道州制ウイークリー

2016年12月3日

■道州制ウイークリー(21)

◆財政自主権、立法権と関西州の人材育成

(塩沢由典著『関西経済論』から)

道州制が施行され、政策実験を可能にする要件で、重要なものが財政自主権と立法権である。財源があっても、自主的に法律を作ることができなければ、大胆で革新的な政策実験は不可能である。道州制のもとで、理想の枠組みができたとしても、現在の課題に応える大胆な政策を創造できる人間がいなければ、すべては絵に描いたもちである。頭脳機能と人材育成が道州制の成否を握る鍵となる。霞が関の思考方法に慣れすぎた人には、大胆な想像力は望めない。関西州がうまく機能するためには、このような人材を自前で養成するしかない。現在、関西には10を超える公共政策大学院、総合政策大学院と学部があるが、そうした教育機関の教育内容と人材育成目標も、将来の関西州を睨んだものに再編成していく必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

2016年12月10日

■道州制ウイークリー(22)

◆持続した経済発展を可能にする広域行政区域の創造

(塩沢由典著『関西経済論』から)

道州制反対を唱えている人達、あるいは府県を維持することを唱えている人達が、州都が遠くなり不便になると言っているのは、道州制移行後の政治・行政のあり方をよく理解していないためと思われる。道州制は、道州政府が現在の道府県の仕事をまとめてやるようになるというものではない。議会を含む道州政府の役割の多くは国が独占してきた法律制定や政策決定、多くの許認可事務や箇所付け事務を道州政府が行うというものである。外交・国防・通貨・関税など国が独占的に担う分野を除けば、これまで東京に行っていた人は、道州政府の所在地に行けばよいようになる。個人の生活に関する行政サービスのほとんどは基礎自治体が担当することになる。

道州は新しい広域行政区域の創造であり、歴史・地理、生活圏・経済圏の現状、交通の便、自立的経済発展の可能性を考慮しなければならない。現在の人口規模だけでは、将来の人口規模や経済規模の発展を見ることはできないからである。道州制は持続した経済発展を可能にする仕組みとして必要なものである。

 

 

 

2016年12月17日

■道州制ウイークリー(23)

◆日本維新の会が「道州制への移行のための改革法案」

日本維新の会は11月、臨時国会に「道州制への移行のための改革法案」を提出、参議院で審査中です。立法の背景・趣旨は「我が国のかたち」(日本国憲法の理念の下における国と地方公共団体の全体を通じた統治の構造)を新たなものに転換することが喫緊の課題となっている。「道州制への移行のための改革」(地方自治の仕組みを道州と市町村の二層制に移行するとともに、これに伴い国及び地方公共団体の税源配分等を抜本的に見直す改革)を総合的に推進する必要がある、としています。

構成は第1・目的(道州制移行のための改革について、基本理念及び基本方針、その実施の目標時期等を定めることにより、これを総合的に推進する)、第2・基本理念及び基本方針(①道州の設置等②国の事務の道州への移譲等③国及び地方公共団体の税財政制度の見直し④都道府県の廃止等⑤市町村の事務等を法律に規定)、第3・道州制への移行のための改革推進本部及び道州制国民会議(内閣に推進本部を置き、内閣府に道州制国民会議を置く)となっています。スケジュールとして、道州制国民会議は、内閣総理大臣の諮問に応じて道州制に関する重要事項を調査審議し、諮問を受けた日から3年以内に内閣総理大臣に答申。政府は、2年を目途に道州制への移行のために必要な法制の整備を実施。そして、道州制への移行のための改革による新たな体制への移行へと進んでいきます。この法律の施行後10年以内を目標としています。

2016年12月24日

■道州制ウイークリー(24)

◆維新の会「道州制改革」の理念(基本法案要綱から)

道州制への移行のための改革は、道州において、個性豊かで活力に満ち、かつ、安心して暮らすことができる地域社会が形成され、及び地域経済が自律的に発展するとともに、行政、経済、文化等に関する機能が我が国の特定の地域に集中することなく配置されるようにし、あわせて、国ガ本来果たすべき役割を重点的に担うことができるよう、次の事項を基本として行われるものとすること。

①広域の地方公共団体である道州を設置して、道州においてその地域の特性に応じた独自性のある施策を展開することができる地方自治制度を確立すること。

②国の事務は国が本来果たすべき役割に係るものに特化し、国の府省、地方支分部局その他の国の行政組織の改廃を行うとともに、国が本来果たすべき役割に係る行政機能の強化を図ること。

③国が本来果たすべき役割に係る事務を除き、国が所管する事務を道州に移譲するとともに、道州が施策の企画及び立案と実施とを一貫して行う体制を確立することにより、道州が行政需要に的確に対応して効率的に事務を実施することができるようにすること。

④道州の財政運用における自主性を確保し、道州が自主的かつ自立的にその役割を果たすことができる地方財政及び地方税に係る制度を確立すること。

⑤住民に身近な行政は、できる限り基礎的な地方公共団体が担い、道州がこれを補完するものとし、市町村について、基礎的な地方公共団体としてあるべき姿となる地方自治制度並びに地方財政及び地方税に係る制度を確立するとともに、行政需要に的確に対応して効率的に事務を実施することができるようにすること。

 

2016年12月31日

■道州制ウイークリー(25)

◆都道府県を時代に即した広域行政圏に再編必要

(江口克彦著『こうすれば日本は良くなる』から)

国民生活や文化などの水準が向上し、キャッチアップ型からフロンティア型へ、物質的豊かさから質的豊かさにシフトして、価値観が多様となるなど、社会基盤の前提条件が大きく異なってきている。また、日本経済は、かつてほどの成長は見込みにくくなっているうえ、人口減少と少子化、高齢化といった課題にも直面している。こうした中で、中央集権の官僚システムは、もはや制度疲労を起こしている。地域ニーズに合致しない全国画一的な公共投資が進み、地方の特性に応じた発展をむしろ阻害している。

行政単位が小さすぎるという問題もある。交通インフラや情報通信技術(IT)が高度に発達し国民の経済圏・生活圏が拡大している今日、物理的に狭すぎるといっていいだろう。人口減少が進む中、十分な行政サービスを提供できなくなる恐れがある一方、環境規制や観光振興、廃棄物処理、救急医療といったより広域な政策課題も増えてきており、多様なニーズやシーズに対応していくためにも、現行の行政単位では限界がある。このことから、規模の小さい都道府県をより広域的な圏域に再編し、より実態に即した活動を可能とする行政機構の確立が必要となっている。もはや中央集権によってナショナルミニマムを追求していくのは限界がある。地方自治体は大きく変わることが求められているのである。

 

2017年1月7日

■道州制ウイークリー(26)

◆国家と地方との関係を大胆に変える

(片山善博記『ジェイン・ジェイコブズ・発展する地域 衰退する地域』の解説から)

現在のわが国の地方の疲弊を回復させるには,国家と地方との関係を大胆に変えなければならないことは明白だ。中央が何でも決めて、地方はそれを咀嚼し、それに従う。長い間のこうした「生活習慣」の結果、いまや小中学校のいじめ問題一つとっても地元では解決することができず、国が乗り出さざるを得ない状況に陥っている現実も露呈した。総じて地方が、自ら考える力も、自ら判断し行動する力も低下させていることは否めない。

これを是正し、正常化するには、国が何でも決めるという仕組みを改め、財政運営や税制などを含む困難で厄介なことも、地域の事は地域に住む住民が責任を持って決める仕組みに変えることから始めなければならない。それが地方分権であり、地域主権改革なのであり、わが国が当面する最重要課題である。

 

 

 

 

 

2017年1月14日

■道州制ウイークリー(27)

◆参院予算委調査室の道州制導入論

(2007年の参院予算委調査室『地方の構造変化』報告から)

人口減少と高齢化という困難な問題に直面している地方がそれなりに活力を維持し、地域の人々が安心して生活できる地域社会を保っていくための方策として、道州制の導入も本格的に検討すべき時期に来ているのではなかろうか。平成16年度の1人当たり県民所得の上位5県と下位5県の格差は1.65倍であるが、地域ブロックに整理すると最も高い関東地域(342.7万円)と最も低い九州地域(239.1万円)の格差は1.43倍に縮小する。同年度の1人当たり雇用者報酬も上位5県と下位5県の格差1.48倍が1.28倍に縮まる。地域内の連携を図って一体となって企業誘致に取り組み、県域を超えた居住政策を展開して機動的な労働力の移動・配置に取り組めば、不況に直面している地方の底上げにつながる可能性もあろう。また、財政的観点から、財務省財務総合政策研究所のディスカッションペーパー「地方財政改革と道州制の可能性について」で、地域ブロック化の一形態として道州制を導入した場合に1人当たり税収(地方税収+地方贈与税収)は東京と沖縄を除いてかなり均等化されると試算しているほか、現在の都道府県の区切りでも人口規模が大きくなるほど、1人当たり歳出額が減少して財政効率が向上する傾向を示し、地域ブロック化による財政健全化の可能性を示している。

2017年1月21日

■道州制ウイークリー(28)

◆自民党国家戦略本部の道州制への統治機構改革案①

(2008年『国家ビジョン』要旨から)

総論・政治制度改革の方向性

○今後10-15年で移行する道州制の新体制構築に併せて、行政システム効率化の徹底。

○業界別(縦割り)行政から機能別(横割り)行政への省庁再再編を行い、国・地域において公務員は企画立案と政策執行部門を担い、いわゆる現業部門は民営化。

総論・統治機構改革の方向性

○必要な公的サービス水準は地域自らが決め、地域自らの負担によってそれを確保。

○道州制により自立できる地域単位として全国10程度の「州政府」を確立し自立的に財政運営できる基盤整備。

○中央政府は「グローバルに存在感のある国づくり、国の統治」を担当。州政府は「社会づくり」を担当。広域的で自立的経済圏・生活圏に基づく自立的な地域経営。基礎自治体の市政府は「人づくり」を担当し、シビルミニマムの確保に責任を持つ。

 

 

 

2017年1月28日

■道州制ウイークリー(29)

◆自民党国家戦略本部の道州制への統治機構改革案②

(2008年『国家ビジョン』要旨から)

各論・政治制度改革

○国においては二院制を継続、州政府と市については一院制。○衆議院の選挙制度を「単純小選挙区制」とする。

各論・統治機構改革

○中央政府の役割は、国境管理、国家戦略の策定、国家的基盤の維持・整備、全国的に統一すべき基準の制定に限定。 ⇒皇室、外交・国際協調、通商政策、国家安全保障、内政の基本ルールなど

○州政府は公共事業、多様な産業振興、高等教育、文化・社会政策等により「振興・誇り・夢」を担う。 ⇒高等教育、雇用政策、市間の財政格差調整、公共施設規格、教育基準、福祉医療の基準など

○市はシビルミニマムの確保に責任を持つ。 ⇒消防、救急、社会福祉、保育所、小中高等学校など

○国の規制は国会で承認された法律と閣議承認の政令に留め、それ以下の細則は州に託す。また、州の条例によって国の政令を上書きできる「上書き権」を制定。

○州政府間の財政調整システムは国が行う垂直調整システムで実施。国と州政府間の意見調整の場として、「国・州連絡協議会」を設ける。

■道州制ウイークリー(30)  2017年2月4日

◆道州制の財政効果と課題(1)

「19兆円の行政の無駄を排除せよー穂坂邦夫・地方自立

政策研究所理事長」(日経ビジネス2012年10月)

日本の行政は巨額のムダを生んでいる。そのムダは国の大きな負担に

なり、財政再建の足かせになっている。

ムダを生む大きなものの一つは、国と都道府県、市町村という三層構

造の行政間での役割分担の不明確さや、国・自治体との役割分担の意

識のなさなどだろう。

国と地方の行政経費(歳出総額)は年間160兆円にも上っている。

その内訳は国66兆円、地方は94兆円といったところだが、我々は

その中に18兆9000億円のムダがあるとさえ試算している。例え

ば国の役割とは何か。外交、防衛や経済政策、金融政策、社会保障の

基本政策などだろう。ところが、国が個人の生活に近い内政的業務ま

で受け持っているものが少なくない。ハローワークなどもその一つ。

「広域的運用が必要だから」といって国が運営しているが、実際には

そんな風に行われていない。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(31)  2017年2月11日

◆道州制の財政効果と課題(2)

「19兆円の行政の無駄を排除せよー穂坂邦夫・地方自立

政策研究所理事長」(日経ビジネス2012年10月)

都道府県と市町村の間は、似たような事業が少なくない。老人クラブ活動助成など高齢者への支援事業、産学交流、土地開発公社、大学などの公開講座支援・・・。突き詰めて言えば、都道府県の役割が不明確なせいでもある。都道府県はいまやもっと広域的な仕事に特化すべきで、それ以外の多くの仕事は市町村に任せていい。警察にしても、都道府県単位では広域化する犯罪に対応しきれなくなっているし、河川の管轄なども国と県で分かれるなど意味がない。これらよりも広域的な行政単位ができれば、国がやる必要はない。その意味では道州制に変えた方がよいということになる。

我々は、(1)そもそも公の仕事として必要なのか、(2)民間に任せた方がコストを削減できるのではないか、(3)国の事業を地方に移管した方が効率が良くなりコストも下がるのではないか、(4)補助金を一括交付金化するなど地方の裁量を増やした方が効率が良くなるのではないかーーといった視点で、行政のムダを分析した。

18兆9000億円はそこから見えてきたもの。そのうち、多くは都道府県と市町村の側にあるが、(1)から(3)の項目はそれぞれ3兆5000億円から5兆1000億円に上るという試算になった。

 

■道州制ウイークリー(32)  2017年2月18日

◆道州制の財政効果と課題(3)

「自民試算では道州制で約10兆円の財政負担減」

(香川大学2009年「経済政策研究第5号」から)

道州制による地方財政の健全化というのはよく主張される項目で、特に広域自治体による効率的な行政によって無駄な歳出をカット出来るということが述べられる。例えば、自由民主党の国家ビジョン策定委員会(2002年報告)では「道州制」導入に伴って、①国・自治体間で重なり合った重複行政の一掃、②事業の「官」から「民」への積極的移行、③国の一方的な財源配分ではなく、その地域の住民自身が真に必要とする行政分野へ予算を配分することにより、「国民負担増のない財政再建」を目指すことが可能になるとしている。数値例としては、重複行政の解消により、中間部分の都道府県職員、国の出先機関職員の最低でも2分の1程度の削減により、2.2兆円の削減、地方の投資的経費は、徹底的な民間移行と「適材適所」による全体の投資額見直しにより、相当程度の減額が可能で、例えば3割程度減少するならば、7.3兆円の減額となり、合計10兆円程度の財政負担軽減としている。

 

■道州制ウイークリー(33)  2017年2月25日

◆道州制の財政効果と課題(4)

経団連「道州制で新たな財源は5兆8000億円」

(2008年「経団連道州制第二次提言」より)

道州制を導入して行財政改革を進めることにより、新たな財源を生むことができる。日本経団連のシンクタンクである21世紀政策研究所の研究によれば、道州制の導入によって、九州7県で地方公務員の総人件費は2727億円が、公共投資の効率化で6218億円が削減され、合計8945億円の財源が新たに生まれるとの試算結果が出ている。同様の試算を全国を対象として行うと、地方公務員の総人件費の削減により1兆5130億円、公共投資の効率化により4兆3353億円、合わせて5兆8483億円(国民1人当たり45772円、2008年10月時点の試算)の財源を生み出すことが可能になる。

こうした行財政改革により生み出された新たな財源をもとに、国から権限を委譲された道州が主体的に産業集積政策を展開し、道路や港湾といった必要なインフラの整備を自主的に行うとともに、産業政策が一体となった雇用政策や人材育成を地域の実情に応じて実施することが可能となる。新たな財源に基づく地域独自の施策によって、グローバルな地域間競争に勝てる力をつけることが可能となる。

 

■道州制ウイークリー(34)  2017年3月4日

◆九州の道州制ビジョン(1)道州制で明日を拓く

(2009年「九州がめざす姿、将来ビジョン」より)

九州地域戦略会議は2009年、「道州制で明日を拓く~住みたい・来たい・はばたく九州~」をキャッチフレーズに、九州がめざす姿・7つの将来ビジョンをまとめています。めざす姿は①住民が安心して豊かさを実感できる九州②住民が自らの意思と責任でつくる九州③東アジアの拠点として自立・繁栄する九州④多極的構造を持ち一体的に発展する九州を掲げ、生活、人材育成、経済、安全、環境、地域づくり、国際交流の7分野についてビジョンを示しています。

道州制が九州の経済社会に及ぼす効果としては、道州が独自の経済見通しを策定し、九州全体の資源を最適に活用する産業政策とアジア戦略を推進するとともに、国公立大学や研究機関の選択と集中を図ることにより、九州の産業政策にマッチした科学技術の進行を目指す、としている。また、九州の役割に相応しい独自の財源が確保され、財政効率化により財源を捻出することができるので、これらの財源を住民生活の向上と産業の活性化のためのソフト・ハード両目の社会基盤整備に重点的に投資することができるようになるとし、九州は道州制を導入しなかった場合よりも高い成長を遂げ、魅力のある地域を形成することにより、人口の社会増をもたらし、ひいては東京一極集中型国土構造の是正を図ることが期待される、としています。

 

■道州制ウイークリー(番外)  2017年3月6日

◆自民道州制推進本部の活動について

(平成29年3月5日の党大会「党情報告」から)

道州制推進本部(本部長=原田義昭衆議院議員)は、今後の対応方針について役員会等で鋭意協議を重ね、4月の総会において、当面の進め方として「道州制導入に向けて」が了承された。

7月の参議院議員選挙後、8月に石田真敏衆議院議員が本部長に就任した。

11月の役員会において、道州制の導入の目的や市町村の役割等について下記の通り議論が行われ、その議論を進めるため、「道州制の下での基礎自治体の役割に関するPT」の設置が了承された。

道州制導入の目的は、主権は国に残しつつも、国、東京に全ての機能が集中している現状を是正し、各地方で世界レベルの活動、特に経済活動ができるように、都道府県ではトータル(三ゲン)のパワーが小さいことに鑑み、権限、財源、人間を強化することである。

その中で、市町村の役割は、主として住民サービスを行うことであり、道州制に移行しても市町村の存在意義は変わらない。

地域密着型の住民サービスとは具体的に何を指すのか、また地方に活力をつけるにはどの行政レベルで地域振興をするか、どこを拠点とすることが最も効果が上がるかなどを明らかにし、地方の活性化に寄与できるような仕組みを検討する。

そして、12月のPTの初会合では、今後、自治体関係者とも協議し、PT(案)を取りまとめていくこととした。

 

■道州制ウイークリー(35)  2017年3月11日

◆九州の道州制ビジョン(2)九州一体となった産業政策

(2009年「九州がめざす姿、将来ビジョン」より)

現在、各省庁や県などが独自に進めている産業政策を道州の下に統合し、道州が九州の視点で、各省庁を横断する総合的な産業政策を実施することが可能になります。例えば、域内各地にその強みを活かした産業クラスター等の戦略的な拠点を形成することで、新たな市場を開拓するための高度な研究開発を進め、九州の国際競争力の強化につなぐことができます。また、域内の産業連関を強め、取引、資金等の域内循環を高めることにより、九州の一体的な発展を実現できるようになります。税制などの大胆な優遇措置や産学官が一体となった産業クラスターの形成、現在の県域を超えた密接な連携・協力態勢によってカーアイランド、シリコンアイランド、フードアイランドなどの形成を一層促進し、リーディング産業を育成できるようになります。中小・零細企業が多い九州の現状を踏まえ、道州と基礎自治体が連携し、域内の産業連携を強め、農商工など産業間の連携を総合的に支援することにより、地域産業を振興することができます。国の企業立地などに係る許認可権限を道州に移譲し、基礎自治体と連携することで、企業立地に関する窓口を一本化、迅速化と利便性向上を図り、また多極分散型の地域づくり政策に基づいて、九州域内のバランスのとれた企業立地を進めることができるようになります。

 

■道州制ウイークリー(36)  2017年3月18日

◆九州の道州制ビジョン(3)安心できる暮らし

(2009年「九州がめざす姿、将来ビジョン」より)

医療問題は良くなるか――国からの権限・財源の移譲を受け、道州で道州立大学の医学部定員を増やし、医師を積極的に養成し、地域や診療科ごとの偏在をなくすことによって、九州のどこに住んでいても一定水準の医療を受けることが可能になります。臨床研修制度の企画、立案、指定を道州が一貫して行えば、医師臨床研修の一環として僻地勤務を義務付けるなどの措置により、医師の適正配置が可能になります。過疎地域などを抱えながら単独の県では導入が難しかった救急用医療専用ヘリコプター(ドクターヘリ)などを道州として導入し、効率的に運用することや、医療機関の受入可能状況など救急に関する情報を道州が広域的に管理統括することで、効率的な救急医療体制を構築できるようになります。

子育ては改善されるか――道州と基礎自治体が連携して、地域の実情を踏まえた弾力的・総合的な子育て施策を進めることにより、出産から育児期までの支援を一体的に行い、九州のどこに住んでいても安心して子供を生み育てる社会を実現でできるようになります。現在、厚生労働省と文部科学省が連携して推進している「認定こども園」事業は、道州制によって国の権限・財源を基礎自治体に移譲して縦割り行政を解消し、基礎自治体が自らの裁量で保育所と幼稚園を一体的に運用することにより、本来の意義をより実現しやすくなります。

雇用や生活セーフティネットは変わるのか――国からの権限・財源の移譲を受け、地方が自ら雇用政策を決められるようになれば、道州は基礎自治体と連携し、対象事業や雇用期間など全国一律の実施要件を緩和して、緊急かつ機動的に財源を投入することにより、景気や雇用情勢が悪化した場合でも、地方の実情に合った効果的な対策を迅速に実行できるようになります。中小企業大学校や職業能力開発施設を道州で一元管理して、産業構造転換や新技術の導入に必要な職業訓練システムを再編強化することにより地域の雇用実態に合った取り組みを進めることができるようになります。国、道州、基礎自治体が連携、雇用施策と生活保護、介護保険、医療保険などを総合的に行います。

 

■道州制ウイークリー(37)  2017年3月25日

◆九州の道州制ビジョン(4)安全対策先進地域

(2009年「九州がめざす姿、将来ビジョン」より)

道州は、九州の地域特性に応じた事前の予防対策、応急対策、復興

などの事後対策、再発防止対策を迅速かつ総合的に立案、実施する専門組織を創設し、九州全域の危機管理体制を確立することで、自然災害や大規模事故、武力攻撃災害などの緊急事態に広域的に迅速かつ一貫して対応できるようになります。専門組織は、災害・危機発生時に指揮命令系統を一元化し、国、基礎自治体との連携により、九州全域の自衛隊・警察・消防・医療機関・ライフライン機関・放送機関などの間で緊密な情報伝達・協力体制を整備することが可能になります。一方で、人員や財源などの面で道州だけでは対応できない大規模な災害については、国全体で協力し合う体制を整備することも必要です。

風水害、火山噴火、地震、高潮などの自然災害の予知や減災、ま

た、危機管理体制や防災訓練のあり方、さらには鳥インフルエンザ対策や食中毒などの危機管理などについて、全ての学問領域にわたる九州の特性に適合した研究を、道州立の大学や研究機関で重点的に実施することができるようになります。複数の基礎自治体を流れる河川は道州が河川管理全般を一元的に行うことになり、国との調整が不要となるため、地域の自然、文化、まちづくりと合致した総合的・効果的な治水対策・流域管理などが可能になります。

広域化、組織化する犯罪に対して、現在の県境を越えて警察の管轄区域を再編することにより、道州と基礎自治体、地域コミュニティなどが協力して犯罪抑止のための総合的な対策を講じることができるようになります。

 

■道州制ウイークリー(38)  2017年4月1日

◆九州の道州制ビジョン(5)道州制導入で域内生産12%押し上げ

(2009年「九州がめざす姿、将来ビジョン」より)

積極的に道州制導入を進めたハイケースの場合、道州制を導入しなかった場合と比べて、九州の域内総生産を10年間で12%押し上げ、経済成長率は1.2ポイント上昇する。九州経済調査会の研究報告では、長期予測の前提条件となる道州制導入による効果を、①一体的政策による地域競争力の向上②権限拡大による産業基盤整備への重点配分③行政コスト削減とその再配分の3つとし、2025年度までの九州経済を予測している。

第1の前提条件――一体的政策による地域競争力の向上では、道州制の導入は、九州全域に関わる広域的な行政課題に対し、地域ニーズに基づく一体的政策の実施を可能とする。この研究では一体的政策の実施が地域全体の技術進歩や企業・行政機関の運営改善に貢献し、九州の地域競争力が向上すると想定した。

第2の前提条件――権限拡大による産業基盤整備への重点配分では、九州は将来、国際競争の激化や人口減少社会の本格的な到来による低成長への対処を余儀なくされる可能性が高い。従って、道州制の導入によって中央から地方への権限移譲が進み、地方の政策ニーズに基づく政策の実施が可能となり、道州政府が経済成長を志向する積極的な政策を選択すると仮定した。具体的には九州全域の社会資本について、道路・空港・港湾を産業基盤向け社会資本、それ以外を生活基盤向け社会資本に分類し、道州制導入後には生産効果の高い産業基盤向け社会資本への投資配分が高まると設定した。

第3の前提条件――行政コストの削減とその再配分では、道州制の導入は、自治体規模を拡大させ、規模の経済性による行政効率の向上が期待できる。県民経済生産の1人当たり一般政府最終消費支出を自治体の義務的経費とみなし、2004年度の1人当たり一般政府最終消費支出額(都道府県)を推計した。長期予測ではこの推計に基づき、道州制導入後の行政コスト削減額を想定し、その削減分を投資的経費である公共投資と民間投資に再配分すると想定した。

 

■道州制ウイークリー(39)  2017年4月8日

◆四国州の未来像(1)四国経済連合会の道州制ビジョン

(2009年「道州制によって変わる四国の姿」より)

四国経済連合会は2009年3月に、地方の道州が自立できる税財政制度を構築した上で、道州制に移行し、四国州が実現すれば、四国は次のように変わっていくと考えられる、と提言しました。

①四国の住民の地方自治への関心が一段と高まり効果的な行政が進む②基礎自治体の強化と道州政府の広域行政によって四国全体が活性化する③州都一極集中でなく、四国の各都市が四国州を支える④医療、子育て支援の充実など暮らしやすい環境整備が進む⑤特色ある四国づくりによって来訪者が増加する⑥選択的集中投資によって利便性の高い交通基盤が整備促進される⑦一つの島としての環境対策、防災対策が強化される⑧四国一体となったアジアとの交流が進む⑨戦略的な産業振興と大学の強化が図られる⑩地域自立意識の高まりによって四国に人材が集まる(各項目の内容については、次回から掲載します)

 

■道州制ウイークリー(40)  2017年4月15日

◆四国州の未来像(2)四国経済連合会の道州制ビジョン

(2009年「道州制によって変わる四国の姿」より)

①四国の住民の地方自治への関心が一段と高まり効果的な行政が進む

四国のことについては四国に決定権と財源が移り、自治体の運営如何が生活や地域振興に直結することから、住民が受益と負担の関係を強く意識し、効果的な行政が一段と追求されるようになる。

道州によるスケールメリットや、国・県・市町村の重複行政の廃止などによって、行政コストの削減が図られるため、その分、住民負担の低減や、福祉の充実、地域振興などに活用することができる。

四国4県が一つの州になった場合のスケールメリットについて、47都道府県の人口と面積を変数とした基準財政需要額(自治体が合理的、標準的な行政を行うために必要とされる財政額)に当てはめて試算すると、四国4県の基準的財政需要総額は現行の約9300億円(平成18年度)から約6500億円へ3割縮減される。

道州制のもとで、四国州は国内外の地域と主体的に競争してゆかねばならないため、道州政府は、戦略を持ち総合力を発揮して特色ある地域づくりに取り組むことになる。また基礎自治体では、権限、財政基盤が強化され、地域固有の重要課題や住民ニーズに応じた行政サービスが迅速かつ優先的に遂行される。

重要なことは、国に頼りがちの地方の意識を改め、地域自立の気概を強く持って、道州制というシステムを最大限に生かした地域づくりを進めることである。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です