的に相互活動を行っており、国からの中央集権的な制約はそうした活動の障害になっている。

もう一つの理由は、現在の中央集権的な国家体制によって、中央政府が肥大化し、国家財政を逼迫させていること。国が自治体の行財政をコントロールする現在の制度は、国の仕事とそのための資金需要を増やすと同時に負担と受益の関係を曖昧にし、結果的に効率の悪い公共投資や公共サービスを生じさせ、国民の負担を増やす一方となってしまった。財政赤字はこれ以上増やすことはできない。

 

 

■道州制ウイークリー(97) 2018年5月19日

◆道州制の背景と要因(6)

(江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽自治の原則か、平衡の原則か

中央集権体制を財政面から説明すると、より明確に中央集権体制の限界の構図が浮かび上がってくる。国と地方の関係において、国のとる自治政策の理念には、「自治の原則」と「平衡の原則」という基本的に相反する二つの原則がある。

自治の原則とは、地域的な行政サービスは、地域の自己決定と自己負担の原則に基づいて供給されるべきと考える理念である。この自治の原則を貫徹した場合、いくつかの問題が生じる。まず税源が地域によって偏在しているため、各自治体でサービスのレベルが異なってしまう点である。弱い自治体に住む人々も、財政力の強い自治体に住む人達と同じレベルの受益を求めるであろう。従って財政調整機能は残さなければならない。

一方の平衡の原則とは、国民はそれぞれの居住地にかかわらず同一水準の税負担で、同一水準のサービスを享受できるようにすべきと考える理念である。これに従えば、すべての行政サービスの供給は国が全面的に責任を負い、自治体はいっさいの裁量権を持たない国の出先機関、出張所といった機能だけを果たすことになる。ここで生じる問題は、各地域によって異なる行政需要に対して、画一的なサービスしか供給できなくなる点である。平衡の原則が働くよう取られてきた財政均衡措置の代表的なのが地方交付税である。

ただ、平衡の原則を重視すると、受益と負担の関係が曖昧になることによって、サービスの供給に無駄が発生するという問題も生じる。サービスが誰の負担で行われているのか曖昧になり、行政側も本来は無用のものも供給し、住民からの身勝手な要求にまで対応するようになる。その結果、財政が破たんする恐れが生じるのである。

 

■道州制ウイークリー(98) 2018年5月26日

◆道州制の背景と要因(7)

(江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽無駄と利益誘導招く国庫支出金

国庫支出金は、国と自治体が協力して事務や事業を実施する場合に一定の行政水準の維持や特定の施策を奨励する手段で、財源保障や財源調整を目的とする地方交付税とは性格が異なる。国庫支出金は、国庫負担金が約70%、国庫補助金が約30%、国庫委託金が1%となっている。

国庫負担金は国が自治体活動の一部を負担するために義務的に自治体に交付する補助金。国庫補助金は国が特定の事業の奨励や財政維持のために自治体に交付するもので、具体的には廃棄物処理施設の整備、福祉事業の促進、道路整備などに対するものなど多岐にわたっている。国庫委託金は国が自治体の経費の全部を事務の代行経費として自治体に交付するもので、国政選挙や外国人登録など本来は国の仕事だが、自治体に行ってもらっているもの。

こうした国庫支出金には5つの基本的は問題がある。1点目は、国と自治体の責任の所在が不明確になること。2点目は、交付を通じた国の関与が自治体の自主的な行財政運営を阻害すること。国庫支出金は何に使ってもいいというわけでなく交付に際して、使用の仕方が微に入り細に入り条件づけられているからである。3点目として、細部にわたる補助条件や煩雑な交付手続きなどが、行政の簡素化、効率化を妨げていることが挙げられる。4点目は、縦割り行政の弊害を招き、総合行政を妨げるという点である。各省庁から直接自治体にまわってくるため、国レベルでのヨコの調整がほとんど行なわれない。まさに縦割り行政であり、その結果として、同じような施施が重複して出来上がり、無駄が生じることになる。5点目として、どの自治体にどれだけの国庫支出金を配分するのかという認定基準が曖昧なため、いわゆる陳情対象になりやすく、利益誘導を招いてしまい、無駄を発生させる原因となる。

道州制ウイークリー(91)~(94)

■道州制ウイークリー(91) 2018年4月7日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(17)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽財政調整及び財源保障

我が国における地方交付税は、財政調整の機能に加えて財源保障の機能も有しており、自治体間の財源の不均衡を調整するとともに、どの地域に住む国民にも一定の行政サービスを提供できるよう財源を保障するものである。道州制の移行により自らの税収のみでは財源が不足する道州が発生することが予測され、道州制下でも何らかの財政調整や財源保障の制度が必要となることが見込まれる。

各提言で意見が分かれる点として、財政調整や財源保障の対象となる行政サービスの範囲が第一に挙げられる。行政サービスは①社会保障、義務教育、警察などナショナル・ミニマムとして求められる基礎的行政サービス②自治体ごとに独自の基準を設定し得る行政サービス(独自サービス)の2種類に分けることができる。この場合、対象として考慮すべきサービスは①の基礎的行政サービスであると考えられるが、その範囲や水準をいかに確保するか、またどの主体がどのように基礎的行政サービスを維持するのかなどを検討する必要がある。

現在の地方交付税の主たる財源は、国税5税(所得税、法人税、酒税、消費税、たばこ税)となっており、各税の一定割合が地方交付税を構成する。これら国税5税のうち、所得税、法人税は景気の影響を受けやすいことから安定性に欠け、また都市部に企業が多く立地していることなどから地域間の偏在性が高いなど、地方税の原則にそぐわない。しかし、財源保障における財源に適していることが指摘されていることから、道州間の財源保障においては、現行の所得税や法人税が、その財源として有力となることが見込まれよう。財政調整の主体について、各提言では近接性の原理、地方の自立と国の関与の限定を求めており、現行の地方交付税のように国のみが調整を行う制度を主張するものは見られない。水平的調整か、又は国と地方による調整の2種類となっている。

■道州制ウイークリー(92) 2018年4月14日

◆道州制の背景と要因(1)

(江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽東京一極集中の構造

道州制導入の背景には、東京一極集中の問題と中央集権体制の制度疲労がさまざまなひずみを生みだしているという問題があり、その改革方法として地域主権型道州制への移行を論じている。

東京一極集中は、日本の機関車として明治以降、そして第二次大戦以降、日本の繁栄をもたらしたが、オランダの都市学者クラッセンが指摘する通り、都市は「都市集中」→「郊外化」→「都市空洞化」→「都心回帰」→「郊外空洞化」という構造変化を起こし、最後は都市の死滅を迎えるという構図にある。東京圏はすでに都心回帰、郊外空洞化の段階に入ったとみてよい。

こうした20世紀の大都市・東京の繁栄はいつまでも続かない。否、続けることは国家の経営として好ましくない。地震国日本を考えても、首都直下型地震の発生一つを想定しても、国全体の機能がマヒするような恐ろしい事態が思い浮かぶ。2011年3月11日に発生した東日本大震災の被害状況からみて、首都直下型の場合、何十倍、否、何百倍もの被害が想定される。その影響は世界にも及ぶ。

ここは、どうしても地方分散政策を考えないと、この国は立ち行かなくなる。しからば、どうすればよいか。中央集権体制をそのままにしての高速道、高速鉄道、高速空港、高度情報網など高速社会資本を進めた結果、各地の果実と人口がストロー効果を通じて東京に一極集中してしまっている。それを食い止め、分散型に変えていくには道州制移行の議論は解決の糸口の一つを示しているのではないか。

 

 

 

■道州制ウイークリー(93) 2018年4月21日

◆道州制の背景と要因(2)

(江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽中央集権システムの限界

明治維新の時、日本は列強と伍していくため、日本中の力を一つにまとめ、より強固な中央集権体制を擁立する必要があった。江戸時代までの各藩にはそれなりの自治があったが、それを版籍奉還、廃藩置県という二段階の改革を通じて廃止し、中央が地方を完全にコントロールする体制をつくりあげた。日本はさらに昭和13年(1938年)、近衛内閣時代に「国家総動員法」を制定、中央集権体制を強化した。戦後、アメリカは中央集権体制を道具として活用し、日本を統治することとした。そしてサンフランシスコ講和条約締結後、日本は再び中央集権的なシステムを使って、国の再建を進めていく。

しかし、国民のもつ価値観が「豊かさ」という一元的なものから、「個性」や「らしさ」という多様性の時代になってくると、一元的な統治システムは、むしろ社会発展の阻害要因となってしまう。もはや、中央集権は、日本を繁栄させるシステムではなく、日本を衰退させる以外のなにものでもなくなってしまっている。

霞が関の中央官庁が日本の社会・経済活動の多くを主導する東京への一極集中によりヒト・モノ・カネが東京に吸い上げられ、東京と周辺だけが発展し、地方は衰退していく仕組みが出来上がっているのが今日の日本である。官僚機構の効率低下の弊害もある。官僚制は次第に、自己目的で活動するようになり、本来の機能を果たせない硬直的なものになっていく。行政の機能が縦割りになってしまい、セクショナリズムが生まれ、能率が悪化。「省益あって国益なし」と揶揄されてきたが、多様化した国民のニーズに応じきれなくなっている。この仕組みが、地方を統制し、地方の活力を殺ぐ。地方発展の阻害要因になっている。

 

 

■道州制ウイークリー(94) 2018年4月28日

◆道州制の背景と要因(3)

(江口克彦著『地域主権型道州制の総合研究』から)

▽フルセット型行政で財政悪化

例えば、一つあれば十分なのにまた新たな橋がかけられる。客が少なくて潰れるホテルが続出しているリゾート地に公共宿泊施設が建てられる。スーパー林道といわれる立派な道が、イノシシしか通らないような山奥に作られる。このような事例が日本の各地で見られる。

府県行政の横並び主義、市町村行政の横並び意識が無駄な公共施設を林立させる結果となった。その背後には各省の補助金誘導が結びついている。もらわなければ損だ、つくらなければ損だというメカニズムが働く。各自治体が規模にかかわりなく、すべて同じものを揃えようと競う。これを「フルセット型行政」というが、それが結果として財政悪化を誘発し、行政に非効率性を招来してきた。

社会学者として有名な、米コロンビア大学教授も務めたロバート・キング・マートンは、官僚機構は、規則主義、責任回避、秘密主義、画一主義、自己保身、形式主義、前例主義、セクショナリズムに陥りやすいと指摘している。中央集権によって形成された日本の官僚機構はまさにマートンの指摘通りの弊害を内包している。

国と地方自治体の借金は公債の他に財投債、政府短期証券、借入金などを含め、合計は1200兆円を超える。政府は、プライマリーバランスの均衡を目指して努力している。しかし、中央集権的な国のかたちが変わらなければ、本質的な解決にはならない。仏の思想家、アレクシス・トクビルは著書『アメリカのデモクラシー』で、「中央権力というものはどんなに開明的で賢明に思われようとも、それだけでは大きな国の人民の生活のあらゆる細部まで配慮しうるものではない。中央権力が国民生活の細部にいたるほど、複雑多岐な機構を独力で運営しようとしても、極めて不完全な結果に甘んじるか、無益な努力の果てに疲れてしまうかのどちらかである」と言っている。

 

道州制ウイークリー86~90

■道州制ウイークリー(86) 2018年3月3日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(12)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽「道州」の地位に関する憲法問題①

道州制論と憲法論議との関わりについては、地方制度の広域化という観点からと地方分権改革という観点からとに大きく分けて捉える必要がある。政府の第27次地方制度調査会は、平成15年(2003年)11月の「今後の地方制度のあり方に関する答申」の中で、道州制の「基本的考え方」としては、「現行憲法の下で、広域自治体と基礎自治体との二層制を前提として構築することとし、その制度及び設置手続は法律で定める」と述べた。道州は都道府県に代わる広域自治体として、日本国憲法にいう「地方公共団体」(第92~95条)の地位が保証されるよう方向付けられたことになる。

続く第28次地方制度調査会は、首相の諮問を受けて道州制の問題を取り上げ、平成18年(2006年)2月に提出された「道州制のあり方に関する答申」においては、憲法問題に特に触れていないが、「地方公共団体は道州及び市町村の二層制とする」とした上で道州制の概括的な制度設計が提示された。

このように、道州に対して地方公共団体の地位を与えるという点では、おおむね現行憲法の枠内で実行可能な方法が模索されているということがいえよう。

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(87) 2018年3月10日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(13)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽「道州」の地位に関する憲法問題②

道州制と連邦制とでは、「制度は本質的に違う」と指摘されている。連邦制には5つの要素がある。

第1に、連邦と州との間では立法権が分割され、通貨、外交、国防といった分野は一般に連邦の立法事項として憲法に列挙される。政策領域別に立法事項が配分され、連邦と州が各々の立法事項について最終決定権を有する。

第2に、連邦と州の間の権限紛争、すなわち各レベルにおける立法が憲法上の分割原則に抵触していないかについては、連邦レベルの司法府が判断する。

第3に、連邦の議会は2院制であり、憲法上、下院は国民を代表するように構成されるのに対して、上院は州を代表するように構成され、州が連邦の立法に参加するという形をとる。

第4に、連邦憲法の改正には、連邦議会両院での改正案の議決のほかに、例えば一定数の州議会の議決など、州の参加を要件とする国が多い。

第5に、各州は独自の憲法を有する。州の統治機構や州内の基礎自治体の自治・行政制度は、その州の憲法制度の下に置かれ、連邦憲法がこれらについて、一律に規定することはないのが通例。

これに対し、日本は単一国家であり、憲法上、国の立法権は国会が独占し、自治立法は法律の下位に置かれる。また、参議院は、衆議院と同様に「全国民を代表する」公選議員で構成され、地方代表とする旨の明文規定はない。仮に道州が連邦構成体としての地位と権能を有することになるならば、統治機構に関する憲法の規定は、地方自治に関する第8章にとどまらず根本的に書きかえることが迫られよう。

■道州制ウイークリー(88) 2018年3月17日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(14)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽「道州」の立法権

憲法第94条は、地方公共団体は「法律の範囲内で条例を制定することができる」と定めている。この条例制定権は「自治立法権」とも表現される。道州制論議においては、国と地方の役割分担を見直し、「国から道州への大幅な権限移譲」を行うことが謳われている。しかし、連邦制を採用するならともかく、国の立法事項以外は自治立法の領域として地方公共団体に移譲する、すなわち政策領域別に立法権を分別することは許されないと基本的には解されるので、国と地方の権限移譲の重複という課題は残る。国の立法の介入を完全に排除することはできない。

地方公共団体の自治立法に委ねられるべき事項について、憲法第94条との関係において国の法律は何を定めるべきかとういことになれば、例えば全国的に統一的基準をナショナル・ミニマムとして法定するといったことが考えられる。地方公共団体がその基準では不十分と考える場合には独自に条例をもって横出し又は上乗せを追加することが許されるとされる。これを一歩進めて、地方公共団体は「ナショナル・スタンダード」を踏まえて「ローカル・オプティマム(地方における最適)」を自由に追求できるのではないかという提言もある。

このように、自治立法事項については、国の法律による規律は地方の裁量の余地を残して枠組みにとどめ、詳細は地方公共団体がその枠組みの中で条例により定めるのであれば、いわば多層構造的な立法の分割という形で、自治立法は地方自治の本旨により適合しうるのではないだろうか。第28次地方制度調査会答申では、「国が道州の担う事務に関する法律を定める場合には、大綱的または大枠的で最小限な内容に限ることとし、具体的な事項は出来る限り道州の自治立法に委ねることとすべきである」とされている。

 

■道州制ウイークリー(89) 2018年3月24日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(15)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽財源移譲及びあるべき地方税体系

道州制に係る地方税財制度上の問題としては、道州間の財源格差の解消を図る財政調整制度、国の資産と債務処理のあり方が挙げられる。第28次地方制度調査会答申による12道州(北海道、東北、北関東、南関東、東京、北陸、東海、関西、中国、四国、九州、沖縄)別に歳入、歳出を算出すると、収支は、東京、南関東、東海、関西の4道州で黒字であるが、残り8道州では赤字となっている。国の収入を全て道州に移譲したとしても、人口や地方の税収に比例して配分したのでは、収支が赤字となる道州が発生することが予測される。道州制の下でも、道州間で資金の移転を行う財政調整が必要になるものと見込まれる。

国から地方への財源移譲については、地方の役割の比重が増加することから、道州や基礎自治体の財政運営の自主性、自立性を確保できるよう、国から地方に財源移譲を行い、地方の財政基盤を充実させることが各提言で主張されている。

あるべき地方税体系の構築については、道州、基礎自治体には、可能な限り偏在性が少なく、景気変動に影響されない安定性を備えた税体系を構築すべきとしている。中でも、経団連などは、消費税は所得課税よりも景気の変動を受けにくい安定性があることから、地方の基幹的財源として地方消費税の充実を主張している。

国と地方の財源配分では、国と地方の最終比率が、収入時の国55.4%、地方44.6%から支出時には国41.6%、地方58.4%と逆転している。こうした地方交付税、国庫支出金による国から地方への資金移転により、地方公共団体や住民が税の負担を感じないという財政錯覚が生じ、財政赤字の行政責任が不明確なものになっていることも指摘されている。

 

■道州制ウイークリー(90) 2018年3月31日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(16)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽課税自主権及び地方消費税

各提言をみると、道州および基礎自治体に課税自主権を付与することを主張するものが多い。課税自主権を認める理由として,道州制ビジョン懇談会は、道州および基礎自治体が自主性、自立性を発揮し、それぞれの状況や特性または住民の意思に適応した政策を展開し、相互の発展的競争を可能とすることを挙げている。

課税自主権と関連して、注目されるのが地方消費税である。地方消費税は偏在性の少ない税財源であることから地方税の基幹税として期待されている。道州制により、地方消費税が基幹税とされ、また地方に課税自主権が付与された場合に問題となるのが、各道州が地方消費税の税率を自主的に設定することができるかどうかである。一般に、消費税は最終消費地に税収が帰属するという仕向地課税が原則であり、道州間で異なる消費税率とするには州境調整が必要とされ、現実的でないとされる。

地方消費税の税率決定権を各地方に付与しているカナダでは、協調売上税が我が国と同じく、国税分と地方税分とが併存しているが、個別の取引ごとに税収を清算する代わりに一旦消費税をプールして、地域産業連関表に基づくマクロ税収配分方式に基づくことで各州の税率決定権が保持されている。

一方、道州間により税率が異なることで、経済的な混乱が生じるのではないかとの意見もある。通販やネット販売等で他の道州の消費者に販売しても、事業者の存在している道州の消費税率でしか課税できないこと、道州間の税率差異により全国展開する事業者に多額の事務コストが発生すること、低い税率の州で売り上げたとする帳簿操作や脱税に対する監視や取り締まり主体のあり方の問題が生じること、税率の低い道州へと越境した購買が増加するため道州間で税率の引き下げ競争が生じて減収に陥ることなどが指摘されている。

自民党大会で道州制報告

◆自民「道州制下での基礎自治体のあり方」報告 2018年3月25日

(自民党大会党情報告より)

3月25日に開かれた自民党大会で「道州制下の基礎自治体のあり方」が

報告されました。それによると、新たな考え方として、道州制の導入は、

国から広域自治体である道州への分権を徹底することにより、道州の地域経営のパワーを増強することを基本とし、道州制の導入に当たっても、現行の市町村がそのまま基礎自治体として移行する(市町村合併を前提としない)。また、道州制の下での基礎自治体の事務として、1.指定都市・中核市は、都道府県から事務・権限が移譲されて事務範囲が拡大。2.一般市町村のうち、一定規模以上の市についても、都道府県から事務・権限が移譲されて拡大。3.一般市町村のうち、一定規模未満の市及び町村については、道州制に移行しても、原則として現行以上の事務・権限は委譲しないものとし、案1として、さらに小規模市町村については、現行の市町村事務のうち一部を道州が処理することとし、事務範囲が縮小、案2として、事務範囲は変化しないが、道州(支庁)による補完、周辺市町村による補完を行う、としている。

8州構想 2018年3月版

日本再生8州構想

活性化への決定版シナリオ

2018年3月版

関西州ねっとわーくの会

       高松 義直            

http://kansaishu.com

転機に立つ日本

日本は転機に立っています。

人口減少社会、揺らぐ社会保障、産業空洞化、経済縮小、地域間格差、進まぬ財政再建など国民の将来不安が高まっています。これは、社会システムが現代の課題を解決できないほど劣化しているためです。

この不安を切り開く道はただ一つ、「国のかたち」を現代に対応した「現代化」の実行です。それが新しいシステム「道州制・8州構想」です。地域を活性化し、日本を再生へと導いていきます。

少子高齢化による人口減少が加速しています。2040年には1億727万人となり、今より1900万人減少、関西では300万人減少します。65歳以上が国民の36%の3800万人にもなり、生産労働人口は1895万人減少。関西圏では307万人減少します。財政難も進行、国全体で借金1200兆円を抱える状況となっています。

今こそ、レジーム・チェンジ(体制一新)。

改革なくして再生なし。新しい「国のかたち」で地域力を結集し、日本に活力を取り戻すことが急務です。

分権多極の道州制「8州構想」がその鍵です。遅くとも2020年代前半に転換を目指すべきでしょう。

<1>強い地域圏「州」の時代へ

時代遅れ 中央集権の府県制

交通通信進展、県境を越え広域化する地域経済社会圏, 山積する広域課題、東京一極集中の一方で沈滞する地方。中央集権の府県制のひずみが大きくなっています。危機管理上も東京一極集中は危うい状況です。

中央政府が全国一律・画一的に政策決定する明治以来の中央集権は制度疲労を起こしています。地域の自由な発想、活動を阻害する、すでに時代遅れの制度です。

細切れの府県体制で財政基盤も弱く、地域解決力が不足。いまも国依存体質。地方の状況は改善していません。この「衰退スパイラル」を断ち切らなければなりません。

 

 国を頼らず、国を支える

大地域圏で安定した経済社会基盤を築き、人口減・高齢化社会に備えることが日本の緊急課題です。

強い広域地域圏を創り、国を頼らず、国を支える。地域主導の地域発展へ転換の時です。

「変化なくして進歩なし」です。

国のかたちは自立分権の8州制

8州構想は単なる府県合併ではありません。

国と地方の役割分担を再編、多様性を活かし地域の自立的経済圏創りをめざすものです。

人口減少に伴う労働力不足は公務員減少に直結し、現行行政機構の抜本的見直しは必至です。経済社会の広域化にも対応させ、都道府県を地域ブロックの8地域に再編、地域課題に自主決定権を持つ自立分権国家へ向かっていくべきです。

統治機構の刷新は財政再建にもつながります。

8州広域行政府とは、

北海道 東北 関東

中部(東海・北陸・甲信越)

近畿 中国 四国 九州・沖縄

(関東・中部を4州に編成、沖縄に特別行政府を設置することも考えられます) 

道州制による財政削減効果

NPO法人地方自立研究所算定によると行政経費、補助金の重複などの整理で、都道府県分で5兆円、市町村分で9兆円の計14兆円の削減が可能としています。

自ら地域を創る「地域経営」

地域力は「自主自立」から

「自主自立」が地域力、発展の原動力です。

「自ら地域を創る」という地域の創意と工夫を活かす「地域経営」がなければ、地域再生はできません。人口増加と高度経済成長を前提にした国主導の戦後システムはすでに崩壊しました。「お上から下ろす政治」は過去のものとなりました。

広域圏の核「中枢都市」

州は都市の集合体です。

大都市は広域経営の核「中枢都市」、地域のエンジンとなります。市町村による広域都市圏と連携、地域経済を活性化していきます。

広域的、機動的に動ける州を経済単位として産業広域ネットワークをつくり、第4次産業革命推進を軸にしてイノベーションを進め、新産業への再編と雇用安定を図ることになります。地域から世界との競争を目指す動きを加速しなければ、日本は落伍していくでしょう。

「地域発展なくして国の再生なし」です。

自立へ地域がサイフを握る

地方自主財源の確立が自治の要です。

地方税収入比率は都道府県、市町村ともに歳入の

32.6%。いわゆる「3割自治」です。

交付税比率は都道府県が17.2%、

市町村では15.3%となっています。

財政配分は国30:州30:市町村40へ増額します。

税の10%は共同税として州間調整財源とします。(現在は国40:地方60)

補助金行政から脱却、地方の裁量度を高めることが大切です。

予算の陳情政治から自前財源による政治へ変わらなければ、いつまでたっても地域自立はできません。

ただ、各州間にはなお財政格差が起こる可能性があります。そのため基準的生活基盤維持のため州間の財政調整は国が行い、市町村の財政調整は州が担うことは必要でしょう。

まずは税源の地方分を増額することから始まります。

消費税、酒税の地方税化を目指します。当面、税率は国会で議決します。税金と社会保険料徴収の一本化も必要です。

<3>新しい役割分担

8州制は国の分立や連邦制ではありません。

一つの憲法のもと、皇室、議院内閣制、衆議院参議院の二院制を維持、参議院は州代表となります。国、州、市町村の3層制となり、市町村の行財政力を強化、広域行政は都道府県を再編した「州」が統括します。

国は国政の根幹を担う

国の役割は国政の根幹を担い、内政の総合的調整を行い、戦略的機能が強化されます。国は基本法を定め、州の立法機能を拡充、地域で解決できる内政課題対応は州に移管。高裁に行政審判部を設け、国と州の行政上の紛争を裁定します。

主な分野は、皇室、司法、外交、国防、通商、国家財政、通貨・金融、社会保障、教育基本計画、危機管理・テロ対策、資源・エネルギー戦略、食料安保などです。

州は地域経営の司令塔 

広域行政経済を統括するのが州行政府です。州は地域経営の司令塔。地域戦略を牽引します。都道府県の広域業務を継承、国の出先機関も移管し、必要に応じ市町村を補完、産学公民連携で自立経済圏を創っていきます。

主な分野は、広域交通網、インフラ整備、警察、防災、健康保険、労働監督・職業訓練・紹介、中等教育、技術研究開発、農林業振興などです。

大災害発生時には州が機動力を活かし迅速に対応、国が支援していきます。

州設置を機に、国公立大学は国立と州立の大学に再編、産学公民連携の拠点とし、地域発展の核にしていくことも検討されるべきでしょう。

 

市町村は住民直結行政

住民福祉の基盤は市町村です。市町村は日常生活行政全般を担い、市町村広域連携を進め、市町村の行財政力の強化を図ります。府県の仕事を財源・人材と共に市町村に一定程度移譲、地域課題の権限・財源を持つ自治体にします。

主な分野は初等義務教育、生活廃棄物、都市計画、住民基本台帳、保健・社会福祉・介護、公園街路、上下水道(広域整備は州管轄)、ビザ発給などです。 

まず道州制基本法制定、制度設計へ

■道州制の歩み

道州制は約90年前から論議されています。

明治維新60年の1927年、田中義一内閣が提案した全国6区の「州庁設置」案が最初です。

1945年6月に国の広域行政機関として全国8か所に内務省管轄下の「地方総監府」されましたが、敗戦により同年11月に廃止されました。戦後は1955年に関西経済連合会が「地方制」を提案したのが最初です。その後、数々の団体から提言がありました。

2006年には地方制度調査会が「道州制答申」を出し、道州制の骨格はほぼ固まっています。

アメリカの人口上位10州

1 カリフォルニア  3696万人

2 テキサス     2478

3 ニューヨーク   1954

4 フロリダ     1853

5 ペンシルベニア  1260

6 イリノイ     1291

7 オハイオ     1154

8 ミシガン      996

9 ジョージア     982

10 ノースカロライナ  938

日本8州の姿

国立人口研究所推計・総生産は24年度

上段人口(2015年)域内総生産(兆円)

下段人口(2040年)1人当たり(万円)

北海道 536万人

419

18,1240

338.1

東北 892

686

31,2080

349.8

関東 4276

3801

188.6170

441.1

中部 2325

1962

95.7390

411.7

近畿 2070

1748

77.8040

375.8

中国 739

603

27.7020

374.8

四国 383

295

13.4790

351.9

九州沖縄 1435

1211

47.4830

330.8

◆州と各国比較     GDP

オランダ  1686万人  8800億ドル

スウェーデン 975万人  5700

デンマーク  562万人  3420

8州構想(5)2018年3月

■道州制の歩み

道州制は約90年前から論議されています。明治維新60年の1927年、田中義一内閣が提案した全国6区の「州庁設置」案が最初です。

1945年6月に国の広域行政機関として全国8か所に内務省管轄下の「地方総監府」されましたが、敗戦により同年11月に廃止されました。戦後は1955年に関西経済連合会が「地方制」を提案したのが最初です。その後、数々の団体から提言がありました。

2006年には地方制度調査会が「道州制答申」を出し、道州制の骨格はほぼ固まっています。

アメリカの人口上位10州

1 カリフォルニア  3696万人

2 テキサス     2478

3 ニューヨーク   1954

4 フロリダ     1853

5 ペンシルベニア  1260

6 イリノイ     1291

7 オハイオ     1154

8 ミシガン      996

9 ジョージア     982

10 ノースカロライナ  938

日本8州の姿

国立人口研究所推計・総生産は24年度

上段人口(2015年)域内総生産(兆円)

下段人口(2040年)1人当たり(万円)

北海道 536万人

419

18,1240

338.1

東北 892

686

31,2080

349.8

関東 4276

3801

188.6170

441.1

中部 2325

1962

95.7390

411.7

近畿 2070

1748

77.8040

375.8

中国 739

603

27.7020

374.8

四国 383

295

13.4790

351.9

九州沖縄 1435

1211

47.4830

330.8

◆州と各国比較     GDP

オランダ  1686万人  8800億ドル

スウェーデン 975万人  5700

デンマーク  562万人  3420

8州構想(4)2018年3月版

<3>新しい役割分担

8州制は国の分立や連邦制ではありません。

一つの憲法のもと、皇室、議院内閣制、衆議院参議院の二院制を維持、参議院は州代表となります。

国、州、市町村の3層制となり、市町村の行財政力を強化、広域行政は都道府県を再編した「州」が統括します。

国は国政の根幹を担う

国の役割は国政の根幹を担い、内政の総合的調整を行い、戦略的機能が強化されます。

国は基本法を定め、州の立法機能を拡充、地域で解決できる内政課題対応は州に移管。高裁に行政審判部を設け、国と州の行政上の紛争を裁定します。

主な分野は、皇室、司法、外交、国防、通商、国家財政、通貨・金融、社会保障、教育基本計画、危機管理・テロ対策、資源・エネルギー戦略、食料安保などです。

州は地域経営の司令塔 

広域行政経済を統括するのが州行政府です。

州は地域経営の司令塔。地域戦略を牽引します。

都道府県の広域業務を継承、国の出先機関も移管し、必要に応じ市町村を補完、産学公民連携で自立経済圏を創っていきます。

主な分野は、広域交通網、インフラ整備、警察、防災、健康保険、労働監督・職業訓練・紹介、中等教育、技術研究開発、農林業振興などです。

大災害発生時には州が機動力を活かし迅速に対応、国が支援していきます。

州設置を機に、国公立大学は国立と州立の大学に再編、産学公民連携の拠点とし、地域発展の核にしていくことも検討されるべきでしょう。

市町村は住民直結行政

住民福祉の基盤は市町村です。市町村は日常生活行政全般を担い、市町村広域連携を進め、市町村の行財政力の強化を図ります。

府県の仕事を財源・人材と共に市町村に一定程度移譲、地域課題の権限・財源を持つ自治体にします。

主な分野は初等義務教育、生活廃棄物、都市計画、住民基本台帳、保健・社会福祉・介護、公園街路、上下水道(広域整備は州管轄)、ビザ発給などです。 

まず道州制基本法制定、制度設計へ

8州構想(3)2018年3月版

自ら地域を創る「地域経営」

地域力は「自主自立」から

「自主自立」が地域力、発展の原動力です。

「自ら地域を創る」という地域の創意と工夫を活かす「地域経営」がなければ、地域再生はできません。

人口増加と高度経済成長を前提にした国主導の戦後システムはすでに崩壊しました。

「お上から下ろす政治」は過去のものとなりました。

広域圏の核「中枢都市」

州は都市の集合体です。大都市は広域経営の核「中枢都市」、地域のエンジンとなります。市町村による広域都市圏と連携、地域経済を活性化していきます。

広域的、機動的に動ける州を経済単位として産業広域ネットワークをつくり、第4次産業革命推進を軸にしてイノベーションを進め、新産業への再編と雇用安定を図ることになります。

地域から世界との競争を目指す動きを加速しなければ、日本は落伍していくでしょう。

「地域発展なくして国の再生なし」です。

自立へ地域がサイフを握る

地方自主財源の確立が自治の要です。地方税収入比率は都道府県、市町村ともに歳入の 32.6%。いわゆる「3割自治」です。

交付税比率は都道府県が17.2%、

市町村では15.3%となっています。

財政配分は国30:州30:市町村40へ増額します。税の10%は共同税として州間調整財源とします。(現在は国40:地方60)

補助金行政から脱却、地方の裁量度を高めることが大切です。予算の陳情政治から自前財源による政治へ変わらなければ、いつまでたっても地域自立はできません。

ただ、各州間にはなお財政格差が起こる可能性があります。そのため基準的生活基盤維持のため州間の財政調整は国が行い、市町村の財政調整は州が担うことは必要でしょう。

まずは税源の地方分を増額することから始まります。消費税、酒税の地方税化を目指します。当面、税率は国会で議決します。税金と社会保険料徴収の一本化も必要です。