12州構想ウイークリー(320)~(328)

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(320)2022年9月3日

◆自治体再編で12州300市へ③

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

中央と地方の財源配分

  • 州市制の導入に伴って、地方自治体は、住民が自らの選択で受益と負担の水準を決定する「自己責任」の財政運営を目指す。地方自治体は、国と並んで健全な財政の維持・運営に努めなければならない。
  • 地方税 ①地方自治体が自律的な行政を行えるよう、国から地方へ必要な税財源を移転する。②地方税法をはじめとする関係税法を、地方自治体の課税自主権を拡大する方向で改正する。③地方自治体は、この課税自主権の範囲内で、自ら財源の拡充などに努める。
  • 地方交付税交付金 ①地方交付税は、ナショナル。・ミニマ  ムが一定程度整備された現状や自治体の自己責任原則を踏まえて、必要最小限度にとどめる。 ②地方交付税には財政健全化や合併促進などにインセンティブの働く機能を付与する。
  • 国庫補助金等  国庫補助金は、大胆に整理合理化する。奨励的補助金は基本的に廃止する。
  • 地方債 300市の誕生にあわせて、地方債の許可制を廃止する。

条例制定範囲の拡大

 地方自治体は、必要かつ合理的な理由がある場合、法令の趣旨に反しない限り、自主的に条例を制定できるよう改める。

 

 

 

 

 

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■12州構想ウイークリー(321)2022年9月10日

◆自治体再編で12州300市へ④

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

読売新聞社は1996年に首相権限・内閣機能の強化と中央省庁を1府9省に統廃合することを内容とする改革案を提唱した。提言が目指したのは、強い指導力を有する内閣と、簡素で効率的かつ機動力に富む中央行政機構だが、機構をスリム化するためには、現在の中央省庁が抱え込んでいる膨大な権限を大幅に地方に移譲する必要がある。また、国を構成する地域の活性化が不可欠だ。

提言は、基本的に地域活性化の基準は、高度成長時代以来の「国土の均衡ある発展」から「地域の個性ある発展」へと転換すべきとの考え方に立っている。過去、「均衡ある発展」の概念に基づく開発行政が重視されてきたところから、中央省庁による調整権限の強化という方向をたどり、現在の地方自治の危機的状況につながった。各分野におけるナショナル・ミニマムがほぼ達成された現在、地方は、従来の経済指標的、土木インフラ的な基準の重視から脱して、独自の「住み心地」を発展させるべきだ。

憲法にいう地方自治の本旨は、地方自治体、地域住民の「自己責任」原則と一体のはずだ。そのためには、地方が自己責任をとりうる自治条件を整える必要がある。現在の中央・地方構造下では、中央による過度の「調整」「関与」が、地方自治体の自主性を制約するとともに、地方の依存心を増し、住民の自治意識を形骸化させている。中央から地方への可能な限りの権限、財源を移転すれば、その権限。財源に伴う自己責任が生じる。自己責任原則が明確化すれば、無原則な財政たれ流しへの自己抑制力も働くことになろう。

 

 

 

 

 

 

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■12州構想ウイークリー(322)2022年9月17日

◆自治体再編で12州300市へ⑤

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

 今回の提言では、これらの構想・試算を総合し、合併目標を示す象徴的な目安として、「300市」という数字を掲げた。もちろん合併・統合の推進に当たっては、地域の一体性、生活圏の実情、歴史的背景などには十分に配慮すべきである。

 国、都道府県から「300市」への権限、財源の移譲を進めていけば、都道府県の役割も変わってこざるを得ない。現行都道府県制は、統合・拡大された基礎的自治体間の調整を主な役割とする。より広域的な行政単位としての「道州」あるいは「州」として広域行政単位に再編する区分の仕方については、第4次地方制度調査会答申(1957年)以来の様々な議論がある。この提言の再編区分は、現行衆院選挙制度の11比例ブロック単位に準拠した。

 比例代表ブロックの区分が論議された当時、すでに、将来の道州制移行を前提とする線引きであるべきだ、との議論があった経緯をも踏まえたものである。ただし、このうち、近畿ブロックについては、大阪府を分離し、「12州」とした。

<12州案>北海(北海道)、東北(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)、北関東(茨木・栃木・群馬・埼玉)、東京(東京都)、南関東(千葉・神奈川・山梨)、北陸信越(新潟・富山・石川・福井・長野)、東海(岐阜・静岡・愛知・三重)

大阪(大阪府)、近畿(滋賀・京都・兵庫・奈良・和歌山)、中国(鳥取・島根・岡山・広島・山口)、四国(徳島・香川・愛媛・高知)、九州(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)

 

 

 

 

 

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■12州構想ウイークリー(323)2022年9月24日

◆自治体再編で12州300市へ⑥

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

 新しいシステムは、国、地方ができる限り分業に努め、機能や権限を分担する形が望ましい。内政面の役割を縮小することによって国は、国際化への対応等、本来の仕事に重点的に取り組めるよう、体制を充実強化することができる。また、国の役割を整理、合理化することで、「簡潔で効率的な政府」となる。

 現在の国―都道府県―市町村間の上意下達の行政構造の下では、市町村には政策実施の裁量や権限がほとんど認められていない。補助金獲得の申請事務や陳情に多くの職員や時間を労し、国全体で膨大な無駄を生んでいる。

 基礎自治体として権限、財源移譲の「受け皿」となった「市」に一番近い生活関連行政の主体として、住民生活の基本的な行政サービスの提供を行うが、地域の実情に応じた独自のまちづくりや行政を担当する権限を持ち、行政や地域そのものが活性化する。また、市町村の統合によって職員や運営費のロスが減少、効率化を図ることができる一方で、同じような施設が乱立するという無駄が解消されるであろう。

 行政の効率化は、専門的知識や高度な技術を持った人材の確保につながり、企画立案能力が向上するとともに、施設の利用や福祉、保健業務、文化面でより高度なサービスも期待できる。

 自治体の主体はあくまでも、基礎自治体である「市」である。州はいわゆる「連邦制」は想定していない。州は「市」単独では行うことのできない業務や。広域での実施の方が効率的な分野のみを担当、調整機能を果たす。

 

 

 

 

 

 

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■12州構想ウイークリー(324)2022年10月1日

◆自治体再編で12州300市へ⑦

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

 現在、国税と地方税の税収比率はおおむね6対4となっているが、歳出ベースでの国と地方の比率はおおむね4対6であり、その間の財政調整を地方交付税、国庫補助金などで行っている。州市制を導入するにあたっては、地方自治体の自主財源を充実させて、各自治体が自らの責任と判断で多様な行政を展開できるようにする必要がある。同時にそれは、情報公開の促進とあわせて住民にサービスと負担の関係を目に見える形で提示し、コスト意識を高めて、自治体の歳出膨張に歯止めをかけることにもなる。

 自主財源の充実のためには、中央と地方の事務配分に見合った税源を国から地方へ移転しなければならない。改革に当たって例えば地方でも担税力がある消費税を中心とした間接税を地方の基幹税源にする、もしくは所得税の相当部分を地方財源に振り替えるなど、思い切った税目の入れ替えなどが考えられよう。

 一方、地方自治体も財源が中央から降りてくるのを漫然と待つのではなく、自らの徴税努力で各地域からの税収を増やす努力を求められる。そのためには、国は、地方税法などの関連法令を見直し、税率や課税対象を制限する課税統制を緩和して、法定普通税や超過税率の適用を弾力化するなどの措置を取らなければならない。ただし、地方自治体の課税自主権、税率決定権は、あくまでも法律が定める一定の範囲内で行使される租税法律主義の原則を守る必要がある。極端に高い税率や、財源の裏付けのない人気取りのための減税などは、認められるべきでない。

 地方交付税交付金の役割には、地方自治体間の財政格差を平準化する調整機能と、各自治体の財源不足を国が産める保障機能の二つがある。ナショナル。ミニマムがある程度達成された現在、この保障機能は縮減し、地方交付税の総額を大幅に抑制すべきである。

 

 

 

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■12州構想ウイークリー(325)2022年10月8日

◆自治体再編で12州300市へ⑧

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

〇条例制定範囲の拡大

国から地方へ権限、財源の移譲が進むのに伴い、条例制定の必要性は一段と高まることが予想される。すでに、学説、判例で条例制定権の解釈は拡大し、自治体が独自の条例をつくるケースも増えている。しかし、憲法の「法律の範囲内」、地方自治体の「法令に違反しない限り」の解釈をめぐり、訴訟も絶えないのが現状だ。

 条例は自治体が地域の行政を自主的に責任をもって進めるため制定されるものである。その条例制定がスムーズに行われ、円滑に運営されて、地方分権の効果をあげていくには、国の法令による制約を緩和することが肝要だ。

 例えば、大気汚染防止法、水質汚濁防止法には、「条例で規定を設けることを妨げない」とする、いわゆる上乗せ、横出し規制を許容した規定がある。さらに、趣旨、目的、対象において合理的な理由があれば、条例制定が可能とする学説、判例もある。

 94年の読売憲法改正試案では、こうした趣旨を法律的に明確化するため、憲法の「法律の範囲内」を「法律の趣旨の範囲内」とするよう提言している。地方自治法もより一般的に条例制定権を拡大する必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

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■12州構想ウイークリー(326)2022年10月15日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」①

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

いまなぜ「地域主権型道州制なのか」

  • 現在の行政単位は狭すぎる● 国民の生活圏が拡大した現代では、徒歩や馬での移動を前提につくられた市町村や都道府県という行政単位は狭すぎる。同時に、広域な行政課題も増えてきている。環境、廃棄物処理、広域消防、救急病院などの問題は。現在の市町村、あるいは都道府県の領域ではなく、さらに大きな地域に入れなければ解決できない。
  • 人口減少時代の到来● 人口減少時代の到来も「地域主権型道州制」を求める理由になっている。このまま人口が減少していけば、多くの自治体で住民に十分な行政サービスを提供できなくなってしまう。人口の減少は中央集権的な国の在り方が東京一極集中を引き起こして、東京が人口を吸収していることに大きな原因がある。
  • 中央集権が無駄と墜落を生んだ● 中央集権は、ムダと墜落を生む元凶でもある。国が全国画一的に地域政策の基準を決め、運用の細部まで地方に指示し実施させてきたことが、ニーズに合わない社会資本の整備など多くの無駄を生んできた。中央集権のシステムは、地方の個性的な発展を阻害するとともに、財政の肥大化を招いて債務を拡大させてしまった。
  • 国際社会で競争に敗れてしまう● 東京圏・首都圏でなく、全国いたるところが繁栄するようにしなければ、日本はグローバル化が深化する今後の国際社会のなかで競争に敗れてしまい、近い将来、経済的にも二流国、いや三流国になってしまう可能性がある。世界と競争していくためには、日本の各地に少なくとも十数か所の繁栄の拠点をつくっていかなければならない。

 こうした問題を解決するには、都道府県よりも規模が大きく強い財政基盤のある広域自治体、すなわち道州をつくって、そこに国全体にかかわる政策領域以外の権限と税財源を完全に移譲し、地域のことは地域の判断と責任で行うようにする必要がある。

 

 

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■12州構想ウイークリー(327)2022年10月22日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」②

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

「地域主権型道州制」の7つの意義

  • 日本全体を元気にすること● 明治以来の中央集権システムは、今日の流れに合わなくなり、体制疲労を超し、戦後最大の危機に陥っている。日本を活性化するためには、このシステムを大改造しなければならない。
  • 中央集権の打破● 中央集権体制によって、日本では東京、首都圏だけしか発展せず、他の全国の、あらゆるところが貧にあえいでいる。
  • 官僚主義の廃止● 官僚主義によって、日本の政治行政は、規制万能、責任回避、秘密主義、画一主義、権威主義、自己保身、前例主義、セクショナリズムに陥り、国家と国民を不幸にし始めている。
  • 生きがい、やりがいを感じる日本をつくる● 国民の生活は、中央集権体制によって画一化され、強制され、個性を奪われ、自由を阻害されている。
  • 国際都市、国際交流の拠点を多数つくる● グローバル化の時代に向けて国際都市、国際交流の拠点を多数つくっていく。
  • 地域個性を生み出し、特徴のある地域を創る● 日本はどこでも同じ、画一的で面白みがなかった。地域がそれぞれの特徴を発揮できるようにする。
  • 財政赤字の解消● 「地域主権型道州制」が日本の体制になれば、結果として財政赤字が自然に解消される。

 

 

 

 

 

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■12州構想ウイークリー(328)2022年10月29日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」③

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

「地域主権型道州制」4つの原則

  • 第一原則「行政に市場メカニズム設定」●これまでは国が自治体の活動に対して様々なかたちで制約をかけてきた。これからは、道州同士、基礎自治体同士が自分たちの創意と工夫でよりよい地域社会を創るために競争ができる環境をつくらねばならない。競争によってこそ、日本全体の行政も経済もより効率的かつ効果的なものに発展していく。また、政策の立案・実施・評価の全てのプロセスにおいて,官と官,官と民、民と民で競争できるようにすることも重要。
  • 第2原則「顧客主義の徹底」●政治や行政は国民・住民のためにある。政治や行政にとって、国民・住民は「顧客」であり、そのニーズに応えることこそが政治と行政に与えられた本来の宿命である。これまでの行政は、法規に忠実であろうとするあまり、社会の変化に対して保守的になり、顧客である国民・住民のニーズに柔軟に対応ができなくなっていた。さらに、予算や人事などの経営資源の活用や政策を実施する段階でも、マネジメントに柔軟性がなくなり、生産性を低めている。
  • 第3原則「国民・住民参加の強化」●現在は、官僚エリートが情報を独占して政策を企画・立案するなど、政策決定プロセスを支配している。国民、政治、行政によるパートナーシップを深めることが重要だ。政策決定プロセスへの住民参加が積極的に行われる仕組みをつくっていかなければならない。
  • 第4原則「ネットワーク型組織の構築」●日本の公的な組織は、権限を上部組織に集中させ、そこで下された決定を下部組織に命令伝達するというタテ型の構造で運営されている。こうしたピラミッド型の統治機構は、分業によって企画大量生産を行う工業化の時代には有効な働きを見せた。しかし、情報化の時代、価値観多様化の時代、迅速で柔軟な意思決定が求めらる時代においては、うまく機能しない。変化はつねに現場で起きているのであり、ピラミッドの上部にいる官僚は、現場と離れ過ぎていて、その変化に柔軟に対応できない。情報が共有できる柔軟かつ迅速に意思決定ができるフラットなネットワーク型の統治構造に変えていく必要がある。

 

 

道州制ウイークリー(316)~(319)

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(316)2022年8月6日

◆これが「日本型州構想」④

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

「州構想」の実現には詰めなければならない論点、ポイントがたくさんある。第一は州制度の性格をどのような自治体とするのか。州構想は、知事・議会は公選、役割は広域自治体で自治権を持つ。第二は州制度のもと、国、州、市町村の所掌事務をどうするか。第三は各州の区割りをどうするか、いくつの州にするのか。第四は、「州構想」の制度を単一化するか柔軟性を持たせるかどうか。第五は、市町村(大都市、小規模町村を含め)と州の関係をどうするか。第六は、州政府の知事、議会、職員機構、旧府県の扱いなど組織設計をどうするか。第七は、現実に存在する地域間格差、税財政格差をどう調整するか。第八は、いつごろ、どんな政治勢力、どんな内閣がこれを実現するのか。

一般国民からすると、都道府県が州に変わる話は夢物語のようで不安かもしれない。130年の間に私たちの間に私たちの生活に都道府県という制度は定着している。

「州構想」は行政上の仕組みの合理化であって、地域としての都道府県を消す話ではない。東北州岩手、九州州佐賀というように、地域名として旧県名はそのまま生かされていく。甲子園の県対抗高校野球も地域名の県対抗としてそのまま残るであろう。要は行政上の合理化の話にとどまるのが州制度移行の話である。この先、国民は大増税を選ぶか、サービス大カットを選ぶか、それとも統治の仕組みを変えるか、そのいずれを選ぶかの選択になる。人口減が本格化する中、早晩、日本政治の最大の争点はここに収斂していく。「州構想」は、すでに政令市等の増大で府県行政は空洞化しているが、その実態をふまえ、大都市を強くすることで府県行政は代替させ、むしろ国の内政の受け皿となる広域政策の主体を創るものなのだ。

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(317)2022年8月13日

◆これが「日本型州構想」⑤

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

日本で出生率が高いのは九州だが、この特性をより伸ばすために、例えばこの九州7県を一つの「州」(九州州)にしたとする。そうすれば、九州が独自の政策として海外との交流を図り、経済活動を活発化させるという展開を描くことができる。県境に位置する市町村はどこも不便で寂れがちだが、これを州にし県境を外すことで甦る可能性がある。

福岡をハブ(拠点)空港にし、海運では北九州で韓国とのつながりを深めることも可能だし、それぞれ7県の持ち味を生かしながら広域政策として束ねていくなら経済力は数段増してくるのではないか。現在もオランダ並みの経済力を持っているが、「九州が一つ」になることでそれをはるかに凌ぐ発展が期待できる。もちろん、「ななつ星」の特急列車の名称のように七つの県のよさは失わずに大きく九州圏を州にすることだ。

日本海、東シナ海の対岸にはインド、中国、東南アジアという振興めざましい経済発展の地域が広がる。これまで東京中心にみると九州は端に位置したが、九州から見ると東京が端になる。「九州の自立を考える会」は、2014年に「九州の成長戦略に係る政策提言」をしている。それによると、九州が高い潜在力を有し、産業と雇用の創出効果が高いと思われる分野として、①観光資源、②農林水産業の経営力強化、③先端中小企業の育成とエネルギー供給戦略、④空港、港湾等の機能強化その他のインフラの整備,⑤スポーツの振興、スポーツ関連産業の育成等の五つの柱を設定している。うち、①の例でいえば九州各県、各都市等の地域連携と競争による「観光王国九州」の確立が可能である。まさに府県制のくびきを解き放した瞬間、新たな九州が顔を覗かせるという訳だ。

九州は今後、伸びていく潜在力が高い。ただ七つの県に分断されている今は、その能力が十分に生かされていない。それが州制度への移行で大きく変わる可能性が高い。巨大なアジアの市場への意近距離に立つ九州だ。これが一つの九州として独自の政策展開ができるようになると、飛躍的に成長する可能性は高い。

 

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■道州制ウイークリー(318)2022年8月20日

◆自治体再編で12州300市へ①

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

 国全体にわたる行財政運営の行き詰まり、高齢社会の到来などの時代状況を踏まえ、活力ある社会を維持・発展させるには,、官・民の役割の在り方を見直すとともに、中央、地方を通じた行政システム全体を改革する必要がある。中央省庁再編と併せて、国と地方の関係を新たな視点でとらえ、地域の個性的な発展と地方自治の自立・自己責任の原則を確立するため、政府・国会の主導により、現行の都道府県・市町村体制を12州・300市体制に再編する。

12州・300市体制

  • 2001年から5年間をめどに、全国3200余(当時)の市町村を300程度の「市」に合併・統合する。合併・統合された「市」および政令市を含む既存の一定規模以上の「市」を基礎的自治体として、権限、財源移譲の一義的な「受け皿」とする。
  • 基礎的自治体をすべて「市」以上の規模にしたうえで、国、都道府県から基礎的自治体への権限移譲を段階的に進め、2010年ごろまでに、都道府県を「州」に再編する。「州」の区分は、北海道州、東北州、北陸信越州、北関東州、南関東州、東京州、東海州、近畿州、大阪州、中国州、四国州、九州の12とする。
  • 市および州には公選の首長と議会を置く。
  • 政府・国会は2000年までに、以上のような地方制度再編、国・地方関係の改革に向け、具体的な基礎自治体の統合・州区分案、実施スケジュールを作成する。

 

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(319)2022年8月27日

◆自治体再編で12州300市へ②

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

 中央と地方の役割

  • 国は、主に国の基本にかかわる統一的政策、国民全体の利益にかかわる分野を担う。 

①国家的基盤の維持(外交、防衛、司法、治安、通称、通貨、教育基本政策等 ②国民生活安定の確保(経済・労働政策、物価、エネルギー等) ③社会保障基盤(年金、医療保険、雇用保険等) ④統一基準の制定と監視(公正取引の確保、環境基準、労働基準等) ⑤州間の調整、国家プロジェクトの推進(基幹的交通体系等)、大規模災害対策等

  • 基礎的自治体である「市」は、身近な生活に関連する行政施策を自主的に進める。

①地域社会福祉(児童福祉、老人福祉等) ②医療・公衆衛生(生活廃棄物処理を含む) ③生活基盤にかかわる公共事業(下水道、都市計画,公園・道路、住宅等) ④教育・文化(保育所、義務教育、高校、図書館の運営等)

(3)「州」は、広域に及ぶ行政及び「市」間の調整を行う。

 ①幹線道路、空港、港湾等の公共事業とその管理運営 ②広域災害等の防止、復旧等 ③地域労働・雇用政策 ④環境保全

 

道州制ウイークリー

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(311)2022年7月2日

◆大変革の時代、「現状維持」思考からの脱却必要

(真壁昭夫著『ゲームチェンジ日本』より)

 いま世界経済は「ゲームチェンジ」を迎えていますが、バブル崩壊後のわが国全体には現状維持を重視する心理が強く働いています。経済学で「現状維持バイアス」といいます。これまでの行動様式を改めることができなければ、経済はかなりのスピードで縮小均衡に向かう恐れがあります。その結果、日本が世界第3位の経済大国の座を維持することも難しくなるでしょう。

 オンライン診療や感染症への対応力の向上という問題を考えただけでも、変化を過度に恐れるかのように、日本は過去の発想にしがみつく機関が長引き、それが当たり前になってしまったように思います。重要なことは変化を機敏に察知し、それに対応することです。政府の規制緩和が諸外国に遅れ、その結果として企業が旧来の発想から脱却できなければ,、わが国の経済の実力は低下するでしょう。

1990年初頭のバブル崩壊後、我が国の経済は失われた30年を超える長期の低迷に落ちりました。要因の一つは、世界経済の構造変化への対応が遅れたことです。特に、グローバルな規模でのデジタル化への対応の遅れは見逃せません。わが国では新しい、自由な発想を実現するよりも、雇用を守るために、リスクを取らないことが優先されてしまいました。問題は、日本の産業政策の発想が過去の成功体験から脱却できなかったことです。

いまわが国の社会心理を覆っているのは、「人口の減少によって,労働と資本の投入量が減少する、だから経済の成長は望めない」という考え方です。そこには。「イノベーション」の考え方が抜け落ちています。わが国の政治の意思決定を見ていると、口先では改革が重要であるとはいうものの、いざ規制などの改革を進めるとなると既得権益などの反対にあって抜本的な改革が難しくなるケースが続いてきました。「現状維持バイアス」にとらわれて、従来の発想を続けている限り、成長を目指すことはかなり困難と言わざるを得ません。

 

 

 

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■道州制ウイークリー(312)2022年7月9日

◆現代社会に合わない47都道府県体制

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

戦後言われ続けてきた多極分散型の国土形成も、職住近接の地域づくりも、地方分権の推進もいつの間にか旗が下ろされている状態だ。改革なき政治が続く日本である。この先に何が来るか。

「東京頼み」をだらだら続けるばかりの政府。政府は「東京一極集中」が問題だと口では言うが、やっていることは東京減反どころか、いまだ東京は日本の機関車だと見立て、様々な特区指定や規制緩和のさらなる巣心を図っている。

日本は平成20年の1億2800万人をピークに人口減少期に入り、今は毎年数十万人単位で減っている。現在100万人以下の県は香川、鳥取、和歌山、佐賀、福井、山梨、徳島、島根、高知の9県だが、25年もするとそれに奈良、長崎、岩手、石川、大分、宮崎、青森、富山、山形、秋田の10県が加わる。政令市の指定要件である実質人口70万人にも届かない県の続出は何を意味するか。府県を広域自治体とし市町村を基礎自治体としてきた自治制度が根底から崩れていることを意味する。

明示23年(1890年)、交通機関が馬、船、徒歩の時代につくられた47都道府県体制は広域化、高速化の現代社会に合っていない。行政圏と生活圏(経済圏)が大きくズレてしまっている。

「隣にあるからウチにもつくる」という「フルセット行政」の横並び意識で不要なハコモノやサービスが増え、非効率な行政が続き、日本財政を悪化させている。こうした状況をどう打開するか。広域自治体と言いながら「狭域自治体」化した47都道府県を賢くたたみ、もっと力の発揮ができる少数の広域自治体に創り変えることだ。47都道府県を再編統合し、約10の広域圏からなる「州」とする「廃県置州」で東京一極集中は止まり、創意工夫で各地に元気と活力が湧き出てくる。その結果、ムダは省かれ企業も人口も地方分散が進む。

 

 

 

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■道州制ウイークリー(313)2022年7月16日

◆これが「日本型州構想」①

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

その時代にふさわしい「国のかたち」を設計する。それが政治の役割である。明治維新から150年、時代は大きく変わった。本格的な人口減少時代を迎えた日本をどうするか。「新たな国づくり」を本格的に議論すべき時期ではないのか。いまの統治機構「国→都道府県→市町村」の三層制とそれに連なる膨大な出先機関、外郭団体をそのままにする限り、この先、何度増税を繰り返しても1200兆円を超える財政赤字は消えない。むしろ増えるばかりだ。

バブル崩壊後、日本の国と地方の歳出合計は160兆円を超える動きだが、一方、税収など歳入は100兆円に届かない。こうしたワニの口のように開いたギャップ(赤字)を借金(赤字国債・地方債)で穴埋めする財政運営が続く。歳出の160兆円が私たちへの行政サービスに回るならまだしも、その半分近くは公債費、人件費、管理費など統治機構を維持するための間接経費に消えている。何度増税しても国民に豊かさの実感がないのは、こうした背景による。

この先は「人口が右肩下がり社会」へ向かう。人口減少時代に合う簡素で効率的な統治機構に衣替えする改革が不可欠だ。100万人に達しない県が続出する見通しの中、80~100万人規模の政令市が20近くある。こうした広域自治体と基礎自治体が逆転する現象の続出は、自治制度を根底から揺るがす。130年前にスタートした47の都道府県は、広域化した現代に合っていない。

私たちの日常は、経済も生活も県境に関わりなく広いフィールドで行われている。地方自治のエリアは実際都市と行政都市が一致していることが大原則である。拡大した実際都市(圏)に会う新たな行政都市(圏)の創設、人口の大幅な減少のトレンドを加味した広域自治体の再構築は待ったなしだ。47都道府県体制を解体再編し、広域圏を単位に約10の州をつくり、日常生活に合った広域行政圏の仕組みを創るべきだ。それが道州制である。この改革で財政面だけでも20兆円近いカネが節約できるとされる。消費増税10%分をカットできるということだ。

 

 

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(314)2022年7月23日

◆これが「日本型州構想」②

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

これまで「幻の改革」構想と揶揄されてきた道州制だが、実は日本はすでに道州制の素地はできている。20政令市、約60の中核市をそれぞれ政令市→特別市、中核市→政令市に格上げし、この都市自治体に多くの府県業務を移管する。その上で内政(厚労,、国交,文科など)に関わる本省業務、ブロック機関の業務、残存する都道府県の仕事を融合するかたちで「州」政府を創設し、内政の拠点とすれば道州制は実現できる。

ただ、手垢にまみれた「道州制」という表現に代え、日本型州構想という表現を使いたい。これまで北海道の「道」を意識し、「道州制」と呼んできたが、北海道州、九州州と「州」で呼称を統一すれば、もはや道州制と呼ぶ必要はない。

よく県がなくなるので反対だという人がいるが、日常に定着している都道府県名は地名として残るし、カウンティ(郡)という州の出先機関としてしばらくは残る。甲子園の47都道府県対抗高校野球も残る。なので生活上何の支障もない。自治体としての府県機能は即廃止というより、新特別市、新政令市区域外の市町村を補完するカウンティ(郡)として残し、これまでの県の下にあった「郡」が半世紀かけて次第に自然消滅したようにカウンティとしての府県を辿ればよいと考える。ソフトランディングの改革の進め方だ。

日本を「州構想」に移行させる狙いは3点にある。第一に、日本を地方分権の進んだ地方主導型の国家体制に変えること。第二に、東京一極集中を抑え、各圏域自立できる活力ある競争条件を整えること。第三に、国地方の統治機構を簡素化し、効率的で賢い統治システムに代えること。州構想移行で、各州は国から移された財源や立法権、行政圏、一部司法権をフルに使い、自立を始める。内政の拠点となる各州は広域政策の主体として、道路・空港・港湾などの広域インフラの整備、科学技術の振興、州立大学などの高等教育、域内経済や産業の振興、海外都市との交易、文化交流、雇用政策、州内の治安、危機管理、環境保全、医療保険など社会保障サービスを担当する。

 

 

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(315)2022年7月30日

◆これが「日本型州構想」③

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

 「州構想」への移行で国は外交、防衛など国家的な役割、州は広域政策を担い、市町村は基礎行政を担うように変わる。役割分担が明確になり、経営責任の主体もハッキリする。しかも三者は縦ではなく、役割の違う対等な横(水平)の関係に置き換わる。各州は、公選の州知事、州議会を別々に選出する二元代表制の政治機関を持つ地方自治体となり、国の出先機関や47都道府県が統合され、内政の総括権限や財源は各州に移る。国の地方へのかかわりは財源調整と政策のガイドラインを示す役割に限定され、各州が「内政の拠点」になる。

「州構想」への移行は日本各地を元気にする、それが大きなならいだ。各州は国から移った財源や立法権、行政圏、一部司法権をフルに使い、自立を始める。ただ、この州構想に対し、地域間格差が拡大し、勝ち組、負け組がはっきりする、小規模な町村が寂れるといって反対する意見もある。しかし、そうだろうか。現在の47都道府県のままで格差もなく町村も寂れないといえるのか。話は逆ではないだろうか。

広域州にすることで州内の核となる大都市がその州を潤し、町村は広域州の中で財政調整の恩恵を受ける訳で、細切れの47都道府県時よりむしろよくなる。 州制への移行で各州は課税自主権をフルに使い、州の意思で財源を集めることができる。場合によっては、政策減税も可能となる。こうして各州、各市町村は国から干渉されず、自らの意思によって課税し、税率を決定し、徴税できる。人や企業の流れを独自税源で呼び込むこともできる。

 

道州制ウイークリー

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(307)2022年6月4日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代① 脱「国民国家」

(大前研一著『経済参謀』より)

「どうしたら日本経済は低迷から抜け出せるのか」といった質問を受ける。――21世紀は「メガリージョン(大都市とその周辺都市で構成される新しい経済活動単位)の時代であり、もはや田中角栄的な「国土の均衡ある発展」は不可能である。にもかかわらず、いまだに政府は「日本」や「日本経済」という次元で考え、国家の均一的な発展を目指している。だから、いくら景気対策や経済政策をやっても効果がないのである。中国のような独裁国家は別として、アメリカにしろEUにしろ、繁栄は「国家」という枠組みの中で創り出せるものではなくなっている。新しい産業が興る完全な規制緩和を行い、世界から富・人材・企業・智恵を呼び込んだメガリージョンだけに繁栄が訪れるのだ。

「日本はどうすればよいのか」という問いに答えるなら、「国家という前提を」捨てよ、と言いたい。国防、外交、金融政策は国家が担うとしても、それ以外の領域は国民国家を卒業し、新たな地域国家像を模索すべきである。そうしなければ、21世紀にトランスフォームして、「繁栄の方程式」を手に入れることはできないのだ。もともと私は日本を11の地域に分けて立法、行政お、司法、徴税の権限を与える「道州制」の導入を提唱してきた。その考えは今も全く変わっていないが、道州レベルではなく1都市、1地域でもメガリージョンが誕生すれば、繁栄の起爆剤になると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(308)2022年6月11日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代② 繁栄の方程式

(大前研一著『経済参謀』より)

今、起きているのは経済のボーダーレス化、グローバル化です。モノ、カネ、情報が軽々と国境を飛び越えるようになれば、ビジネスも国境を越えて発想していかなくてはなりません。ネット隆盛の時代に国民国家という国境の中だけの枠組みで考えていたら、企業は死に絶えるしかない――というのが「ボーダレス・ワールド」の基本的な考え方です。ボーダレス化やグローバル化が進んだ今の世界では、「国家」の枠組みにしがみついて「あの国が我々の脅威だ」「移民・難民が仕事を奪う」と叫べば支持者が集まてくる、という状況がいたるところで見られます。「自国ファースト主義」や「ポピュリズム」がはびこっているのが現状です。現実を見れば、「ダイバーシティ(多様性)」が世界をリードしていて、国民国家という時代遅れの枠組みにこだわっていたら、富も人材も不足して、国が落ちぶれ、国民が貧しくなるだけです。

人・モノ・カネ・情報が国境を越えて集まってくる地域「メガリージョン」というものが世界にいくつか見え始めていて、アメリカ、中国、インドでそれぞれ3か所ぐらいに集約されます。繁栄に寄与する人材というものを、歴史的な流れから見てみると、18世紀から20世紀にかけて工業社会が広がり、国民国家というものが形成されました。そこでは、経済単位は国家(国境)となり、中央集権の政府主導ですべてのルールが決まっていました。

自分の国が反映するために富を生み出し、輸出して、また稼ぐ。稼いだカネを国民に分配する。大量生産・大量消費・輸出主導の経済システムの中では、指示通りに迅速・正確な作業をこなす均質な労働力が重宝されてきました。日本はこのルールの下で繫栄し、世界第2の工業大国となりました。

しかし、その次のフェーズではボーダレス・ワールドになって、かつ、インターネットが登場して情報化・ネットワーク化の時代となり、国家に代わって「メガリージョン」という新しい経済単位が生まれつつあります。ここでは、民間・起業家主導でルールが決まります。今後の繁栄の方程式を知るためにも、いま先行しているメガリージョンで何が起きているのかを知ることが重要です。

 

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(309)2022年6月18日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代③ アメリカの経済圏

(大前研一著『経済参謀』より)

アメリカの西海岸の「パシフィック・ノースウエストといわれるバンクーバーからシアトル、ポートランドなどを含む経済圏があります。この地域は、人によっては山脈名に由来する「カスカディア」と呼びます。ここはイノベーション産業がけん引する経済が好調で、ワシントン州とブリティッシュ・コロンビア州がイノベーション産業で相互補完的な連携により、さらなる経済発展を目指さす動きもあります。バンクーバー~ポートランド間で高速鉄道建設計画やバンクーバー~シアトル間で自動運転用高速道路構想もあります。

ベイエリア経済圏で拠点となっているのは、スタンフォード大学です。サンフランシスコからサンノゼまで車で1時間というエリアに世界中から人、カネ、モノが集まっています。代表的な企業は、アップル、グーグル、メタ、テスラなどです。これらの巨大企業に続く会社として次々とユニコーン企業が誕生しています。

GAFAMに続くような急成長をしているIT企業やユニコーン企業の創業者も移民や留学生が起業した例が多くなっています。大学や大学院が人材交流の場になっています。スタンフォード、UCLA,、ハーバード、MITといった大学をキャッチャーとして、そこに世界中から優秀な学生を集めます。アメリカにはスタートアップを助けるいろいろな仕掛けがあります。このホップ・ステップ・ジャンプというプロセスが大事なのです。日本の場合は、まず大学というのが単なるアカデミックな学びの場となっていて、世界から優秀な若者を呼び込みません。世界中から才能がある人材が集まってきて、彼らの欲望や野心を事業化していける場があるかどうかなのです。

 

 

 

 

 

 

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(310)2022年6月25日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代④ 道州制の先駆「九州」

(大前研一著『経済参謀』より)

中国にも3つのメガリージョンがあります。北京・天津・河北を含んだの京・津・冀の地域です。精華大学や北京大学、中国科学院などの研究機関、あるいはネット検索大手のバイドゥやパソコンメーカーのレノボなどの本社があります。次にグレーター上海。上海市と浙江省や江蘇省、安徽省の一部を含む長江デルタ地帯を高速鉄道網で結び、発展しています。アリババ、アントグループの本拠地です。もう一つが深圳を中心とするグレーターベイエリアです。隣の広州、珠海など珠江デルタに広がっています。深圳の人口は1400万人となり、1人当たりGDPは中国の都市としては、圧倒的に1位です。テンセント、ファーウェイ、ドローン最大手のDJIなど急成長を遂げたスタートアップ企業が集積しています。

インドでは、ニューデリー、ムンバイ、チェンナイ、コルカタを高速道路や高速鉄道で結んで、「黄金の四角形」とか「ダイヤの四角形」と呼ばれる壮大なインフラ拡充策が進められています。それらの大都市から離れた南部のベンガロールはインドのシリコンバレーとも呼ばれています。

日本では、東京、名古屋、大阪、福岡の中で元気なのは福岡です。商業の中心地・天神エリアで大規模な再開発プロジェクトが進行中です。しかも九州は、福岡だけが元気なわけではない。九州新幹線と高速道路網の整備により、九州としての一体感が醸成されて相乗効果が生まれてきている。さらに台湾の半導体メーカーTSMC(台湾積体電路製造)が熊本に工場を建設する。もともと九州は三菱電機、ソニー、東芝、NEC、沖電気などが各地に半導体工場を建設し、「シリコンアイランド」として成長したが、韓国への技術流失や製造コストが安い海外への工場移転などで徐々に寂れてきていた。しかTSMCの進出によって「シリコンアイランド」復活の足掛かりができたといえるだろう。九州は、韓国や中国、東南アジアに近いという「地の利」がある。ビジネスにおいても生産拠点としてもメリットが極めて大きい。道州制=クオリティ国家の延長線上にあるメガリージョンの最適モデルである。

道州制ウイークリー(303)~(306)

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(303)2022年5月7日

◆道州制の推進が少子化対策につながる

(村井嘉浩宮城県知事『人口急減と自治体消滅』より)

 地方が人口減少・少子化対策に取り組むには、地域特性を生かした施策の展開や街づくりが重要。国から地方への大幅な権限移譲が必要で、東京一極集中を改善し、東北全体で人を呼び込むには道州制の推進が重要だ。

 人口の減り方は県内でも市町村別、地域間で差があります。東京一極集中といわれますが、宮城も仙台一極集中です。仙台一極集中というのは、仙台都市圏は力があるということで、仙台から離れれば離れるほど問題が深刻になっています。これはまさに日本の縮図です。

 東京一極集中是正のために、知事会などは会社が集積しづらい地域の法人税率を低くして、企業を地方へと誘導した方がいいのではと主張しています。確かに一つの考え方と思います。しかし、東京や大阪や愛知など大都市圏などは猛反対するでしょう。そんなに問題は簡単ではないのではないかと思っています。企業はもっと有利な法人税率の地域が世界中にいくらでもあります。そうした中で本社機能が東京にあるのは、東京に魅力があるからです。それよりも地方が自ら力をつけていくことが重要と思います。東北6県だと1000万人の規模になります。東北が一つになるぐらいの大同団結ができれば、東京に勝てるような地域づくりをすることは十分可能です。

 地方自治体でできることがあるとすれば、道州制の推進です。東北を一つにまとめれば、例えば空港機能は、現在の9つの空港をA空港とB空港に集約して他の空港をなくす、また港もいずれかを選択的に大きくする、大学も集約することでレベルの高い大学をつくることができます。そうすれば、若い人がこぞって田舎に集まってくるでしょう。国が一律に「こうすればうまくいく」と示すのではなく、地方が自分の頭で考えられるように権限を移譲する、地方公共団体のスケールを大きくするということが、長い目で見れば少子化対策につながると思います。県単位でやろうとすると、国が決めたこと以外何もできません。権限と財源がないからです。

 

 

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■道州制ウイークリー(304)2022年5月14日

◆人口の一極集中は権力が一極集中だから

(佐竹敬久秋田県知事『人口急減と自治体消滅』より)

 産業構造の変化をとらえた地方の産業の活性化――国も我々地方自治体も、なかなかそのための解決策を見いだせないでいます。企業誘致活動はしても、企業はなかなか来ない。内発的な産業をどう生かすかが県に求められています。当然、企業誘致もありますが、ある程度、地域の中のいろいろな基盤や可能性を産業化するというのが、大きな流れです。産業は創意工夫で成り立つものではありません。今の産業政策であっても、地方への産業の再配置をする。思い切って企業や大学の地方への再配置までしないと、難しいのではないでしょうか。

 産業政策なしの人口の地方分散はあり得ません。日本の場合、産業の分散と人口分散を相当意識的にやらないと、黙っていたら東京に行ってしまいます。例えば、地方自治体で農地転用許可権限を国から市町村に移譲してほしいと言っていますが、国は岩盤規制の緩和は頑として認めません。これでは市町村の特性を生かせません。思い切って相当なところまで市町村に権限を任せると、市町村の責任でやらざるを得なくなります。権限があると、やる気も出てきます。今、権限はほとんどなく、この範囲でやりなさいとなっているから、やることの精度が低いんです。

 人口が東京一極集中になっているのは、権力の一極集中になっているから、そうなるのです。人口は権力のある所に集まります。結局、分権が必要なんです。自分たちの町だから自分たちで何とかしなければならないと、権力が自分たちの近くにあればそういう発想が出てきます。上から目線でああしろ、こうしろと言ったって、全然動きません。権力の集中の影響がまわりまわって人口減少となっているんです。

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(305)2022年5月21日

◆地方の特性生かした取り組み推進

(吉村美栄子山形県知事『人口急減と自治体消滅』より)

人口減少の歯止めには、地方の特性を生かした取り組みの推進が重要だと思っています。山形は3世代同居率が最も高い県です。家族を中心に、子育てや介護など福祉的な機能を内包しています。人口減少の中で経済成長するためには、女性も男性もともに働き、育むことができる社会の構造が必要です。具体的な取り組みとして、「ものづくり産業」で働く女性の異業種間交流を進め、付加価値の高い製品開発や販路開拓につながるような施策を考えています。

人口減少は、国家的な喫緊の課題です。政府を挙げての少子化対策、女性の活躍促進に向けた施策の充実化を図ることが大事です。中央主導で一律にやるのではなく、地方の実情にあわせた独自の取り組みに対し、財政支援を含め、国策で取り組んでいただきたいと思います。

中央一極集中を是正し、地方への人口分散を進めるため、政府は十分なリーダーシップを発揮し、産業の分散、再配置を強く推し進めることが極めて重要です。企業の本社や研究開発機能、デザイン、マーケティングといった事業所関連サービス産業を支援対策に追加するなど、「企業立地促進法」の大幅な拡充をしていただきたいと考えます。また、法人関係税の税率を大都市圏より低くするなど地方へ企業分散を促す制度を求めます。移転こそが企業の最大メリットとなるような制度拡充や創設が必要です。税制度改革の一方で、日本海側の社会資本整備を合わせて進めるべきです。社会資本整備は産業分散の基盤であり、災害時の太平洋側と日本海側の補完性や代替性確保にもつながり、地方創生には 欠かせません。

 

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(306)2022年5月28日

◆東京一極集中に歯止めをかける

(片山善博慶応大学教授『人口急減と自治体消滅』より)

20年以上前に国会等の移転に関する法律、いわゆる首都機能移転法ができて、首都機能の移転、分散という国の方針を決めている。その着眼は、東京一極集中は地方の疲弊を招き、国全体のバランスが取れなくなるという点と、首都直下型地震などが起きた時のリスクがあまりにも高いので、分散させようという機運が一時期盛り上がりました。しかし現在、それがほとんどできていない。この法律をもう一回見直すというか再生させ、実行することを政府がまずやるべきだと思います。

いろんな政策には地方に対する植民地政策のような側面があります。例えば農業では、地方は原材料をつくり、付加価値をつけるのは都会という、あたかもプランテーション農業のようなことをやってきました。第二次産業なんかも全部そうです。本社は東京にあり、地方には工場を移転しよう、支店をつくろうという支店経営でした。何が問題かというと、付加価値の高いもの、そういう分野は全部東京に残し、付加価値のつかない生産性の低い部分だけ地方に移そう。まるで中国や東南アジアに製造拠点を移すのと同じような発想です。

この政策は変えないといけません。地方で付加価値の高い仕事をする。そうすると、試験研究機能とか高等教育機能が必要になります。そうすると、それを支える国立大学や道府県の試験研究機関がありますから、そこにもっと光を当てる、こういうことをやらねばならないと思います。いま、地方の国立大学では、運営交付金を減らされています。そこで何を削るかというと、図書費と研究費ということになる。そうではなくて、そういうところにおカネをつけて、地方で試験研究機能、研究開発機能、高等教育機能とかさらに活気が出るような手を打つことが、ベーシックな部分での一極集中を防ぐことにつながるのではと思います。

 

道州制ウイークリー(298)~(302)

よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(298)2022年4月2日

◆集積のメリットを競え

(小峰隆夫法政大学大学院教授『人口急減と自治体消滅』より)

 働く人の割合が下がってくる人口オーナスの悪循環を小さくしていくには、地域における自律的・安定的な雇用機会を増やし、地域から都市部への生産年齢人口の移動を小さくしていくことが必要だ。そのためには、次のような方向で地域づくりのイノベーションが必要だ。

第一は、「誰が担うのか」だ。かつての地域づくりでは、国が地域政策の主役だった。基本的な方針は国が策定する「全国総合開発計画」によって示され、国の政策が次々に立案されていった。しかし、それによって「金太郎あめのように、どこでも同じような」開発が繰り返されるようになり、地域の個性が失われていった。全国一律の開発は批判を浴び、全国開発計画は廃止された。地域の再生は、まず当の地域が積極的に地域資源を生かして活性化を図ることが不可欠だ。そのためには地方が開発の主役になり、自治体、企業、大学、NPO,市民など多様な主体が地域づくりに参画していく必要がある。

第二は、「どんな方向を目指すのか」だ。かつての地域づくりでは「集中」を抑え「分散」を促進するというコンセプトが維持されてきた。今や、集中への動きが経済社会の大きな流れになっており、集中のメリットが発揮されやすい時代になっている。今後はむしろ「集中化」を志向し、各地域が集積のメリットを競い合うような方向へ進むことが必要だ。政策的に無理に集中を抑制し、分散を図ろうとすると集中の利点が発揮できなくなり、地域の活力をそぐことになってしまうだろう。

第三は、どんな手段を使うかだ。かつての地域づくりでは、公共投資の拡大を中心としたハード路線が中心だった。今後は、歴史的な伝統や人間同士の信頼関係などの「ソーシャル・キャピタル」をベースとして地域を成長させていくという考え方や、大学、研究拠点,、起業環境などの知的環境などの知的資源を組み合わせることによって地域の成長力を高めていくという発想を強める必要がある。

 

 

 

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■道州制ウイークリー(299)2022年4月9日

◆「国土の均衡ある発展」論は日本の衰退招く

(八田達夫アジア成長研所長『人口急減と自治体消滅』より)

 日本の長期データでも過去40年の経済協力開発機構(OECD)各国のデータでも、経済成長率と人口成長率は基本的に無関係だ。したがって出生率に人為的に介入する理由はない。しかし、自然に伸びるはずの人口を人為的に抑えている制度は正すべきだ。

 生産性の向上には二つの異なった源泉がある。第一は、技術革新である。工業的なものはもちろん、経営上の技術革新もある。第二は、低生産性部門から高生産性部門への資源の移動である。経済成長すると必ず成長部門と衰退部門が生まれる。しかし、衰退部門は往々にして強い政治力を持つため、生産性が高い部門への資源の流入を阻止する制度的障害を設ける。参入規制はその典型だ。参入規制のような資源移動の障害を取り除くことが「構造改革」である。

 戦後における石油の輸入自由化で、1950年代に隆盛を極めていた石炭業界はつぶれ、大量の失業者が出て地元の町は疲弊する。輸入自由化に対して激しい反対運動が起きた。60年代の高度成長は、石炭産業の犠牲がなければ実現しなかっただろう。斜陽産業をしっかり衰退させるメカニズがなければ、経済全体は成長しない。同様のことが地域についても言える。衰退地域から生産性の高い成長地域に資源が自由に移動することによって、国は成長する。「国土は不均衡に発展」するものだ。

 1970年代からは、「国土の均衡ある発展」論に基づく地方へのばらまき政策によって、大都市圏に対する極端な人口抑制政策が行われてきた。年間の三大都市圏への人口流入数は、ピーク時の10分の1まで落ちた。大都市圏への人口流入抑制策は、①公共投資の地方ばらまき。②農業への保護、③地方交付税による地方への過剰な再配分④工場等制限法などである。しかし、首都圏への人口流入を人為的に減らすことは、消滅しつつある市町村とその役場のしばしの延命には役立つが、「国土の均衡ある衰退」をもたらすことになろう。65年から2010年まで、100万人超の大都市の人口が伸びた。増加率は、首都圏よりも札幌、仙台、広島、福岡などの支店都市が高かった。小都市の人口減少対策として、中都市を強化し、多極集中で中都市と大都市が共存することで、日本は成長することができる。

 

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■道州制ウイークリー(300)2022年4月16日

◆官民連携による積極投資で地域の魅力高めよ

(川崎一泰東洋大学教授『人口急減と自治体消滅』より)

 地域経済においては、人口減少社会の影響はもう既に各地で顕在化している。過疎化の進行により地域コミュニティの維持が困難になる限界集落の発生、中心市街地の空洞化などにより商業集積の荒廃、住宅地にも空き家が目立つようになるなどの減少がそうである。こうした地域は人口減少により、農地、商店街、住宅地にそれぞれ耕作放棄地、空き店舗、空き家が発生し、集積の経済性、規模の経済性が受けられなくなり、ライフラインの維持管理に非効率が生じ、インフラの維持が困難となり、人口流失が加速するという悪循環に陥っている。

 日本創生会議が示した「消滅可能性都市」の推計は必ずしも過疎地だけの問題ではなく、大都市圏でも消滅可能性都市が発生することを示し、警鐘を鳴らした点に大きな特徴がある。

 これまでは、日本全体では人口も経済も成長してきたことから、人口が減少していく自治体に対して、公共事業や補助金などを通した所得再配分を行うことができた。ところが、日本全体で人口が減少し、経済成長も鈍化する中、従来通りの所得再分配は困難になる。しかし、積極的な投資により地域の魅力を高めることこそが消滅を防ぐ方法だと考える。ただし、公共投資の非効率性は数多く指摘され、市場メカニズムを軽視してきたことから、多くが維持困難な状況に陥っている。したがって、投資主体は民間が中心となる官民連携の形が望ましい。

 アメリカ地方政府で運用されている「増加税収財源措置」(TIF=Tax Incremental Financing)の導入により、投資の選択と集中を図る方法を提案する。TIFは特定地域の再開発プロジェクトの事業費の一部を、その地域内で再開発に伴う資産価値の増加分から生じる財産税増収分を担保とした債権発行で調達し、実際の財産税増収分で償還する仕組みである。この仕組みは政治的力学によりゆがめられてきた公共投資の失敗を投資家のチェックにより選択させるものである。

 

 

 

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■道州制ウイークリー(301)2022年4月23日

◆中央集権システム解体で住民自治再生を①

(穂坂邦夫地方自立政策研究所理事長『人口急減と自治体消滅』より)

 人口減少社会に危機感を持たない国と地方。国の仕送りを受ける地方はひたすら高度成長期の無原則で高い行政サービスを今も取り続けている。この最大の原因は現行における中央集権システムといえる。日本式中央集権システムとは、遠い指揮官による地方の支配構造である。現在の95%以上の地方自治体はジオ分たちで徴収する地方税をはるかに超える国の地方交付税交付金や補助金によって運営されている。これでは、地方の主権者である住民は無関心にならざるを得ない。無関心な住民に選ばれる首長や議員は、国への依存体質に陥いる。

 国の支配によるこのシステムは地方に対して一律的行政運営を求めざるを得ない。個性を失った地方が次々に誕生する。首長はひたすら国の指示待ち姿勢を貫くことになる。このシステムの欠陥は同時に膨大な無駄遣いにもつながる。これまで地方自治体の自由な発想を促進する様々な施策がとられてきたが、いずれも成果を上げることはできなかった。その原因は「集権システムの幹は何一つ手を付けず、小枝だけその都度切り取ってきた」からである。

国は根幹である権限や財源を地方へ移譲することを嫌い、その都度、枝葉末節の政策を取ることで身をかわしてきたからである。国の施策の柱である地方の活性化と再生を目指す地方創生事業も従来の繰り返しと言わざるを得ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(302)2022年4月30日

◆中央集権システム解体で住民自治再生を②

(穂坂邦夫地方自立政策研究所理事長『人口急減と自治体消滅』より)

 地方を再生する第一点は、地方自治体自身の「危機意識」の醸成が不可欠である。自治体自身が危機感を持ち、自己責任を大原則として、ありったけの知恵と工夫を発揮しなくてはならない。

 第二は、地方における雇用機会の拡大である。雇用の機会を拡大すれば、人口の流失を防ぐだけでなく、都市からのUターン組も期待できる。地方への企業誘致にしても、全国一律に行うのではなく、地方の実態に応じて税制の工夫や情報システムの整備を自由に行うことができれば、もっと拡大する。アメリカは大企業が各地に分散している。自由な財源があれば特産物もインターネットを活用した地方の智恵により大都市圏と直結できる。移住政策も現場からの発想によってもっと成果を上げることができる。観光事業も極めて重要である。今のような「個性なき一律的街づくりではない。各地域に様々な文化が根付いている日本を世界の「ラストリゾート」と位置付けることだ。

 約100兆円を消費する地方自治体も開放する。役所の民営化である。特に市町村の業務の75%は民間人で業務を行うことができる。働く場さえあれば地元を離れることはない。国と地方が発想をともに転換し、真剣にその気になりさえすれば地方は再生し、大都市一極集中は是正される。さらに国と地方の役割分担が確立され分権が進むと地方の自己責任が明確になる。中央集権システムによって失われた地方の自立心が回復し、地方交付税交付金や補助金の30兆円の無駄も削減される。

 人口減少社会を乗り越える唯一の方策は本質に切り込んだ中央集権システムの解体である。中央集権を残したままでは、地方を再生し、大都市一極集中を是正することは不可能である。中央集権からの脱却は決して難しいことではない。国と方の役割分担を明確にするとともに、それぞれの行政経費に応じた財政の分配を行う。これからの国は交付金や補助金で地方を縛る付けるのではなく、地方自身に自己責任と危機感を持たせなければならない。これからの国家は、外交、防衛、通貨、金融などに特化し、全力で取り組むことだ。

道州制ウイークリー(294)~(297)

よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(294)2022年3月5日

◆脱「地方バラマキ型補助金政策」こそ地方創生政策

(八田達夫・NIRA総研開発機構『地方創生のための構造改革』)

 第二次安倍政権は成長戦略として「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と呼ばれる地方創生政策が行ったが、これは基本的に「地方バラマキ型」の補助金政策であり、成長戦略としては極めて不備であった。成長戦略としての地方創生の基本は、地方が優位性を持つ分野で、そのポテンシャルを最大限に生かせる環境整備をすることである。そのためには、成長を妨げている規制や地方行政の仕組みを改めていく必要がある。

 例えば農業では、株式会社の農地保有を積極的に進めていくことが重要だ。ホームステイは、地方の観光産業を大きく伸ばす方策になりうるが、その振興のための規制緩和は遅々としている。一方、地方が強い優位性を持つ高齢者サービス産業は、地方自治体が国民健康保険の財源負担を強いられているため、自治体は高齢者施設の新設に許可を与えることに躊躇しており、地方における進展が妨げられている。

 地方が優位性を持つ分野でそのポテンシャルを最大限に生かせる環境を整備するこれらの規制改革や行政改革こそ、地方に真の活性化をもたらす。しかし、それは既得権を脅かす改革でもある。このため、政治的・行政的な抵抗は極めて強い。長期的な成長効果が乏しい「まち・ひと・しごと創生総合戦略」のような補助金政策が、近視眼的な政治家たちに受け入れられやすいことと対照的である。

成長戦略としてふさわしいのは、この政治的に難しい規制改革と行政改革である。

 

 

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(295)2022年3月12日

◆旧態依然の地方財政制度

(八田達夫・NIRA総研開発機構『地方創生のための構造改革』)

わが国の集権体制は変わりつつある。従前、地方自治体は国(中央政府)が企画・立案、財政調整(財源保障)した政策・事業を執行する、いわば「国の下部組織」に過ぎなかった。しかし、①機関委任事務の廃止を含む地方分権一括法の施行(2000年4月)、②全国の自治体をほぼ半減させた「平成の大合併」、③3兆円規模の税源移譲を実施した三位一体の改革、④補助金の一括交付金等の「地域主権改革」などを経て自治体の主体性や責任は高まりつつある。しかし、地方財政の「制度」は旧態依然の性格を残している。

1=地方財政(地財)計画による財源保障とそれを実現する「地財交付税制度」は、国が決めた政策(地財計画に計上した支出)を確実に自治体に実行させるという集権的分散システムを前提にした補助金である。2=一括交付金が進んだとはいえ、地方の創意工夫が十分に発揮される状況にもない。「地方創生関係交付金」は先進的な自治体の取り組みを支援するとするが、何が先進的かは国の判断によるところが大きい。自治体は自らの創意工夫ではなく、国をおもんばかった計画(地方版総合戦略)を作ることにもなりかねない。3=国の財源保障は(赤字地方債や国が同意した)地方債にも及ぶ。「暗黙裡の信用保証」は地方債の発行コスト(金利)を国債並みに下げてきた。このことは公共施設の更新・運用への民間資金・経営ノウハウの活用を狙いとする公民連携(PPP)民間主導(PI)普及の阻害要因にも挙げられる。低い地方債の金利は(リスクを含む)本来の公共事業・公共施設のコストを不明瞭にしてしまう。加えて、地方自治体が独自に担う政策にも弊害が見受けられる。

 国の財源保障にも自治体の取り組みにも欠けているのは「住民の財政責任」だ。自治体の自助努力によらない格差を埋めるのは、分権体制下での地方交付税の役割である。しかし、現行の交付税はむしろ地方の財政規律の弛緩、依存体質を助長してきた。改革努力の前に交付税をあてにする状況で本当に改革が進むかは疑問だ。

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(296)2022年3月19日

◆公共サービスのリストラ必至

(大庫直樹マッキンゼー共同経営者『人口急減と自治体消滅』より)

 自治体とは何か。あけすけに言ってしまえば、地域住民から税金を集め、それを財源にして地域住民に対して公益にかなうサービスを提供する団体である。税金の主たる払い手は誰か。それは生産年齢人口である。都道府県は、その税収の大半が、生産年齢人口が直接、間接的に支払うものである。個人住民税、法人2税、地方消費税、自動車税、軽油引取税などである。

 今、自治体の財源を支えている生産年齢人口の減少が始まった。これから10年。20年の間、生産年齢人口は総人口を上回る減少スピードで減少していくことになる。自治体は、減少する歳入規模に見合った公益サービスを提供できるように、業務を根本から見直さなければならない。自治体は日本という国、自治体のある地域の経済が成長を続けてきたため、事業を絞り込む経験は少ない。しかし、それをしなければいけない状況がすぐ近くまで来ていることを認識しなければいけない。事業を絞り込むことを通じて、自治体サービスの多様性が広がることが示唆される。自治体自身によるオリジナルの「自治」が目覚めるということである。

 公営企業などの事業を、自治体で行うものとそうでないものに切り分けることによって、自治体の新しい事業領域が明確になるはずでもある。日本の画一的な地方自治制度を見直す契機を、人口減少社会への進展が実はもたらすことになるかもしれない。自治体が自らをデザインする時代の到来を予感させる。

 

 

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(297)2022年3月26日

◆効率化と住民参加で財源は確保できる

(柏木恵キャノングローバル戦略研主任研究員『人口急減と自治体消滅』より)

 人口減少社会において、自治体が生き残るためには、住民サービスを効率的に提供し続ける仕組みと、そのための財源(歳入)を確実に確保し無駄なく使用する仕組みが重要である。今の日本は、国と地方を合わせた長期債務残高が1000兆円を超え、まったなしの状況である。財源確保を中心に自治体の存続を考える際に、意識すべき観点は、勤労世代が減少するということである。自治体職員数が減少するだけでなく、税金や料金を納付する勤労世代も同じく減少していくので、自治体同士の連携だけでなく、企業や住民も巻き込んだ形で、効率的で簡素な財政にする必要がある。これから先、自治体が人口減少を乗り越えるには、官民の協働化に加え、自治体内、自治体間の一元化・共同化をこれまで以上にあらゆる自治体業務に取り入れることが必要である。カギは、ITを駆使した一元化・共同化・協働化である。

 日本の国家財政は社会保障関係費が3割を占め、自治体も12兆円ほど負担している。自治体の歳入の約101兆円の内訳は、地方税が35%、地方交付税交付金が20%、国庫支出金が16.3%、地方債が12.2%である。大部分の自治体が地方交付税や国庫支出金などに頼っている。自治体財政の構造的な問題として、滞納残高が1.8兆円ある。個人住民税が9300億円、固定資産税が約5600億円である。国民健康保険や介護保険料も同時に滞納している可能性があり、これらの滞納に対応し徴取することで自主財源を増やすことができるが、そのためには徴収の一元化・共同化・協働化を進めるとよい、

 協働化とは、民間企業との協働であり、民間委託はそのひとつである。IT化、データ化も進めれば、医療や介護のデータベース化で医療保健や福祉の提供の効率化も望める。根本的に財政難から脱却するには、消費税の引き上げや、国税及び地方税の体系の見直し、年金や医療などの社会保障給付とその負担の見直しなどを引き続き検討し実行することも必要不可欠である。

道州制ウイークリー(290)~(293)

よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(290)2022年2月5日

◆アイルランドの奇蹟

(野口悠紀雄『リープフロッグ・逆転勝ちの経済学』より)

かつてヨーロッパの最貧国であったアイルランドは、1980年代半ばから、だれもが予想しなかった経済成長を始め、いまではアメリカより豊かな国になっています。急成長した要因としてよく指摘されるのは、法人税引き下げです。これによって海外から外国企業を呼び寄せ、成長を実現したというのですが、法人税率を引き下げたからといって、必ず外国企業が集まるわけではありません。外国企業がアイルランドに来るようになったのは、アイルランドに欧州本部を置き、そこからヨーロッパ大陸の顧客サービスを行うようになったからです。こうなったのは、80年代になってインターネットの利用が進展し、通信コストが大幅に低下したからです。最初の形態はコールセンターです。これが成長の始まりでした。その後、コールセンター業務は安労働力を求めてインドに移動し、アイルランドでの活動は、付加価値の高いものに移行、アイルランドは地球規模でITビジネスのハブになったのです。アイルランドはそれまでの農業型経済から、高度な技術を駆使する国際的サービス型経済へと転換しました。

一方、日本経済の沈滞ぶりは、目を覆わんばかりです。OECDの統計を見ると、雇用者一人当たりGDPで、すでに韓国やトルコに抜かれています。金融緩和や財政出動などと言ってごまかすのではなく、経済構造の改革を真剣に考える必要があります。日本は中国をモデルにすることはできませんが、アイルランドをモデルにすることはできます。例えば、道州制を導入し、全国を5つの道と州にしたとすれば、一つはアイルランドと同じくらいの面積になります。これらの各々に独立国並みの自由度を与えることとすれば、新しい発展が期待できるかもしれません。

*アイルランド=面積70,273㎢、人口493万人。

*リープフロッグ=カエル飛び

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(291)2022年2月12日

◆IT化に対応できない「1940年体制(国家総動員体制)」

(野口悠紀雄『リープフロッグ・逆転勝ちの経済学』より)

ITではインターネットによって組織を越えたデータ交換が極めて容易に行えるようになりました。非常に低いコストで地球規模でのデータ交換が可能になったのです。組織の枠を超えた情報のやりとりが重要な意を持つようになりました。このような大きな技術革新が経済活動を大きく変え、1990年代以降の世界を一変させました。ITがもたらした巨大な変化は、産業革命のそれに匹敵します。ところが日本の組織は閉鎖的な仕組みであるために、これにうまく対応することができなかったのです。問題は、デジタル化の中身が、中央集権的なものから分散的でオープンな仕組みに転換したこと、そして、その変化に日本が対応できていないことなのです。その根底に日本型組織の問題が横たわっています。新しい情報通信技術が日本の経済社会構造、とくに大組織のそれと不適合なのです。

古いものが残っているのは、コンピューターだけではありません。さまざまな分野で既得権の残存が大きな問題です。キャッチアップ型の経済成長においては、先進国というモデルが存在するために、ビジネスモデルはすでに存在しています。そのため、政府がリードしてそれを実現するのが効率的な方法ですが、リープフロッグの場合には、そういう訳にはいきません。政府は、新しいビジネスモデルの開発は不得手です。これは、民間の組織が行うしかありまっせん。政府が新しい活動に補助金を出すべきだと言われます。しかし、そのようなことによってリープフロッグが起きるわけではありません。改革をリードするのは政府の役割であるという考え方は、キャッチアップ型の経済成長の場合です。リープフロッグは、このような思考法を変えない限り実現しません。

 

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(292)2022年2月19日

◆地方分権化進め地方衰退ストップ

(三浦 展『大下流国家・オワコン日本の現在地』より)

 東京圏からくる可能性のある移住希望者はシェアハウスに住むなどシェアリングやエコロジーンに関心が高い。それぞれの地方固有の町の歴史・文化・町並みの活かし方にも関心がある。地方に移住したら仕事をしながら、シェアリングやエコロジーに関わる活動やまちづくりができるということが、大きなインセンティブになりそうである。他方、地方では相変わらず東京をまねた都市再開発も盛んであり、駅前に高層ビルを建てれば若者が戻ってくると勘違いしているような政策がとられること少なくない。

 古いものを活用することで若者が地方にとどまるー――。福井市の場合、行政などの人たちはそれが理解できなかった。彼らは古いビルを壊して新しいビルを建てないと、福井の未来はないと思っていた。こうした中で、古い建物を生かしながらまちづくりをすることの良さが福井でも理解され始めた。新しいビルを建てて、家賃を上げて、全国同じ店が入るというモデルでは、福井市内の若い人にはチャンスがない。売り上げも県外に流失する。だから若者はチャンスを求めて大阪や京都や東京、名古屋に出て行ってしまう。

 東京郊外での若い世代の人口増加のためには「ワーカブル(働きやすさ)」「夜の娯楽」「シュア」が必要と主張してきたが、この原則は地方にも当てはまる。東京圏から地方への移住のネックになるのが仕事である。日本全体が下流化する中、地方では、中央志向の政策でない、地方による地方のための政策が求められる。地元のモノと人材を活用して地元を盛り立てるべきなのだ。巨大な国家を全国共通一律に動かすのは難しい。それぞれの地方単位で地方に即した政策を行っていった方がいいのである。そのための地方分権化がもう一度議論されたほうがいいだろう。

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(293)2022年1 2月26日

◆日本のGDPの7割はローカル経済圏が稼ぐ

(冨山和彦『なぜローカル経済から日本は甦るのか』より)

日本のGDPと雇用のおよそ7割を占めるのは、製造業ではなくサービス産業だ。しかも、サービス産業の大半は、世界で勝負するようなグローバル企業ではなく、国内各地域内の小さなマーケットで勝負するローカル企業が大半だ。サービス産業の多くは、経済構造的にはローカル企業がローカルに活動する構造から、あまり大きくは変化しない。だとすれば、これかの日本の経済成長は、ローカル経済圏のサービス産業の労働生産性とその相関関数である賃金が大きく左右すると考えていい。もちろん、世界で勝負できる製造業やIT産業のグローバル企業には頑張ってもらえばいい。その「稼ぐ力」で、貿易収支であれ所得収支であれ、我が国の国際経常収支に貢献してくれることは極めて重要である。

しかし、それだけでは必要十分条件にならない、世界で勝負できるわずかな数のグローバル企業がどれほど頑張っても、残り大半のローカル企業が足を引っ張っていてはどうにもならない。しかも、経済のグローバル化が進展すると、ローカル経済圏で活動する非製造業への依存度が高まるのが、先進国共通の現象である。だから、世界で勝負するグローバル企業と日本国内で勝負するローカル企業の割合が大逆転するようなことも、構造的には絶対に起こりえない。

いずれにせよ、今、日本の社会と経済に起こりつつある巨大なパラダイムシフトは、グローバルな経済圏とローカルな経済圏の違いを際立たせている。

道州制ウイークリー(285)~(289)

《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(285)2022年1月1日

◆地方自治を変え国を一新⑥

(大前健一『君は憲法第8章を読んだか』より)

 日本では、今でも田中角栄的な「国土の均衡ある発展」というコンセプトが根付いている。中央で集めた金を地方に再配分する地方交付税がその象徴だ。ところが、東京と鹿児島の1人あたりGDPを比べると、2倍以上の開きがある。沖縄はもっと低くなる。つまり、中央集権で「国土の均衡ある発展」をやろうとすると、与えられる方は与えられることを当然と思い、自助努力の妨げになっているのだ。

一方、ドイツでは、基本法で中央から地方への援助を禁止している。それぞれの州が立法権から徴税権まで持っているからだ。さらに、国からの援助のみならず、豊かな州から貧しい州への援助も上限が厳しく決められている。これがドイツにとって、「国土の均衡ある発展」に非常にプラスになった。なぜか? 誰も助けてくれないので、自助努力を重ねるしかないからである。その結果、企業や施設の誘致なで競争が起こり、長期的にみると非常に均衡ある発展につながったのだ。

日本人が大きく勘違いしているのは、これを中央指導で行った方が効率がいいだろうと考えている点だ。だが、それは途上国だけに通用する考え方である。ある段階から先は、地方それぞれの自立を促し、世界から「カネ・人・企業」を呼び込むように仕向ける。そうやって地方に権限を渡している国の方が豊かになるのである。

 

 

 

 

 

《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(286)2022年1月8日

◆地方自治を変え国を一新⑦

(大前健一『君は憲法第8章を読んだか』より)

中央集権型の硬直化した政府では、新たな産業を興し、これまでの旧態依然とした社会を変革することは期待できない。道州制を導入し地方ごとに三権を有する真の意味での地方自治を実現すことで自立する道を模索していく必要がある。その前に大きな壁が立ちはだかっているのが、地方自治について定めた「憲法第8章」なのである。

現行の日本国憲法は、終戦直後に進駐軍が慌てて作っていったお粗末なものである(原文は英語)。最高司令官マッカーサーの指揮の下、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)民生局――つまり、日本という国を知らない人たちが書いた憲法だから、前のほうだけに力が入っている。前文や、明治憲法で絶対君主とされた天皇を「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」とする第1章、「戦争放棄」の第2章に比べると、それ以降の文章はまったく気合が入っていないのだ。

大前版憲法改正草案の地方自治の項では、国家を形成する社会単位を「コミュニティ」としている。コミュニティは、人間生活に必要な基本財が満たされること、健康で安全な生活が営まれることが必要であるとし、道州はコミュニティの集合体とされ、産業基盤育成の単位とされる。財源は個人からの消費税、法人からの法人税及び固定資産税によって賄われる。日本の県は規模が中途半端で今のままでは地方分権が進まない。分権化に足る規模の道州を新設するとしている。

 

 

 

 

 

《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(287)2022年1月15日

◆「道州制」なぜ実現しないのか

(高橋洋一『日本国民のための政治学入門』より)

地方分権は今より進んだ方がいい。そんな考えのもと「道州制」が言われるようになって久しい。現在の日本の行政区分は都道府県だ.まず日本国があり、それが47都道府県に分かれている。しかし、国のすぐ下の単位が都道府県というのは細かすぎる。そこで都道府県より広い、中ぐらいの行政区分である「道」や「州」を新たに設けようというのが道州制である。道州には、現在の都道府県が持っている権限より強い権限を与える。そうすることで地方自治体の自立性を高め、「ニア・イズ・ベター」の地方分権の原則をより強く機能させてはどうか、というわけだ。この道州制は根強く訴えられており、多くの人が賛同している。それにもかかわらず実現していない。

足かせの1つとなっているのは、実は憲法だ。「地方のことは地方で」を「地方のルールは地方が決める」と捉えると、地方の条例制定権を自立させた方がいい。それには、憲法第94条の改正が必要だ。憲法94条では、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、および行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる」とされているが、あくまで「法律の範囲内」でしかできないのだ。各地方がその条例により、国が決めた法律の上書きをできるようにすることができれば、地方の自由度は格段に増すはずだ。そこで障害になったのが、憲法94条だ。国の法律の範囲内でしか条例を作れないので、条例による国の法律の上書きは憲法を改正しないと無理なのだ。

ただ、中には道州制によって「今ある立場や権限」を損なわれたくない人々がいる。都道府県の知事の立場にある人たちでらる。道州制が導入されたら、道州の長が設けられ、都道府県知事の立場は道州長の下になる。「県知事」から「地区長」へ格下げされることになる。ただし、人情としては理解できても、正しいと言えるのかどうか。

 

 

 

 

《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(288)2022年1月22日

◆地方分権で地域格差が広がる?

(高橋洋一『日本国民のための政治学入門』より)

地方分権を進めるためには、現在の税制にもメスを入れる必要がある。より強く「地方のことは地方で」を機能させるには、地方財政の権限を広げなくてはいけないからだ。「地方のことは地方でやる」とは、すなわち「地方のことは地方のカネでやる」ということでもあるのだ。現在の税制はどうなっているかというと、一言でいえば「上納金分配システム」だ。簡単に説明すると、国民が納めた税金は、いったん国に納められる。そして「地方交付税」として、国から地方へと分配される。つまり地方の財政はほぼ国が握っているのだ。

「地方自治体の財政の不均衡を調整すること」、つまり「金持ち地域と貧乏地域の格差を生まないようにすること」が、地方交付税の大義名分だ。しかし、そもそも、国が地方に税金を「上納」させるというシステムがなければ、赤字になることもない自治体は多いはずだ。本来はストレートに地方の財源に入るべき税金が、いったん国に吸い上げられる。現行の「上納金分配システム」では、上納金を納めることで赤字になる自治体は、地方交付税をありがたく,おしいただくしかない。地方財政を国の方でコントロールしようという「親分・子分」的な税制が、地方分権の大きな足かせになっているのだ。

地方自治体の財源の不均衡を調整する地方交付税がなくなったら、地域の経済格差が生まれ、極端に貧しい地方自治お体が生じるのではないか、確かに一部の地域ではそういうことも起こってくるだろう。とはいえ、そもそも地方自治体とは単なる「地域の区切り」だ。その間で生じる経済格差を問題にすること自体に、実はあまり意味がない。経済成長を続け、失業率を最低限に抑える。そのために必要な、かつ適切な経済政策を行う。こうして国民一人ひとりが、あまねく文化的で豊かな生活ができるようになっていけばよい。そこで「地域間格差」を問う必要などないのだ。本当に問題にすべきは個人間の所得格差だ。

        

 

 

 

《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(289)2022年1月29日

◆コロナ禍で考える地方分権の是非

(高橋洋一『日本国民のための政治学入門』より)

2020年に世界的流行となった、新型コロナウイルも地方分権を「わがこと」として考える格好の材料である。ひとたび新型ウイルスが国内に入ってしまったら、感染状況は、いわば各地方自治体の足元の問題だ。自治体によって人口も違えば人の流れも違い、したがって感染状況は自治体ごとに異なる。こういう場合は、地方自治体の首長の判断で対策を打つのが最も効果的だ。感染拡大の抑え込みは時間との勝負でもある。地域の状況を最もよく把握している人が独自の判断で、適時、瞬発的に対策を打つこととが望ましい。

現に欧米の国々を見ても、国家元首の役割は補償金の財源を準備したり、国民に向けて警戒を呼び掛けたりすることだ。地方自治体に相応の権限があり、ロックダウンなどの対策は、各都市が独自の判断で行っている。それが日本では、いちいち地方自治体から国に要請しなくてはいけない。その手間と手続きの手間が無駄なのだ。

また、補償金の問題も地方分権の話と結びついている。ほとんどの自治体には補償金の財源がないから、休業要請を出したくても出せない。そこで政府は「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」という制度を設け、地方自治体に「住民に補償金を出すための補助金」を出すようにした。しかし、そもそも地方自治が国に税金を「上納」するというシステムになっていなければ、補助金の財源も、ある程度は地方独自に確保されていたはずだ。つまり、地方分権が進んでいないために、「住民に補償金を出すための補助金」を出す制度を新たに設ける、などという面倒な措置が必要になってしまったわけである。

さらに、地域の医療が逼迫している。医療の逼迫度合いは、都道府県によってまちまちだ。県をまたいだ患者の地域間搬送波なかなかできない。もし道州制ができて入れば、医療の広域行政は県ではなく、道州単位にするだけで、医療の逼迫はもっと抑えられる。地方分権は、私たちの生活、健康や生命にもかかわる大きな問題なのである。