道州制ウイークリー(151)~(155)

■道州制ウイークリー(151)2019年6月1日

◆大前研一「わが道州制案」②

(大前研一『世界の潮流2019―20』より)

日本の地方にはポテンシャルがあると信じている。少なくとも道州が自治権を得てお互いに競い合うようになれば、今までのように中央からの金と指示を待っているだけの自治体とは抜本的に違ってくる。そして、この道州制が機能すれば、日本はポルトガルのようにはならず、再び輝きを取り戻すことができるだろう。

今の世界はメガリージョンの競争によって、繁栄を呼び込む時代になっている。自分の税金で栄えているところはないのだ。世界へ、あるいは大きな国では他の地方からヒト、カネ、モノ、情報を呼び込んで栄えるのだ。自国民に税金をかけて繁栄しようとしたり、他国を搾取して栄える植民地支配の時代ではない、ということを改めて肝に銘じていただきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(152)2019年6月8日

◆堺屋太一「日本の未来」

(堺屋太一『三度目の日本』より)

堺屋太一氏の絶筆。この国のあるべき未来を描いている。

一度目の日本は明治の「強い日本」。二度目は戦後の「豊かな日本」。三度目は、「楽しい日本」を創る。

「楽しい日本」を創るためには、官僚主導を止めることが第一条件である。官僚主導には5つの基本方針がある。1、東京一極集中 2、流通の無言化 3、小住宅持ち家主義 4、職場単属人間の徹底 5、全日本人の人生の規格化である。

アベノミクスでも、成長戦略の一環として「岩盤規制」を緩和し、官僚主導から政治主導へ変えようと改革を試みているが、現実にはなかなか進まない。問題は戦後の官僚主導をどこでどう断ち切るか、だ。

戦後の官僚主導がどこから崩れてゆくか。私は5つの局面があると思う。1つは少子高齢化。2番目は地方行政の破綻。3番目は大不況。4番目は国際情勢。次々と難題に直面するトランプ大統領、そのアメリカに取って代わろうとする中国、EUのさらなる分裂、ミサイル発射実験を続ける北朝鮮・・・すでにその端緒は見えている。

そして最後の5番目は、第4次産業革命である。第4次産業革命とは、分かり易く言えば、ロボットとドローン、自動運転、そしてビッグデータによる変化だ。どういう社会変化が起きるか、誰も議論していない。国際的に見ても、世界経済は伸び悩み、資源や食糧が供給過剰気味になる。全体的に経済を冷え込ませるであろう。

この時、戦後の官僚主導が築いた、「東京一極集中」をはじめとする「5つの基本方針」の弱点があらわになる可能性が高い。2020年以後の危機を乗り越え、いよいよ「三度目の日本」を目指さなければならない。

■道州制ウイークリー(153)2019年6月15日

◆分権の核心は地方税財政改革

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

地域がその特性を踏まえて創意工夫を発揮するためには、政策は多様でなければならないが、中央集権システムの下では地域政策における実験や技術革新は実現しにくい。国が意思決定を行う場合には、最終的にすべての地域が新しい試みを受けいれるという確信を持つことがなければ、特定の地域だけに新たな試みを行うにしても、どの地域がそれを望んでいるかの情報を正確に得ることは困難だし、特定の地域にのみ政策を講じることは公平性という点から躊躇しがちになる。国が新たな試みを全国的に実施すると、それを望まない地方も足並みをそろえなくてはならなくなり、その結果、財政に無駄が生じる。

新しい試みは、国が独占的に政策を担う場合よりも、多くの自治体がそれぞれの地域住民の満足を最大にしようと競争を続けて入る場合の方が実現しやすい。つまり、分権的であるほど多くの実験や革新が可能になるのだ。国と地方が協働して地域づくりを行う場合でも、政策形成プロセスは、国から地方へというトップ・ダウン方式から、地方から国へというボトム・アップ方式に転換されるべきである。

地方分権改革は機能不全をきたしている現行の意思決定システムの改革である。だが、「地方ができることは地方で」というスローガンを何度唱えても現実は変わらない。真の分権改革を実現するためには、それを担保する制度が不可欠なのである。それが地方税財政制度の改革であり、補助金や地方交付税といった国の財源移転を縮減し、税を中心とした地方の自主財源を拡充することである。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(154)2019年6月22日

◆真の「三位一体改革」

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

地方分権の推進と地方行政改革はいわばコインの表裏の関係にあるのであり、いずれが欠けても国民福祉の向上は望めない。

国民が負担する税金のうち自治体が自由に使える割合を大きくすることが地方分権の本来の目的ではない。このように理解するから、「地方分権が進めば、いまよりも無駄が多くなって税金が高くなるのではないか」「国に任している方がましだ」ということになる。これには、日本人の多くが「税金は召し上げられるもの」と考え、負担が小さくなることには関心を払うが、税金の使い途については無関心であることも関係している。だから、役人や議員は国、地方を151問わず、税金を自分たちが稼ぎ出したものであるかのように錯覚する。その結果が政治や行政への不信につながり、無関心をさらに助長することになる。

地方分権はこうした悪循環を断ち切る絶好のチャンスである。自治体を取り巻く大きな環境変化の中で、地方は大改革を遂げなくてはならない。そのためにも、第一に、国と地方の上下・主従の関係を対等な関係に改め、それを担保するための地方税財政制度の改革(三位一体の改革)を実現すること、第二に、これまでの国家財政に依存した地方経済を分権時代にふさわしい自立型のものに変革すること。第三に、「官から民へ」を含めて自治体の行政改革を徹底して進めることである。

これら三つの課題は相互に関連しており、連立方程式なのだ。式を解くためには、どの課題の解決も欠くことは出来ない。その意味では、地方税財政制度改革、地域経済の活性化、地方行政改革の三つをもって、真の「三位一体改革」ととらえなければならない。

 

 

■道州制ウイークリー(155)2019年6月29日

◆補助金の弊害、何が問題なのか

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

国の行政が省庁の壁によってタテ割りになりがちなことは容易に想像できる。補助金の交付に厳しい条件が付けられると、タテ割り行政がそのまま地方に持ち越されかねない。

地域づくりには総合的な視点が要求される。家やマンションが建てば、学校、道路、福祉施設、文化、交通といった様々な都市装置が必要であり、これがバランス良く整備されて初めて地域の住機能は向上する。ところが、補助金は、事業ごとにその時々の便宜と必要から生み出され、積み重ねられてきたことから、そこには、総合的に地域づくりを進めるという発想は少ない。

補助金によって地方の予算編成が歪められるという声も多い。1億円の自己財源がある時、補助金のつかない単独事業では1億円の事業しかできない。ところが二分の一の補助金率を持つ事業であれば、2億円の事業が可能になる。このような場合、たとえ住民ニーズからすれば優先順位が低くても、地方の予算は補助事業に引っ張られる傾向がある。補助金が「お墨付き」の役割を果たすのである。これに対して補助金の付かない単独事業には厳しい予算査定が加えられる。このように、補助金獲得行動を通じて、事業に関する国の優先順位に地方は従うようになる。しかも補助金の交付によって地方は事業の細部にまで干渉され、地域の特殊性が事業に反映されないとなれば、資源の浪費はますます大きくなる。

 

道州制ウイークリー(147)~(150)

■道州制ウイークリー(147)2019年5月4日

◆立法権と財政自主権を持った道州制へ

(塩沢由典『経済に国はいらない』より)

日本は、明治以来、中央集権でしょう。中央の官僚がいいと思ったものを、全国一律にうけわたす仕組みを作ってきた。補助金もそうです。それは無駄なく効果的だった。だけど、今は、漂流の時代。「坂の上の雲」が見えない時代でしょう。そういう時代には、別の形の思考にいかなければならない。日本では、中央集権を改めなければ上手くいかないでしょう。少なくとも、既成の解答はない。日本の国家体制を大きく変えなきゃいけない。

その一つの可能性が「道州制」です。これは、人によっては自治体の単位が小さすぎるから、もっと合併して、権限を集中させるべきだ、という文脈で使う場合も多いので、気を付けなければいけない。道州制という言葉だけでは問題があるのです。わたしが言っているのは、かなりの自由度を持った、立法権と財政自主権を持った地方政府をつくっていくという考え方です。もちろん、部分的に地方交付税みたいなものがあってもいい。ドイツだったら、州間調整というものがある。豊かな州とそうでない州のあいだで財政移転する。でも、基本は自分たちでやるということを根本に置かないと、おかしくなります。補助金に頼りだすといったことが起こる。そうなると、日本全体が衰退していきます。中心地もダメになるし、供給地域になっているところも、上手くいかない。まして、見捨てられた地域にお金をつぎ込んでも、上手くいかない。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(148)2019年5月11日

◆関西は主体性を取り戻せ

(五百旗頭真『広論関西経済』読売新聞2019年5月4日付より)

作家・司馬遼太郎はかつて、東京を「世界の変電所」と呼んだ。送られてきた電力を変圧して消費地に送る変電所のように、東京に人材や権限を集め、世界の潮流を把握して全国に成果を伝えていく。日本の近代化が成功したのは、明治以降のこの仕組みがうまく機能したからだ。

昭和の後半ぐらいまではそれで良かった。それ以降は地方の自主性、多様性を育まねばならないのに怠り、過度な東京一極集中を招いた。

令和の時代に、関西は主体性を取り戻さなければならない。政府頼みでは駄目で、企業や自治体が根を張り、我々こそが日本と世界を動かすという気概を持つ必要がある。「東京にはないものが、自分たちでできる」と発信し、人を集めていくほかはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(149)2019年5月18日

◆第二の「極」へ個性磨こう

(五百旗頭真『広論関西経済』読売新聞2019年5月4日付より)

首都直下地震が憂慮される今、日本は複数の軸足を持たねばならない。もう一つの「極」になれるのは今、関西しかない。最終的には5~10の個性ある中心都市と地域を育てるべきだが、まずは二つ目の軸を作らなければ始まらない。関西が突破口を開く必要がある。

兵庫県は、日本の安全神話を覆した阪神大震災という未曽有の災害に見舞われた。それ以降、単に復旧させるのではなく、より良い地域を作る「創造的復興」の歩みを進めてきた。震災前は鉄鋼など重厚長大型の産業が中心だったが、今は科学技術立県を目指している。

関西の各府県も兵庫と同様に、独自の強みがある。大阪が商業・産業の集積地であるのは言うまでもない。京都は文化・観光の全国的中心地であるだけでなく、電子部品などハイテク産業や医療研究の先進地でもある。環境保護の取り組みでは琵琶湖を抱える滋賀が進んでおり、奈良は京都とともに伝統ある文化・観光の拠点である。

人間存在の本質は、「多にして一」だと思う。どんな人間も内面は複雑で多様性を持つが、一人の人間として統合されている。これは、地域も同じだ。

各府県の得意芸、個性が集まって「一」になる。関西のまとまりの悪さを『関西は一つ』ではなく、『一つ一つ』と揶揄する言い方があるが、「多」と「一」は両立しうる。それぞれの個性を磨き、多様性のある関西が全体として輝きを増せばいい。「多」の一つ一つの水準を高め、相互に連携を深めていく。これが関西発展の道だと思う。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(150)2019年5月25日

◆大前研一「わが道州制案」①

(大前研一『世界の潮流2019―20』より)

平成は日本にとって失われた30年だった。新元号、令和の時代に日本がやるべきことは、その失われた30年を取り戻す、これしかない。

しかし、すでに半ば機能不全に陥っている国にその力はないだろう。だから、道州制なのだ。

日本を北海道、東北、関東、首都圏、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄の11の道州に分割し、憲法を改正してそれぞれに自治権を与える。各道州は知恵を絞って世界からヒト、モノ、カネ、情報を呼び込み、各道州の首都は発展を競い合う。

1人当たりGDPと人口規模を繁栄の単位とすると、首都圏はカナダと同じである。関西は台湾とほぼ同じで、オランダよりも人口が多い。九州はベルギーに匹敵する。四国はニュージーランドと同等。このように日本を道州に分けた場合、ほとんどの道州は国家と肩を並べられるくらいの経済力があることが分かる。

 

道州制ウイークリー(143)~(146)

■道州制ウイークリー(143)2019年4月6日

◆ヨーロッパの道州制①

(神野直彦『人間国家への改革』より)

地方分権を推進しようとすれば、地方自治体の任務が拡大する。そうなると、任務の受け皿として統治機構を改革しようとする動きが胎動する。ヨーロッパでは、国民国家の機能を上方と下方に分岐させようという動きによって、下方に移譲された機能を受け皿として、道州制を導入しようとする動きが生じてくる。具体的には、フランスのレジオン、イタリアのレジョーネ、スウェーデンのレギオンなどの道州制の潮流である。

国民国家の機能としての産業政策が、EUという超国民国家へと上方に移譲されると、EU内部の地域間格差是正のために、構造資金を設けるようになる。この構造資金の受け皿として、道州制の導入が意図される。そのため、ヨーロッパの道州制の重要な任務は地域経済振興にある。

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(144)2019年4月13日

◆ヨーロッパの道州制②

(神野直彦『人間国家への改革』より)

フランスでは、レジオンという国の行政区画を1982年の地方分権化法で地方自治体とし、職業訓練を中心に地域経済振興を担うことを任務としている。イタリアのレジョーネをみると、EU構造資金の受け皿であるとともに、医療の担い手ともなっている。イタリアは日本と同様に小域別に医療保険が分立していたが、1978年の国民サービス法で職域別の保険を一本化し、レジョーネを医療サービスの提供主体としたのである。

スウェーデンでも90年代後半からEU構造資金の受け皿として、レギオンという道州制導入の動きが始まる。スウェーデンでは広域自治体としてランスティングが存在している。このランスティングの任務は、医療サービスの提供に絞られているといってよい。このランスティングと重ね書きするように、同じ区画でレーンという国の行政区画が存在する。レーンには地域経済振興を担う国の出先機関が存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(145)2019年4月20日

◆ヨーロッパの道州制③

(神野直彦『人間国家への改革』より)

スウェーデンでは、20あるランスティングを廃止して、6から9のレギオンに再組成するとともに、レーンの地域経済振興にかかわる権限もレギオンへ移すことを構想する。つまり、レギオンは医療と地域経済振興を担うことを任務として構想されたのである。

そのため、1997年からスウェーデンでは、手を挙げた地方自治体によるパイロット的なレギオン実験が行われた。しかし、道州制を推進してきた社会民主党から、消極的な中道右派へと政権が後退したため、レギオンへの移行は強制されず、現在ではレギオンとランスティングという二つの広域自治体が併存する事態となっている。

こうしてみていくと、ヨーロッパの道州制は、EUという超国民国家の形成と結びつき、地域経済振興と医療という役割を車の両輪として、いずれか一方あるいは両方を担わせることを目的に導入されていることが分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(146)2019年4月27日

◆日本の道州制への課題

(神野直彦『人間国家への改革』より)

日本でも道州制の導入が議論されているけれども、その目的は判然としない。強いて言えば、道府県という広域自治体の規模を大きくして行政コストを縮小することが目的のようである。しかし、公共サービスで「規模の利益」が動くと仮定しても、広域自治体をさらに大きくすれば、国民から「遠い」政府となり、ニーズに応じた公共サービスを提供する有効性は低下してしまう。職業別に分立している日本の医療保険を一本化する改革と結びつけるなどして、道州制がどのように国民の生活を向上させていくかを的確にしない限り、意味のある構想とは思えない。

道州制ウイークリー(138)~(142)

■道州制ウイークリー(138)2019年3月2日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ⑤

(関西経済同友会緊急アピールより)

一足飛びの「関西州」実現には困難が予想されるため、次のステップを踏むことを提唱する。

<ステップⅠ>

関西空港と伊丹空港の経営統合が成功している事例からわかるように、空港、港湾、道路などインフラの一体的整備と運用は、資源を有効に活用できる。総合力も発揮できる。関西には、多数の公設試験所や支援機関、大学、研究機関等があり、一元化された経済産業政策のもとに一体となって結束すれば、大きな効果を生む。インフラ整備や、経済産業政策等において府県と出先機関がそれぞれ独自に取りこむ仕組みを改め、一元的なビジョンと計画のもと、関西全域の資源を結合し、一体となって発展を目指すべきである。

(1)従来の委員に加え、国の出先機関の代表者を「関西広域連合」委員に委嘱する。

各出先機関の代表者も、メンバーに加わり、情報交換と協議の基盤をつくるとともに、関西全体の政策運営となって携わり、広域行政一元化の第一歩とすべきである。

(2)国に「関西広域担当相」(万博担当大臣と兼任とする)を創設し、「関西広域連合」委員に委嘱する。

大臣は、関西の政策実現にむけたパイプ役を担うべきである。

(3)「関西広域連合」にデジタル専門機関を創設し、ビッグデータの活用を目指す。

関西広域連合に、デジタル化・データ活用等の専門機関を創設し、政策や予算、投資の有効性・執行効率を高めるべきである。そして国・州・府県・市町村の行政サービスの再編成を目指すべきである。

 

■道州制ウイークリー(139)2019年3月9日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ⑥

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州へのステップⅡ>

(1)国の出先機関の業務を「関西広域連合」に移管し、自治体として執行する。

関西では関西広域連合が各出先機関の受け皿となり、「自治体」として一元的・一体的に広域行政(独自の広域産業政策、インフラ整備、保険・医療福祉、各種保険、環境政策など)を担う体制を目指すべきである。このうち、広域産業政策、インフラ整備については、国の出先機関の人員、権限、予算等をそのまま関西広域連合に移行する。なお、「道州制特別地域における広域行政の推進に関する法律」の適用を受けることで、関西は「道州制特別地域」となるべきである。

(2)府県を存続させ、必要業務を、府県から「関西広域連合」に移管する。

関西が関西州を目指すとしても、直ちに府県を廃止すべきでないと考える。①府県を廃止すると、市町村と「州」の間に大きな隔たり(距離及び規模)が生じてしまう。市町村と「州」の間で十分なコミュニケーションや協働をはかることは難しいと考える。②各府県には、歴史・文化・伝統・風土・気質などに根差す帰属意識があり、このような無形の価値は大切にすべきである。③府県業務のうち、本来的に府県レベルで担うべき業務があり、それらを「州」に吸い取ることは「近接性の原理」に反し、地方分権と言えない。④府県の廃止には府県の反対が強く、その意向を無視することは出来ない。

(3)デジタル化推進による行政効率化については次回に掲載。

 

■道州制ウイークリー(140)2019年3月16日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ⑦

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州へのステップⅡ>続き

(2)府県存続の補足

関西広域連合(ゆくゆくは関西州)で担う方が望ましい業務は、府県から関西広域連合に移管することが肝要である。すなわち、府県と関西広域連合の役割を見直し、再編成する。このことにより、スピード速い、効率的な、関西の更なる発展が期待される。府県を永続的に存続させるかについては、府県の役割が再編成される中で効率的な行政と住民サービスの観点で判断すべきと考える。

(3)デジタル専門機関によって、ビッグデータの解析を行い、政策立案への活用、電子政府による新サービスの提供、行政の効率化など、運用を本格化する。

デジタル専門機関を本格的に運用し、行政に活かす。行政効率を上げて、コストを下げる。住民サービスの向上をめざし、投資のアウトカムの検証をし、未来予測等を導入して政策決定に活かすことが重要である。行政サービスの効率を高め、新しいサービス、仕組みを創造するべきである。また、関西広域連合がデジタル技術を活用することにより、関西各自治体(府県・市町村)の業務を支援し、効率アップをはかることができる。特に、医療・介護・福祉においてビッグデータを活用し、効率化をはかることで、社会保障費の増大を抑えるべきである。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(141)2019年3月23日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ⑧

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州へのステップⅢ>

(1)フランスに見られるような議員兼任制度を採用し、公選議員による議会を設置する。

関西広域連合が関西の広域行政を一元的に担い、執行するに当たっては、その正当性が求められ、そのためには、住民による選挙で選ばれたる議員で構成される議会が必要になる。関西広域連合議員には、国会議員・地方議員との兼職を認め、幅広い視野から職務を遂行させる。複数の公選職を経験させることで、政治家としての力量を向上させる。兼職する議員の報酬は、所属自治体ないし国が折半するなど、歳費を抑える。

(2)首長を、議会から互選する。

首長は、準「議院内閣制」的に、議員から互選するのが望ましい。関西ほどの広いエリアの長を直接公選することは、政治的安定を損なう可能性もあり、慎重に考えるべきである。

(3)上記ステップを踏んで、「関西州」を樹立する。

上記ステップを踏んだ上で、必要に応じて法令の改正をはかり、「関西州」を樹立する。「州」の名に値するためには、自主課税権を持つこと、法律の上書き権を獲得すること、そして関西における諸大臣を設けることが目安となる。

まず、関西州を目指す議論と運動が盛り上がり、広く社会の理解を得ることが必要である。その上で、関西州の成立が成功を収め、そして全国に道州制への機運が高まることを期待する。

 

 

 

■道州制ウイークリー(142)2019年3月30日

◆新しい自治制の時代へ(関西州ねっとわーくの会)

激動する世界の中で、日本は発展か、衰退かの岐路に立っています。

国の再生と安定した社会基盤づくりには強靭な経済力が必須要件です。そのためには経済発展を展開する思い切った大地域圏を形成し、地域力を結合させなければなりません。経済拠点である大都市連携を包括するには、細切れの47都道府県から広域行政体への再編が必要です。大地域圏は少子高齢化による人口減少時代や経済社会の広域化にも対応し、競争力のある強い地域圏を形成する「広域行政経済圏」です。これが新しい自治の姿である「州制度」です。世界は今、メガリージョン(大地域圏)の時代です。

大地域圏「州」は、国主導型ではなく、連邦制でもなく、地域の自治による広域自治体です。各州で産業経済特区を形成し地域戦略を展開、公民学共同の産業技術総合研究センターを設置して一極集中ではない多軸、多様な高度技術研究開発を牽引し、さらに全国一律最低賃金の引き上げを段階的に行って地域格差是正をめざす改革です。府県再編、行政改革により行財政の効率化を図り、高齢社会を支える巨額の財政需要に対応していきます。州は広域地域戦略の司令塔となり、地域社会保障の基盤を強化、地域共同体が連なる新しい国づくりにつなげていきます。

州が大地域圏の広域行政を担う一方、現在の府県地域内に関わることは新たな中間的機関を設けず、関係市町村による広域連携部門を設置し、その地域に応じた施策をすすめていくのが望ましいでしょう。

新元号となり、2020東京五輪後の国策として、新しい国のかたちへ転換し、課題解決、改革へ進める時です。もはや「課題先送り」はできません。

 

道州制ウイークリー(134)~(137)

■道州制ウイークリー(134)2019年2月2日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ①

(関西経済同友会緊急アピールより)

関西経済同友会地方分権改革委員会は2018年7月に「関西州」を樹立し、地方分権の先駆けとなるべきという緊急アピールを発表しています。以下がその全文です。

2010年、関西では、地方自治体として「関西広域連合」が誕生し、府県をまたぐ広域業務に一定の成果を挙げてきた。しかし、府県の権限を持ちよる現在の組織や仕組みでは、機能を発揮するのに限界がある。とりわけ、府県の壁を越えた広域的なシナジー効果を発揮すべき産業振興政策を十分に打ち出せていないことに対して、その打開に向けては、政策決定に関する現状の権限や責任の抜本的な見直しが必要である。また広域連合委員会委員の出欠状況を見る限り、各委員が議論を積み重ね前進している状況とは言い難く、改善が必要である。

現在、「関西広域連合」では「広域行政のあり方検討会」が設置され、広域連合の役割や執行体制も含めた今後の方向性について、活発な議論が続けられている。

メガリージョンとしての世界との競争に勝ち、関西・日本が発展を遂げるためには、「関西広域連合」は、新しい責任と権限を拡大し、経済発展や持続可能な社会の構築等に前向きかつ実験的に取り組むべきである。また、デジタル技術の活用による、行政の効率化、政策の実効性評価、市町村の行政サービスバックアップを主導すべきである。そして近い将来委には、「関西州」を樹立し、地方分権の先駆けとなるべきである。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(135)2019年2月9日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ②

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州を目指すべき理由・1>

①インフラ整備や経済産業政策、医療福祉、各種保険など関西圏が一体となって取り組むことで、効率がよくなり成果が上がる。現在ように府県と出先機関がそれぞれ独自に取り組む体制は非効率である。

②関西圏全域を見渡した中で「全体最適」を目指して戦略的に投資ができる。「選択と集中」も可能になる。

③各府県の経営資源(公設試験所や支援機関、研究機関など)が有機的に一体化する中で、シナジー効果が生まれ、総合力を発揮できる。「知恵の囲い込み」がなくなる。例えば、研究機関から事業化まで橋渡しをする機能が格段に向上する。

④出先機関が自治体として一体化する中で、縦割り行政の弊害を極小化できる。住民に身近な存在となる中で、縦割りとならないよう住民の監視が効く。

⑤予算の執行にあたり投資効果をより厳格に見極める態勢になる。財政規律が働きやすくなる。

 

⑥から⑪までは次回に掲載

 

 

 

■道州制ウイークリー(136)2019年2月16日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ③

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州を目指すべき理由・2>

⑥自らの圏域(関西)のことを、「わが事」として自ら考え、自らがその結果責任を負うことにより、意欲が高まり、潜在能力が発揮される。関西のことをよく知っている人たちが政策立案に携わることにより、より関西に適した政策を遂行できる。

⑦全国一律に実施することが難しい政策を実験することができる。成功すれば、全国展開すればよい。失敗してもダメージは少ない。たとえば、ビッグデータを行政に活かすなど、デジタル技術の高度利用を実験していくべきである。

⑧関西という市場圏の中で、地産地消など互恵的な取り組み(生産・消費・流通・交換・融通など)が生まれやすくなり、新たなビジネスが生まれる。

⑨関西が反映することで、東京一極集中の各種リスク(災害リスク等)を分散できる。

⑩世界的な都市間競争を勝ち抜くためには府県単位の産業政策では不十分。また、国の政策では地域の独自性を活かせない。「関西」程度の大きな戦略を立案・推進していく自治体(=関西州)が不可欠。

⑪地方分権の必要性が主張されてから幾久しい。一定の地方分権は進んだが、目指す姿には程遠い。多くの地方が中央集権体制に順応してしまっている現在、全国一律に地方分権を進めたり、道州制を導入することは不可能である。関西にて、実験的に分権し、関西が地方の力を発揮して見せることで、全国への波及を期待する。

 

 

 

■道州制ウイークリー(137)2019年2月23日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ④

(関西経済同友会緊急アピールより)

緊急アピールは、具体的には次の様な姿を目指すべきと考える。

①府県を存続したうえで、関西広域連合を関西州に衣替えする。

②関西州は広域産業政策、広域インフラ整備につき、独自の調査・立案・調整・実行機能を持つ。

③関西州は、デジタル技術を行政に高度利用し、府県・市町村をサポートして、住民サービスの向上をはかる実験のプラットフォームとなる。

④②を満たすため、関西州と関連する地方出先機関とを融合、統合する。

⑤関西州が権限、財源を持てるよう、議員は公選とする。首長も選挙(互選など)で選ぶ。

道州制ウイークリー(134)~(137)

■道州制ウイークリー(134)2019年2月2日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ①

(関西経済同友会緊急アピールより)

関西経済同友会地方分権改革委員会は2018年7月に「関西州」を樹立し、地方分権の先駆けとなるべきという緊急アピールを発表しています。以下がその全文です。

2010年、関西では、地方自治体として「関西広域連合」が誕生し、府県をまたぐ広域業務に一定の成果を挙げてきた。しかし、府県の権限を持ちよる現在の組織や仕組みでは、機能を発揮するのに限界がある。とりわけ、府県の壁を越えた広域的なシナジー効果を発揮すべき産業振興政策を十分に打ち出せていないことに対して、その打開に向けては、政策決定に関する現状の権限や責任の抜本的な見直しが必要である。また広域連合委員会委員の出欠状況を見る限り、各委員が議論を積み重ね前進している状況とは言い難く、改善が必要である。

現在、「関西広域連合」では「広域行政のあり方検討会」が設置され、広域連合の役割や執行体制も含めた今後の方向性について、活発な議論が続けられている。

メガリージョンとしての世界との競争に勝ち、関西・日本が発展を遂げるためには、「関西広域連合」は、新しい責任と権限を拡大し、経済発展や持続可能な社会の構築等に前向きかつ実験的に取り組むべきである。また、デジタル技術の活用による、行政の効率化、政策の実効性評価、市町村の行政サービスバックアップを主導すべきである。そして近い将来委には、「関西州」を樹立し、地方分権の先駆けとなるべきである。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(135)2019年2月9日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ②

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州を目指すべき理由・1>

①インフラ整備や経済産業政策、医療福祉、各種保険など関西圏が一体となって取り組むことで、効率がよくなり成果が上がる。現在ように府県と出先機関がそれぞれ独自に取り組む体制は非効率である。

②関西圏全域を見渡した中で「全体最適」を目指して戦略的に投資ができる。「選択と集中」も可能になる。

③各府県の経営資源(公設試験所や支援機関、研究機関など)が有機的に一体化する中で、シナジー効果が生まれ、総合力を発揮できる。「知恵の囲い込み」がなくなる。例えば、研究機関から事業化まで橋渡しをする機能が格段に向上する。

④出先機関が自治体として一体化する中で、縦割り行政の弊害を極小化できる。住民に身近な存在となる中で、縦割りとならないよう住民の監視が効く。

⑤予算の執行にあたり投資効果をより厳格に見極める態勢になる。財政規律が働きやすくなる。

 

⑥から⑪までは次回に掲載

 

 

 

■道州制ウイークリー(136)2019年2月16日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ③

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州を目指すべき理由・2>

⑥自らの圏域(関西)のことを、「わが事」として自ら考え、自らがその結果責任を負うことにより、意欲が高まり、潜在能力が発揮される。関西のことをよく知っている人たちが政策立案に携わることにより、より関西に適した政策を遂行できる。

⑦全国一律に実施することが難しい政策を実験することができる。成功すれば、全国展開すればよい。失敗してもダメージは少ない。たとえば、ビッグデータを行政に活かすなど、デジタル技術の高度利用を実験していくべきである。

⑧関西という市場圏の中で、地産地消など互恵的な取り組み(生産・消費・流通・交換・融通など)が生まれやすくなり、新たなビジネスが生まれる。

⑨関西が反映することで、東京一極集中の各種リスク(災害リスク等)を分散できる。

⑩世界的な都市間競争を勝ち抜くためには府県単位の産業政策では不十分。また、国の政策では地域の独自性を活かせない。「関西」程度の大きな戦略を立案・推進していく自治体(=関西州)が不可欠。

⑪地方分権の必要性が主張されてから幾久しい。一定の地方分権は進んだが、目指す姿には程遠い。多くの地方が中央集権体制に順応してしまっている現在、全国一律に地方分権を進めたり、道州制を導入することは不可能である。関西にて、実験的に分権し、関西が地方の力を発揮して見せることで、全国への波及を期待する。

 

 

 

■道州制ウイークリー(137)2019年2月23日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ④

(関西経済同友会緊急アピールより)

緊急アピールは、具体的には次の様な姿を目指すべきと考える。

①府県を存続したうえで、関西広域連合を関西州に衣替えする。

②関西州は広域産業政策、広域インフラ整備につき、独自の調査・立案・調整・実行機能を持つ。

③関西州は、デジタル技術を行政に高度利用し、府県・市町村をサポートして、住民サービスの向上をはかる実験のプラットフォームとなる。

④②を満たすため、関西州と関連する地方出先機関とを融合、統合する。

⑤関西州が権限、財源を持てるよう、議員は公選とする。首長も選挙(互選など)で選ぶ。

道州制ウイークリー(130)~(133)

■道州制ウイークリー(130)2019年1月5日

◆地方創生の起爆剤としての「地方庁」構想

(山崎史郎・小黒一正編著『どうする地方創生』より)

平成の時代は戦後に築き上げた様々な仕組みが時代や環境変化に適応できず、漸進主義的で、抜本改革が進まず、もがく「30年」だった。特に人口減少への対応は、財政・社会保障改革を含めて「道半ば」だ。この大きな理由は何か。

人口増加で高成長の時代には、政治は成長で増えた富の分配を担うことで大きな力を発揮したが、人口減少で低成長の時代に突入して以降、政治の役割は「正の分配から負の分配」に急速に転換しつつあるものの、それに対応できない政治が機能不全に陥りつつあるからではないか。地方自治体や民間に問題を解決する知恵があっても、中央官庁の縦割りの規制や政治的利害が絡み、身動きがとれないケースも多い。

この脱却には、中央省庁が担う政治的な調整コストの一部を分散化する仕組み、すなわち道州制を含む地方分権が必要であり、その鍵を握るのが(広域地方計画を含む)国土形成計画やその基礎となる「地方庁」(仮称)の創設であると考える。

「国土形成計画」や「広域地方計画」では、集約エリアの指定や選択の集中の数値目標を定め、地方庁がその決定や道州制移行の受け皿となる機関として機能する。地方庁は各エリアの地方自治体のほか、各省庁の地方支分部局も束ねる機関で、道州制への移行も視野として、各エリアに地方庁を新設し、各地方庁にはそのエリアの知事と地方長官から構成される「コミッティー」を設置する。このコミッティーは、国の経済財政諮問会議に相当するものとし、各エリアの知事が様々な提案を行いつつ、それを地方長官が総合調整を行い、取りまとめる形で広域地方計画を定める。

 

 

■道州制ウイークリー(131)2019年1月12日

◆道州制移行、2035年頃を目標に

(山崎史郎・小黒一正編著『どうする地方創生』より)

地方庁の「コミッティー」では、広域地方計画を各エリアにおける「骨太方針」の様な位置づけに改め、地方庁は、国の予算編成や規制改革などと連携しつつ、各エリアの規制改革や予算編成も同時に方向づけるものとする。そのため、以下の政策についても推進する。

一つは、「地方交付税の分権化」。現在、地方交付税の配分基準は総務省が定めているが、地方交付税の一定割合(例:30%)を人口比で地方庁に移譲し、各地方庁が独自の配分基準で、各エリア版の地方交付税や広域地方計画に沿った一括交付金等として、各エリア内の地方自治体に配分する仕組みに改める。もう一つは、「規制改革の分権化」も進める。地方庁にも規制改革の法改正案を作成・提案する権限を付与し、当該法案は内閣府が地方庁の代理で法令協議を行ったうえで、国会に提出できる仕組みに改める。

急激な人口減少・超高齢化がもたらす影響が顕在化し本格化するのはこれからが本番であり、その現実を直視し、果敢に選択と集中をしない限り、日本に未来はない。その鍵を握るのが国土形成計画(広域地方計画を含む)や地方庁(仮称)の創設であり、地方創生の起爆剤として機能するはずだ。可能であれば、2035年頃を目標に道州制に移行する政治的なコミットメントを行い、新たに道州議会を設置するシナリオや工程表も同時に定めてはどうか。いま日本の叡智が試されている。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(132)2019年1月19日

◆道州制は国家統治のあり方を変える

(田村秀著『地方都市の持続可能性』より)

道州制の導入となれば、それは国家統治のあり方そのものの変革である。国の出先機関の業務を大幅に道州に移譲してスリム化した国は、グローバル化が進展する中で、国際社会において真に自立した国家としての役割を果たすべく、外交や安全保障などに総力を注ぎ込むことがその本務となる。国際情勢が激しく変化する中で、国の役割を重点化し、内政に関することは基本的には道州と市町村に任せ、真の意味での分権型社会を構築することが道州制導入のそのものの狙いである。

内政の要となる道州は、住民に身近なサービスを市町村に委ねつつ、高度なインフラ整備や経済産業振興、国土・環境保全、広域防災対策など、地域の実情に応じた広域的な行政需要に的確に対応することが可能となる。特に、人口減少社会の中で地域の活力を維持・向上させる観点から、自立的で活力ある圏域の実現に資することが期待されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(133)2019年1月26日

◆甦る道州制論議?

(田村秀著『地方都市の持続可能性』より)

道州制に関する論議は歴史を紐解けば明治から脈々と続けられてきたものではある。1945年に戦時下にできた地方総監府は全国を8つに分け、戦時行政を遂行するための組織だったが、我が国において唯一実現された道州制という評価もある。さらには2006年に道州制特区推進法が制定され、北海道を全国に先駆けた道州制のモデルとして特別な区域にしようとする道州制特区を定めている。

様々な動きがこれまであった中で、今後、道州制に向けた動きは進んでいくのだろうか。道州制が実現すれば、ただちに人口増に転じるといったことは考えられない。一定の産業振興は期待されるが、自治体の形を変えればすぐ成果が上がるといった期待は禁物である。

だが、2045年の人口推計に見られるように、地方ではもはや県ですら、その存在意義が問われるくらいに人口減少となるかもしれない、そうなると単独で行政を行えるのか、疑問の声が上がり、これを契機に一定程度道州制論議が進むということは考えられる。その可能性が一番高いのは高知県や島根県である。人口減少が進むことで広域自治体としての役割を果たせなくなり、周辺の県と合併し、さらには中国、四国、あるいは中四国といった大括りの広域自治体に変えていくことも起こり得るかもしれない。もともと、市町村合併だけでなく、都道府県の合併ということは地方自治法の中で手続きが定められている、想定内のものである。もしかすると、全国一律に、というのではなく、厳しい状況になった地域から順次という流れの中で道州制が実現するかもしれない。

道州制ウイークリー(125)~(129)

■道州制ウイークリー(125)2018年12月1日

◆最小の経費で最大の効果の実現

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

地域経済の活性化によって税源を大きくすることが重要だが、同時に自治体内部の行財政運営の効率化によって財源を捻出する努力も必要だ。地域経済の活性化と地方行政改革は地方創生の両輪である。

財政健全化への自治体の取り組みによって赤字団体数が減少するなど、地方財政は改善の兆しをみせている。しかし、財政健全化への取り組みの多くは緩い財政規律によって生まれた過去のツケの返済だ。地方財政健全化法は行財政運営に規律を与えようとするものだが、財政の収支尻を合わせることが真の財政再建ではない。

行政の非効率性を改善することを目的に1980年代以降、欧米諸国ではニュー・パブリック・マネジメントの考え方使われるようになり、実践されてきた。その中心となる考え方は、公共部門においても民間企業と同様の経営手法を取り入れるべきということである。

「最小の経費で最大の効果」という課題を実現するためには、次の2つの効率性が満たされなくてはならない。第1は、限られた地域資源を最も有効に活用して、住民に提供できる行政サービスを最高の水準にまで高めるという「生産の効率性」である。真っ先に思い浮かぶのは行政サービスの外部委託だ。

第2は、住民ニーズに合った行政サービスの組み合わせを選ぶという「配分の効率性」である。今日の組織別・性質別(人件費、補助費等)に編成される予算は、高度経済成長期のように税の自然増収が見込まれ、膨張する行政需要を取り込みながら組織の拡大や、職員数や予算の増分を行えた時代には意味があった。

現在の地方行政が抱える最大の問題は、行政サービスの便益と費用の捉え方が適切でないことだ。資源の効率的利用を図るためには政策目標を具体的に示すとともに、行政サービスの供給にかかる費用を計算することによって「事業の評価」を実施することなど、科学的な政策形成ルールを確立しなければならない。

■道州制ウイークリー(126)2018年12月8日

◆広域連携は地方創生の必須戦略

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

人や企業の経済活動が行政区域を超えて広がっているにもかかわらず、各自治体が近隣自治体と競合するような政策を単独で行うことは、政策効果を減殺するどころか、共倒れになる可能性も大きい。各自治体が強みを発揮できる政策に重点的に資源を投入し、他の自治体と一体となって圏域全体で多様性と規模の経済性を発揮する道を模索すべきである。大競争時代に生き残るためにも広域連携は必須戦略である。

地域経済の成長にとって特に重要な要素には、地域に産業が集積することによって生産能力が高まったり、輸送コストや情報コストが軽減されたりすることによって、産業活動の効率が良くなるという「集積の経済」がある。集積の経済を地域が手に入れるためには、経済活動が相応の規模を持たなければならない。

東京一極集中が進むなかで、首都圏以外の大都市圏が日本経済の牽引役を維持するためには、働く場を提供する大都市と居住の場を提供する郊外部との連携強化こそが大都市圏の広域連携のポイントである。企業のビジネス活動と、それを支える労働者の生活は不可分であり、大都市と周辺都市とがビジネスと生活という機能において補完関係を維持することが、大都市圏の広域連携の最も重要なポイントである。

大阪市には毎日100万人を超える人々が通勤や通学目的で市域外から流入しているし、名古屋市でも昼間流入人口は50万人弱に上る。大都市圏においては中心都市と周辺都市のどちらが欠けても地域は衰退する。

 

 

 

■道州制ウイークリー(127)2018年12月15日

◆広域連携、ライバルはパートナー

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

かつて道州制が大きな議論となったが、「なぜ道州制なのか」という機能論よりも、道州の「区割り案」が大きな関心を呼んだ。区割り案は道州制に何を期待するかによって決まるはずである。にもかかわらず、時代に合わなくなった府県制の改革、国からの権限移譲の受け皿づくり、地域経済政策の実施の広域化など、道州制にはさまざまな期待が錯綜し、ここに決着をつけないままに道州制論議が進んだこともあって、区割り案の議論がクローズアップされてしまった。圏域設定は広域連携に何を期待するかを決めてから議論すべきテーマだ。

国、地方ともに財政が厳しい現在、限られた資源を有効に活用するためには公共投資の重点化が不可欠である。その第1のメリットは、社会資本の有効活用が可能になることである。同種の小規模な施設を複数建設するよりもグレードの高いものができ、集客力がアップする。また、広域からの利用があるため、施設の稼働率を上げることもできる。第2は建設費・運営費の節約である。第3は地域(圏域)の中核施設づくりが可能になることである。第4は地域のイメージアップにつながることである。

「京都・大阪・神戸」、「富山・金沢・福井」、「福岡・北九州」、これらはライバル関係にあると考えられる都市だ。これからの時代、圏域内でライバル関係あるいは競争相手であった「まち」が手を結び、大きな相手に立ち向かうことが求められる。そのロジックは、「私の競争相手の競争相手は友達」である。1つの圏域に「核(コア)」が1つである必要はない。むしろ、既存の町が連携して1つの圏域を作り上げ、ポテンシャルを高めることが多くなっている。

 

 

 

■道州制ウイークリー(128)2018年12月22日

◆東京一極集中を抑える

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

東京一極集中の勢いを弱めない限り、地方がいくら努力しても激流に流される可能性が高い。「東京集中は市場のなせる技であり、ストップをかけてはいけない」という主張は本当に正しいのだろうか。市場以外の要因、とくに制度的要因が東京一極集中を促してはいないか。もし、こうした要因が存在するなら修正すべきだ。ヨーロッパでは現在、グローバル時代において国の競争力を強化するためにも、首都以外の都市とくに第二階層都市を活性化させることが必要だとする認識が強まり、都市政策に影響を与え始めている。東京一極集中の原因と問題を検証するとともに、地方創生の環境整備として東京一極集中を抑える勇気を持つべきである、

東京への人口集中は2010年代には29.2%に達し、ニューヨークの7%やパリ、ロンドン、ベルリンなどを大きく上回っている。先進国の中で1つの都市にこれほど集中している日本は異例である。「東京一極集中は日本全体の活性化のために不可欠だ」という考え方に落とし穴はないか。問題点の①は高コスト体質の固定化、②は混雑による「負」のコストである。①高コストでは、東京のオフィス賃貸料、地価、賃金は極めて高く、2014年になると、高賃金を高い生産性でカバーするというメリットが失われた。②負のコストでは、東京に人や企業が移動することで、すでに立地している企業や既存住民に対して混雑のコストが及ぶ可能性である。

情報インフラ整備による問題点もある。情報ネットワーク形成による地域の均質化で、全国各地を東京色で塗りつぶしてしまう可能性である。地方で生れた情報は「ストロー現象」によって東京に吸い上げられ、地方間の横のネットワークが形成されていない。既成が多い日本では中央集権という日本型行財政システムが東京一極集中の要因の一つとなっている。

 

■道州制ウイークリー(129)2018年12月29日

◆分権改革は地方創生の環境づくり

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

本来、地方あってこそ国のはずであるが、日本では「国あってこその地方」と考えられ、地方は国が描いた設計図にしたがって地域づくりを行ってきた。現在でも国に依存する地方の体質が残されたままだ。地方分権改革は住民ニーズに沿った行政サービスを提供するためだけのものではない。地域の問題に地方が主体的に取り組むための環境を整えることによって、地域力を強化するための地方分権改革が求められている。

グローバル時代は国境を越えて地域と地域が競い、一方で連携することが求められている。しかし、国の役割が消滅するわけでなく、新しい時代にふさわしい地域政策のパラダイムが求められている。旧パラダイムは停滞地域を補助金などの財政手段で支援するという格差是正型であり、国が中心となって再分配政策を実施するものであった。これに対して新しいパラダイムは地域のポテンシャルを掘り起し競争力を強化することを目的としている。

都市重視の地域政策は先進国のトレンドとなっているが、都市が持つ資源を十分に活用し、その特性を踏まえた政策を実現するために地方分権改革が進んでいる。地域経済成長にとって重要な役割を果たすイノベーションは、地域にとって外から与えられる外生的なものばかりでなく、地域内で生み出される内政的な部分もある。イノベーションにおいて安定的なマクロ経済情勢、税制や規制といった公共政策など、企業が活動しやすい環境を創造するための国レベルでの取り組みが重要であることはいうまでもない。しかし、異なった技術と資源の融合に必要な企業の集積、生産物の開発に伴うリスクの負担、研究・開発、企業間の取引は地域で行われるのであり、地方レベルでの取り組みが重要である。地域政策のパラダイムを変化させ、「地方が元気になってこそ、国も元気になる」という当たり前の考え方に立ち戻ることこそが重要。地方分権は地方創生の環境整備であり、成長戦略の効果を上げるためのものと位置付けるべきである。

道州制ウイークリー(120)~(123)

■道州制ウイークリー(120)2018年11月3日

◆域外から稼げる産業を育成

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

これまで地方の経済を支えてきた公共事業が地域経済の構造改革につながらなかったことは歴史が証明している。地方経済が再生するためには、域外から稼ぐことができ、持続可能で、かつ導入しやすい産業の育成を進めなければならない。公共投資という景気対策に過度に頼った地方の経済は自立型の経済構造を実現できず、むしろ、公共投資依存体質が地域の自立的発展を阻んできたともいえる。

80年代に入ると、国家財政の危機によって公共投資が抑制され、行政投資の地方圏シェアが縮小していく。すると、地域間の所得格差が大きくなり始める。90年代に入るとバブル経済は崩壊し、景気対策としての公共投資が大幅に増加するとともに、地方圏のシェアは拡大に転じ、それに応じて地域間格差は縮小している。2000年代に入ると、国の財政再建によって公共投資予算が再び削減されるようになると、地域間格差が拡大に転じる。このように、所得の地域間格差は行政投資の地域配分に左右されてきたといえる。今後、公共事業予算が大きく増加することは期待できない。このことは、地方の経済が財政に頼らない構造に変わらなければならないことを意味している。

域外(国外)にモノやサービスを売ることによって稼いできた産業の衰退が地元経済に大きな打撃を与えた事例は日本のいたるところに存在する。逆に考えるなら、域外から稼げる産業が育つことで地域経済が好循環的に成長する可能性があるということだ。このような産業(企業)が育つと、そこにサービスや資材を提供する産業が育ち、従業員向けの飲食店等も活気づく。それでは、地域に導入しやすい産業、中長期的に持続可能な産業とは何か。地域に導入しやすい産業はその産業が必要とする資源、人材、交通条件等の点で、他地域と比べてその地域が優位にあるような産業でなければならない。

 

 

 

■道州制ウイークリー(121)2018年11月10日

◆農村振興のアプローチ

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

農村地域において人口減少と高齢化は著しく、このままでは地域の持続可能性が危ぶまれる。しかし、農村部の振興というと、農業、自然、都会からの移住というステレオタイプのキーワードが出てくる。今や農村地域の進行は農業や自然のみを売りにする時代ではない。これまでの取り組みは農業政策以外の地域振興策との調整が十分でなく、政策効果が発揮されなかった。

地方分権改革を背景として英スコットランドでは様々な政策が展開されている。農村地域の発展政策もその一つで、農村地域におけるコミュニティのポテンシャルを発展させることによって、スコットランド全体の成長に結びつけようとしている。スコットランド政府は2011年に「農村の未来」を提出、そこでは、ハイスピード・ブロードバンドの整備、手ごろな価格の住宅供給、公共交通の充実、健康管理サービス、土地利用のあり方、コミュニティ間の連携強化、コミュニティ発展のための地域リーダーの能力とスキルの向上など、農村地域の発展戦略が示されている。

その背景には明確な発展戦略ビジョンが存在している。①多様な経済とアクティブなコミュニティを持つ、外向的でダイナミックな農村地域を創造すること ②所得と雇用を創り出すように地域の資産をコントロールし、地域サービスを供給しながら、コミュニティが自信をもって多様な成長を遂げること ③若者が自分の育った場所でキャリアを積み、豊かな未来が送れるチャンスをもつことなどで、その成果は着実に現れている。

わが国の地域活性化戦略の問題は、様々な政策が提案され、効果の分析や優先順位づけをせずにメニュー化され、プロジェクト提示前に将来ビジョンと地方戦略プランの策定が不十分なことにある。

 

■道州制ウイークリー(122)2018年11月17日

◆地方なればこその「地方経済開発戦略」

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

近年,地域経済政策で注目を集めているのが、「地方経済開発」。国レベルでの経済政策を補完するものとして地方のレベルで行われるミクロ経済政策のことである。しかし、これまでの経済政策の単なる地方版ではなく、地方なればこその開発を組織的・体系的に実施することに重要な意味がある。

地方経済開発において重要なことは、これまでの国土政策や地域政策のように公共部門が中心となって開発戦略を立てるのではなく、自治体(国)、企業、非政府部門がパートナーとして対等の立場で地域経済成長と雇用増のための条件を共同で創り出すことである。従って、その場しのぎの対処療法であってはならない。

世界銀行が2006年に発表した報告書では、地方経済開発戦略を成功させる5つの原則を示している。①は経済問題だけでなく、社会、環境等の問題も包合した統合的アプローチを取り入れること。②は関係するすべてのパートナーがビジョンを共有し、パートナーの総力で戦略を注意深くつくりあげること。③は戦略が非公式経済にも配慮すること。④は幅広のプロジェクトを視野に入れ、採用すること。ただし、多くのプロジェクトを同時並行的に実施するということではなく、「選択」と「集中」が原則。⑤は他のパートナーやステークホルダーからの信頼が大きく、ステークホルダーをまとめ上げる能力を持った行動力のあるリーダーが存在することである。

戦略計画がうまくいかなかった原因として、6点を指摘している。①政治的な要因であり、戦略において重要なカギを握るグループを排除してしまうこと、②プロジェクトの責任者がチーム内で大きな役割を果たしていないこと、③戦略的な思考に欠けていること、④資金、調査研究、モニタリング、評価が不適切なこと⑤補助金獲得が目的になっていること、⑥最新の流行を追いかけがちなこと。地域の活性化は目標を羅列するのではなく、組織的かつ体系的に計画を立てるプロセスこそが大切なのである。

■道州制ウイークリー(123)2018年11月24日

◆自治体経営のあり方

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

地方が創生を果たし持続的発展を遂げるためには、自治体を含むコミュニティが新たなインキュベーター(支援者)として機能したり、既存の産業を発展させたりする芽が地域に内在し、それに依存して発展することが不可欠である。自治体は行政サービスを効率的に供給するという従来型の課題に対処するだけでなく、政策プランナーとして企業家主義的な政策アプローチを身につけなければならない。

これまでにも多くの自治体が工業団地を整備し、加工組立型の大規模工場の誘致合戦を展開してきた。しかし、多くの場合、工場誘致それ自体が目的化し、地域振興のゴールであるかのように考えられた。また、これまでに自治体が行ってきた産業政策は、企業誘致を別にすれば既存産業に対する保護政策的な色彩が強いもの、あるいは多くの自治体がすでに行っているものの模倣が多い。

地方が持続的発展を遂げるためには、自治体を含むコミュニティが魅力ある生活環境を築くとともに、新たな産業のインキュベーターとして機能しなければならない。それは、自治体が従来の行政の守備範囲のなかで効率性をめざした「自治体経営」から、経済・産業、福祉、文化、教育などに関連する様々な資源を組み合わせることによって、人々が「住みたい」「住み続けたい」と思い、企業が「ここをビジネスの拠点にしたい」と考える地域を創るという意味での「地域経営」への転換ともいえる。

地域プロモーションに「ひな形」はない。にもかかわらず現実には、金太郎飴のような街並みや、類似した戦略が各地で見られる。地域間競争が激しさを増しているなかで、定型的なモデルに依存したり、他地域の成功事例を模倣したりするだけなら、例えば「わが町はどこよりも多くの補助金を支給する」といった量的競争に陥ることになる。地域経営というのは自治体運営の改革であり、マネジメントの改善である。

道州制ウイークリー(117)~(119)

■道州制ウイークリー(117) 2018年10月6日

◆広域連携による地域活性化③

(林宜嗣関西学院大教授他著『地域政策の経済学』より)

<日本の広域連携制度>

日本には自治体連携のための制度は存在します。近年、関西広域連合にように新たな広域連携の形が生まれてきてはいますが、具体的に機能しているのはやはり従来の行政の守備範囲に留まっています。広域連携に新しく地域づくり型の制度が加わりました。連携協約です。

首相の諮問機関である地方制度調査会は第31次答申「人口減少社会に的確に対応する地方制度およびガバナンスのあり方に関する答申」(2016年3月、「31次答申」)を提出しました。「31次答申」は、「地方圏において、早くから人口減少問題と向き合ってきた市町村は、中山間地や離島等を中心に、すでに厳しい現実に直面しており、行政サービスの持続可能な提供を確保することが喫緊の課題であるといえる」との警鐘を鳴らしました。

地方圏については、「特定の課題にとどまらず、幅広い分野の課題について総合的に検討することを通じて圏域のビジョンを協働して作成すべきである」と指摘し、従来の公共サービスの供給を主たる目的とした広域連携から、地方創生のための広域連携へと踏み出した内容になっています。

ここで注目されるのが「連携中枢都市圏」です。地域において大きな規模と中核性を備える中心都市が近隣の市町村と連携し、コンパクト化とネットワーク化によって「経済成長の牽引」、「高次都市機能の集積・強化」、「生活関連機能サービシの向上」を行うことにより、人口減少・少子高齢化社会においても一定の圏域人口を有し活力ある経済を維持するための拠点を形成することを目的としています。大都市圏においては、その必要性を認めながらもまだ制度化されてはいません。今後、大都市圏、地方圏にかかわりなく、広域連携は地域活性化の重要な戦略として展開される必要があります。

 

■道州制ウイークリー(118)2018年10月13日

◆広域連携による地域活性化④

(林宜嗣関西学院大教授他著『地域政策の経済学』より)

<地域政策におけるパラダイム・シフト>

人口減少時代において地方が衰退を食い止め、持続的な発展を実現するためには、外来型開発からの脱却と地域主導型の内発的発展への転換が不可欠です。それには、地域政策におけるパラダイム・シフトが必要です。ある時代に支配的なものの考え方や認識の枠組みをパラダイムといいます。時代が進み社会経済情勢が変化すればパラダイムも変わらなくてはなりません。

経済活動のグローバル化と新興国の経済発展、少子化による労働力の減少といった社会経済環境の変化が起こっている現在、日本では新しい形の経済に移行することが求められています。

地域政策のパラダイムの変化は日本だけのものではなく、先進国に共通した課題なのです。旧パラダイムは停滞地域を補助金などの財政手段で支援するという格差是正型であり、国(中央政府)が中心となって再分配政策を実施するものでした。地方は安い地価と豊富な労働力を材料に工場を誘致し、地域の活性化を図ろうとしてきました。しかし、こうしたパラダイムでは、先進諸国を取り巻く社会経済環境の変化に対応することが困難になってきたのです。

旧パラダイムが事後的な再分配政策的であったのに対し、新しいパラダイム(内発的発展)は地域のポテンシャルを掘り起し競争力を強化するという、地域の構造改革の色彩を強くもつものです。地域の特性に応じて組み合わせを工夫する必要があります。従って、過去の地域政策のように国が全国画一的な基準で政策を決定してはなりません。また、旧パラダイムが地域政策の実施エリアを県や市町村という行政区単位としていたのに対し、新パラダイムでは経済活動エリアという機能上の圏域を対象とする必要があります。このことは複数の自治体が連携して地域政策を行わなければならないことを意味します。

 

■道州制ウイークリー(119)2018年10月20日

◆地方創生に向けて

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

首都東京を日本経済の推進力としようとしても、東京以外の地域が衰退したのでは日本経済は維持できない。住民、企業、自治体その他の関係者が共有できる地域ビジョンを作成し、将来のあるべき姿を見据えて、費用対効果の大きい戦略を策定し実行するものでなければならない。

とくに、人や企業といった民間経済主体は市場メカニズムに基づいて活動していること認識し、活力ある地域市場を育てるとともに、市場を望ましい方向に誘導することにエネルギーを注ぐべきである。そのためにも、住民、企業、自治体、国等が一体となって地域づくりに取り組まなければならない。

過去の政策や組織・制度を廃止し、成熟期にふさわしい地域づくりを効果的に進めるための環境整備を行うことは必要であるが、地方が自ら知恵を出し、地方創生に向けて行動することがなにより重要である。地方創生を実現するためには、経済の活性化によって地域資源を拡大するとともに、地方創生において重要な役割を果たす自治体が、創生に必要な財源を捻出するためにも「最小の経費で最大の効果」をあげる行財政運営をめざさなければならない。

 

■道州制ウイークリー(119)2018年10月27日

◆負の連鎖を断ち切れ

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

地方では、人口減少が人や企業の活動環境を悪化させ、その結果、人口が更に転出するという「負の連鎖」が現実に起こっている。負の連鎖は重層的に生じているが、その第1は就業の場の喪失に伴う負の連鎖である。地方に立地した労働集約的な工場は輸出競争力が低下し、量産品は市場に近い場所で製造するということもあって製造拠点の海外シフトが進んだ。負の連鎖を引き起こす第2の理由は、「どこでも、だれでも、負担可能な料金で一定のサービスを受けることができる」と定義されるュニバーサル・サービスの提供が困難になっていることだ。地方の「無医村」「医師不足」の問題は深刻さが増している。第3は財政を通じた負の連鎖である。人口減少や企業の転出による地域経済の縮小は地方税収を減少させる。地方財政を媒介とした負の連鎖は、かつては地方交付税という国からの財政移転によって断ち切られていた。しかし、国の財政が危機的な状況にある今は、地方交付税に大きく頼ることは難しくなっており、財政力の差が行政サービス水準の差に直結する可能性がある。

地方の問題を「格差問題」としてとらえてしまうと、「東京で生れた経済的成果を地方に再分配する」という政策に頼り、根本的な解決策が先送りされてしまう可能性がある。バブル崩壊後、格差是正のために事後的に地域間再分配を行うという政策がいかにもろいものであったかは歴史が教えている。地方創生への取り組みは、地方が直面する現下の問題に対処する(短期)ことはもちろん必要だが、同時に地方の自立を実現するために、地方創生の考え方から戦略の実行面までを網羅した新たな構造改革を進める(中長期)という複線型でなければならない。