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12州構想ウイークリー(320)~(328)

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(320)2022年9月3日

◆自治体再編で12州300市へ③

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

中央と地方の財源配分

  • 州市制の導入に伴って、地方自治体は、住民が自らの選択で受益と負担の水準を決定する「自己責任」の財政運営を目指す。地方自治体は、国と並んで健全な財政の維持・運営に努めなければならない。
  • 地方税 ①地方自治体が自律的な行政を行えるよう、国から地方へ必要な税財源を移転する。②地方税法をはじめとする関係税法を、地方自治体の課税自主権を拡大する方向で改正する。③地方自治体は、この課税自主権の範囲内で、自ら財源の拡充などに努める。
  • 地方交付税交付金 ①地方交付税は、ナショナル。・ミニマ  ムが一定程度整備された現状や自治体の自己責任原則を踏まえて、必要最小限度にとどめる。 ②地方交付税には財政健全化や合併促進などにインセンティブの働く機能を付与する。
  • 国庫補助金等  国庫補助金は、大胆に整理合理化する。奨励的補助金は基本的に廃止する。
  • 地方債 300市の誕生にあわせて、地方債の許可制を廃止する。

条例制定範囲の拡大

 地方自治体は、必要かつ合理的な理由がある場合、法令の趣旨に反しない限り、自主的に条例を制定できるよう改める。

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(321)2022年9月10日

◆自治体再編で12州300市へ④

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

読売新聞社は1996年に首相権限・内閣機能の強化と中央省庁を1府9省に統廃合することを内容とする改革案を提唱した。提言が目指したのは、強い指導力を有する内閣と、簡素で効率的かつ機動力に富む中央行政機構だが、機構をスリム化するためには、現在の中央省庁が抱え込んでいる膨大な権限を大幅に地方に移譲する必要がある。また、国を構成する地域の活性化が不可欠だ。

提言は、基本的に地域活性化の基準は、高度成長時代以来の「国土の均衡ある発展」から「地域の個性ある発展」へと転換すべきとの考え方に立っている。過去、「均衡ある発展」の概念に基づく開発行政が重視されてきたところから、中央省庁による調整権限の強化という方向をたどり、現在の地方自治の危機的状況につながった。各分野におけるナショナル・ミニマムがほぼ達成された現在、地方は、従来の経済指標的、土木インフラ的な基準の重視から脱して、独自の「住み心地」を発展させるべきだ。

憲法にいう地方自治の本旨は、地方自治体、地域住民の「自己責任」原則と一体のはずだ。そのためには、地方が自己責任をとりうる自治条件を整える必要がある。現在の中央・地方構造下では、中央による過度の「調整」「関与」が、地方自治体の自主性を制約するとともに、地方の依存心を増し、住民の自治意識を形骸化させている。中央から地方への可能な限りの権限、財源を移転すれば、その権限。財源に伴う自己責任が生じる。自己責任原則が明確化すれば、無原則な財政たれ流しへの自己抑制力も働くことになろう。

 

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(322)2022年9月17日

◆自治体再編で12州300市へ⑤

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

 今回の提言では、これらの構想・試算を総合し、合併目標を示す象徴的な目安として、「300市」という数字を掲げた。もちろん合併・統合の推進に当たっては、地域の一体性、生活圏の実情、歴史的背景などには十分に配慮すべきである。

 国、都道府県から「300市」への権限、財源の移譲を進めていけば、都道府県の役割も変わってこざるを得ない。現行都道府県制は、統合・拡大された基礎的自治体間の調整を主な役割とする。より広域的な行政単位としての「道州」あるいは「州」として広域行政単位に再編する区分の仕方については、第4次地方制度調査会答申(1957年)以来の様々な議論がある。この提言の再編区分は、現行衆院選挙制度の11比例ブロック単位に準拠した。

 比例代表ブロックの区分が論議された当時、すでに、将来の道州制移行を前提とする線引きであるべきだ、との議論があった経緯をも踏まえたものである。ただし、このうち、近畿ブロックについては、大阪府を分離し、「12州」とした。

<12州案>北海(北海道)、東北(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)、北関東(茨木・栃木・群馬・埼玉)、東京(東京都)、南関東(千葉・神奈川・山梨)、北陸信越(新潟・富山・石川・福井・長野)、東海(岐阜・静岡・愛知・三重)

大阪(大阪府)、近畿(滋賀・京都・兵庫・奈良・和歌山)、中国(鳥取・島根・岡山・広島・山口)、四国(徳島・香川・愛媛・高知)、九州(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(323)2022年9月24日

◆自治体再編で12州300市へ⑥

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

 新しいシステムは、国、地方ができる限り分業に努め、機能や権限を分担する形が望ましい。内政面の役割を縮小することによって国は、国際化への対応等、本来の仕事に重点的に取り組めるよう、体制を充実強化することができる。また、国の役割を整理、合理化することで、「簡潔で効率的な政府」となる。

 現在の国―都道府県―市町村間の上意下達の行政構造の下では、市町村には政策実施の裁量や権限がほとんど認められていない。補助金獲得の申請事務や陳情に多くの職員や時間を労し、国全体で膨大な無駄を生んでいる。

 基礎自治体として権限、財源移譲の「受け皿」となった「市」に一番近い生活関連行政の主体として、住民生活の基本的な行政サービスの提供を行うが、地域の実情に応じた独自のまちづくりや行政を担当する権限を持ち、行政や地域そのものが活性化する。また、市町村の統合によって職員や運営費のロスが減少、効率化を図ることができる一方で、同じような施設が乱立するという無駄が解消されるであろう。

 行政の効率化は、専門的知識や高度な技術を持った人材の確保につながり、企画立案能力が向上するとともに、施設の利用や福祉、保健業務、文化面でより高度なサービスも期待できる。

 自治体の主体はあくまでも、基礎自治体である「市」である。州はいわゆる「連邦制」は想定していない。州は「市」単独では行うことのできない業務や。広域での実施の方が効率的な分野のみを担当、調整機能を果たす。

 

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(324)2022年10月1日

◆自治体再編で12州300市へ⑦

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

 現在、国税と地方税の税収比率はおおむね6対4となっているが、歳出ベースでの国と地方の比率はおおむね4対6であり、その間の財政調整を地方交付税、国庫補助金などで行っている。州市制を導入するにあたっては、地方自治体の自主財源を充実させて、各自治体が自らの責任と判断で多様な行政を展開できるようにする必要がある。同時にそれは、情報公開の促進とあわせて住民にサービスと負担の関係を目に見える形で提示し、コスト意識を高めて、自治体の歳出膨張に歯止めをかけることにもなる。

 自主財源の充実のためには、中央と地方の事務配分に見合った税源を国から地方へ移転しなければならない。改革に当たって例えば地方でも担税力がある消費税を中心とした間接税を地方の基幹税源にする、もしくは所得税の相当部分を地方財源に振り替えるなど、思い切った税目の入れ替えなどが考えられよう。

 一方、地方自治体も財源が中央から降りてくるのを漫然と待つのではなく、自らの徴税努力で各地域からの税収を増やす努力を求められる。そのためには、国は、地方税法などの関連法令を見直し、税率や課税対象を制限する課税統制を緩和して、法定普通税や超過税率の適用を弾力化するなどの措置を取らなければならない。ただし、地方自治体の課税自主権、税率決定権は、あくまでも法律が定める一定の範囲内で行使される租税法律主義の原則を守る必要がある。極端に高い税率や、財源の裏付けのない人気取りのための減税などは、認められるべきでない。

 地方交付税交付金の役割には、地方自治体間の財政格差を平準化する調整機能と、各自治体の財源不足を国が産める保障機能の二つがある。ナショナル。ミニマムがある程度達成された現在、この保障機能は縮減し、地方交付税の総額を大幅に抑制すべきである。

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(325)2022年10月8日

◆自治体再編で12州300市へ⑧

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

〇条例制定範囲の拡大

国から地方へ権限、財源の移譲が進むのに伴い、条例制定の必要性は一段と高まることが予想される。すでに、学説、判例で条例制定権の解釈は拡大し、自治体が独自の条例をつくるケースも増えている。しかし、憲法の「法律の範囲内」、地方自治体の「法令に違反しない限り」の解釈をめぐり、訴訟も絶えないのが現状だ。

 条例は自治体が地域の行政を自主的に責任をもって進めるため制定されるものである。その条例制定がスムーズに行われ、円滑に運営されて、地方分権の効果をあげていくには、国の法令による制約を緩和することが肝要だ。

 例えば、大気汚染防止法、水質汚濁防止法には、「条例で規定を設けることを妨げない」とする、いわゆる上乗せ、横出し規制を許容した規定がある。さらに、趣旨、目的、対象において合理的な理由があれば、条例制定が可能とする学説、判例もある。

 94年の読売憲法改正試案では、こうした趣旨を法律的に明確化するため、憲法の「法律の範囲内」を「法律の趣旨の範囲内」とするよう提言している。地方自治法もより一般的に条例制定権を拡大する必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(326)2022年10月15日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」①

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

いまなぜ「地域主権型道州制なのか」

  • 現在の行政単位は狭すぎる● 国民の生活圏が拡大した現代では、徒歩や馬での移動を前提につくられた市町村や都道府県という行政単位は狭すぎる。同時に、広域な行政課題も増えてきている。環境、廃棄物処理、広域消防、救急病院などの問題は。現在の市町村、あるいは都道府県の領域ではなく、さらに大きな地域に入れなければ解決できない。
  • 人口減少時代の到来● 人口減少時代の到来も「地域主権型道州制」を求める理由になっている。このまま人口が減少していけば、多くの自治体で住民に十分な行政サービスを提供できなくなってしまう。人口の減少は中央集権的な国の在り方が東京一極集中を引き起こして、東京が人口を吸収していることに大きな原因がある。
  • 中央集権が無駄と墜落を生んだ● 中央集権は、ムダと墜落を生む元凶でもある。国が全国画一的に地域政策の基準を決め、運用の細部まで地方に指示し実施させてきたことが、ニーズに合わない社会資本の整備など多くの無駄を生んできた。中央集権のシステムは、地方の個性的な発展を阻害するとともに、財政の肥大化を招いて債務を拡大させてしまった。
  • 国際社会で競争に敗れてしまう● 東京圏・首都圏でなく、全国いたるところが繁栄するようにしなければ、日本はグローバル化が深化する今後の国際社会のなかで競争に敗れてしまい、近い将来、経済的にも二流国、いや三流国になってしまう可能性がある。世界と競争していくためには、日本の各地に少なくとも十数か所の繁栄の拠点をつくっていかなければならない。

 こうした問題を解決するには、都道府県よりも規模が大きく強い財政基盤のある広域自治体、すなわち道州をつくって、そこに国全体にかかわる政策領域以外の権限と税財源を完全に移譲し、地域のことは地域の判断と責任で行うようにする必要がある。

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(327)2022年10月22日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」②

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

「地域主権型道州制」の7つの意義

  • 日本全体を元気にすること● 明治以来の中央集権システムは、今日の流れに合わなくなり、体制疲労を超し、戦後最大の危機に陥っている。日本を活性化するためには、このシステムを大改造しなければならない。
  • 中央集権の打破● 中央集権体制によって、日本では東京、首都圏だけしか発展せず、他の全国の、あらゆるところが貧にあえいでいる。
  • 官僚主義の廃止● 官僚主義によって、日本の政治行政は、規制万能、責任回避、秘密主義、画一主義、権威主義、自己保身、前例主義、セクショナリズムに陥り、国家と国民を不幸にし始めている。
  • 生きがい、やりがいを感じる日本をつくる● 国民の生活は、中央集権体制によって画一化され、強制され、個性を奪われ、自由を阻害されている。
  • 国際都市、国際交流の拠点を多数つくる● グローバル化の時代に向けて国際都市、国際交流の拠点を多数つくっていく。
  • 地域個性を生み出し、特徴のある地域を創る● 日本はどこでも同じ、画一的で面白みがなかった。地域がそれぞれの特徴を発揮できるようにする。
  • 財政赤字の解消● 「地域主権型道州制」が日本の体制になれば、結果として財政赤字が自然に解消される。

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(328)2022年10月29日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」③

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

「地域主権型道州制」4つの原則

  • 第一原則「行政に市場メカニズム設定」●これまでは国が自治体の活動に対して様々なかたちで制約をかけてきた。これからは、道州同士、基礎自治体同士が自分たちの創意と工夫でよりよい地域社会を創るために競争ができる環境をつくらねばならない。競争によってこそ、日本全体の行政も経済もより効率的かつ効果的なものに発展していく。また、政策の立案・実施・評価の全てのプロセスにおいて,官と官,官と民、民と民で競争できるようにすることも重要。
  • 第2原則「顧客主義の徹底」●政治や行政は国民・住民のためにある。政治や行政にとって、国民・住民は「顧客」であり、そのニーズに応えることこそが政治と行政に与えられた本来の宿命である。これまでの行政は、法規に忠実であろうとするあまり、社会の変化に対して保守的になり、顧客である国民・住民のニーズに柔軟に対応ができなくなっていた。さらに、予算や人事などの経営資源の活用や政策を実施する段階でも、マネジメントに柔軟性がなくなり、生産性を低めている。
  • 第3原則「国民・住民参加の強化」●現在は、官僚エリートが情報を独占して政策を企画・立案するなど、政策決定プロセスを支配している。国民、政治、行政によるパートナーシップを深めることが重要だ。政策決定プロセスへの住民参加が積極的に行われる仕組みをつくっていかなければならない。
  • 第4原則「ネットワーク型組織の構築」●日本の公的な組織は、権限を上部組織に集中させ、そこで下された決定を下部組織に命令伝達するというタテ型の構造で運営されている。こうしたピラミッド型の統治機構は、分業によって企画大量生産を行う工業化の時代には有効な働きを見せた。しかし、情報化の時代、価値観多様化の時代、迅速で柔軟な意思決定が求めらる時代においては、うまく機能しない。変化はつねに現場で起きているのであり、ピラミッドの上部にいる官僚は、現場と離れ過ぎていて、その変化に柔軟に対応できない。情報が共有できる柔軟かつ迅速に意思決定ができるフラットなネットワーク型の統治構造に変えていく必要がある。

 

 

道州制ウイークリー(273)~(276)

《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(273)2021年10月9日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑫

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

州の性格付けとしては、憲法改正をせず、府県に代えて、都道府県の統合と国の出先機関を包括し、国から行政権限を委譲することで、権限の大きな広域自治体としての「州」を内政の拠点ととする地方主権型州制度が望ましい。

 国の役割と州の役割については、国の各省庁の地方出先機関の大半と都道府県の事務の一部を移管する方法で、国の本省から権限移譲される事務として、国道・一級河川の管理、保安林の指定、大気汚染防止対策、地域産業政策、自動車登録検査、職業紹介、危険物規制なども加えなければならない。

 事務権限の委譲もさることながら、より重要なことは州への立法権の移譲である。立法権の移譲は政策・制度の企画立案権の移譲といってもよい。その方法として、国庫補助負担金とこれに付随する補助要綱・補助金要領等をできる限り廃止する。法令を大綱化・大枠化し細目は州または市町村の条例に委ねることが大事である。

 

 

 

 

《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(274)2021年10月16日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑬

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 州制度設計上の論点として、地域間格差是正の方式をどうするかについては、税源配分は国税、州税、市町村税と仕事量に応じて集める仕組みを大原則とする。ただ、州間格差を是正する方式として共有税(ないし共同財源)をつくる。これは現行の地方交付税の役割に似たものだが、それぞれの州の持ち合い財源という性格のもので、国が配るという仕組みを意味しない。

 それぞれの州には「州都」ができる。日本を州制度に代えると「州都一極集中」が起こると反対する人がいる。国全体が「東京一極集中」でまさにモノセンリックなのに対して、10州程度の州ごとの中心都市ができることの方が、大きくは多数の都市が一定の機能、能力を持ち、それがネットワークで結ばれるポリセントリックだ。すでにある政令市、中核市、特別区など100近い都市制度適用地域がそれぞれ中心性をもっており、仮にそのどこが州都に定めたから直ちに州都一極集中になるとは考えにくい。日本が人口規模も拡大し新たな都市がどんどんできていく高度成長期ならともかく、その逆の動きにある。これからはむしろ既存の大都市を州都とし、その機能を活かしながらそれと各州の中小都市をうまくネットワーク化する方がよいのではないか。州制度になると、役所が遠くなるという批判がある。物理的に遠くなる可能性は否定できないが、州になったからと言って、行政サービスに関し州役所が遠くなるということはあるまい。必要なサービスは州の出先機関を通じて行われることになる。

 

《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(275)2021年10月23日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑭

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

州制度の実現可能な移行シナリオについて、堺屋太一氏は独自のシナリオを提示している。(『団塊の後――三度目の日本』)

まず、直ちに都道府県を廃止して州制度に移行するのではなく、3~5年は各都道府県を従来通りに存続させ、議会も存続させながら移行する考え方だ。当面、「州」ごとに、「知事会」を結成し、州で行うべき広域行政はその「知事会」で共通条例の制定や州重点産業、州共通事業を決め、予算・金融財政上の調整を行う。「州議会」には常設の事務局を置き、国と所属府県の職員の一部を移籍させる。知事会の会長は当面、所属知事の互選とするが、一定期間(たとえば5年)を過ぎたら、各州の有権者が直接選挙で「州知事」を選ぶようにする。

 また都道府県議会についても当分の間、従来通り残す。ただ、早期(例えば3年以内)に住民の直接選挙で「州議員」を選び、州議会を設けるようにする。それまでの間は、各府県議会が概ね人口10万人に1人程度の「臨時州議員」を選出し、臨時州議会において州の予算や決算、州条例、主要なプロジェクトなどの業務を行うようにする。これらのルールをあらかじめ法律(州制度移行基本法)で決めておく。まずバーチャルで大くくりの広域州をつくり州政府の体制を固める。5年経ったら全面的に州制度への移行を完了するシナリオである。

《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(276)2021年10月30日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑮

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

日本では自治体の7割近くが人口5万人以下の自治体が占めている。居住人口は2割にとどまるが、面積では圧倒的に広範囲を占める。こうした人口比のねじれ現象が、我が国の地域づくりを考える際の難しさである。かつて州構想を進めると小規模市町村には不利だと反対運動があった。しかしそれは大きな誤解ではなかろうか。こま切れの府県制度の下では、確かにこまごまと支援は行われているが、地域全体の稼ぐ力が出ない。州構想の実現で稼ぐ力を強め、その果実が多くの市町村に行き渡る仕組み、それが州構想であって決して小規模市町村を切り捨てる話ではない。

 我が国では地方創生、地方の活性化が叫ばれて久しい。しかし、なかなかか過疎化が止まらず限界集落が増え続ける実態がある。安倍政権での地方創生は集権的な地方創生の考えが強く、補助金、交付金の割り増しで国が地方を引っ張り上げるかのような施策が並んだ。そうではなく、地方の内発力をどう高めるか、分権型の地方創生でなければならない。国の地方創生本部はあの手この手で地方を引っ張り上げようと躍起だが、地域の内発的な力を引き出す発想に乏しい集権型地方創生ではうまくいくまい。肝心の自治体にも地方創生は「自ら稼げるまちを創り上げること」だという発想への切り替えまでいっていない。 

道州制ウイークリー(264)~(271)

■道州制ウイークリー(264)2021年8月7日

◆一極集中から分権広域州制度へ④

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 2000年に分権改革が行われた。しかし「未完のまま」放置されている。このところ、改革のエネルギーは萎え、地方創生も集権化のなかにある。枕詞として地方分権を唱えるが、それは総論として言っているだけ。各論となると官僚と手を組んで抵抗勢力に回る与党議員も少なくない。しかし世界で、高度産業国家、民主化の進んだ先進国で中央集権の国はない。もっとも地方分権を進めても、地方にできない領域はある。外交や防衛、危機管理、司法、金融、通貨管理、景気対策、国土形成、さらに福祉や医療、教育、文化、農政、インフラ整備など政策の骨格をつくる役割がそれであり、国家経営の観点から国が主導することが望ましい。ただ、国が地方に仕事を義務付け、すべての政策領域に微に入り細に入り関与するやり方は、自治体の政策能力が乏しかった時代の産物だ。

 日本の自治体は、裁量的な政策環境が整えば自立可能なところが多い。この先の主な改革課題を挙げると、①地方税財源の充実・確保、新たな地方財政秩序の再構築、②法令による義務付け、枠づけの縮減・廃止、法令による規律密度の緩和、③事務権限の移譲.④広域化をにらんだ地方自治制度の再編成、⑤住民自治の拡充、⑥地方自治法の廃止、地方自治基本法の制定などだ。地方自治を営む基盤は大きく変わっている。府県制度の大胆な見直しを含め、令和の時代は地方主権を目指す改革を進めるべきだ。究極の分権国家の姿、ゴールは、約10州の地方政府(州政府)がそれぞれ内政の拠点として自己決定、自己責任、自己負担の原則で地方自治を営む姿であろう。

 

■道州制ウイークリー(265)2021年8月14日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑤

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 東京一極集中を解消し分散化を図る、地域のことは地域で決める地方分権国家の究極の姿、大きく膨らんだ国・地方の財政の無駄排除、130年前からの狭域化した都道府県を広域政策のできる広域自治体に変える―――これらを総合的、俯瞰的に実現するには日本を「州制度」の国に変える。それが切り札だ。

 いまや生活圏、経済圏は交通・情報・通信手段の飛躍的発達で大きく広がっているにも関わらず、新型コロナウイルスの大流行においては、あたかも各県が鎖国のように県内目線で、「わが県に来ないでください」「わが県を出ないでください」と叫ばざるを得なかった。国は都道府県制度を足場に知事を手足のように使った。また「国の指示待ち」知事の姿もあった。

 その時代にふさわしい「国のかたち」を設計する。それが政治の基本的な役割だ。時代は大きく変わった。本格的な人口減少時代を迎えた日本をどうするか、「新たな国づくり」を本格的に議論すべき時期に来ている。いまの統治機構「国―都道府県―市町村」の三層制とそれに連なる膨大な出先機関等をそのままにする限り、この先、何度増税を繰り返しても1300兆円を超える財政赤字は消えない。日本の国・地方の歳出合計は170兆円を超える方向にある。歳出の約半分は交際費、人件費、管理費など統治機構を維持するための間接経費に消えている。明治23年以来ほとんど無傷できた47都道府県体制は抜本から見直さなければならない。 

 

■道州制ウイークリー(266)2021年8月21日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑥

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 この先、人口が減り、都道府県の中でも人口が100万人に届かない県が続出する。国立社会保障・人口問題研究所の2045年予測によると、現在100万人以下の件は、香川、和歌山、佐賀、福井、山梨、徳島、島根、高知、鳥取の9県だが、25年後はこれに奈良、長崎、石川、大分、岩手、宮崎、青森、富山、山形、秋田の10件が加わるという。この予想より人口減少が進むと、47都道府県の半数近くが100万人以下になるかもしれない。一方、100万人規模の政令市などの大都市が20近く存在する。こうした広域自治体と基礎自治体が逆転する現象の続出は地方制度を根幹から揺るがす。130年前につくられた47の府県割りは、広域化した現代に合っていない。

 47都道府県は狭域化しているにもかかわらず、行政の活動はあたかもそれぞれが一つの国であるかのようなフルセット行政にいそしむ。横並び意識のフルセット行政の蔓延が、日本全体の財政を悪化させ、不要なハコモノを増やし、行政を非効率化している。今回のコロナ対策で、一度目の緊急事態宣言解除の場面になって、ようやく国は「京阪神」「首都圏」という言い方で広域圏を対象にした判断を求めた。もはや県単位では対応しても限界に近い。広域圏連携を強める制度措置が不可欠との認識からだ。

 そう遠くない将来、10州程度にくくり直し、そこを内政の拠点にする「州制度」への移行は不可欠だろう。まず広域圏で連合議会をつくり、連合代表を知事から選んでグレーター広域連合を特別地方公共団体として法制化し、徐々に国の出先機関も権限も吸収し、広域圏がバーチャル州のような動きになる制度措置がいるかもしれない。

                《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(267)2021年8月28日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑦

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 県内に政令市を抱える県庁は、その政令市と張り合い、人口減で行政需要が大幅に減るにもかかわらず、同じモノ、同じようなサービスを創り続ける。統治の仕組みが二重、三重行政の無駄を生んでいる。都道府県は2000年の分権改革で各省の機関委任事務を大量に処理する役割もなくなり空洞化している。私たちの日常は、経済も生活も県境にかかわりなく広いフィールドで行われている。地方自治のエリアは実際都市と行政都市が一致していることが原則、だが、現在の47都道府県体制はそこから大きくズレ、社会の広域化が進む一方で各府県域は狭域化している。47都道府県という旧体制を解体再編し、広域圏を単位に約10の州をつくり、日常生活に合った広域圏行政の仕組みを作るべきだ。それが道州制だ.。ただ、筆者は、それを大都市・中都市をベースとする新たな「州構想」と呼ぶ。

 州構想移行に積極的な論者は次のようなメリットを挙げる。①行財政基盤を強化する(県庁職員、国の出先機関職員の大幅削減ができる)②行政サービスが向上する(フルセット行政の回避、スケールメリットが働く)③魅力ある地域圏、都市圏が形成できる(特色ある地域圏による都市間競争が成立)④経済生活圏と行政圏を一致させる(府県廃止、地方政府の一元化で広域戦略が可能)⑤大都市圏の一体的運営で経済活力も向上できる(首都圏はイギリス並みの力)。

 

 

                《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(268)2021年9月4日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑦

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 州構想のメリットとされる、①地域圏の一体的整備、②魅力ある広域圏の形成、③行財政基盤の強化、という話は地方自治でいう「団体自治」を重視する立場からの主張だ。他方、デメリットとされる、①住民の声が届かなくなる、②府県で育まれた文化を喪失、③勝ち組、負け組がはっきりし、州内でも州都から遠い地域は地盤沈下する、という話は、「住民自治」を重視する立場からの主張といえよう。間違いなく、広域化に伴いスケールメリットは働く。広域政策、広域業務を州政府に任せる一方で、旧府県や一定規模の市を生かしながら「住民自治」を充実させる方策を講じたらどうか。州制度問題は新たな行政制度をどう創設するかという制度設計の問題であるが、同時に地方が抱える構造的な集権体制をどう解体するかという改革手段の問題でもある。「州構想」は日本再構築の切り札である。

 この州構想改革で、これまで47都道府県制度で巣食ってきた無駄な財政だけでも20兆円近く排除できる。消費税10%分カットできるとみる。日本はこの十数年、中央集権に代え地方分権体制が望ましいとし、様々な制度改革を進めてきた。2000年に47本の法律を一括改正した「地方分権一括法」の施行は、その意思の表れだ。分権国家の究極の姿は「道州制」だとし、それに向けた改革構想も練ってきた。15年前の第一次安倍政権は道州制担当大臣を置き、道州制ビジョン懇談会は2018年までに道州制へ完全移行すべきと提言し、法整備を求めた。自民党は「道州制推進基本法」をまとめたが、国会提出を見送った。その後は、鳴かず飛ばずとなっている。

                《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(269)2021年9月11日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑧

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 世の中の事態はより深刻な方向に進んでいる。人口減少は加速し、累積債務は1300兆円に達し、市町村の半数以上が人口半減などの危機にある。現在の細切れンフルセット体制と、国民から遠い中央政府がセンターとして仕切る中央集権体制はどう見ても時代に合わない。その改革方向は州構想への移行にある。日本全体を約10の広域州とし、各州政府が内政の拠点となるよう大胆に分権化する。身近なところで税が集められ、使われていく。結果としてムダは省かれ人口・企業の地方分散は進み、日本全体の元気を取り戻すことになる。

 日本は既に州制度移行の素地は相当できている。20政令市、60中核市をそれぞれ政令市⇒特別視、中核市⇒政令市に格上げし、この都市自治体にほとんどの府県業務を移管する。そのうえで内政(厚労省、国交省、文科省など)に関わる国の本省業務、ブロック機関の業務、残存する都道府県の業務を融合するかたちで「州」政府を創設し、内政の拠点とするなら州構想は実現できる。

 よく都道府県がなくなるのは心配だという。しかし、それは行政区分上の話であって地域がなくなる訳ではない。州構想が実現しても、日常生活に定着している都道府県名は地名として残るし、甲子園の都道府県対抗高校野球も残る。生活上なんの支障もない。日本はこれ以上の東京一極集中も地方過疎の進行も望まない。次代を見据えた賢い統治システムを生み、人口減少時代でも元気な日本を目指す時だ。

 

                《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(270)2021年9月18日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑨

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 日本を広域圏に見合った州制度に変える理由は大きく三点ある。一つ目は、人口減少の右肩下がり時代に応じて国、地方の政府機構を賢くたたむためだ。二つ目は、地方分権を進め地方主権の国を創るためだ。都道府県を廃止し、市町村も必要なところは再編する。政令市、中核市、特別区などの都市制度を強化充実し、そこへの権限、財源を府県から移したうえで、国からは内政の権限、財源を各州に移し、内政の拠点とするのである。三つ目は、財政再建、健全化のためだ。幾重にも重なる国、地方の行政機関を賢くシンプルにたたみ、国民の税負担をこれ以上増やさない前提で行財政の仕組みを再構築する。

 「州構想」の実現で、各州は国から移された財源を立法権、行政圏、一部司法権をフルに使い地域的に自立を始める。内政の拠点となる各州は広域政策の主体として、道路・空港・港湾など広域インフラの整備、科学技術の振興、州立大学などの高等教育、域内経済や産業の振興、海外都市との交易、文化交流・雇用政策、州内の治安、危機管理、環境保全、医療保険など社会保障サービスを担当する。政策減税で企業を呼び込むことも可能になる。日本が一極ではなく、10極の多極分散型の国に変わる。

 道州制(州構想)は30年前の国鉄改革に似ているとみてもよい。日本の中に自らの意思と知恵による地域間競争が起こる。海外との交易も窓口は国(外務省等)ではなく、各州に移る。そのことでグローバリゼーションへの対応も十分可能となる。

                《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(271)2021年9月25日

◆一極集中から分権広域州制度へ⑩

(佐々木信夫『いまこそ脱東京!』より)

 州制度移行のメリットはどのようなものか。州制度移行を単に行政改革の面だけでとらえるのは間違いである。民間活動を府県単位に縛り付けているくびきを外し、より経済活動にダイナミズムを生み出す。日本を東京一極集中ではなく多極分散の国にかえていこというものだ。日本を元気にすることだ。具体的に州制度のメリットを示すと大きく次の三点となろう。

 第一は、政治システムを変えること。多元化、多様化したニーズに応えるには、遠い政府の判断を待つまでもなく、身近な政府が意思決定する時代だ。身近な市町村を第一の政府に据え、補完性の原理および近接性の原理に基づいて行政を行う。政治や行政が身近なものになり、公共サービスの受益と負担が明確になる。住民参加による政策決定が可能となり、政策決定の透明性が増す。

 第二は、日本全体の経済の活性化につながること。各州圏域が自立的で活力ある競争的発展の可能な国土構造に変え、国際競争力を高めていく。国と地方の事務配分を抜本的に見直し、税財政の仕組みを変える。一定規模と権限を持つ州による広域圏経済で、広域の経済文化圏が形成され、相互に切磋琢磨によるダイナミズムが生まれる。

第三は、無駄の排除だ。国と地方を通じ簡素で効率的な統治システムに変えていくこと。州政府が企画立案から管理執行まで一貫してその役割を果たせる。日本再生はこうした統治機構の大改革からしか生まれない。

道州制ウイークリー(255)=(258)

■道州制ウイークリー(255)2021年6月5日

◆地域衰退をどう食い止めるか③(宮崎雅人『地域衰退』より)

◇分権・分散型国家をつくる

 地域衰退を食い止める手段として、改めて、東京一極集中の是正を挙げておきたい。かつて「国土の均衡ある発展」が目指され、全総をはじめとして多くの政策が展開されてきたが、その間も東京一極集中は是正されなかった。近年では小泉政権以降進められるようになった都市再生策によって都心回帰が進み、東京一極集中はむしろ加速した。「東京は日本経済の成長エンジン」という言説がまかり通った。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって、東京一極集中はリスクが高いことが明らかになった。今後、このような未知の感染症の流行が繰り返される限り、東京の雇用吸収力は以前ほど大きくならないと考えられる。日本全体として東京の経済を拡大することによって雇用を拡大するというやり方は今や持続不可能になったといえる。

 こうした変化を踏まえれば、国から地方への地方分権と、人々の地方分散を推し進め、東京一極集中を是正することは、各自治体の実情を踏まえた形で未知の感染症の拡大を防ぎ、地域衰退を食い止めるだけでなく、日本経済の持続的成長のためにも必要不可欠であることがわかる。地域、さらには日本の衰退を食い止めるためにも、東京などの大都市以外の地域に雇用を生み出す多様な産業を一刻も早く興す必要がある。地方に新たな産業を興し、仕事を作り出すことは、中小都市や農山村の人々のためにだけに必要なのではない。東京などの大都市に存在する人や企業にも選択肢を与えることになるのである。終わりの見えない「コロナ禍」によって、大都市にこだわる理由がなくなりつつあるのではないか。

■道州制ウイークリー(256)2021年6月12日

◆日本再生のカギは30万都市経済圏①

(冨山和彦・田原総一郎『新L型経済』より)

◇日本経済を支えるL型(地域密着)企業

 多くの先進国もそして日本も、GDPのうちグローバル企業(G)
が稼いでいるのは、3割程度で、残りの7割を占める諸々の産業群こそが現代の基幹産業であり、その多くは地域密着型(L=ローカル)
の中堅、中小企業、ローカルサービス群が生み出しているものです。日本の労働人口の8割は中小企業の従業員、もしくは非正規であり、グローバルに名を轟かせる大企業の正社員は2割程度しかいません。ローカル中小企業の多くは、都市部の同業種に比べて生産性が低いところも少なくありません。グローバルで商売をしている大企業の収益を現在の状況から大きく積み上げていくのはそう簡単ではありませんが、ローカル経済を担う中小企業の経済力を高めることは決して難しいことではなく、かつ大きな伸び代が見込めます。そこに東京一極集中という問題を解決する鍵もあります。

 コロナ後の未来像を先取りして考えるのであれば、まずもって日本の産業社会構造をどう描くかということです。日本社会のIT化はかなり遅れをとっていたことが明らかになりました。その改革は進めないといけないのは間違いありませんが、今の日本のGDPには直接寄与しません。日本の大企業の競争力強化には多少恩恵があるかもしれませんが、日本全体の経済成長にはあまりつながらないでしょう。

問題はデジタル化の良い部分をどう中小企業や中堅企業に還元して、産業構造を組み換え、生産性を上げていくかにあって、単にITシステムを組み上げればいいという問題ではない。

■道州制ウイークリー(257)2021年6月19日

◆日本再生のカギは30万都市経済圏②

(冨山和彦・田原総一郎『新L型経済』より)

◇復興を妨げる補助金漬け、過剰債務

 緊急事態宣言下で日本政府が打ち出した経済政策というのは当面のキャッシュを確保させるために中小企業向けに緊急融資枠の拡大、それに雇用調整助成金の補助率の変更、補助金要件の緩和、108兆円規模の緊急経済対策の策定と矢継ぎ早に対策を打ちました。これは非常に良かった。

 当初想定されていた最悪のシナリオ、すなわち緊急事態宣言下で連続的に倒産が続くというケースは何とか避けることはできましたが、大事なのは、ここからです。緊急避難的な政策は緊急時にしか効果はなく、次のポイントは本格復興のスキームをどう描くかにあります。パンデミックが収まった後に、今度は復興モードにスイッチを切り替えないといけないのですが、いま出している融資や補助金の副作用で復興を妨げる危険性がある。

 これには二つの妨げがあって、一つは補助金頼みで延命した企業は常に補助金がないと食えないビジネスモデルを作ってしまいがちになることです。補助金が経営の前提になってしまい、補助金がないと続けられない状態になってしまう。もう一つ、最も深刻なのは多くの企業がお金を借り増していることです。中には過剰債務になる企業も出てきます。借金が多い企業に対し銀行が新しい融資をするメリットはなく、融資がなければイノベーションも起きない、結果的には経済は停滞し、バブル崩壊後に起きた問題が新しい形で再生産されます。。

 

■道州制ウイークリー(258)2021年6月26日

◆日本再生のカギは30万都市経済圏③

(冨山和彦・田原総一郎『新L型経済』より)

◇まず30万人都市を再生させよ

 国内で大きなGDPや大量の中産階級雇用を生むという意味では、G型(グローバル)企業が今後大きな成長をすることは難しいでしょう。目を向けるべきは、GDPの7割の世界、L型(ローカル)企業群と呼んでいる小売、卸売り、飲食、宿泊、エンターテイメント、地域金融、物流、運輸、建設、医療や介護、農林水産業です。L型の特徴は地域密着で、その地域にいる人たちとフェイス-ツウ・フェイスでサービスをしている産業が多いことです。

 なぜか日本で地方創生、地域活性というと、限界集落の話になりですが、そうした場所にバスを通す、介護サービスや買い物の宅配という事業を行き届くようにするためにも、最も大事なのは地方の中核都市の再生です。L型産業群の経済を活性化しないと、日本の経済の未来はない。問題は地方から出てきた若者にあるのではなく、地方にある仕事に人材が回らず、彼らの力を活用できていない構造にあります。

 人口30万人規模の自治体が地方再生のカギを握っている。中核都市にはシャッター街も増えてきて、空き家になりかかっている。みんな共倒れしかねないという問題を抱えている。そのために人口をもう一度、中核都市に集めてくるという都市政策を、今度は地方でやらないといけない。最初は行政がとにかくお金を使ってかまわないから、中核都市部の再開発を行わないといけない。L型産業の多くはサービス業で、人口が集まれば自然と生まれてくる。

               

道州制ウイークリー(233)~(237)

■道州制ウイークリー(233)2021年1月2日

◆これが九州道州制ビジョン⑨

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇なぜ地域主権型道州制が必要か(江口克彦氏)

 なぜ、道州制が必要かというと、中央集権体制が諸悪の根源であるからで、この体制を改めない限りほどなく日本は衰退の一途をたどることになる。このままでは東京一極集中がますます進み、地方の人口は減少、東京を中心とする首都圏と地方の格差も想像を絶するほど大きなものとなろう。一刻の猶予も許されず、新しい国のかたち、都道府県を廃し、全国を10程度の州、また住民の納得する基礎自治体に再編し、それぞれの地域が税財源などを掌握し、主体的に住民密着の政治行政を行う「地域主権型道州制」を実現しなければならない。

 広域行政に変えないと無駄が生じ、地域の負担もさらに増す。費用対効果を考えながら、広域でダイナミックに動かしていくことで行政も効率的になる。そうすることで人口が分散し、人々が自由闊達に活動できる「疑似国家」「分権国家」をつくり、少なくとも繁栄拠点を全国で十数か所つくる必要がある。そうしなければ国力は衰え、民力は低下し、日本はいずれ三流国家になる。

 九州はもともと独立意識が強く、道州制の議論も活発だ。九州最大の都市である福岡を起点に考えると、距離的に上海と東京は変わらず、ソウルは名古屋より近い。一つの州になれば海外の国と対等に交渉でき、国際運輸物流においても東アジアのハブになれる。税収面でも自主的に決めることも可能だ。九州から日本を変える、若い人たちがそう思って考え行動すれば日本を動かす力になる。。グローバル化の中で生き残るためには、何としても道州制の導入が必要だ。

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(234)2021年1月9日

◆これが九州道州制ビジョン⑩

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇九州道州制が目指す将来ビジョン

九州地域戦略会議の道州制検討委員会が2009年にまとめた「九州が目指す姿、将来ビジョン」報告書では、道州制導入について、①国内外の急速な変化に対応し、21世紀においても持続的に発展することを目指す ②現行のわが国の統治機構、社会の仕組みを抜本的に見直し、新しい国のかたちを構想する、としています

その目指す国のかたちは、●国の役割を限定する ●内政に関しては地方が自律的・総合的に担うことを基本とする ●都道府県を廃止し、新たに全国に複数の道州を創設する ●道州制組織の在り方は道州と市町村の2層制で公選の議会と首長を持つ、というものです。

国の役割は、外交、防衛、通貨、金融、国際的な枠組みに関する地球環境対策、公的年金など国家の存立にかかわることに限定する。そのうえで道州には警察、広域防災、空港、港湾、鉄道、高速道路、情報通信インフラ、新産業創出、経済交流、産業振興、雇用保険、医療計画など幅広い分野で国から権限と財源を委譲し、道州全体にわたる広域的な事業を受け持つ。

基礎自治体となる市町村は、消防、まちづくり、上下水道、景観保護,ゴミ・し尿処理、介護、保育所、商店街対策といった住民生活に直接かかわる公共サービス全般に関わる。

教育に関しては、国は最低限の水準を保証、道州は小中高の学習内容の設定、州立高校・大学の設置運営など、基礎自治体は市町村立学校の設立運営、学級編成、幼稚園など役割を分担する。

道州と基礎自治体が主体となって地域政策に関して自らの権限と財源を持ち、地域ニーズに的確に対応した政策を企画立案から施行まで一貫して効率的かつ総合的に実施する。そして九州のことは九州が決めるシステムを構築する。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(235)2021年1月16日

◆これが九州道州制ビジョン⑪

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制下での医療

 大都市に医師が集中、地方の医師不足が叫ばれて久しく、救急医療や高度・先端医療における広域連携の必要性も問われている。国から権限と財源を受けることで、まず医師不足の解消には、州立大学の医学部の定員を拡大することで医師数の絶対数を増やし、州が医学生に地方勤務を条件とした奨学金制度の充実を図るなどして、州内での定着を促進、離島、半島、中山間地の医師不足や小児科、産科の専門医不足に関しても、診療報酬を弾力的に運用することで手厚くし必要量の医師を確保する。

 広域連携医療においては、県単位では県境がネックとなり、連携がスムーズに行われず、コストや医療設備の面からも整備を図ることが難しい。道州制であれば、例えば市町村が離党・僻地の中に過疎地域の医療拠点を設け、より高度な州立病院と一元的な運営を行うことで、過疎地域にも安定した医療を提供できる。各県で重なる医療機能を集約し、拠点病院と過疎地の病院を遠隔医療システムを結ぶことも可能となる。

 救急医療でも道州制により大きく改善する。県単独では導入・維持が難しいドクターヘリを州の中で効率的に配備すれば、すべてのエリアをカバーできる。また、専門性の高い医療については、県単位ではそのレベルアップがなかなか難しいが、州でがんセンターや子ども病院、循環器センターなど専門性の高い期間を整備することで、最先端の医療の提供ができるようになる。その際、国の研究機関や諸外国の関連機関とも交流・連携を図ることで高度な医療体制をめざす。こうして医療を地域に暮らす人たちのニーズにきめ細かく対応、人の命を守るという基本的な地域医療のインフラを整備、より広域的なネットワークを構築することで、高度で最先端お医療を受けられるようにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(236)2021年1月23日

◆これが九州道州制ビジョン⑫

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制下での子育て支援 

 核家族化により地域社会全体で子育てを支援していく必要性が今後ますます高まる。道州制下で子育て支援策が、道州と市町村が連携して、地域の実情を踏まえた弾力的で総合的な施策を進めれば、より効果的で、安心して産み育てる社会の実現ができるようになり、出生率の増加をもたらす期待がもてる。

 保育園での待機児童、幼稚園の定員割れというニーズとのミスマッチを解消し多様な保育ニーズへ対応するために、保育園や幼稚園の施設運営について、都市部など保育所需要が多いところで土地確保が困難な場合、保育施設や屋外遊技場の面積などの基準を緩和、児童数の減少で幼稚園の設置が難しい地域では、小学校などとの併設を認め、延長保育や短時間保育といったサービスの多様化により利便性を向上ささえる。

 また、出産・育児期の経済的負担を減らすため、児童手当、妊婦健診費、保育料などについて、道州と市町村が連携して、地域の実情や子育て世帯のニーズを踏まえて、出産・育児期の一体的かつ効果的な制度設計を行うことで、安心して子どもを産み育てることができる社会を実現する。

 女性の仕事と育児を両立させるために、女性の継続就労、再就職支援、中小企業への支援などを実施、就労環境を改善する。さらに、県ごとに実施している子育て応援事業を広域で取り組み、行政、企業、地域社会が連携、NPOも活用し、子育て支援を社会全体で応援していく気運を高めていく。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(237)2021年1月30日

◆これが九州道州制ビジョン⑬

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制での教育

 小中学校では国語に方言を取り入れ、地域の言語文化の保護や維持を図り、九州と関係が深い東アジアを意識し、外国語では英語のほかに中国語や韓国語を学べるようにし、社会科でも東アジアとの交流史を教え、理科では地域の自然保護など、独自の教育内容を盛り込めるようになる。高校では農林水産、醸造、観光、デザインなど九州の産業構造にマッチした専門人材教育を展開する。

 全国画一の学級編成、校舎整備基準がなくなるので、離島や中山間地集落が多い九州の特性に配慮し、分校制度を復活・強化、教育の機会をいままで以上に確保する。ハード面でも地元の木材を使用した校舎、農水産物を活用した給食も一層推進でき、地域の活性化の役割も担う。

 大学は国立、県立大学を必要に応じて州立大学として各都市圏レベルで再編を実施、再編によって生まれた余剰をベースに新たに芸術、獣医、アジア言語などの大学、学部を創設する。十分な財源を確保し、米国のような世界水準の州立大学のような大学に育て、世界に通用する研究を維持する。さらに体育、看護、福祉といった九州独自の既存の専門大学も加えることで地域社会の多様な教育ニーズに応えていく。また、州立大学の教育学部に学生定員を定め、質の高い教員も安定的に確保する。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(233)2021年1月2日

◆これが九州道州制ビジョン⑨

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇なぜ地域主権型道州制が必要か(江口克彦氏)

 なぜ、道州制が必要かというと、中央集権体制が諸悪の根源であるからで、この体制を改めない限りほどなく日本は衰退の一途をたどることになる。このままでは東京一極集中がますます進み、地方の人口は減少、東京を中心とする首都圏と地方の格差も想像を絶するほど大きなものとなろう。一刻の猶予も許されず、新しい国のかたち、都道府県を廃し、全国を10程度の州、また住民の納得する基礎自治体に再編し、それぞれの地域が税財源などを掌握し、主体的に住民密着の政治行政を行う「地域主権型道州制」を実現しなければならない。

 広域行政に変えないと無駄が生じ、地域の負担もさらに増す。費用対効果を考えながら、広域でダイナミックに動かしていくことで行政も効率的になる。そうすることで人口が分散し、人々が自由闊達に活動できる「疑似国家」「分権国家」をつくり、少なくとも繁栄拠点を全国で十数か所つくる必要がある。そうしなければ国力は衰え、民力は低下し、日本はいずれ三流国家になる。

 九州はもともと独立意識が強く、道州制の議論も活発だ。九州最大の都市である福岡を起点に考えると、距離的に上海と東京は変わらず、ソウルは名古屋より近い。一つの州になれば海外の国と対等に交渉でき、国際運輸物流においても東アジアのハブになれる。税収面でも自主的に決めることも可能だ。九州から日本を変える、若い人たちがそう思って考え行動すれば日本を動かす力になる。。グローバル化の中で生き残るためには、何としても道州制の導入が必要だ。

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(234)2021年1月9日

◆これが九州道州制ビジョン⑩

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇九州道州制が目指す将来ビジョン

九州地域戦略会議の道州制検討委員会が2009年にまとめた「九州が目指す姿、将来ビジョン」報告書では、道州制導入について、①国内外の急速な変化に対応し、21世紀においても持続的に発展することを目指す ②現行のわが国の統治機構、社会の仕組みを抜本的に見直し、新しい国のかたちを構想する、としています

その目指す国のかたちは、●国の役割を限定する ●内政に関しては地方が自律的・総合的に担うことを基本とする ●都道府県を廃止し、新たに全国に複数の道州を創設する ●道州制組織の在り方は道州と市町村の2層制で公選の議会と首長を持つ、というものです。

国の役割は、外交、防衛、通貨、金融、国際的な枠組みに関する地球環境対策、公的年金など国家の存立にかかわることに限定する。そのうえで道州には警察、広域防災、空港、港湾、鉄道、高速道路、情報通信インフラ、新産業創出、経済交流、産業振興、雇用保険、医療計画など幅広い分野で国から権限と財源を委譲し、道州全体にわたる広域的な事業を受け持つ。

基礎自治体となる市町村は、消防、まちづくり、上下水道、景観保護,ゴミ・し尿処理、介護、保育所、商店街対策といった住民生活に直接かかわる公共サービス全般に関わる。

教育に関しては、国は最低限の水準を保証、道州は小中高の学習内容の設定、州立高校・大学の設置運営など、基礎自治体は市町村立学校の設立運営、学級編成、幼稚園など役割を分担する。

道州と基礎自治体が主体となって地域政策に関して自らの権限と財源を持ち、地域ニーズに的確に対応した政策を企画立案から施行まで一貫して効率的かつ総合的に実施する。そして九州のことは九州が決めるシステムを構築する。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(235)2021年1月16日

◆これが九州道州制ビジョン⑪

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制下での医療

 大都市に医師が集中、地方の医師不足が叫ばれて久しく、救急医療や高度・先端医療における広域連携の必要性も問われている。国から権限と財源を受けることで、まず医師不足の解消には、州立大学の医学部の定員を拡大することで医師数の絶対数を増やし、州が医学生に地方勤務を条件とした奨学金制度の充実を図るなどして、州内での定着を促進、離島、半島、中山間地の医師不足や小児科、産科の専門医不足に関しても、診療報酬を弾力的に運用することで手厚くし必要量の医師を確保する。

 広域連携医療においては、県単位では県境がネックとなり、連携がスムーズに行われず、コストや医療設備の面からも整備を図ることが難しい。道州制であれば、例えば市町村が離党・僻地の中に過疎地域の医療拠点を設け、より高度な州立病院と一元的な運営を行うことで、過疎地域にも安定した医療を提供できる。各県で重なる医療機能を集約し、拠点病院と過疎地の病院を遠隔医療システムを結ぶことも可能となる。

 救急医療でも道州制により大きく改善する。県単独では導入・維持が難しいドクターヘリを州の中で効率的に配備すれば、すべてのエリアをカバーできる。また、専門性の高い医療については、県単位ではそのレベルアップがなかなか難しいが、州でがんセンターや子ども病院、循環器センターなど専門性の高い期間を整備することで、最先端の医療の提供ができるようになる。その際、国の研究機関や諸外国の関連機関とも交流・連携を図ることで高度な医療体制をめざす。こうして医療を地域に暮らす人たちのニーズにきめ細かく対応、人の命を守るという基本的な地域医療のインフラを整備、より広域的なネットワークを構築することで、高度で最先端お医療を受けられるようにする。

 

 

 

 

 

 

 

 ■道州制ウイークリー(236)2021年1月23日

◆これが九州道州制ビジョン⑫

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制下での子育て支援 

 核家族化により地域社会全体で子育てを支援していく必要性が今後ますます高まる。道州制下で子育て支援策が、道州と市町村が連携して、地域の実情を踏まえた弾力的で総合的な施策を進めれば、より効果的で、安心して産み育てる社会の実現ができるようになり、出生率の増加をもたらす期待がもてる。

 保育園での待機児童、幼稚園の定員割れというニーズとのミスマッチを解消し多様な保育ニーズへ対応するために、保育園や幼稚園の施設運営について、都市部など保育所需要が多いところで土地確保が困難な場合、保育施設や屋外遊技場の面積などの基準を緩和、児童数の減少で幼稚園の設置が難しい地域では、小学校などとの併設を認め、延長保育や短時間保育といったサービスの多様化により利便性を向上ささえる。

 また、出産・育児期の経済的負担を減らすため、児童手当、妊婦健診費、保育料などについて、道州と市町村が連携して、地域の実情や子育て世帯のニーズを踏まえて、出産・育児期の一体的かつ効果的な制度設計を行うことで、安心して子どもを産み育てることができる社会を実現する。

 女性の仕事と育児を両立させるために、女性の継続就労、再就職支援、中小企業への支援などを実施、就労環境を改善する。さらに、県ごとに実施している子育て応援事業を広域で取り組み、行政、企業、地域社会が連携、NPOも活用し、子育て支援を社会全体で応援していく気運を高めていく。

 

 

■道州制ウイークリー(237)2021年1月30日

◆これが九州道州制ビジョン⑬

      (西川立一『九州道州制がよくわかる本』より)

◇道州制での教育

 小中学校では国語に方言を取り入れ、地域の言語文化の保護や維持を図り、九州と関係が深い東アジアを意識し、外国語では英語のほかに中国語や韓国語を学べるようにし、社会科でも東アジアとの交流史を教え、理科では地域の自然保護など、独自の教育内容を盛り込めるようになる。高校では農林水産、醸造、観光、デザインなど九州の産業構造にマッチした専門人材教育を展開する。

 全国画一の学級編成、校舎整備基準がなくなるので、離島や中山間地集落が多い九州の特性に配慮し、分校制度を復活・強化、教育の機会をいままで以上に確保する。ハード面でも地元の木材を使用した校舎、農水産物を活用した給食も一層推進でき、地域の活性化の役割も担う。

 大学は国立、県立大学を必要に応じて州立大学として各都市圏レベルで再編を実施、再編によって生まれた余剰をベースに新たに芸術、獣医、アジア言語などの大学、学部を創設する。十分な財源を確保し、米国のような世界水準の州立大学のような大学に育て、世界に通用する研究を維持する。さらに体育、看護、福祉といった九州独自の既存の専門大学も加えることで地域社会の多様な教育ニーズに応えていく。また、州立大学の教育学部に学生定員を定め、質の高い教員も安定的に確保する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道州制ウイークリー(165)~(168)

■道州制ウイークリー(165)2019年9月7日

◆人口減少国家 日本の未来⑤全国で町が消えていく

(河合雅司『未来の透視図』より)

2015年を100とした時に30年後の2045年に人口がどのくらい減るのかを日本地図で示してみると、人口が半数以下になってしまう地域が、北海道から沖縄までかなりの地域に散らばっている。人口5000人未満の自治体が増えていけば、病院や銀行など地域に必要な社会インフラが存在できなくなる事態になりかねない。

北海道では、2045年に実に6割以上の自治体が人口5000人未満の小規模自治体となる。東北でも宮城を除く各県で、3割ほどが小規模自治体だ。北関東では群馬県の25%の自治体で5000人未満になる。東京都の周辺3県でも小規模自治体は確実に増えていく。

中部エリア9県では全県で人口減少が進む。小規模自治体が特に多い長野県では、45年には約半数の自治体が5000人未満となる。近畿エリアの三重、奈良、和歌山では小規模自治体の増加が顕著。奈良、和歌山は約4割が5000人未満となる。

四国4県もまた、人口減少が著しく進む。特に高知は5000人未満の自治体が6割を超える。中国エリアでは鳥取、島根で5000人未満自治体が約4割となり、人口規模全国12位の広島県でも1割の自治体が人口5000人未満となる。九州・沖縄でも全県で小規模自治体が増える。熊本は6割を超える自治体が5000人未満となる。

大都市圏は高齢化が目立ち、地方圏では高齢者の増加率は高くないが、労働者人口の減少が著しい。地域のサービスが消滅する人口規模をみると、2万人以下では美術館、研究機構、ペットショップ、英会話教室などが消える。1万人以下になると、救急病院、介護老人福祉施設、税理士事務所などがなくなり、5000人以下となると、一般病院、銀行などが消滅する。これまで当たり前だった生活ができなくなってしまう。

 

■道州制ウイークリー(166)2019年9月14日

◆人口減少国家 日本の未来⑥空き家急増、老朽化する生活インフラ

(河合雅司『未来の透視図』より)

誰も住んでいない家や集合住宅の空室が増えている。総務省の調査では、全国にある空き家は2013年時点で820万戸にものぼり、住宅総数(6063万戸)の13.5%を占める。このうち約6割に当たる471万戸はマンションなどの共同住宅だ。住宅が余っていながらも、都心部を中心にタワーマンションや集合住宅の着工は相次ぐ。野村総合研究所の試算(2016年)では、このままでいくと、2033年には住宅の3戸に1戸が空き家となってしまう。

全国には所有者が分からない、また連絡がつかない「所有者不明土地」が2016年時点で九州とほぼ同じ面積の約410万ヘクタールもある。これが年々拡大、2040年には16年の1.7倍に当たる約720万ヘクタールに増えると試算されている。北海道の面積の約9割に当たる。

1960年代に集中的に整備された社会インフラは一斉に老朽化が進む。2033年度には、道路橋の約63%、トンネルの約42%、水門などの河川管理施設の約62%が建設から50年以上となる。財政が悪化する中、インフラの刷新は難しい。インフラに係るコストは利用者が負担するが、人口減少に伴い利用者が減ると利用料だけでは賄いきれない事態が起きる。

水道管の法定耐用年数は40年だが、耐用年数を超えた水道管は、2014年に12%を超えた。それに対して水道の需要は2000年をピークにどんどん下がっている。2018年に成立した改正水道法により水道事業の民間委託がしやすくなったが、はたして参入する民間企業があるか、水道管の刷新を進めながら水道料金の大幅値上げを避けられるのか、見通しは決して明るくない。

 

 

■道州制ウイークリー(167)2019年9月21日

◆人口減少国家 日本の未来⑦戦略的に縮むための提言

(河合雅司『未来の透視図』より)

我々は発想を大胆に変えるときである。日本の人口減少はもはや避けられない。ならば、戦略的に縮むことだ。縮むことは必ずしも「衰退」を意味するものではない。戦略的に縮むには、日本人の総仕事量を減らすことだ。

第1のアイデアは、「便利すぎる社会からの脱却」である。24時間営業のコンビニエンスストアは当たり前の風景となった。だが、こうした「便利さ」を維持するには、膨大な人の手が必要である。すこし便利さを我慢することで、これらに携わっている人を減らし、その分、必要不可欠となる他分野へと人材をシフトすることができる。

第2のアイデアは、「国際分業の徹底」だ。賃金の高い国が「大量生産・大量販売」のモデルを続けることには無理がある。コンピューターの発達は、発展途上国の向上にあっても先進国の工場でつくるのと同じレベルの製品をつくることを可能にした。日本でしかつくれないもの、日本がつくった方がよいものに特化することだ。日本の得意分野に人材を集中させていくことで、成長分野を活性化させていくことが日本の豊かさを維持する上で不可欠といえよう。

第3のアイデアは、「居住エリアと非居住エリアの分離・明確化」だ。社会の支え手が減る時代おいては自治体の職員ですら十分に確保できなくなる事態が想定される。人口減少社会、少子化社会においては、住民がバラバラに住むエリアが広がっていく。こうしたエリアに行政サービスや公的サービスを届けるにはコストもかさむ。どのように届け続けるのかが大きな社会的問題となるだろう。行政マンや公共サービスの担い手が少なくなる中で,やりくりしていくには、住民側の割り切りも不可避だ。そこで、地域ごとに住民が集住するエリアをつくり、行政サービスや公共サービスはそこまで届ければよいことにする。

 

■道州制ウイークリー(168)2019年9月28日

◆人口減少国家 日本の未来⑧拠点国家を構想せよ

(河合雅司『未来の透視図』より)

第4のアイデアは、「働けるうちは働く」ということだ。60歳や65歳でリタイヤするのはあまりにももったいない。高齢になっても必要とされる人材となるには、スキルを磨き続けるしかない。働く期間を長くできれば、公的年金の受給を繰り下げることも可能となり、結果として年金受給額を増やすこともできる。

第5のアイデアは、「1人で2役をこなす」ことだ。空いている時間をうまく活用することで、勤労世代の不足の解消ともなる。人手不足による採用難が深刻化する中で、優秀な社員の流失を防ごうと思えば、複数キャリアを認めるしかない。

「大量生産・大量販売」というこれまでの成功モデルを投げ捨て、付加価値の高い商品やサービスを「少量生産・少量販売」するビジネスへとモデルチェンジすることだ。

「少量生産・少量販売」のモデルはヨーロッパに見つけることができる。そこで、人口が激減する日本においても、東京一極集中に代表されるような「集積の経済」一本槍のビジネスモデルから脱却し、「拠点国家構想」を目指すことを提言したい。

「拠点国家構想」とは、全国に人々が集まり住む拠点を定め、それぞれの地域の特性などを生かし、あるいは伝統工芸品などに使われてきた技術力を転用することによって、ヨーロッパのごとく高く売れる製品やサービスを少量生産する考えだ。「世界に通用するブランドづくり」に活路を見出そうというのである。

日本に残された時間はあまりに少ない。いま我々に求められているのは行動に移すことである。人口が減ってもなお、暮らしの豊かさが損なわれぬよう、この国をつくり替えることが急がれる。

 

道州制ウイークリー(147)~(150)

■道州制ウイークリー(147)2019年5月4日

◆立法権と財政自主権を持った道州制へ

(塩沢由典『経済に国はいらない』より)

日本は、明治以来、中央集権でしょう。中央の官僚がいいと思ったものを、全国一律にうけわたす仕組みを作ってきた。補助金もそうです。それは無駄なく効果的だった。だけど、今は、漂流の時代。「坂の上の雲」が見えない時代でしょう。そういう時代には、別の形の思考にいかなければならない。日本では、中央集権を改めなければ上手くいかないでしょう。少なくとも、既成の解答はない。日本の国家体制を大きく変えなきゃいけない。

その一つの可能性が「道州制」です。これは、人によっては自治体の単位が小さすぎるから、もっと合併して、権限を集中させるべきだ、という文脈で使う場合も多いので、気を付けなければいけない。道州制という言葉だけでは問題があるのです。わたしが言っているのは、かなりの自由度を持った、立法権と財政自主権を持った地方政府をつくっていくという考え方です。もちろん、部分的に地方交付税みたいなものがあってもいい。ドイツだったら、州間調整というものがある。豊かな州とそうでない州のあいだで財政移転する。でも、基本は自分たちでやるということを根本に置かないと、おかしくなります。補助金に頼りだすといったことが起こる。そうなると、日本全体が衰退していきます。中心地もダメになるし、供給地域になっているところも、上手くいかない。まして、見捨てられた地域にお金をつぎ込んでも、上手くいかない。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(148)2019年5月11日

◆関西は主体性を取り戻せ

(五百旗頭真『広論関西経済』読売新聞2019年5月4日付より)

作家・司馬遼太郎はかつて、東京を「世界の変電所」と呼んだ。送られてきた電力を変圧して消費地に送る変電所のように、東京に人材や権限を集め、世界の潮流を把握して全国に成果を伝えていく。日本の近代化が成功したのは、明治以降のこの仕組みがうまく機能したからだ。

昭和の後半ぐらいまではそれで良かった。それ以降は地方の自主性、多様性を育まねばならないのに怠り、過度な東京一極集中を招いた。

令和の時代に、関西は主体性を取り戻さなければならない。政府頼みでは駄目で、企業や自治体が根を張り、我々こそが日本と世界を動かすという気概を持つ必要がある。「東京にはないものが、自分たちでできる」と発信し、人を集めていくほかはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(149)2019年5月18日

◆第二の「極」へ個性磨こう

(五百旗頭真『広論関西経済』読売新聞2019年5月4日付より)

首都直下地震が憂慮される今、日本は複数の軸足を持たねばならない。もう一つの「極」になれるのは今、関西しかない。最終的には5~10の個性ある中心都市と地域を育てるべきだが、まずは二つ目の軸を作らなければ始まらない。関西が突破口を開く必要がある。

兵庫県は、日本の安全神話を覆した阪神大震災という未曽有の災害に見舞われた。それ以降、単に復旧させるのではなく、より良い地域を作る「創造的復興」の歩みを進めてきた。震災前は鉄鋼など重厚長大型の産業が中心だったが、今は科学技術立県を目指している。

関西の各府県も兵庫と同様に、独自の強みがある。大阪が商業・産業の集積地であるのは言うまでもない。京都は文化・観光の全国的中心地であるだけでなく、電子部品などハイテク産業や医療研究の先進地でもある。環境保護の取り組みでは琵琶湖を抱える滋賀が進んでおり、奈良は京都とともに伝統ある文化・観光の拠点である。

人間存在の本質は、「多にして一」だと思う。どんな人間も内面は複雑で多様性を持つが、一人の人間として統合されている。これは、地域も同じだ。

各府県の得意芸、個性が集まって「一」になる。関西のまとまりの悪さを『関西は一つ』ではなく、『一つ一つ』と揶揄する言い方があるが、「多」と「一」は両立しうる。それぞれの個性を磨き、多様性のある関西が全体として輝きを増せばいい。「多」の一つ一つの水準を高め、相互に連携を深めていく。これが関西発展の道だと思う。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(150)2019年5月25日

◆大前研一「わが道州制案」①

(大前研一『世界の潮流2019―20』より)

平成は日本にとって失われた30年だった。新元号、令和の時代に日本がやるべきことは、その失われた30年を取り戻す、これしかない。

しかし、すでに半ば機能不全に陥っている国にその力はないだろう。だから、道州制なのだ。

日本を北海道、東北、関東、首都圏、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄の11の道州に分割し、憲法を改正してそれぞれに自治権を与える。各道州は知恵を絞って世界からヒト、モノ、カネ、情報を呼び込み、各道州の首都は発展を競い合う。

1人当たりGDPと人口規模を繁栄の単位とすると、首都圏はカナダと同じである。関西は台湾とほぼ同じで、オランダよりも人口が多い。九州はベルギーに匹敵する。四国はニュージーランドと同等。このように日本を道州に分けた場合、ほとんどの道州は国家と肩を並べられるくらいの経済力があることが分かる。

 

道州制ウイークリー(143)~(146)

■道州制ウイークリー(143)2019年4月6日

◆ヨーロッパの道州制①

(神野直彦『人間国家への改革』より)

地方分権を推進しようとすれば、地方自治体の任務が拡大する。そうなると、任務の受け皿として統治機構を改革しようとする動きが胎動する。ヨーロッパでは、国民国家の機能を上方と下方に分岐させようという動きによって、下方に移譲された機能を受け皿として、道州制を導入しようとする動きが生じてくる。具体的には、フランスのレジオン、イタリアのレジョーネ、スウェーデンのレギオンなどの道州制の潮流である。

国民国家の機能としての産業政策が、EUという超国民国家へと上方に移譲されると、EU内部の地域間格差是正のために、構造資金を設けるようになる。この構造資金の受け皿として、道州制の導入が意図される。そのため、ヨーロッパの道州制の重要な任務は地域経済振興にある。

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(144)2019年4月13日

◆ヨーロッパの道州制②

(神野直彦『人間国家への改革』より)

フランスでは、レジオンという国の行政区画を1982年の地方分権化法で地方自治体とし、職業訓練を中心に地域経済振興を担うことを任務としている。イタリアのレジョーネをみると、EU構造資金の受け皿であるとともに、医療の担い手ともなっている。イタリアは日本と同様に小域別に医療保険が分立していたが、1978年の国民サービス法で職域別の保険を一本化し、レジョーネを医療サービスの提供主体としたのである。

スウェーデンでも90年代後半からEU構造資金の受け皿として、レギオンという道州制導入の動きが始まる。スウェーデンでは広域自治体としてランスティングが存在している。このランスティングの任務は、医療サービスの提供に絞られているといってよい。このランスティングと重ね書きするように、同じ区画でレーンという国の行政区画が存在する。レーンには地域経済振興を担う国の出先機関が存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(145)2019年4月20日

◆ヨーロッパの道州制③

(神野直彦『人間国家への改革』より)

スウェーデンでは、20あるランスティングを廃止して、6から9のレギオンに再組成するとともに、レーンの地域経済振興にかかわる権限もレギオンへ移すことを構想する。つまり、レギオンは医療と地域経済振興を担うことを任務として構想されたのである。

そのため、1997年からスウェーデンでは、手を挙げた地方自治体によるパイロット的なレギオン実験が行われた。しかし、道州制を推進してきた社会民主党から、消極的な中道右派へと政権が後退したため、レギオンへの移行は強制されず、現在ではレギオンとランスティングという二つの広域自治体が併存する事態となっている。

こうしてみていくと、ヨーロッパの道州制は、EUという超国民国家の形成と結びつき、地域経済振興と医療という役割を車の両輪として、いずれか一方あるいは両方を担わせることを目的に導入されていることが分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(146)2019年4月27日

◆日本の道州制への課題

(神野直彦『人間国家への改革』より)

日本でも道州制の導入が議論されているけれども、その目的は判然としない。強いて言えば、道府県という広域自治体の規模を大きくして行政コストを縮小することが目的のようである。しかし、公共サービスで「規模の利益」が動くと仮定しても、広域自治体をさらに大きくすれば、国民から「遠い」政府となり、ニーズに応じた公共サービスを提供する有効性は低下してしまう。職業別に分立している日本の医療保険を一本化する改革と結びつけるなどして、道州制がどのように国民の生活を向上させていくかを的確にしない限り、意味のある構想とは思えない。

道州制ウイークリー(117)~(119)

■道州制ウイークリー(117) 2018年10月6日

◆広域連携による地域活性化③

(林宜嗣関西学院大教授他著『地域政策の経済学』より)

<日本の広域連携制度>

日本には自治体連携のための制度は存在します。近年、関西広域連合にように新たな広域連携の形が生まれてきてはいますが、具体的に機能しているのはやはり従来の行政の守備範囲に留まっています。広域連携に新しく地域づくり型の制度が加わりました。連携協約です。

首相の諮問機関である地方制度調査会は第31次答申「人口減少社会に的確に対応する地方制度およびガバナンスのあり方に関する答申」(2016年3月、「31次答申」)を提出しました。「31次答申」は、「地方圏において、早くから人口減少問題と向き合ってきた市町村は、中山間地や離島等を中心に、すでに厳しい現実に直面しており、行政サービスの持続可能な提供を確保することが喫緊の課題であるといえる」との警鐘を鳴らしました。

地方圏については、「特定の課題にとどまらず、幅広い分野の課題について総合的に検討することを通じて圏域のビジョンを協働して作成すべきである」と指摘し、従来の公共サービスの供給を主たる目的とした広域連携から、地方創生のための広域連携へと踏み出した内容になっています。

ここで注目されるのが「連携中枢都市圏」です。地域において大きな規模と中核性を備える中心都市が近隣の市町村と連携し、コンパクト化とネットワーク化によって「経済成長の牽引」、「高次都市機能の集積・強化」、「生活関連機能サービシの向上」を行うことにより、人口減少・少子高齢化社会においても一定の圏域人口を有し活力ある経済を維持するための拠点を形成することを目的としています。大都市圏においては、その必要性を認めながらもまだ制度化されてはいません。今後、大都市圏、地方圏にかかわりなく、広域連携は地域活性化の重要な戦略として展開される必要があります。

 

■道州制ウイークリー(118)2018年10月13日

◆広域連携による地域活性化④

(林宜嗣関西学院大教授他著『地域政策の経済学』より)

<地域政策におけるパラダイム・シフト>

人口減少時代において地方が衰退を食い止め、持続的な発展を実現するためには、外来型開発からの脱却と地域主導型の内発的発展への転換が不可欠です。それには、地域政策におけるパラダイム・シフトが必要です。ある時代に支配的なものの考え方や認識の枠組みをパラダイムといいます。時代が進み社会経済情勢が変化すればパラダイムも変わらなくてはなりません。

経済活動のグローバル化と新興国の経済発展、少子化による労働力の減少といった社会経済環境の変化が起こっている現在、日本では新しい形の経済に移行することが求められています。

地域政策のパラダイムの変化は日本だけのものではなく、先進国に共通した課題なのです。旧パラダイムは停滞地域を補助金などの財政手段で支援するという格差是正型であり、国(中央政府)が中心となって再分配政策を実施するものでした。地方は安い地価と豊富な労働力を材料に工場を誘致し、地域の活性化を図ろうとしてきました。しかし、こうしたパラダイムでは、先進諸国を取り巻く社会経済環境の変化に対応することが困難になってきたのです。

旧パラダイムが事後的な再分配政策的であったのに対し、新しいパラダイム(内発的発展)は地域のポテンシャルを掘り起し競争力を強化するという、地域の構造改革の色彩を強くもつものです。地域の特性に応じて組み合わせを工夫する必要があります。従って、過去の地域政策のように国が全国画一的な基準で政策を決定してはなりません。また、旧パラダイムが地域政策の実施エリアを県や市町村という行政区単位としていたのに対し、新パラダイムでは経済活動エリアという機能上の圏域を対象とする必要があります。このことは複数の自治体が連携して地域政策を行わなければならないことを意味します。

 

■道州制ウイークリー(119)2018年10月20日

◆地方創生に向けて

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

首都東京を日本経済の推進力としようとしても、東京以外の地域が衰退したのでは日本経済は維持できない。住民、企業、自治体その他の関係者が共有できる地域ビジョンを作成し、将来のあるべき姿を見据えて、費用対効果の大きい戦略を策定し実行するものでなければならない。

とくに、人や企業といった民間経済主体は市場メカニズムに基づいて活動していること認識し、活力ある地域市場を育てるとともに、市場を望ましい方向に誘導することにエネルギーを注ぐべきである。そのためにも、住民、企業、自治体、国等が一体となって地域づくりに取り組まなければならない。

過去の政策や組織・制度を廃止し、成熟期にふさわしい地域づくりを効果的に進めるための環境整備を行うことは必要であるが、地方が自ら知恵を出し、地方創生に向けて行動することがなにより重要である。地方創生を実現するためには、経済の活性化によって地域資源を拡大するとともに、地方創生において重要な役割を果たす自治体が、創生に必要な財源を捻出するためにも「最小の経費で最大の効果」をあげる行財政運営をめざさなければならない。

 

■道州制ウイークリー(119)2018年10月27日

◆負の連鎖を断ち切れ

(林宜嗣関西学院大教授他著『地方創生20の提言』より)

地方では、人口減少が人や企業の活動環境を悪化させ、その結果、人口が更に転出するという「負の連鎖」が現実に起こっている。負の連鎖は重層的に生じているが、その第1は就業の場の喪失に伴う負の連鎖である。地方に立地した労働集約的な工場は輸出競争力が低下し、量産品は市場に近い場所で製造するということもあって製造拠点の海外シフトが進んだ。負の連鎖を引き起こす第2の理由は、「どこでも、だれでも、負担可能な料金で一定のサービスを受けることができる」と定義されるュニバーサル・サービスの提供が困難になっていることだ。地方の「無医村」「医師不足」の問題は深刻さが増している。第3は財政を通じた負の連鎖である。人口減少や企業の転出による地域経済の縮小は地方税収を減少させる。地方財政を媒介とした負の連鎖は、かつては地方交付税という国からの財政移転によって断ち切られていた。しかし、国の財政が危機的な状況にある今は、地方交付税に大きく頼ることは難しくなっており、財政力の差が行政サービス水準の差に直結する可能性がある。

地方の問題を「格差問題」としてとらえてしまうと、「東京で生れた経済的成果を地方に再分配する」という政策に頼り、根本的な解決策が先送りされてしまう可能性がある。バブル崩壊後、格差是正のために事後的に地域間再分配を行うという政策がいかにもろいものであったかは歴史が教えている。地方創生への取り組みは、地方が直面する現下の問題に対処する(短期)ことはもちろん必要だが、同時に地方の自立を実現するために、地方創生の考え方から戦略の実行面までを網羅した新たな構造改革を進める(中長期)という複線型でなければならない。

 

道州制ウイークリー(112)~(116)

■道州制ウイークリー(112) 2018年9月1日

◆日本再生8州構想2018年版(関西州ねっとわーくの会)⑤

道州制「8州」のかたち

8州制は単なる府県合併ではありません。8つの地域ブロックに再編します。8州は、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州・沖縄です。

  • 新しい役割分担

国の分立や連邦制ではなく、一つの憲法の下、皇室、議院内閣制、衆参両院制を維持します。国と地方の役割分担を見直し、地域の多様性を活かし経済社会圏づくりを目指します。

 国政の根幹を担う

国の役割は、国の存立、国政の根幹を担うとともに、内政の総合的調整を行い、戦略的機能を強化します。

主な分野は、皇室、司法、外交、国防、通商、国家財政、通貨・金融、年金、教育基本計画、危機管理・テロ対策、資源・エネルギー政策、食料安保などです。

 

■道州制ウイークリー(113) 2018年9月8日

◆日本再生8州構想2018年版(関西州ねっとわーくの会)⑥

道州制「8州」のかたち

 州は大地域行政経済圏(メガ・リージョン)の司令塔

州は大地域行政経済圏を統括、地域経営の司令塔として、地域戦略を牽引します。必要に応じて市町村を補完します。

主な分野は、広域交通、警察、防災、農林業振興、中高等教育、インフラ整備、技術研究、健康保険、労働監督・職業紹介などです。

国立大学は一部を除き、州立の基幹大学として地域の大学を再編、地域文化・科学技術の活性化の核になります。

市町村 安心社会へ住民生活直結の行政

住民福祉行政の基盤は市町村です。府県の仕事も一部継承し、市町村間の連携を進め、行財政力を強化し、地域の課題に対応できる権限・財源を持ちます。

主な分野は、初等義務教育、都市計画、生活廃棄物、住民基本台帳、保険・社会福祉・介護、公園・街路、上下水道、ビザ発給などです。

■道州制ウイークリー(114) 2018年9月15日

◆日本再生8州構想2018年版(関西州ねっとわーくの会)⑦

 

道州制の歩み

道州制は約90年前から論議されています。明治維新60年の1927年、田中義一内閣が提案した全国6区の「州庁設置」案が最初です。1945年6月に国の広域行政機関として全国8か所に内務省管轄下の「地方総監府」されましたが、敗戦により廃止されました。戦後は1955年に関西経済連合会が「地方制」を提案したのが最初です。その後、数々の団体から提言がありました。2006年には地方制度調査会が「道州制答申」を出し、道州制の骨格はほぼ固まっています。

 

■道州制ウイークリー(115) 2018年9月22日

◆広域連携による地域活性化①

(林宜嗣関西学院大教授他著『地域政策の経済学』より)

<広域連携と地域政策>

地域政策の効果を高めるには、これまでのように各自治体が単独で実行するのでは限界があります。OECDの地域政策の新パラダイムでも指摘されているように、地域政策の地理的範囲は経済活動という機能上のエリアを対象とすべきであり、政策における自治体連携つまり広域連携の必要性が高まっています。その理由は4点あります。

第一は、行政区域と経済活動範囲との間に食い違いが生まれていることです。民間経済主体の活動は、道路整備や交通機関の発達によって行政区域を超えて広がっています。その結果、行政区域と経済活動が一致しなくなり、自治体単位の地域政策ではその効果が十分に発揮されない可能性が大きくなってきました。

第二は、個々の自治体が行政区域内を対象に、単独でしかも類似の産業政策を近隣自治体と競合するように実施しているために、事業規模が小さく共倒れになる可能性があることです。複数の自治体が役割分担を行うことによって特定の政策に特化し、規模の経済を発揮させる必要があるのです。

第三は、産業の活性化のためには地域経済の多様性が求められることです。

第四は、財政事情が厳しい中にあって限られた予算を有効に活用しなければならないことです。公共施設の最適配置は区域を超えたエリア単位で考える必要があります。

 

■道州制ウイークリー(116) 2018年9月29日

◆広域連携による地域活性化②

(林宜嗣関西学院大教授他著『地域政策の経済学』より)

<大都市圏における広域連携>

圏域全体としてその実力を強化することが広域連携の目的であり、地方圏においてその必要性は特に大きいと考えられます。大都市圏において中心都市と周辺都市との連携が重要です。大都市圏では、経済活動は主に中心都市で行われていますが、それはビジネスの側面であって、ビジネスを実行する労働力の多くは周辺自治体に住んでいます。例えば、大阪市には毎日100万人を超える人々が通勤や通学目的で市域外から流入していますし、名古屋市でも昼間流入人口は50万人にもなります。その他の大都市も労働力を周辺都市に依存しているのです。

中心都市の関係者は、「昼間人口に公共サービスを提供しているにも関わらず、住民税や固定資産税といった主要な地方税は居住地に入るために、受益と負担の不一致が生じている」と不満を漏らします。これに対して、周辺自治体の関係者は、「周辺自治体が子供の教育、福祉等、生活に必要な公共サービスを提供することによって中心都市の労働力を支えているにも関わらず、法人関係の税は中心都市に入っている」と考えます。不満をぶつけあうのではなく、中心都市と周辺都市とが連携して大都市圏としての実力を強化することの重要性はますます高まっています。

大都市圏においては、中心都市と周辺都市のどちらが欠けても地域は衰退します。大都市圏における広域連携とは、中心都市と周辺都市が「運命共同体」であることを強く意識し、補完関係を築くことによって、単独では実現できない付加価値をもたらし、大都市圏としての競争力を強化するものでなければなりません。