道州制ウイークリー(195)~(198)

■道州制ウイークリー(195)2020年4月4日

◆人口減少時代の国のかたち⑱州のイメージ<北海道州>

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

総人口534万人の北海道は、州になることで様々な権限を手に入れることになります。域内GDPは18兆円、アイルランドやポルトガルに近い経済規模です。面積は全国の24%を占め、農地面積は現在の近畿、中国、四国、九州の23府県を合わせた面積に相当します。日本国内農業生産の2割を担い、海面漁業、養殖業生産量も全国の28%を占めています。

「廃県置州」を唱えた松下幸之助は、北海道の潜在能力に注目し、「北海道が国家であったなら」という問題提起をして、こう記していました。「北海道は北欧諸国より南に位置し、気候風土もよく、人口規模も大差がないのに、スウェーデンの1人当たり国民所得世界2位に比べ、日本は20位止まり。もし、北海道が独立国なら、より一層の発展、繁栄の姿が生れていたのではないか。なぜ、北海道が北欧諸国のようになれないのか、それは自治体である北海道は中央政府の規制にがんじがらめとなり、補助金、交付税に依存する体質が強くなり、そうした制約から創意工夫によって自立する気概がない。もしこうした制約がないなら、北海道は北欧諸国を凌ぐ発展した国になれる」(松下幸之助著『遺論・繁栄の哲学』より)

日本の最北にある北海道は、北米と東アジアとを結ぶ線上に位置し、ロシア極東地域にも隣接しています。温暖化に伴い北極海の流氷面積の減少により夏期の航行が可能となり、貨物輸送量も年々増加しています。欧州と日本を結ぶ航路を想定した場合、北極海航路はスエズ運河を経由する南回り航路の約6割の航行距離です。空の移動を見ても、太平洋線、北回り欧州線の航空路上にある新千歳空港は、日本の主要空港で北米や、欧州に最も近い位置にありますから、北半球における物流や国際交流の拠点として期待されます。

 

 

■道州制ウイークリー(196)2020年4月11日

◆地方主体の行政へ①

(松原聡『人口減少時代の政策科学』より)

日本の地方分権は、これまで掛け声倒れに終わってきた。現在の国と地方の総予算140兆円(2003年当時、現在は160兆円)ほどのうち、国は6割の84兆円を税などで集めるのに対して、国が直接行う仕事は、3割の45兆円に過ぎない。一方、地方は逆に94兆円の仕事をしているのに、自前の資金は54兆円。その差40兆円ほどが国からの補助金や交付金となっている。そしてこの40兆円が、国が地方を支配する根源となっている。

この40兆円を廃止して、最初から地方が行っている仕事の、つまり94兆円分の歳入を自前で確保すべきである。国は自らの仕事45兆円分の歳入を確保すればいい。これが本来の姿である。

地方分権が叫ばれながらも実現できなかったのは、中央官庁の既得権にとどまらない根拠があったことも見過ごしてはならない。その第1は、住民サービスに全国共通の基準を設けたい、ということである。自治体ごとに住民サービスが大きく異なる事態は避けるべきだ、という共通認識があった。

第2が、地方の経済格差を是正するということである。地方に分権すれば、地域間の経済格差=税収格差がそのまま住民サービスの差になってしまう。だから、国がその格差を生める調整役を果たさなければならない。これが地方交付税交付金の発想である。2000年4月に地方分権推進一括法が施行され、機関委任事務が廃止されるなど国と自治体の関係は対等な関係になるはずであった。しかし、重要な財源に関しては国が手離さなかった。

地方分権とは権限や財源を国から地方に移譲することであるが、その実現のためには、2つの大転換が必要。一つは、分権の受け皿であり、もう一つは住民サービスの全国横並び主義の放棄である。

 

■道州制ウイークリー(197)2020年4月18日

◆地方主体の行政へ②

(松原聡『人口減少時代の政策科学』より)

市町村合併が進み、5万人以上の市へと基礎自治体が再編されれば、そこに大幅な分権が可能となる。国から県、県から市町村といった現状の自治体規模を前提とした分権ではなく、その再編を前提とした分権が必要である。そこで問題となるのが、県の位置である。県の権限は、市の規模が、「特例市」から「中核市」、「政令指定都市」と大きくなるにつれて、市へ分権されている。政令指定都市への県の権限がほとんどないことを見れば、基礎自治体の規模が大きいほど県の存在意義は薄れていくと考えてよい。

日本の約25倍の国土面積と約2.5倍の人口を抱えるアメリカでも50州、ドイツは16州、フランスは13地域圏である。いかに日本の都道府県が細分化されていることか。さらに都道府県と市町村の規模も逆転が少なくない。例えば鳥取県の場合、人口は約57万人、横浜市は372万人。一つの県の人口が一つの都市より少ないという「ねじれ現象」が起きてしまっている。中核市構想でいえば、鳥取県の場合、30万人の中核市ができれば、たった2つの市で県が構成されてしまう。こうなると、県の存在意義はほとんどなくなる。そこで、市町村合併と同じ意味で、都道府県の合併=道州制の導入が必要となるのである。ここで、この道州に強大な権限を持たせて国の権限を削っていくか、この道州は地域間の調整などの限定した権限のみを与えるのかの選択が必要となる。

日本を大きく道州に区分けするときに、いくつかの分割例を見ると旧国鉄は6分割、電力は9分割、また官庁は「支分部局」と称する組織を各省庁とも全国に10前後にブロック分けしている。1983年に、出された土光臨調の最終答申では、このバラバラな各省庁の出先機関を「8ブロックを目標として管轄区域の適正化を図る」と適正配置を求めている。

 

■道州制ウイークリー(198)2020年4月25日

◆地方主体の行政へ③

(松原聡『人口減少時代の政策科学』より)

私(松原聡)は、道州には大きな行政権限は必要ないと考えている。国の地方支分部局を地方ブロックに移管するだけでもよい。道州は、県の統合ではなく、県の消滅を基本に考えるべきである。県の主要な権限、組織、人員を基本的に「市」に移管させ、県は廃止する。そして、どうしても広域的に調整が必要な事項を、道州が担う。もちろん、県の一部の権限は道州に持ちあげられてもよいが、基本は「市」に移管することで、県を廃止にする。

道州制を導入するもう一つの狙いである、地域間格差の是正について見ると、関西2府4県の人口2055万人と四国4県の人口374万人は約5,5倍となるが、府県別では東京と島根県の人口格差は25倍となる。総生産で最大の東京104兆円に対し、鳥取県1.4兆円の差は61倍もある。地域格差を縮小させる道州制を前提としなければ、三位一体改革(国庫補助金削減・国から地方への税源移譲・地方交付税見直し)も実現は困難である。財源を現在の都道府県のまま移譲しても、税収が高い大都市を抱える県は税収が伸び、税収が低いところは税源がきてもそこから税収自体が期待できない。地域間に格差がある以上、その格差是正役である交付税の縮小も困難である。道州制を導入すれば、交付税の役割は自動的に減少するはずである。

現在の地方自治制度は、都道府県と市町村の二階建てになっているが、その根拠は明確ではない。県と市の間で、鳥取県と横浜市に見られるような規模の逆転現象が生じているし、さらに政令指定都市や中核市に県の権限が移譲され、県が権限の空洞化も見られる。地方分権とは、そもそもこういった自治体に失われた財政規律や、行政の空洞化を解消させるべきものであった。それゆえ、日本の自治制度の根本的な再編なしに、たんに税源と権限の移譲や交付税の削減といった個別の課題対策だけでは目的は達成されるはずがない。交付税の調整によらないですむような、都道府県の再編、さらに自治体の業務をこなせる規模への市町村再編、が行われて初めて三位一体の改革は意味を持つのである。

道州制ウイークリー(186)~(190)

■道州制ウイークリー(186)2020年2月1日

◆人口減少時代の国のかたち⑨州のイメージ<沖縄州>

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

日本が道州制に移行したら、どのように変わっていくのでしょうか。沖縄州は人口約145万人ですが、かつての琉球王国で、独特の歴史、文化、地理的な特性を持っています。広範な自治権を獲得すれば、本土からの援助に大きく依存してきた沖縄にも自主・自立の気風が出てくるはずです。沖縄は、琉球王国と呼ばれた時代には「万国津梁(世界の架け橋)」の海洋国家として生きてきた歴史があります。その歴史で形成されたコンセプトに基づき、地勢を活かしてアジア諸国と直結する沖縄をつくるのです。

沖縄の売りは何といっても観光。入域観光客数は、2017年度で約957万人、目標の1500万人も視野に入ってきています。航空路線の拡充やクルーズ船の寄港回数を増やしていくと、海外からの観光客はより増えるでしょう。空港や港湾整備、また高級ホテルや国際会議場、イベントホールなどの整備も必要でしょう。

「基地返還」も現実になる時が近づいています。跡地活用を例えば、緑地を効果的に配置し、「緑の豊かさ」を演出することを目標として緑の風景づくりを進めることも考えられます。沖縄の新たな発展をリードする基幹産業等の集積地「リゾートコンベンション産業」「医療・生命科学産業」「環境・エネルギー産業」を整備したり、県内外からそれに関わる機能を誘致したりすることも課題でしょう。「アジア太平洋大学」や国際貢献センターなどを創設し、亜熱帯の環境や風土に適した医療や衛生技術を研究・開発する大学院大学や、病院などを併設するという方向も考えられます。

これまでの「経済的に47番目の県」という沖縄のイメージは州になったら一新されるでしょう。ライバルは日本国内ではなくアメリカのハワイ州です。ハワイと競いながらアジアでの拠点性を高め、それを超える州戦略を探ることが沖縄州の発展の道です。

 

■道州制ウイークリー(187)2020年2月8日

◆人口減少時代の国のかたち⑩州のイメージ<九州州>

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

総人口1300万人の九州は、福岡を除くと出生率も高く、職・住・遊・学・憩という、都市が持つべき5つの機能を備えた中規模の都市が連なっているのが特徴です。国土の形としてはある意味ドイツの国土に近いところがあります。九州の中心になっている福岡は、釜山(距離210キロ)、ソウル(同540キロ)、上海(同870キロ)など隣国の大都市が1000キロ圏内にある地理的な有利さがあります。アジア地図を広げると、九州州はむしろ東京までを1つの圏域とするアジアの中心に位置し、アジアへのゲートウェイ(玄関)とも言えます。

ハブ空港は福岡空港、ハブ港湾は北九州と見立て、韓国、北朝鮮、中国、ロシアのつながりを深めていくと、九州州が「環東アジア海経済圏」の中心を担うようになるかもしれません。まずインフラとして熊本に仁川空港より大きな4000メートル滑走路を4本有する巨大なハブ空港をつくる。そこから福岡、佐賀、長崎、鹿児島、宮崎、大分に向けた高速道を整備すると、九州は経済的にも生活圏の面でもひとつの島になるでしょう。

九州は自動車産業の集積も加速しています。また、半導体企業による工場立地が進み、「シリコンアイランド」と呼ばれてきました。さらには太陽電池の大規模工場も立地し、「ソーラーアイランド」としての顔も生まれてきています。

観光の観点では、福岡には「九州のマンハッタン」としての都市の魅力、大分には別府や湯布院など世界有数の温泉地としての評判、鹿児島は南国イメージによる桜島観光などの実績がありますが、沖縄州と連携し、「洋上観光ルート」として開発すれば新たな魅力をアピール、観光客を増やすことも可能になります。九州の持ち味を州政府による広域政策の中でブレンドしていけば、かつて経済力が並んだオランダにキャッチアップすることは可能で、オーストラリア並みの経済立国になる可能性は十分にあると思います。

■道州制ウイークリー(188)2020年2月15日

◆人口減少時代の国のかたち⑪州のイメージ<四国州>

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

総人口約380万人の四国州は、沖縄に次いで人口も域内生産も少ないので、「中国地方と一緒にして中国・四国州にすべきだ」という意見もありますが、一つの島としての一体性、自立性を追求した方が、潜在能力を引き出せるように思います。「小が大を制する」という言葉がある通り、小さいが故にできることを追求すればよい。

徳島県の神山町や美波町のように、美しい風景を残しつつIT化を進め、ベンチャー企業を呼び寄せている地域もあります。四国にはもともと、「オンリーワン」の技術で日本および世界でトップレベルのシェアを占めている企業がたくさんあります。世の中に欠かせない技術で世界に貢献している企業が隠れています。業務用ソフトウエアの会社で働き方改革でも注目を集めるサイボウズや、ワープロソフト「一太郎」などを手掛けるジャストシステムなども、もともと四国が誕生の地です。

こうしたタイプの企業をもっと増やそうとするなら、例えば州制になり課税の裁量権が広まったことを活かして消費税、法人事業税、固定資産税を他州の半分に下げ、相続税を完全撤廃するという選択もあるかも知れません。そうすれば、海外に逃げていた企業、あるいは逃げようと検討していた企業が、法人事業税の安さなどが誘因となって、関西や関東から次々と本社を移してくる可能性があります。相続税を廃止し、固定資産税を半額にすると、全国から金持ちの高齢者、富裕層が集まってくるかも知れません。

瀬戸内は最近、高級クルージングでも注目されていますが、世界的にも瀬戸内のような風光明媚な内海は価値が高まっています。四国の個性的な魅力は、大阪から四国を通って大分に至る「四国新幹線」ができればさらに注目され、インバウンドツーリズムのさらなる可能性にもつながっていくでしょう。

 

■道州制ウイークリー(189)2020年2月22日

◆人口減少時代の国のかたち⑫州のイメージ<中国州>

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

総人口約750万人という鳥取、島根、岡山、広島、山口の5県を区域とする「中国州」は、現在でも域内GDP約30兆円規模であり、デンマーク並みの経済力を誇っています。面積はベルギーとほぼ同じですが、日本海側と瀬戸内海側に分かれ、地域の特性も違います。これをどうひとつの州としてまとめ、持ち味を生かしていくかが課題です。

山陽側では、山陽自動車道の開通や国道2号バイパスの整備により、広島から岡山、山口まで概ね2時間から3時間以内で到達可能となっていますが、一方、広島から松江、鳥取までは4時間から5時間(国道利用なら鳥取まで6時間以上)かかることから、山陰側との道路ネットワークが大きな課題です。広島ないし岡山を州都とした場合、そことの一体性をどう確保するかも課題です。一つの広域圏になる場合、環日本海側と州政府の首都を結ぶインフラ整備が課題になります。

今後は高速道の整備、環日本海新幹線の敷設などが行われたりして足回りがよくなると,一気に発展する可能性が高く、インバウンドも呼び込みやすくなるでしょう。また、この先の環日本海時代をにらむと、韓国、中国との交流も深められるという有利なポジションにあります。

岡山から山口にかけての工場地帯は今後より魅力を高めていくと思います。造船業、繊維工業のほか、重化学工業が発達しています。中国州は、ポスト自動車産業として可能性のある航空産業や医療・バイオ産業の伸びが期待できる地域です。過疎の地に根差した農業の振興なども期待されます。5つの県が一つになった暁には、広域防災拠点や医療センターの整備、グリーンツーリズムなどの施策も打ち出され、地域としての独自性も発揮されていくのではないでしょうか。

 

■道州制ウイークリー(190)2020年2月29日

◆人口減少時代の国のかたち⑬州のイメージ<関西州>

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

総人口約2000万人の関西は、関東州と並んで大きな牽引力を持つ州です。日本の繁栄の多極化を実現する点からすると、関西州は日本で一番潜在的な可能性の高い地域と言える。「2眼レフ国家構造」の一極を担うのがこの関西州でしょう。関西は、神戸、大阪、京都などの政令市を擁しながらバラバラ感があり、いま東京への人口流失が最も多い地域でもあります。リニア新幹線が早期に大阪まで開通し,スーパーメガリージョンが形成されたとしても、関西州が独自の競争力を身につけ、成長できる力を持たなければ、結局はヒト、モノ、カネが東京に吸い上げられるだけになりかねません。

関西州は製造業の本社比率が高い(21%)。また医療関連産業の研究拠点や生産拠点が集積しており、ノーベル賞受賞者といえば東大より京大というイメージがありますが、関西には世界屈指の科学技術研究基盤や大学、研究機関、企業等が集積しています。京阪神の地理的なサイズはシリコンバレー(サンフランシスコからサンノゼ、バロアルトまで)とほぼ同じであり、1つの産業集積となるには無理がないサイズと言えます。

関西広域連合は「関西創生戦略」を策定するなど、一貫して地方分権の推進、国からの権限・事務の移譲へ向けた取り組みを進めてきました。この先、迫りくる首都直下型地震や南海トラフ地震に備えるとともに、東京一極集中を是正して地方創生を実現するためにも、国土の双眼構造を実現する一極として関西州の創生が求められます。

関西州が東京や関東圏と伍していくためには、大阪・兵庫・京都・奈良・滋賀・和歌山が一つの経済圏としてまとまっていく必要があります。まとまってこそ力が出る。その意味でも、行政事務の簡素化、迅速化のために広域的行政組織に一本することが望ましいのです。

 

道州制ウイークリー(182)~(185)

■道州制ウイークリー(182)2020年1月4日

◆人口減少時代に合った国のかたち⑤

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

「廃県置州」はざっくりいうと、30年前に行われた「国鉄改革」に似ています。民営化以前、国鉄は万年赤字でした。国鉄時代、全国の鉄路は東京本社によって1つのサイフで一括管理され、「ドンブリ勘定」が蔓延していたのです。これを7つの民間会社に分割し、再生させたのが国鉄改革です。

現在、日本の行財政システムも、民営化以前の国鉄と同じような状態にあります。毎年、国と地方で60兆円近い赤字を出し、歳出削減などほとんどできないまま、累積債務が1300兆円にまで膨れあがった。国民が納める税金の7割近くが国税、しかし行政サービスの7割は地方自治体。このギャップを埋めるため、国の意思で補助金や地方交付税などの形で財源を地方に再配分するので、需要と供給のミスマッチがあちこちで生じる。ドンブリ勘定のような中央集権体制では、誰が最終責任を負っているかもはっきりしない。カネが足りなければ改革するのではなく、国債や地方債という名の借金で補填していく。どう見ても旧国鉄と同じ構図です。

道州制への意向に関する議論は戦前からありますが、2006年に第一次安倍政権ができたとき、自民党は「2018年までに47都道府県を廃止し、約10の道州に再編する」と公約しています。この公約は09年の政権交代でいったん凍結されますが、12年に自民党が政権復帰すると再び「道州制基本法」の早期成立を図り、その制定後5年以内の道州制導入を目指します。「導入までの間に、国、都道府県、市町村の役割分担を整理し、住民に一番身近な基礎自治体(市町村)の機能強化を図ります」(2012年のマニフェスト)と公約しています。しかし、それから7年が過ぎ、安倍政権も続いていますが、一向に動く気配がありません。道州制移行の機運が高まった時は、州の区割りに議論が集中し、小規模な町村の反発や地方間格差の拡大を懸念する声が高まりました。関係各省も権限縮小に抵抗し、前向きな議論がかき消されてしまいました。

■道州制ウイークリー(183)2020年1月11日

◆人口減少時代に合った国のかたち⑥

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

道州制とはおおむね「都道府県よりも原則として広域の機関または団体を新に創設しようとする制度構想の総称」(西尾勝著『地方分権改革』東大出版会・2007年)とされます。その広域の機関ないし団体を道州とし、それを内政の拠点とする構想であるともいえます。

州の性格づけや区割り、担当業務、財政調整、国、市町村との役割分担などをめぐりいろいろな考え方がありますが、一番新しい説明は、10年少し前に道州制担当大臣の諮問機関であった「道州制ビジョン懇談会」(2007年から3年間内閣官房に設置)の「地域主権型道州制」(「中間報告」2008年3月)にあります。そのポイントは、「地域主権型道州制とは、国、道州、市、それぞれの政策領域において独立した権限と税財源を持つ制度だ。日本を10州程度に再編し、公選の州知事、州議会を置く二元代表制を政治機関とする地方自治体とする。国の出先機関や府県業務を統廃合し、厚労省、国交省、文科省など内政を扱う省から権限、財源を各道州に移し、国は外交、防衛、危機管理などに純化し内政の拠点にする」というものです。

それが求められる背景を同懇談会「中間報告」ではこう解説しています。「日本に求められるのは、人々のより身近な場において、各地域に適した決定と執行ができる『新しい国のかたち』を早急に築くことである。日本全体を一色に塗りつぶす中央集権的な統治体制を根本的に改め、国民一人ひとりが自助の精神をもち、地域の政治・行政に主体的に参加し、自らの創意と工夫と責任で地域の特性に応じた地域づくりを行える統治体制、すなわち国政機能を分割して自主的な地域政府「道州」を創設することである」。

この懇談会報告に加えなければならないのは、本格的な人口減少国家にふさわしい統治の仕組みの再構築が不可欠だという点です。

 

■道州制ウイークリー(184)2020年1月18日

◆人口減少時代に合った国のかたち⑦

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

日本型州構想は、次の3点をねらいとします。

第一に、日本を地方分権が進んだ地方主権の国に変えること。

第2に、東京一極集中を排除し、各圏域が自立できるよう競争条件を整えること。

第3に、国、地方の仕組みを簡素化し、機能性の高い政府システムに変えること。

そこでは、各州が「内政の拠点」となるよう、国から各州への権限移譲が進み、法令による義務付け、枠づけは大幅に緩和・廃止され、州が政策の企画立案から管理執行までを一貫して担うようになります。この仕組みは概ね次のようなことが柱になります。

1.現在の都道府県の合併ではなく、各ブロック単位(いくつかの府県区域)を統治の区域とし、そこに新たな地方自治体としての州政府をおく。

2.国の役割は、対外政策など真に国家に必要な行政分野に限定し、身近な基礎行政は基礎自治体(市町村)に、州は広域行政と市町村の補完的な役割を果たす。

3.国と州は、原則として対等な自立した関係となる。アメリカ、カナダのような連邦国家をめざす訳ではないが、精神としては限りなく連邦国家に近い考え方とする。

こうした考え方に基づくので、従来議論されてきたような国の行財政権を大幅に各州に移すことだけでなく、立法権も委譲しなければなりません。法律で決めることを限定し、州条例や市町村条例で決めることを増やすべきです。

■道州制ウイークリー(185)2020年1月25日

◆人口減少時代に合った国のかたち⑧

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

道州制への移行は日本各地を元気にすることが狙いです。各州は財源や立法権、行政権を国から大幅に移譲され、それをフルに使い自立を目指します。内政の拠点として各州は、道路・空港・港湾など広域インフラの整備、科学技術の振興、州立大学など高等教育の充実化,域内経済や産業の振興、海外との都市間交易、文化交流、雇用政策、州内の治安、危機管理、環境保全、さらに医療保険など広域的な社会保険サービスを担当することになります。

道路なら,市町村が建設管理する生活道路を除く幹線道路や準幹線道路は、国道、県道などの区別はなくし、みな州道とします。州が一体的に管理し、ネットワークと拠点性を高めることで、道路の持つ力を経済面でも生活面でも有効に活かせるようにするのです。結果、各州の人口、経済の伸びも期待できます。

道州制にすると地域格差が拡大し、勝ち組負け組がはっきりとし、小規模な町村などは寂れるという人もいます。そうでしょうか。では、現在の47都道府県の体制をそのまま続ければ格差が広がらず、町村も寂れないのでしょうか。

話は逆です。広域州を創設すれば、州内の核となる大都市がその州を潤し、町村は広域州の中で財政上の調整も受ける訳で、都道府県時より機動的な財政支出が可能になります。州制度への移行によって、州には課税自主権も与えられます。場合によっては、政策減税も可能となるでしょう。

道州制ウイークリー(178)~(181)

■道州制ウイークリー(178)2019年12月7日

◆人口減少時代に合った国のかたち①

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

これから日本は、歴史上経験したことのない人口減少期に入っていきます。明治維新からここまでの150年間、ひたすら人は増え、所得は増え、税収は増えました。成長の続く「右肩上がり社会」でした。人口は1世紀で3倍強に増えました。しかし、この先は坂を下るように人口が減り始め、年を追うごとに下り坂がきつくなっていきます。しみついたかつての成功体験に囚われることなく、時代に合うよう、いろいろな分野で見直しが必要になってきます。人口減少時代を見据え、国と地方の統治システム全体を賢くたたみ、再構築する必要が明白になってきます。

時代は大きく変わっています。人口減少で「入れるもの」が少なくなっていくのに、「入れる器」が人口増時代のままとういうのは常識的に考えておかしい。移動手段が馬、船、徒歩の時代に作られた都道府県という仕組みは、現在の高速化し広域化した時代にはどう考えてもあっていません。人々の生活、経済の活動が「広域化」しているのにもかかわらず、行政の仕組みは事実上「狭域化」しているのです。

47知事の集まる全国知事会の様子を見ると、日銀の支店長会議に似ています。知事同士での論戦、地方からの提案は殆どなく、総務大臣や国の官僚からの一方的な話を粛々とメモして変える。どこか上意下達の風土が宿っている。

経済活動の範囲が広がり、人々の活動が広域化した今、自県に籠り自県の事だけを考えていても発展はありません。そうではなく、それぞれの県が持つ良さを広域圏の中で活かし、潜在的な資源、人材を互いに出し合って、ブレンドし自由な交流と地域の魅力をアピールして攻勢に出るべきです。世界がそうであるように、国内もいまやボーダレス社会です。経済圏と行政圏を一致させてこそ力がでます。

 

 

■道州制ウイークリー(179)2019年12月14日

◆人口減少時代に合った国のかたち②

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

膨らむ社会から縮む社会へ転じた日本では、これまで広げ続けてきた行政の大風呂敷も、上手にたたんでいく必要があります。急速に人口が減り高齢化が進むと、過疎地や地方都市だけでなく、大都市圏でも膨大な高齢サービス需要に追われます。2040年には、全市町村の半数近くで人口が現在の半分以下に減り、高齢者の比率が35%を超えるとされます。これを「2040年問題」といったりしますが、そこではどんなことが起きるのでしょうか。

第1に、出生率の低下で深刻な労働力不足が起こります。

第2に、生活や産業活動を支えてきた都市機能が維持できなくなります。財政的な余裕もなくなるので、地方は国の補助金をあてにしてフルセット行政を維持することが不可能になり、横並びで地域の振興を競い合うといった行政から脱却せざるを得ません。本当に必要な行政機構を選別し、住民にとって最小限必要とされる行政機構の維持に特化せざるをえなくなる。

第3に、都道府県と市町村の二層制を維持し、それぞれに均一の役割や業務を委ねる方式は立ち行かなくなります。だから新たな仕組みを考えるしかない。

第4に、都道府県行政、市町村行政の大きな組み換えが必要となります。第5に、小規模市町村を取り巻く環境はより厳しくなります。2040年の時点で人口が1万人を切る市町村は523自治体(全体の30%)に上るとされます。

国と地方の借金は1300兆円、何らかの弾みで国債の信用が失われたら、一気に財政破綻に追い込まれます。増税しなくても国の仕組みの二重、三重、四重に重なり合う行政を絞りこめば、相当の無駄が省けます。膨れ上がったわが国の行財政システムを総点検し、たたむ方向を真剣に考える時期です。

■道州制ウイークリー(180)2019年12月21日

◆人口減少時代に合った国のかたち③

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

市町村が基礎自治体、都道府県は広域自治体と呼ばれていますが、国と市町村の間にある「中2階的」役所である都道府県の存在意義は、時代変化に伴い、実はどんどん薄れているのが現状なのです。

戦後の都道府県は、実は2000年までの長い間、8割近い仕事は国の各省の仕事を代行する機関委任事務の処理が主でした。「機関委任事務制度」です。この仕組みは、2000年の地方分権改革により全廃されました。都道府県は国と地方の間に立って国の意思を市町村に伝える一方、市町村の要望を国に伝える役割もするという「卸売業」の性格を、機関委任事務の廃止によって失ってしまったのです。都道府県行政の「空洞化」です。

それを更に促進する動きもあります。いま都道府県では府県の仕事の多くは100万政令市や20万中核市に移ってしまいました。すでに政令市が20市、中核市が約60市にまで増え、東京の特別区も含めると、国民の5割はその地域に住んでいます。大中規模の市は府県の仕事もするようになっています。この面からも、府県行政の空洞化は進んでいるのです。

公務員の数でいうと、国約58万人、市町村135万人に対し、都道府県139万人(2018年)と公務員の4割以上を占めています。国と地方の財政の純計160兆円のうち、100兆円を地方が占め、その半分を都道府県財政が占めています。国の各本省と各出先機関という構図と、県庁の本庁と出先機関という構図はほぼパラレルで、それぞれが自己完結的に仕事を進めるような組織構成になっています。ここまで行政の組織密度を濃くし、多くの公務員を雇う必要があるでしょうか。

 

 

■道州制ウイークリー(181)2019年12月28日

◆人口減少時代に合った国のかたち④

(佐々木信夫『この国のたたみかた』より)

現在の都道府県の区割りは明治維新直後の廃藩置県でつくられたもので、本来の「広域自治体」としての役割を果たすには非常に狭くなっています。また、府県の仕事も併せ持つ100万人規模の政令市との区別もつかなくなっています。区別がつかないだけでなく、政令市の存在は県の中に「もう一つ県がある」ような状態を生んでいます。

筆者は、都道府県をいったん廃止し、新たに内政の拠点になるよう地方主導型の州をつくる「廃県置州」の改革が必要だと考えています。中2階自治体の整理、行政の見直し、民間移管により、20兆円規模のムダが省けるという試算もあります。(穂坂邦夫監修『地方自治 自立へのシナリオ』)

この先、人口が減っていくと、人口が100万人に届かない県が続出していくと思われます。現在、人口100万人以下の県は、香川、和歌山、佐賀、福井、山梨、徳島、島根、高知、鳥取、秋田の10県ですが、国立社会保障・人口問題研究所の予測ですと、2045年段階では、これに奈良、長崎、石川、大分、岩手、宮崎、青森、富山、山形が加わり19県になるとされます。

明治維新期の「廃藩置県」が人口拡大期に備えた政治革命だったとすれば、これからの人口縮小期に備えた政治革命は「廃県置州」ではないでしょうか。筆者がイメージしているのは、従来の議論にあるような都道府県を上から目線で〝羊羹切り“にする道州制ではなく、現在各地の中核として育ってきている20政令市、60中核市といった大都市、中都市を基盤に置いた”地域目線“の道州制です。

 

道州制ウイークリー(173)~(177)

■道州制ウイークリー(173)2019年11月2日

◆道州制を目指す政治家は誰か①

(河野太郎『私が自民党を立て直す』より)

「小さな政府がなぜ必要か」

私の目指す新しい自由民主党とは、むやみやたらと規制を作って経済に介入することをしないという意味で、「権力の小さい」政府を創ろうとする政党だ。

第二に、新しい自民党は、地方が決められることは国が関与せずに地方に任せるという意味での「中央の権限が小さい」政府を創ろうとする政党だ。それぞれの地方で決めれば済むことは地方が決めるべきであって、国がいちいち口を出すべきではない。国が余計なことに口を出さないようになれば、国の公務員の数を減らすことができる。

その裏返しで、国と余計な打合せをやらなくて済むようになれば、地方の公務員の数もそれだけ減らすことができるようになる。47の都道府県を廃止して、8つか11の道州からなる道州制になれば、地方の行政組織はさらにスリム化することになる。新しい自民党は、「公務員の数が小さい」政府を目指す政党だ。

もちろん日本の人口構成が逆ピラミッド型になってしまった今日、年金や医療、介護などの社会保障制度を維持していこうとすると、どうしても自助、共助だけでは足りない。社会保障制度を維持するために必要な公費を投入しなければならないという点で、自民党の目指すべき「小さい政府」は、小さい政府の中でも社会保障の分だけ大きい政府にならざるを得ない。しかし、新しい自民党は、理念として「小さい」政府を目指す政党であることに違いはない。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(174)2019年11月9日

◆道州制を目指す政治家は誰か②

(河野太郎『私が自民党を立て直す』より)

「構造改革こそ日本の生きる道」

日本の労働生産性は先進7か国の中で最下位。国内産業の生産性を上げるためには規制緩和による競争が必要だ。日本経済を疲弊させたのは構造改革ではなく、構造改革をやりきらずに来たことが日本経済を破綻寸前まで追い込んできたのだ。これまでの日本は、競争力のない弱い産業を規制で守り、補助金で守ってきた。業界を守るために支給されてきた補助金のおかげで、政府の財政赤字は増え続け、国債の発行残高のGDP比は今や、先進国の中でも群を抜くようになってしまった。

構造改革は、もはや選択の一つではない。構造改革によって、それぞれの産業を自立させ、競争力をつけさせる以外に日本が取ることができる道は残されていない。構造改革によって、日本市場にも競争が戻ってくる。時代が変わるとともに企業も変わらなければならない。変化についていけない企業は、市場から退出を余儀なくされ、それと同時に新しい企業が市場に参入し、新たな勝者となり経済の牽引車となっていくのだ。

構造改革を実現する上で陥りやすい過ちは、かつての高度成長期のように政府が日本の産業構造の未来図を描くことができるというものだ。新しい経済とは、市場の中でリスクを取って勝負するプレーヤーの中から勝者が生まれることによって実現するものであって、政府があらかじめ絵を描いて創り上げるものではない。構図改革の中で政府が果たす役割は、構造改革を成し遂げるという強烈な意思表示をすることと、最も効率的な市場を創り上げるために障害となるものを取り除く、つまり不必要な規制を撤廃することである。

 

 

■道州制ウイークリー(175)2019年11月16日

◆道州制を目指す政治家は誰か③

(河野太郎『私が自民党を立て直す』より)

国の一般会計と特別会計を事業仕分けすると、5兆円は削減できるはずだ。それに加えて、国家公務員の人件費約5兆円を2割削減すると、1兆円の予算カットにつながる。もし国家公務員の人件費が2割削減できれば、地方公務員の人件費22兆円も横並びで2割削減し、地方の支出を4兆円減らすことができるだろう。最終的には国と地方合わせた均衡財政を実現するため、地方の公務員人件費の削減の意義は大きい。

そのためにも、なるべく速やかに都道府県を廃止し、道州制に移行しなければならない。都道府県は廃止され、道州政府に一本化される。事務経費はかなり削減することができる。

地方への交付税・交付金・補助金は、全て一括して使途を定めずに地方に移譲するべきだ。これまで国が地方に対して支出してきた全ての金額を合計し、人口要件や面積要件等で一律に計算した金額を地方に渡す。更に地方で決められることは全て地方に移管し、それに必要な財源も一括交付金の中に入れて移譲する。地方の事務に関する国の定めた規制やルールは撤廃する。地方はそれぞれの地方なりのルールや規制を制定する。国は、補助金を通じて政策を誘導することをやめる。こうすれば、それぞれの地方の優先順位が、国の支出する補助金のおかげでゆがんでしまうこともなくなる。

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(176)2019年11月23日

◆道州制を目指す政治家は誰か④

(河野太郎『私が自民党を立て直す』より)

「温かい小さな政府」

私が考える「小さな政府」とは次の4つの項目からなる。

1つは、公務員の数を小さくすること。これは、出来る限り政府の役割を小さくし市場原理の中で経済を発展させていくために必要なことだ。そもそも資本主義の中の政府とは、効率的な存在ではない。そして公務員の数が増えれば必ず仕事が増える。

2つ目に、政府の財政規模を小さくすること。政府が富を集めて再配分を行うような政策は避けなくてはいけない。これを続ければ、当然のように増税が見えてくる。そうではなく、政府は無駄なことをせず、民間に富を戻すことを考えるべきだ。

3つ目は、政府の権限を小さくし、地方で決められることは、地方で決めてもらうようにする。保育園の子ども1人当たりに求められる広さや、小学校の天井の高さまで国が決める必要がどこにあるのか。地方に権限を委譲すべきであり、そのために道州制を導入すべきだろう。

4つ目に規制を小さくすること。政府が規制を作って産業を妨げるということがあってはならない。しかしながら、人口が逆ピラミッドになっている日本の現状を考えれば、社会保障には公費を投入する必要がある。特に子育て支援の優先度は高く設定し、早期に出生率を2.07以上に上げ、人口を回復しなければならない。そうでなければ、経済は縮小を続け、結果として社会保障にも手が回らなくなってしまうだろう。

小さい政府を実現し、民間の経済を活性化させながら、手当すべき部分にはしっかりとしたし社会保障を行う、そんな「温かい小さな政府」を目指すべきだ。

■道州制ウイークリー(177)2019年11月30日

◆道州制を目指す政治家は誰か⑤

(河野太郎『私が自民党を立て直す』より)

「既得権第一」では国は発展しない

公共事業や補助金を出すために国債が発行され、国の借金はどんどんと膨らんでいった。日本経済はいたるところで規制が乱造され、市場への新規参入が妨げられるようになり、新しいアイデアや新しい技術、新しい考え方はますます生かされにくくなった。

公共事業や補助金に慣れ、規制で守られるようになった経済のなかでは、新しいことに挑戦して何かを得るよりも、既得権をしっかり守るほうが得になっていった。自由な市場で競争するよりも、守られた市場の中でお互いの領分を侵さずに、手の中にあるものをしっかりと握りしめていくようになった。そして、日本経済から躍動感が失われ、新しい投資が行われなくなり、日本経済の成長が止まった。

政府も経済も既得権を守ることを第一に考えているようでは国は発展しない。公務員の数を減らし、歳出を抑え、規制を撤廃すると同時に、地方に財源と権限をきちんと渡し、小さい政府をつくることで日本の市場を活性化させ、経済成長をさせる。それが新しい自民党だ。

新しい自民党は、もう一度、何か新しい物事に挑戦することが尊いことであるという考え方を日本にもたらす。

 

道州制ウイークリー(169)-(172)

■道州制ウイークリー(169)2019年10月5日

◆道州制につながる実行プラン①

(橋下徹『実行力』より)

国と地方の行政の仕組みの改革は、行政組織のメンバーである官僚がリーダーシップを発揮することは無理なことで、大阪都構想のように政治家が政治力をフルに駆使するほかありません。日本にごまんと存在する役所はそれぞれ権限と財源を持ち、それらを前提にして人や団体が山ほどあるので、現状の役所の仕組みの維持を望む勢力が非常に強く、その改革には凄まじい抵抗が生じます。その抵抗を抑え、時には打ち崩して、改革を進めるのが政治家の役割です。

現在の日本の行政・役所の仕組みは、中央の政府と自治体の役割分担が適切ではありません。例えば、待機児童対策は、本来なら中央政府が実務を担当するような問題ではありません。国は、地方自治体に待機児童の解消を義務化し、義務違反の場合のペナルティーを定める法律を制定すればいいだけの話です。待機児童の解消のための実務は地方自治体にやらせればいい。その代わりに、保育所行政の権限もすべて地方に渡す。保育所の設置・運営に関するルールも地方ですべて決めさせる。国は自治体に待機児童解消の義務を負わせるだけ。地方に責任を負わせる代わりに実務を行うための権限とお金のすべてを与えるのです。それが国家運営のマネジメントというものです。

森友学園の土地の問題も、所詮は私立小学校の敷地を巡る問題。議論される場は、本来は国会ではなく、地方議会であるべきです。近畿財務局という国の出先機関が地方の土地を所管しているから、国の問題になってしまう。これらの土地を大阪府庁の所管にするか、近畿財務局を関西の府県や関西広域連合の下に移していれば、森友問題は国会ではなく大阪府議会か関西広域連合議会で議論されていたでしょう。

 

 

 

■道州制ウイークリー(170)2019年10月12日

◆道州制につながる実行プラン②

(橋下徹『実行力』より)

関西広域連合は、関西全体の政策を実行する行政機関ですが、それにとどまらず、国の地方の出先機関を譲り受けるビジョンを実行するための積極的な活動も行いました。単に議論をすることだけで終わらせず、僕も民主党政権時の地域主権戦略会議のメンバーに参加し、国と激しく折衝しながら、関西広域連合において国の地方出先機関を譲りうける具体的な実行プランを作っていきました。

当初は近畿財務局(財務省)、近畿地方整備局(国土交通省)、近畿地方環境事務所(環境省)、近畿経済産業局(経済産業省)の全てを関西広域連合の下に移す構想でしたが、国が猛反対、当時の政権与党であった民主党政権とガンガンやり合いましたが、結局、近畿財務局を除いた三つの機関をまず関西広域連合に移すことが決まりました。

それから数年をかけて、大阪都構想の実行プランと同じように、国の地方出先機関を関西広域連合に組み込む組織体制プランをつくりあげました。あとはこのプランについて閣議決定をして法律を制定させればいいというところまでいったのですが、2012年に政権交代が起こり、自民党政権でこの実行プランの法案は棚ざらしになってしまいました。実行プランまでできているので、あとは法律でGOとなりさえすれば、いつでも国の地方出先機関を関西広域連合に移すことが現実に実行できるわけです。

「地方分権だ」「国の出先機関を地方に譲れ」という政治学者や評論家は多いですが、そのようなビジョンを口にするのは簡単です。しかし実行プランを作らなければ何も進みません。この実行プランの作成が一番大変なんです。反対する人たちと激しく折衝しなければなりませんし、場合によっては選挙による政治決断を挑まなければなりません。

 

■道州制ウイークリー(171)2019年10月19日

◆道州制につながる実行プラン③

(橋下徹『実行力』より)

関西広域連合は、国全体の中央省庁制、都道府県制、市町村制を抜本的に作り直す道州制に向けた動きの第一歩です。道州制は、国と地方の役所組織の役割分担を整理して、国がやらなくてもいい仕事や地方がやるべき仕事は地方に移し、国は国本来の仕事に集中してもらって日本という国をより強くするための大改革です。この道州制もかれこれ40年以上も、インテリたちの間では議論され続けてきました。しかし、提案や議論だけではダメなのです。実行しなければなりません。大阪都構想も関西広域連合も、道州制を口だけではなく実行するためのプロセスの一つでした。

国のトップがこれほど国会に拘束される国は、日本以外に世界でも類を見ません。その理由は、国である中央政府があらゆる仕事を抱え込み、それらすべてが国会で議論されるからです。中央政府が抱えている仕事のうち、内政問題は出来る限り地方自治体に移譲する必要があります。中央政府は外交・安全保障などの仕事に集中し、国会の議論も絞り込むべきです。

現在の47都道府県を9から13の道州にまとめ直し、内政問題は基本的には道州が担当する。今の都道府県だと力が弱くて、結局国・中央政府を頼ることになってしまうので、そこを抜本的に改革し、明治維新の廃藩置県に匹敵する廃県置州を断行すべきだと思います。大阪都構想や道州制は、国や地方のリーダーが、適切なリーダーシップを発揮できる組織体制にするものです。

日本全体の政治行政をしっかりと実行できる行政組織にするためには道州制の実現が不可欠だと考えています。大阪都構想の政治運動を道州制につなげて新しい日本の統治機構を築き上げてくれる次世代の政治リーダーが誕生してくれることを願ってやみません。

 

 

■道州制ウイークリー(172)2019年10月26日

◆道州制で繁栄を呼び込め

(大前研一『国家の衰退からいかに脱するか』

21世紀の繁栄は、世界と直接つながることでもたらされる。国も地方も世界中から人、カネ、企業、情報を呼び込むことが富を生むのであり、それが、“繁栄の方程式”なのだ。戦後日本が成長してきたのは、まだ途上国だった時期には中央集権が効率よく機能したからである。しかし、今や中央政府の単発エンジンは老朽化して出力が衰えてしまい、地方自治体の多発エンジンを起動しなければにっちもさっちもいかない状況になっている。だから今頃になって慌てて「地方創生」などと言っているわけだが、地方自治体には立法権も徴税権もなく、自前の財源もないため、いっこうにエンジンがかからないのである。

これを打開する方法は、廃藩置県ならぬ「廃県置道」、すなわち私が30年前から提唱している道州制への移行しかないと思う。

その定義を改めて説明すると、47都道府県を統合して10か11の道州を置き、その下に人口30万人ぐらいのコミュニティをつくる(道州ごとに30~40前後)。そして道州は国から立法権、行政権、司法権、徴税権のかなりの部分を委譲してもらい、経済活動を司る。コミュニティは初等・中等教育や医療・福祉などの生活基盤を提供する役割を担う。

道州制の目的は、前述した“繁栄の方程式”を使い、各地方がボーダーレスに人、カネ、モノ、企業、情報の出入りを自由にして、世界から繁栄を呼び込むための産業基盤を創設する単位になることだ。そうやって経済的に自立するには、どうしても1000万人単位の人口が欲しい。それゆえの「道州」なのだ。

道州制ウイークリー(165)~(168)

■道州制ウイークリー(165)2019年9月7日

◆人口減少国家 日本の未来⑤全国で町が消えていく

(河合雅司『未来の透視図』より)

2015年を100とした時に30年後の2045年に人口がどのくらい減るのかを日本地図で示してみると、人口が半数以下になってしまう地域が、北海道から沖縄までかなりの地域に散らばっている。人口5000人未満の自治体が増えていけば、病院や銀行など地域に必要な社会インフラが存在できなくなる事態になりかねない。

北海道では、2045年に実に6割以上の自治体が人口5000人未満の小規模自治体となる。東北でも宮城を除く各県で、3割ほどが小規模自治体だ。北関東では群馬県の25%の自治体で5000人未満になる。東京都の周辺3県でも小規模自治体は確実に増えていく。

中部エリア9県では全県で人口減少が進む。小規模自治体が特に多い長野県では、45年には約半数の自治体が5000人未満となる。近畿エリアの三重、奈良、和歌山では小規模自治体の増加が顕著。奈良、和歌山は約4割が5000人未満となる。

四国4県もまた、人口減少が著しく進む。特に高知は5000人未満の自治体が6割を超える。中国エリアでは鳥取、島根で5000人未満自治体が約4割となり、人口規模全国12位の広島県でも1割の自治体が人口5000人未満となる。九州・沖縄でも全県で小規模自治体が増える。熊本は6割を超える自治体が5000人未満となる。

大都市圏は高齢化が目立ち、地方圏では高齢者の増加率は高くないが、労働者人口の減少が著しい。地域のサービスが消滅する人口規模をみると、2万人以下では美術館、研究機構、ペットショップ、英会話教室などが消える。1万人以下になると、救急病院、介護老人福祉施設、税理士事務所などがなくなり、5000人以下となると、一般病院、銀行などが消滅する。これまで当たり前だった生活ができなくなってしまう。

 

■道州制ウイークリー(166)2019年9月14日

◆人口減少国家 日本の未来⑥空き家急増、老朽化する生活インフラ

(河合雅司『未来の透視図』より)

誰も住んでいない家や集合住宅の空室が増えている。総務省の調査では、全国にある空き家は2013年時点で820万戸にものぼり、住宅総数(6063万戸)の13.5%を占める。このうち約6割に当たる471万戸はマンションなどの共同住宅だ。住宅が余っていながらも、都心部を中心にタワーマンションや集合住宅の着工は相次ぐ。野村総合研究所の試算(2016年)では、このままでいくと、2033年には住宅の3戸に1戸が空き家となってしまう。

全国には所有者が分からない、また連絡がつかない「所有者不明土地」が2016年時点で九州とほぼ同じ面積の約410万ヘクタールもある。これが年々拡大、2040年には16年の1.7倍に当たる約720万ヘクタールに増えると試算されている。北海道の面積の約9割に当たる。

1960年代に集中的に整備された社会インフラは一斉に老朽化が進む。2033年度には、道路橋の約63%、トンネルの約42%、水門などの河川管理施設の約62%が建設から50年以上となる。財政が悪化する中、インフラの刷新は難しい。インフラに係るコストは利用者が負担するが、人口減少に伴い利用者が減ると利用料だけでは賄いきれない事態が起きる。

水道管の法定耐用年数は40年だが、耐用年数を超えた水道管は、2014年に12%を超えた。それに対して水道の需要は2000年をピークにどんどん下がっている。2018年に成立した改正水道法により水道事業の民間委託がしやすくなったが、はたして参入する民間企業があるか、水道管の刷新を進めながら水道料金の大幅値上げを避けられるのか、見通しは決して明るくない。

 

 

■道州制ウイークリー(167)2019年9月21日

◆人口減少国家 日本の未来⑦戦略的に縮むための提言

(河合雅司『未来の透視図』より)

我々は発想を大胆に変えるときである。日本の人口減少はもはや避けられない。ならば、戦略的に縮むことだ。縮むことは必ずしも「衰退」を意味するものではない。戦略的に縮むには、日本人の総仕事量を減らすことだ。

第1のアイデアは、「便利すぎる社会からの脱却」である。24時間営業のコンビニエンスストアは当たり前の風景となった。だが、こうした「便利さ」を維持するには、膨大な人の手が必要である。すこし便利さを我慢することで、これらに携わっている人を減らし、その分、必要不可欠となる他分野へと人材をシフトすることができる。

第2のアイデアは、「国際分業の徹底」だ。賃金の高い国が「大量生産・大量販売」のモデルを続けることには無理がある。コンピューターの発達は、発展途上国の向上にあっても先進国の工場でつくるのと同じレベルの製品をつくることを可能にした。日本でしかつくれないもの、日本がつくった方がよいものに特化することだ。日本の得意分野に人材を集中させていくことで、成長分野を活性化させていくことが日本の豊かさを維持する上で不可欠といえよう。

第3のアイデアは、「居住エリアと非居住エリアの分離・明確化」だ。社会の支え手が減る時代おいては自治体の職員ですら十分に確保できなくなる事態が想定される。人口減少社会、少子化社会においては、住民がバラバラに住むエリアが広がっていく。こうしたエリアに行政サービスや公的サービスを届けるにはコストもかさむ。どのように届け続けるのかが大きな社会的問題となるだろう。行政マンや公共サービスの担い手が少なくなる中で,やりくりしていくには、住民側の割り切りも不可避だ。そこで、地域ごとに住民が集住するエリアをつくり、行政サービスや公共サービスはそこまで届ければよいことにする。

 

■道州制ウイークリー(168)2019年9月28日

◆人口減少国家 日本の未来⑧拠点国家を構想せよ

(河合雅司『未来の透視図』より)

第4のアイデアは、「働けるうちは働く」ということだ。60歳や65歳でリタイヤするのはあまりにももったいない。高齢になっても必要とされる人材となるには、スキルを磨き続けるしかない。働く期間を長くできれば、公的年金の受給を繰り下げることも可能となり、結果として年金受給額を増やすこともできる。

第5のアイデアは、「1人で2役をこなす」ことだ。空いている時間をうまく活用することで、勤労世代の不足の解消ともなる。人手不足による採用難が深刻化する中で、優秀な社員の流失を防ごうと思えば、複数キャリアを認めるしかない。

「大量生産・大量販売」というこれまでの成功モデルを投げ捨て、付加価値の高い商品やサービスを「少量生産・少量販売」するビジネスへとモデルチェンジすることだ。

「少量生産・少量販売」のモデルはヨーロッパに見つけることができる。そこで、人口が激減する日本においても、東京一極集中に代表されるような「集積の経済」一本槍のビジネスモデルから脱却し、「拠点国家構想」を目指すことを提言したい。

「拠点国家構想」とは、全国に人々が集まり住む拠点を定め、それぞれの地域の特性などを生かし、あるいは伝統工芸品などに使われてきた技術力を転用することによって、ヨーロッパのごとく高く売れる製品やサービスを少量生産する考えだ。「世界に通用するブランドづくり」に活路を見出そうというのである。

日本に残された時間はあまりに少ない。いま我々に求められているのは行動に移すことである。人口が減ってもなお、暮らしの豊かさが損なわれぬよう、この国をつくり替えることが急がれる。

 

道州制ウイークリー(165)~(168)

■道州制ウイークリー(165)2019年9月7日

◆人口減少国家 日本の未来⑤全国で町が消えていく

(河合雅司『未来の透視図』より)

2015年を100とした時に30年後の2045年に人口がどのくらい減るのかを日本地図で示してみると、人口が半数以下になってしまう地域が、北海道から沖縄までかなりの地域に散らばっている。人口5000人未満の自治体が増えていけば、病院や銀行など地域に必要な社会インフラが存在できなくなる事態になりかねない。

北海道では、2045年に実に6割以上の自治体が人口5000人未満の小規模自治体となる。東北でも宮城を除く各県で、3割ほどが小規模自治体だ。北関東では群馬県の25%の自治体で5000人未満になる。東京都の周辺3県でも小規模自治体は確実に増えていく。

中部エリア9県では全県で人口減少が進む。小規模自治体が特に多い長野県では、45年には約半数の自治体が5000人未満となる。近畿エリアの三重、奈良、和歌山では小規模自治体の増加が顕著。奈良、和歌山は約4割が5000人未満となる。

四国4県もまた、人口減少が著しく進む。特に高知は5000人未満の自治体が6割を超える。中国エリアでは鳥取、島根で5000人未満自治体が約4割となり、人口規模全国12位の広島県でも1割の自治体が人口5000人未満となる。九州・沖縄でも全県で小規模自治体が増える。熊本は6割を超える自治体が5000人未満となる。

大都市圏は高齢化が目立ち、地方圏では高齢者の増加率は高くないが、労働者人口の減少が著しい。地域のサービスが消滅する人口規模をみると、2万人以下では美術館、研究機構、ペットショップ、英会話教室などが消える。1万人以下になると、救急病院、介護老人福祉施設、税理士事務所などがなくなり、5000人以下となると、一般病院、銀行などが消滅する。これまで当たり前だった生活ができなくなってしまう。

 

■道州制ウイークリー(166)2019年9月14日

◆人口減少国家 日本の未来⑥空き家急増、老朽化する生活インフラ

(河合雅司『未来の透視図』より)

誰も住んでいない家や集合住宅の空室が増えている。総務省の調査では、全国にある空き家は2013年時点で820万戸にものぼり、住宅総数(6063万戸)の13.5%を占める。このうち約6割に当たる471万戸はマンションなどの共同住宅だ。住宅が余っていながらも、都心部を中心にタワーマンションや集合住宅の着工は相次ぐ。野村総合研究所の試算(2016年)では、このままでいくと、2033年には住宅の3戸に1戸が空き家となってしまう。

全国には所有者が分からない、また連絡がつかない「所有者不明土地」が2016年時点で九州とほぼ同じ面積の約410万ヘクタールもある。これが年々拡大、2040年には16年の1.7倍に当たる約720万ヘクタールに増えると試算されている。北海道の面積の約9割に当たる。

1960年代に集中的に整備された社会インフラは一斉に老朽化が進む。2033年度には、道路橋の約63%、トンネルの約42%、水門などの河川管理施設の約62%が建設から50年以上となる。財政が悪化する中、インフラの刷新は難しい。インフラに係るコストは利用者が負担するが、人口減少に伴い利用者が減ると利用料だけでは賄いきれない事態が起きる。

水道管の法定耐用年数は40年だが、耐用年数を超えた水道管は、2014年に12%を超えた。それに対して水道の需要は2000年をピークにどんどん下がっている。2018年に成立した改正水道法により水道事業の民間委託がしやすくなったが、はたして参入する民間企業があるか、水道管の刷新を進めながら水道料金の大幅値上げを避けられるのか、見通しは決して明るくない。

 

 

■道州制ウイークリー(167)2019年9月21日

◆人口減少国家 日本の未来⑦戦略的に縮むための提言

(河合雅司『未来の透視図』より)

我々は発想を大胆に変えるときである。日本の人口減少はもはや避けられない。ならば、戦略的に縮むことだ。縮むことは必ずしも「衰退」を意味するものではない。戦略的に縮むには、日本人の総仕事量を減らすことだ。

第1のアイデアは、「便利すぎる社会からの脱却」である。24時間営業のコンビニエンスストアは当たり前の風景となった。だが、こうした「便利さ」を維持するには、膨大な人の手が必要である。すこし便利さを我慢することで、これらに携わっている人を減らし、その分、必要不可欠となる他分野へと人材をシフトすることができる。

第2のアイデアは、「国際分業の徹底」だ。賃金の高い国が「大量生産・大量販売」のモデルを続けることには無理がある。コンピューターの発達は、発展途上国の向上にあっても先進国の工場でつくるのと同じレベルの製品をつくることを可能にした。日本でしかつくれないもの、日本がつくった方がよいものに特化することだ。日本の得意分野に人材を集中させていくことで、成長分野を活性化させていくことが日本の豊かさを維持する上で不可欠といえよう。

第3のアイデアは、「居住エリアと非居住エリアの分離・明確化」だ。社会の支え手が減る時代おいては自治体の職員ですら十分に確保できなくなる事態が想定される。人口減少社会、少子化社会においては、住民がバラバラに住むエリアが広がっていく。こうしたエリアに行政サービスや公的サービスを届けるにはコストもかさむ。どのように届け続けるのかが大きな社会的問題となるだろう。行政マンや公共サービスの担い手が少なくなる中で,やりくりしていくには、住民側の割り切りも不可避だ。そこで、地域ごとに住民が集住するエリアをつくり、行政サービスや公共サービスはそこまで届ければよいことにする。

 

■道州制ウイークリー(168)2019年9月28日

◆人口減少国家 日本の未来⑧拠点国家を構想せよ

(河合雅司『未来の透視図』より)

第4のアイデアは、「働けるうちは働く」ということだ。60歳や65歳でリタイヤするのはあまりにももったいない。高齢になっても必要とされる人材となるには、スキルを磨き続けるしかない。働く期間を長くできれば、公的年金の受給を繰り下げることも可能となり、結果として年金受給額を増やすこともできる。

第5のアイデアは、「1人で2役をこなす」ことだ。空いている時間をうまく活用することで、勤労世代の不足の解消ともなる。人手不足による採用難が深刻化する中で、優秀な社員の流失を防ごうと思えば、複数キャリアを認めるしかない。

「大量生産・大量販売」というこれまでの成功モデルを投げ捨て、付加価値の高い商品やサービスを「少量生産・少量販売」するビジネスへとモデルチェンジすることだ。

「少量生産・少量販売」のモデルはヨーロッパに見つけることができる。そこで、人口が激減する日本においても、東京一極集中に代表されるような「集積の経済」一本槍のビジネスモデルから脱却し、「拠点国家構想」を目指すことを提言したい。

「拠点国家構想」とは、全国に人々が集まり住む拠点を定め、それぞれの地域の特性などを生かし、あるいは伝統工芸品などに使われてきた技術力を転用することによって、ヨーロッパのごとく高く売れる製品やサービスを少量生産する考えだ。「世界に通用するブランドづくり」に活路を見出そうというのである。

日本に残された時間はあまりに少ない。いま我々に求められているのは行動に移すことである。人口が減ってもなお、暮らしの豊かさが損なわれぬよう、この国をつくり替えることが急がれる。

 

道州制ウイークリー(160)~(164)

■道州制ウイークリー(160)2019年8月3日

◆地方経済再生への道⑤道州制は国民的課題

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

交通ネットワーク、空港・港湾、物流、環境、研究開発、観光等、県境を超えた地域課題は枚挙にいとまがない。「行政区域を広域化すれば、その中で一極集中が起こり、他は取り残されるのではないか」という不安が生まれるが、企業や労働者といった民間経済主体は行政区域を意識して活動しているわけではない。企業は収益性に優れた地域に立地するし、労働者は就業機会や高い報酬を求めて移動する。府県の壁がある限り一極集中の利益は、その地域が独占することになる。道州制によって行政区域が拡大すれば、区域内で利益を再分配することも可能になるし、利益をブロック内のネットワーク整備にも利用でき、連携強化に結び付く。

ますます複雑化する国際社会にあって、外交、国防、安全保障、治安維持といった国が果たすべき役割の重要性は高まっている。少子・高齢化の進行は年金や医療保険、生活保護といった国による所得分配機能の強化を求めているし、景気政策、地球環境保全、骨格的幹線道路・鉄道といった、地方が十分にその機能を果たし得ない行政分野も多くなっている。こうした国の機能を強化するためにも、国およびその出先機関は地域に関わる行政から撤退し、道州をはじめとした地方に権限を移すべきである。

一足先に道州制を実現した国がある。かつて「日本と並ぶ強力な中央集権国家」といわれたフランスだ。82年の地方分権法によって、地域経済圏を州(レジオン)として完全自治化した。ヨーロッパ統一後の国境を超えた地域間競争に勝てる強い地方を作ることが目的であった。国家財政の悪化による地方への手厚い保護が不可能になったこと、「パリと砂漠」とも言われ、首都一極集中による国土構造の歪み是正など、フランスが置かれていた状況は日本とよく似ている。異なるのは、フランスが原状に合わせて、確実に改革を前進させていることである。道州制を国民的課題としてとらえ、実現の道を探ることが、日仏間の差を縮めることになる。

■道州制ウイークリー(161)2019年8月10日

◆人口減少国家 日本の未来①2040年のクライシス

(河合雅司『未来の透視図』より)

令和時代は、間違いなく少子高齢化、人口減少が進む時代となる。人口が減りゆくことを前提として、日本社会をつくり直さない限り、われわれは真の意味での平和や繁栄は手にできないであろう。

ひとたび少子社会になると、これを脱却するのは極めて難しい。少子化が「次なる少子化」をまねく悪循環におちいるからだ。少子化は「未来の母親」を減らす。合計特殊出生率が現行の1.4台半ばの水準で推移したならば、25歳~39歳の女性数は今後、大幅に減っていく。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2040年には、2015年の4分の3ほどに減り、2060年代にはおよそ半減となる。多少のベビーブームが起こったところで、日本の少子化は止まらない。

人口減少社会とは、どういう社会なのであろうか。人口は40年後に9000万人を下回り、100年も経たないうちに5000万人ほどに減る。2042年までは高齢者が増える。特に80歳以上が増えていく。少子化の影響で勤労世代は大きく減る。働き手世代が著しく減るのだから、「大量生産・大量販売」という戦後の成功モデルは成り立たたなくなる。警察官や消防士、自衛官などは「若い力」を必要とするが、こうした職種の担い手が不足すれば、社会そのものが成り立たなくなる。すでに過疎化が進んだ地域では、出生数の減少に加えて、人口流失が拡大している。やがて自治体機能を維持できなくなる市町村が全国的に続出することだろう。

こうした難題に挑むには、これから起こる「不都合な真実」から目をそむけず、正しく理解する必要がある。「変えられない未来」と今後の努力次第で「変えられる未来」を選別し、戦略を立てて新たな状況に適応していくことだ。

 

 

■道州制ウイークリー(162)2019年8月17日

◆人口減少国家 日本の未来②超高齢者大国日本の現実

(河合雅司『未来の透視図』より)

日本はすでに4人に1人が高齢者(65歳以上)という超高齢社会に突入しているが、「高齢者の高齢化」は進行し続ける。2050年には推定総人口の約4人に1人に当たる2400万人が75歳以上となる。一方、働き手の15~65歳の人口は2015年の7728万人から2040年には1750万人減少の5978万人となる。

少子高齢化が進む中、食料品といった生活必需品を売っている店舗であっても、客が減って経営が厳しくなったり、後継者がいなくて廃業を余儀なくされたりする例は多い。「買い物難民」がすでに3人に1人になっている県もある。東京圏であっても例外ではない。頼みの綱であるインターネットショッピングも、買い物を届けてくれる宅配便業者が取扱量の急増と人手不足でパンク寸前なのである。買い物の足となる乗り合い路線バス路線廃止も8560キロとなっている。すべてにおいて便利さを追求してきた社会は今、転換期にある。変わる社会に我々の「暮らし方」も転換を迫られている。

介護される方も介護を担う方も高齢者という「老老介護」が増加している。救急車で運ばれる患者の約6割が高齢者で、患者を診る医師の高齢化も進んでいる。70歳以上の診療所医師の割合は全国平均で19.2%。京都では4人に1人が高齢医師となっている。

延び続ける平均寿命だが、お金が足りない高齢者は多い。生活保護世帯の過半数は高齢者世帯である。特におばあちゃんの年金は男性に比べ4割少なく、寿命が長い女性の貧困は特に深刻である。

高齢化で介護の需要は高まるが、介護人材の供給は追いついていない。2025年には35万人が足りなくなる。

 

 

 

■道州制ウイークリー(163)2019年8月24日

◆人口減少国家 日本の未来③勤労世代の激減で縮むニッポン

(河合雅司『未来の透視図』より)

「技術者不足」で経済が大渋滞? 技術で繁栄してきた「技術立国」の日本であるが、その足元が揺らいでいる。経済産業省の「IT人材最新動向と将来推計に関する調査結果」をみると、IT産業の労働者は2019年をピークに減少に転じる。IT産業は情報化が進む世界で欠かすことのできない分野だ。IT産業だけではない。経産省が2017年度に企業を対象に行ったアンケート調査では、5年後に技術者がもっとも足りなくなる分野として、「機械工学」を挙げる企業が多かった。技術立国を支えた団塊の世代が退職し、若手を十分に採用できないとなると、エアコンやテレビといった家電の修理すら難しい時代が来るかもしれない。

財務省財務総合政策研究所のデータでは、経営者の高齢に伴う引退によって廃業する企業の数は今後5年間で100万社以上、25年には200万社近くになると予想されている。

家計消費支出に占める60歳以上の割合は半数を占める。一方の若者は、洋服もお酒も買わず、「車離れ」や「居酒屋離れ」「テレビ離れ」が当たり前となり、30歳以上の男女の1か月の食糧費、特に外食費はどんどん減っている。

勤労世代の減少は地域力の低下を招く。地域の消防団員は1990年代に100万人を割りこんで以来、減少が続いている。「町の守り手」である警察官や自衛隊員といった若い力を必要とする仕事の人員確保が難しくなれば、国防や治安、防災機能は低下する。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(164)2019年8月31日

◆人口減少国家 日本の未来④地方に子どもがいなくなる

(河合雅司『未来の透視図』より)

地方自治体で現実に進んでいるのは「無子高齢化」である。人口動態調査(2016年)では、福島県昭和村、奈良県黒滝村、同上北山村で2016年の年間出生数がゼロだった。文部科学省の調査では、毎年400~500校もの小学校が廃校になっており、統廃合の流れは止まる気配がない。無子高齢化が進む自治体では、いずれ役場職員や議員のなり手もいなくなる。自治体の存立自体が危ぶまれる事態が確実に進行しているのだ。2016年の年間出生数は初めて100万人を割った。2060年の年間出生数は50万人を割るとされる。

生涯結婚しない人たちは増加の一途。生涯未婚率は2035年には男性の3人に1人、女性の5人に1人となると予想される。母親の8割に当たる25歳~39歳の「出産可能な女性」の数は今後も減り続ける。2015年には1087万人いたが、2040年には814万人、2065年には612万人とほぼ半減してしまう。

女性の減少が最も少ないとされる東京都にも落とし穴がある。未婚者が多く晩婚化が進む東京は2017年の合計特殊出生率が1.21と全国最下位なのだ。女性が減らないといっても、出生率が低ければ人口減少を止めることは出来ない。女性減少率が2番目に低い沖縄県が全国1位の出世率(1.94)だが、そもそも人口規模が東京都とは大きく違うため、出生数の増加に大きく寄与する可能性は低い。

 

 

道州制ウイークリー(156)~(159)

■道州制ウイークリー(156)2019年7月6日

◆地方経済再生への道①東京一極集中の是正

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

東京一極集中が進む中で、地方経済の衰退が顕在化している。東京を中心とした首都圏のみが栄え、他地域は再分配で維持されるというのは、国土の健全な姿ではない。日本経済の活性化は地方経済の活性化によって実現すると捉えるべきだ。地方経済の再生は、地域に存在する民間活力を強め、財政への依存度の小さい「足腰の強い」経済構造を創出することである。そのためには、地域がその特性を活かし、多様で魅力ある地域づくりを主体的に進め、その成果を競うという地域間競争によってこそ、真の地方経済の再生が実現する。

東京一極集中は基本的に市場メカニズムに基づいて起こっているという主張がよくなされるが、東京一極集中は東京の首都としての有利性を前提とした市場原理によって起こっているのである。中央集権的な行財政シスエムの下では、企業が東京に本社を移すことで収益をあげようとするのは自然の流れだ。

第2点の「市場メカニズム」の問題は、「市場は万能ではない」ということである。これには東京集中によって発生する社会的費用は含まれていない。企業集中による混雑、オフィスの賃貸料、高い人件費、人口を送りだす地方に発生する諸問題、人口減による行政サービスのコストなども無視できない。こうした社会的コストを放置したままの東京一極集中は望ましい資源配分を実現しない。

地方経済の再生には、地方分権の推進、東京一極集中による社会的費用の回収など、東京一極集中を抑制する仕組みを一刻も早く模索する必要がある。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(157)2019年7月13日

◆地方経済再生への道②地方中枢都市の戦略的育成

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

成長性の高い産業は、人口や産業、情報インフラ、研究開発機関など、地域の集積の利益を非常に強く受けるものである。地方が自立的な経済発展を遂げるためには、こうした成長性の高い産業の立地が必要なことは言うまでもないが、そのためには地方の集積を促進することが不可欠である。それには広域経済圏としての各ブロックにおいて、地方中枢・中核都市の戦略的育成が求められる。

たとえば、都市的な要素を地方の生活に取りこむという場合、隣接するすべての地域が同種の機能を持つ必要はない。むしろ、一体化した地域の中枢部分に都市的機能を集積立地させ、周辺地域からはアクセシビリティ(アクセス、利用のし易さ)を高めることが望ましい。中枢都市の成長は、それを取り巻く地域の成長なくしては起こり得ない。つまり、地域政策は拠点主義によるのではなく、ブロック内でのネットワークづくりをはじめとした面的な政策を実施しる中で、ブロック内各地域の連携を強化しなければならないのである。

たしかに、地方における集積のメリットは、まず地方中枢都市が享受することとなろう。しかし、圏域内での交通・情報ネットワークが整備されることによって、その効果は次第に周辺地域に波及するはずである。東京を核として、放射線状に地方中枢都市が結ばれ、情報や交通手段の発達による東京への近接性は、「ストロー現象」によって地方の活力を東京が吸い上げている。

本当の意味でのネットワークが圏域内で形成されることによって、地方のエネルギーは圏域内で増加し、中枢都市と後背地の相乗効果が発揮されることになる。

 

 

 

■道州制ウイークリー(158)2019年7月20日

◆地方経済再生への道③個性形成型の地域づくり

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

自治体のこれまでの政策課題は地域間格差を埋めることであった。その結果、「隣の町に会館ができたからわが町にも」といった「他地域なみに」の発想に基づいた没個性的な地域づくりが生まれたのである。これからは、他地域と比較して遅れている面、劣っている面を対症療法的に改善する「問題解決型」の地域づくりから、他地域と比べて進んでいる面、優れている面を発見し、これを地域の主体的な創意と工夫によってさらに伸ばすという「個性形成型」の地域づくりに比重を移していかねばならない。不足する部分はお互いに他地域の力を借りればよいのである。「あれもこれも」ではなく、真にその地域にとって優先度の高いものを住民が主体的に選択することが、個性ある地域づくりに求められる。

地域づくりを成功させるためには、地域の活動主体に地域づくりに関しての共通の認識を持たせることが必要であり、そのためにも、地域の個性を活かした「地域目標」と「地域づくり理念」を明確にし、PRする必要がある。

地域の産業政策において自治体の果たす役割は大きい。内発型の地域振興にはイノベーター的なリーダーの存在が重要である。しかし、あらゆる地域で、個人にしろ企業にしろ、地域づくりのリーダーが出現する保証はない。その場合、自治体自らが、リスクを抱えてでも戦略的で組織的な行動によって、その役割を果たしていかなければならない。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(159)2019年7月27日

◆地方経済再生への道④道州制と地域再生

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

地域づくりへの広域的な取り組みは、複数の自治体が共同歩調をとらなければならない。「道州制」は、広域的な地域づくりの環境整備と捉えることができる。省庁再編後も、依然としてタテ割り行政の実態は変わっていない。企業誘致も補助金や税制上の優遇といった純産業政策では限界がある。従業員の生活環境、福祉、文化といった総合的な地域メリットを前面に押し出さなくては、「企業が地域を選ぶ時代」には対応できない。政策間の有機的な連携や総合性を欠いた「パッチワーク的」地域政策を改め、地域にふさわしい「選択と集中」を実現できる総合行政主体を構成する必要がある。それが道州制だ。

「道州制のようなエリアの大きい自治体の設置は地方分権の流れに逆行するものだ」という主張がある。だが、この主張は道州制を広域行政として捉えたものでしかない。道州制は地域づくりの主体を国から地方に移すことを可能にするという意味で、地方分権の重要な推進力なのである。

経済活動のグローバル化が進んだ今日、各地域は国境を超えて交流し、また競争している。こうした環境で地域が生き抜くためには、相応の規模と経済力を持たなければならない。人口規模と経済力を持つ地域が、その特性に応じた経済戦略に基づいて政策を推進すれば、労働力の減少や貯蓄率の低下によって縮小が予想されるわが国経済のかさ上げにつながるとともに、東京一極集中というゆがんだ国土構造の是正にも寄与するはずだ。