ウィークリー「国のかたち改革」(1)~(4)

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会

■ウイークリー「国のかたち改革」(1)2023年1月7日

◆「多極分散」ではなく「多極集中」で商圏を維持する

(河合雅司著『未来の年表・業界大変化』から)

過疎地が広がり続ける人口減少社会の国土の在り方について、集住を進めるのか、分散して住む現状を維持するのか。結論から言えば、「多極分散」ではなく「多極集中」であるべきだ。人口減少社会において拡散居住が広がると、生活に密着したビジネスなどが極めて非効率になり、労働生産性が著しく低下するからである。人々がばらばらに住むことで商圏人口が著しく縮小したならば、企業や店舗は経営が成り立たなくなり、撤退や廃業が進む。民間サービスが届かなくなれば、さらに人口流失が早まり、ますます企業や店舗の撤退、廃業が加速するという悪循環になる。

「多極分散」では行政サービスや公的サービスもコストパフォーマンスが悪くなり、国家財政や地方財政が悪化する。やがて増税や社会保険料の引き上げにつながり、国民の可処分所得が低下する。国交省の資料によれば全国の居住地域の51%で2050年までに人口が半減し、18.7%では無人となる。社会インフラや行政サービスを維持するには、ある程度の人口密度が必要なのである。企業や行政機関の経営の安定と地域住民の生活水準の向上とは表裏の関係にあるが、人口減少社会においてそれを両立させるにはある程度集住を図って、何とか商圏人口を維持するしかない。縮小していく日本においては「多極分散」は命取りである。

「多極集中」を進めていったら展望はどう開けるのか。具体的には全国各地に「極」となる都市をたくさん作ろうという考え方である。現行の地方自治体とは関係なく、周辺地域の人口を集約して商圏を築き、「極」となる都市の中心街として歩行者中心のコミュニティと賑わいをつくるイメージである。ドイツなどヨーロッパ諸国には、こうしたイメージとかなり近い形の都市が存在している。人口規模でいうと、周辺自治体も含め10万人程度が想定される。国交省の資料によれば、人口10万人であれば大半の業種が存続可能となるためだ。国内マーケットが縮小する中で、企業や行政機関は経営モデルを変更せざるを得ないが、「戦略的に縮む」ことによる成長を達成するためには個々の組織の変化だけではなく、社会の在り方にも根本から変えることが求められる。

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会

■ウイークリー「国のかたち改革」(2)2023年1月14日

どのような経済社会、地域にするのか①>

(飯田哲也・金子勝『メガリスク時代の日本再生戦略』より)

「失われた30年」は、人々の暮らしを直撃し、大都市への集中が進む一方で、地域は衰退するという、地域間格差が拡大していった。この危機から脱するには、再生エネルギーを軸にした産業構造の転換が必要であり、目指すべきは、分散革命ニューディールによる地域分散ネットワーク型の社会であることを示しています。

 日本の経済成長がストップし、長期停滞から抜け出せずにいる最大の原因は、バブル崩壊後の産業構造にあります。その背景には。無責任体制から生み出された「失われた30年」の間に研究開発のための投資額が減少し、アメリカや中国から大きく引き離されてしまったということがあります。産業の競争力がどんどん低下していったのです。

 1991年の日米半導体協定の後、先端産業について政府が本格的な産業政策を展開することはタブー化し、「規制緩和」を掲げる「市場原理主義」が採用されるようになった。しかし、規制を撤廃し、価格メカニズムに任せれば新しい産業が生まれていくなどというのは、根拠のないイデオロギーです。90年代にバブルが崩壊し、金融危機に見舞われたスウェーデンやフィンランドでは、巨額の公的資金を投入して不良債権を一気に処理しています。さらに、先端産業化を進めるための国家戦略を立てて、イノベーションに対する研究開発投資と教育投資を増加させ、知的集約産業への移行が図られた結果、フィンランドにはノキアができ、スウェーデンにもエリクソンなどのIT企業が生まれ、デンマークには世界的な風力発電メーカーであるヴェスタス社が誕生します。ここで重要なのは、これらの国が産業政策を立てて、新しい産業への投資や技術開発を国が支援する政策を打ち出したということです。

 イノベーションが新たに生まれ、産業構造が変化するような時期には、明らかに一定の政府の役割なしに産業はうまれません。

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会

■ウイークリー「国のかたち改革」(3)2023年1月21日

どのような経済社会、地域にするのか②>

(飯田哲也・金子勝『メガリスク時代の日本再生戦略』より)

◆「地域分散型ネットワーク社会」へ

20世紀は、重化学工業を軸にした大量生産・大量消費の「集中メインフレーム型」の時代でした。それは、市町村や都道府県などの地方自治体を国の出先機関とする中央集権的な行財政システムと適合してもいました。この集中メインフレーム型のシステムは、人口が増加傾向にあり、内需も拡大し続け、輸出額も増加していくような社会でないと、集中メインフレーム型のシステムはうまく機能しません。しかし、すでに日本企業の国際競争力は衰えており、少子高齢化も進み、実質賃金が停滞もしくは低下し続けていますから、とてもこのシステムが持たないのは明らかです。 

目指すべきは、「集中型メインフレーム型」ではなく、「地域分散ネットワーク型」の社会なのです。クラウド・コンピューターやIOT、ICTの発達によって、それぞれは小規模で分散していても、瞬時にニーズを把握し、きめ細かく供給することが可能です。しかもそれを効率的に行うことができるのです。各国でこうした動きが始まっています。これが21世紀の新たな産業革命なのです。

医療や福祉、介護の世界は、今後どうあるべきでしょうか。高齢化が進む現在、単身世帯が増加しています。これに対応して、医療や福祉、介護の分野も、地域分散ネットワーク型に変革していく必要があります。具体的には、中核病院、診療所、介護施設、訪問介護・看護・介護などをネットワークで結びつけ、地域医療・介護のシステムを構築するのです。

このように地域分散ネットワーク型へと転換することは、中央集権的な意思決定システムから、分権・自治型の合意形成システムへの転換を伴うものでもあります。重要なのは、中央集権的な「上から下へ」のガバナンスではなく、それぞれの地域を基本とし、地域では対応できないものを上位の行政機関に委ねる「補完性の原理」に立脚するということです。その上で、地域同士でネットワーク形成し、中央政府からの独立性を確保するのです。地域住民が主権者であることを前提とした民主主義の実践といえるでしょう。

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州構想》関西州ねっとわーくの会

■ウイークリー「国のかたち改革」(4)2023年1月28日

どのような経済社会、地域にするのか③>

(飯田哲也・金子勝『メガリスク時代の日本再生戦略』より)

 地域分散ネットワーク型への転換は、実は食と農の分野でも進んでいます。大規模専業農家をモデルとする農業基本法以来の経営モデルは、これまで一度として主流になったこともないし、これからもありえないと思われます。農業でも兼業が現実的で、かつ小規模分散ネットワークの仕組みが必要となっています。それを象徴するのが、農産物直配所へのPOSシステムの導入です。販売所で農産品が売れるたびに、バーコードでその情報が読み取られ、どこで何が売れたのかガ瞬時に分かるようになります。大量仕入れ、大量販売でなく、きめ細かな販売が可能になるのです。それに加えて、ネットワーク化を進めることで、より付加価値の高い農産品を各地で提供することができるようになります。

 現在、農産物直配所は全国に1万数千か所(季節営業店も含めると2万余)あり、年間総売上高は約1兆324億円にも上ります(2018年)。ここにPOSシステムを導入し、ITCの活用によりネットワーク化を進めて相互に結びつくようになれば、さらなる発展が期待できるのです。そのポイントとなるのが「営農ソーラー」です。ドイツやデンマークでは、地域エネルギーの担い手の中心は農家です。「農産物もエネルギーも、太陽と土地から生まれる」という基本原理から考えても、農業と再生可能エネルギーはとても相性がよい組み合わせです。農業を営むのに加え、再生可能エネルギー発電事業にも取り組むという、「エネルギー兼業農家」となることで収入も安定します。

 「6次産業化」+「エネルギー兼業農家」という農家経営モデルは、地域経済のあり方も大きく変える可能性を秘めています。これまでは地域経済の活性化を図るために、外部から工場を誘致し、兼業農家のために雇用を作り出すということをしていました。しかし、その場合、収益の大半は地域外へ流失してしまっていました。「6次産業化」+「エネルギー兼業農家」というモデルは、地域の資源を多角的に活用し、雇用を創出し、収益をもたらし、それが地域を循環するという、自律的な経済圏を生み出します。

12州制ウイークリー(333)~(337)

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(333)2022年12月3日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」⑧

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

「地方は国の下請け」といわれる理由

◆地方の仕事は国がつくった計画を実施するだけ

2000年4月に「地方分権一括違法」が施行されたことで、国と自治体の仕事の関係は新たなものになったが、現実的にはそれほど大きな変化はない。一括法依然の長期間にわたって維持されてきた国と自治体の関係は以下の通りだ。

一括法依然の自治体の仕事は、「機関委任事務」「団体委任事務」「行政事務」「固有事務」の4つに分類されていた。

「機関委任事務」は、国から自治体の長に委任された事務のことで、計画は完全に国によって立てられ、自治体はその実施だけを行うというもの。「団体委任事務」とは、国の事務のうち、ある一部を国からの委任を受けて自治体が実施する事務で、計画については国と自治体双方で行い、実施は自治体が行う。「行政事務」は、公権力を背景とする規制的な事務のこと。行政事務を計画するのは国と自治体双方だが、規制の基準などは国が決め、計画を実施するのは自治体となっている。「固有事務」とは、自治体の運営に関する事務や地域住民の生活・福祉などを向上させるための各種事務のことで、計画も実施もともに自治体が行う。

◆国の制度が自治体の活動を縛っている

これまで自治体が自分の裁量でできる仕事は「固有事務」だけで、その他の仕事は、国の関与があった。これら4つの仕事以外にも、国が自治体の独自の活動を縛る制度として「必置規制」というものがある。これは、国が自治体に対して設置しなければならない行政機関や施設、特別の資格を持つ職などを法令によって定め、その設置を義務付けるものである。この必置規制も、一括法によって一部緩和されたが、例えば、児童相談所や病害虫防除所、検定所、あるいは食品衛生監視員、児童福祉司、建築主事などを設置することが義務付けらてきた。自治体によっては、必要も余裕もないものを置くことにもなるわけで、この「必置規制」も長年にわたって自治体の自主的な組織運営を規制していた。

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(334)2022年12月10日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」⑨

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

財政を自前でまかなえない自治体

◆地方は使うお金を自由に集められない

 国と自治体の財政を量的に比較すると、日本の自治体の歳出規模は非常に大きい。例えば令和元年度においては、国の歳出が73兆4200億円(全体の42.6%)で、地方が98兆8467億円(同57.4%)となっている。これはイギリスやフランスはもちろん、アメリカやドイツといった連邦制の国に比べても、日本は圧倒的に自治体の方が多い。歳出の量、執行の側面だけで見ると、日本はかなり「分権的」な国といえるのかもしれない。

もう一つの特徴は、自治体の歳出規模が大きいのにもかかわらず、自前の税収の割合は他国と比べて非常に少ないこと。つまり、自治体の仕事は多く、そのために使うおカネも多いが、自治体が自前で集めるおカネは少ない。そのギャップは、国からの財政移転で埋められている。これは地域的なサービスの供給が自己負担の原則からかけ離れていることを意味している。

なぜそうなっているかといえば、自治体には歳入に関する自治が制約されているからだ。自治体は、自分たちの歳入の規模と内容を自己決定できないのである。

◆自前で集められるのは地方税だけ

自治体の歳入項目は多岐にわたるが、主要なものは、「地方税」、国からの補助金と捉えられる。「地方交付税」と「国庫支出金」、そして借金である「地方債」である。この4項目によって、8割から9割の歳入がまかなわれている。

この4項目を自主財源と国への依存財源に分けると、地方税だけが自主財源で、残りはいずれも依存財源だ。それだけでも自治体は国に対して大きく依存していることがわかる。

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(335)2022年12月17日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」⑩

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

国が地方税を決めている

◆地方税の種類も税率も自由に決められない

地方税は自主財源だから、本来、税目(税金の種類)や税率はそれぞれの自治体が自由に決めるべきなのだが、現実は、国会で決められた地方税法によって細部まで定められており、自治体による自主裁量権はほとんどない。税目については、法定普通税が定められており、自治体はこれを義務として課税しなければならない。つまり、自治体が独自に税金を集めようというときには、国の許可が必要で、自治体が自由に税目を設定することはできなかった。

税率については、国が標準税率を設定している。自治体がそれ以上の税率を設定する(増税)のは問題ないが、税率を低く設定すると、地方債の発行が制限されたり、地方交付税・補助金の算定で不利益を受けたりするなど、「ペナルティ」が制度的に課される仕組みになっている。

◆国が地方税に関与する理由は税源の「偏在」と「重複」

国が地方税に関して自治体を制約する背景として、「税源の偏在」と「税源の重複」が指摘されている。

「税源の偏在」は、地域によって税収に大きな格差が生じていることで、例えば地方税の一人当たりの税収額をみると、東京と沖縄では3倍以上の開きがある。

「税源の重複」には、税源の分離という原則があるが、日本では所得、消費、資産、流通といったように、いくつかに分類できる税源に対して、それぞれ国、都道府県、市町村が重複して課税している。

このように税源に偏在と重複があることで、自治体の課税自主権を拡大すれば、地域によって受益と負担に大きな差が生じ、「均衡の原則」が破られる。それを理由に、国は自治体への制約を行ってきた。

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(336)2022年12月24日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」⑪

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

財源不足の自治体に配られる「地方交付税」

地方交付税は、広い意味での補助金であり、国と自治体及び自治体間の「財政調整」、そして自治体に対する「財源保障」という二つの機能を担っている。

◆国が集めたおカネを「財源難」の自治体に分配するシステム

地方交付税の基本的な仕組みは国が国税としておカネを集め、各自治体の財源不足額に応じて交付するというもの。この地方交付税の制度に関して問題点は、まず一つに、国が地方交付税に充てられる額と、地方が必要な額が合致しない点がある。地方交付税の財源には国税の一定割合があてられるために、全体の交付税額は国の予算で決定される。一方で、1800ほどある自治体それぞれで不足している額を合計すると、国の予算と一致する場合がほとんどない。そこで、調整が必要になる。

景気の明暗により、交付税額は変動する。昭和50年代以降、法定交付税率は30数%だったが、財政が厳しい時には、実質的には40数%が交付された。国が借金をして地方交付税の穴埋めを行ったのだが、これが財政を逼迫させる原因の一つになった。

◆金額は国が一方的に決定し、自治体の意思は反映されない

それぞれの自治体で必要な額をどう決めるかについては、三つの問題がある。一つ目に、実際に足りない額を支給するか、客観的な方法で不足額を計算するかという問題がある。実際の不足分を支給するようにすれば、自治体は税を集めるのを怠ったり、ムダ遣いをするようになる。二つ目は、人口や面積など一つのモノサシを使うのか、各自治体の条件を踏まえて額を算定するのかという問題。気象条件の違いなどを加味すると、余分の費用が加えられることや、政治家や官僚の介入の余地が大きくなる。三つ目は、意思決定の在り方の問題。自治体に交付される金額は国が一方的に決定し、自治体の意思がほとんど反映されない。自治体は国の言いなりにならざるを得ない。

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(337)2022年12月31日

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」⑫

「国庫支出金」がムダと利益誘導を招いている

国庫支出金も地方交付税と同様に広い意味での補助金といえる。ただし、国庫支出金は、国と自治体が協力して事務や事業を行うときに使われるおカネで、地方交付税とは性格が異なる。国庫支出金には3種類ある。「国庫負担金」がその約70%、「国庫委託金」が約1%、「国庫補助金」が約30%ある。

「国庫負担金」は,国が自治体の活動の一部を負担するために交付する補助金である。例えば小中学校の先生の給料は自治体が支払っているが、義務教育に関しては国にも責任があるため、3分の1を負担している。「国庫委託金」とは、国が自治体の経費全部を事務の代行経費として自治体に交付するもの。例えば、国会議員選挙や外国人登録などは、本来は国の仕事だが、国の移管が行うにはコスト的にも事務的にも不合理なので、自治体に行ってもらっている。こうした仕事にかかる経費の負担分が国庫委託金である。「国庫補助金」は、国が特定の事業や事務の奨励や財政維持に交付するもので、廃棄物処理施設施設の整備、福祉事業の促進、道路整備などに対するものなどとなっている。

国庫支出金に関しては5つの基本的な問題がある。1点目は、責任の所在が不明確であること。2点目は、交付を通じて国が関与することで、自治体の自主的な運営を阻害すること。国庫支出金は交付に際して、使い方が細かく条件づけられているからである。3点目は、交付に当たっての細かな条件や煩雑な交付手続きなどが、行政の簡素化、効率化を妨げていること。100万円の補助金をもらうのに何度も上京しなければならず、その経費が100万円以上かかってしまうといった指摘がしばしばなされる。4点目はタテ割り行政の弊害を招くこと。国庫支出金は、各省庁から自治体に回ってくるため、国レベルでヨコの調整がほとんど行われない。その結果、同じような施設が重複して出来上がり、ムダが生じることになる。5点目は、どの自治体にどれだけ配分するのかという基準が曖昧なため、「陳情」の対象となってしまう。

12州構想ウイークリー(329)~(332)

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(329)2022年11月5日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」④

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

「富士山型から日本アルプス型へ」

『地域主権型道州制』は、イメージでいえば、一つの圧倒的に大きな山が麓まですべてを支配するような「富士山型」ではなく、山々がお互いに高さを競い合うような、いわば「日本アルプス型」の統治構造である。

◆地域の政府が地域のあり方を自己決定する

一つの大きな拠点があるのではなく、力のある拠点がいくつも存在する「ポリセントリシティ(多中心)国家」、これこそが『地域主権型道州制』の統治構造である。政治学に「デバイディッド・サバランティ(分割主義)という考え方がある。これは、「市民にとって、最も危険なものは中央集権であり、これが市民の自由と独立を損ねてしまう。市民の自由と独立を守るためには、市民の自主独立を基盤とした地域社会をもとに国全体をつくっていくことこそが重要である」という考え方だ。

 中央集権のもとで生み出された「国の支配、自治体の依存」の関係を清算する。そして、自己責任と自由意思を持つ地域の政府が、その特性と住民のニーズを背景にしながら、その地域のありようを「自己責任」をもって「自己決定」する。さらには他の地域と「善政競争」をしていく。これが「地域主権」である。これを実現するには、中央集権化された統治構造ではなく、自治体同士がお互いに競い合えるよようなフラット型の構造でなければならない。

◆国・道州・市の三層制で新しい国のかたちをつくる

国と地域とでその役割を明確に区分けし、地域がその役割を果たすために、独自の財源を確保できるような課税自主権、税率決定権、徴税権を持つ必要がある。また、拡大された条例制定権、法律修正要請権を持ち、住民の積極的な参画と自立した財政基盤の確立を前提に、地域が主体的に取り組む。お互いに競争を行いながらに日本という一つの国を「共同経営」していくという統治形態である。

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(330)2022年11月12日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」⑤

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

「中央集権システムには限界が来ている」

なぜ東京やその隣接県だけが繁栄するのか。その根本的原因は、現在の日本が中央集権体制という統治形態をとっているからだ。

◆軍国主義国家が作った中央が地方を支配する体制

明治維新、日本は列強と伍していくために、日本の力を一つにまとめ、強固な中央集権体制を確立する必要があった。乏しい人やカネを一か所に集めて活用するために、政府は中央集権体制を敷いて、すべてのものを東京に集中させた。その極めつけは1938年に制定された「国家総動員法」だった。この軍国主義国家によって組み立てられた中央集権体制は、亡霊となっていまなお生き続け、今日の日本のあらゆる分野を徘徊し混乱、混迷、低迷を引き起こし、人々の生きがいと夢と楽しさを奪い取っている。

◆中央集権が日本を衰退させていく

敗戦、そして日本が独立を取り戻してからは、再び日本政府がその中央集権的なシステムを使って、国の再建を進めていく。政府が基幹産業や企業を育て、貿易の振興をはかり、生産物を海外に積極的に輸出する。それによって得られた富を政府が国民や各地方に分配する税財政システムをつくって、個人の所得や各地方の社会資本が平均化する社会を築いてきた。

中央集権システムは、日本の発展医貢献したと評価すべきだが、すでに国民生活を豊かにするという目的は実現された。国民の価値観が「豊かさ」という一元的なものから、多様化の時代になってくると、日本が一つの大企業のようになった一元的な統治システムは、次の社会的発展の障害となってしまう。もはや、中央集権は日本を繫栄発展させる「システムではなく、日本を衰退させる以外のなにものでもなくなった。

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(331)2022年11月19日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」⓺

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

「官僚機構は時代の変化についていけない」

◆官僚機構の効率の悪さがほうちされたまま

中央集権システムでは、霞が関にある中央官庁が、日本の社会・経済活動の多くを主導するから、その「司令塔」に近いところに、全国各地から情報を求めて企業や人が集まる。また、中央からコントロールがしやすいように、各産業に企業団体などを東京に集約させる政策をとることで、企業や人が集まり、仕事もカネも人も集中していった。交通インフラを整備すればするほど東京の情報だけが地方に流れていき、逆にストロー効果やスポンジ現象といわれるように、人、モノ、カネが東京に吸い取られていく。中央集権システムには、様々な弊害がある。例えば、官僚機構の効率低下だ。次代の変化についていけず、効率性を失っている。

◆規制と保護が競争を阻害している

政府による必要以上の「規制」や「保護」も中央集権のマイナス面だ。現在のようにボーダーレス化した経済社会では、規制や保護は企業の独創性を阻害するばかりではなく、市場における自由な競争と発展を抑制する。自由な競争がないことで、日本の企業や産業は競争力を弱め、同時に、消費者は競争によって生まれる優れた商品やサービスを享受できなくなっている。

◆既得権益を守ろうとする人たちが規制や保護にしがみつく

なぜ不要になった規制や保護が存在するのだろうか。それは官僚たちが、権威や権限はもちろん、それによって獲得した既得権益を守ろうとしているからだ。また、規制や保護によって利益を得てきた事業者や従業員も、それらを廃止することに抵抗する。そうした人々を支持者に持つ政治家も自分の政治基盤を維持することを優先し、規制緩和や保護廃止を断行できない。タテ割り行政、無駄な社会資本整備、規制や保護といった問題については歴代政権が取り組んできた。しかしながら、効果が上がらない。現在の国の中央集権的な統治制度そのものが継続される限り、改革の効果はおのずと限度が生じる。

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州制構想ウイークリー(332)2022年11月26日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」⑦

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

中央集権システムが日本を破滅に向かわせる二つの理由

◆複雑・高速のグローバル時代に対応できない

中央集権的な体制では、複雑かつ高速化し、統合されつつある国際社会、とくに経済活動に対応できなくなっている。現在の国際社会は、国と国という関係だけではなく、異なった国の地域、国民同士が国境を越えて直接的に相互活動を行っており、中央集権的な制約はそうした活動の障害になっている。EUが経済発展を遂げたのは、加盟国内の経済的障壁をなくし、さらには通貨を統合するなど、域内に共通の産業・経済インフラを整備しながら、各国がそれぞれの特性を生かして、独自の経済戦略や経済政策を展開したからだ。アメリカは各州が独自な政策を展開し、それが民間企業の活動にダイナミズムをもたらした。

もし、日本の各地域が独自にそれぞれの特性を活かしながら、国際的な視野に立って独創的な政策や経済環境づくりができるようになれば、新たな経済活動のフロンティアが広がっていくのは間違いないであろう。

◆中央政府が肥大化し、財政を逼迫させている

日本を破滅に向かわせているもう一つの理由は、現在の中央集権的な体制によって、中央政府が肥大化し、財政を逼迫させていること。国が自治体をコントロールする制度は、国の仕事とそのための資金需要を増やすと同時に、負担と受益の関係を曖昧にする。国民は、納めた税金がどのように使われ、どんな行政サービスが行われているかわからなくなる。結果的に、効率の悪い公共料金や公共サービスを生み、国民の負担を増やす一方になってしまう。財政赤字は、これ以上増やすことはできない。そのためには「ニア・イズ・ベター」といわれるように、決定者と実行者、そして受益者と負担者の距離を近くすることが重要だ。

 

12州構想ウイークリー(320)~(328)

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(320)2022年9月3日

◆自治体再編で12州300市へ③

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

中央と地方の財源配分

  • 州市制の導入に伴って、地方自治体は、住民が自らの選択で受益と負担の水準を決定する「自己責任」の財政運営を目指す。地方自治体は、国と並んで健全な財政の維持・運営に努めなければならない。
  • 地方税 ①地方自治体が自律的な行政を行えるよう、国から地方へ必要な税財源を移転する。②地方税法をはじめとする関係税法を、地方自治体の課税自主権を拡大する方向で改正する。③地方自治体は、この課税自主権の範囲内で、自ら財源の拡充などに努める。
  • 地方交付税交付金 ①地方交付税は、ナショナル。・ミニマ  ムが一定程度整備された現状や自治体の自己責任原則を踏まえて、必要最小限度にとどめる。 ②地方交付税には財政健全化や合併促進などにインセンティブの働く機能を付与する。
  • 国庫補助金等  国庫補助金は、大胆に整理合理化する。奨励的補助金は基本的に廃止する。
  • 地方債 300市の誕生にあわせて、地方債の許可制を廃止する。

条例制定範囲の拡大

 地方自治体は、必要かつ合理的な理由がある場合、法令の趣旨に反しない限り、自主的に条例を制定できるよう改める。

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(321)2022年9月10日

◆自治体再編で12州300市へ④

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

読売新聞社は1996年に首相権限・内閣機能の強化と中央省庁を1府9省に統廃合することを内容とする改革案を提唱した。提言が目指したのは、強い指導力を有する内閣と、簡素で効率的かつ機動力に富む中央行政機構だが、機構をスリム化するためには、現在の中央省庁が抱え込んでいる膨大な権限を大幅に地方に移譲する必要がある。また、国を構成する地域の活性化が不可欠だ。

提言は、基本的に地域活性化の基準は、高度成長時代以来の「国土の均衡ある発展」から「地域の個性ある発展」へと転換すべきとの考え方に立っている。過去、「均衡ある発展」の概念に基づく開発行政が重視されてきたところから、中央省庁による調整権限の強化という方向をたどり、現在の地方自治の危機的状況につながった。各分野におけるナショナル・ミニマムがほぼ達成された現在、地方は、従来の経済指標的、土木インフラ的な基準の重視から脱して、独自の「住み心地」を発展させるべきだ。

憲法にいう地方自治の本旨は、地方自治体、地域住民の「自己責任」原則と一体のはずだ。そのためには、地方が自己責任をとりうる自治条件を整える必要がある。現在の中央・地方構造下では、中央による過度の「調整」「関与」が、地方自治体の自主性を制約するとともに、地方の依存心を増し、住民の自治意識を形骸化させている。中央から地方への可能な限りの権限、財源を移転すれば、その権限。財源に伴う自己責任が生じる。自己責任原則が明確化すれば、無原則な財政たれ流しへの自己抑制力も働くことになろう。

 

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(322)2022年9月17日

◆自治体再編で12州300市へ⑤

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

 今回の提言では、これらの構想・試算を総合し、合併目標を示す象徴的な目安として、「300市」という数字を掲げた。もちろん合併・統合の推進に当たっては、地域の一体性、生活圏の実情、歴史的背景などには十分に配慮すべきである。

 国、都道府県から「300市」への権限、財源の移譲を進めていけば、都道府県の役割も変わってこざるを得ない。現行都道府県制は、統合・拡大された基礎的自治体間の調整を主な役割とする。より広域的な行政単位としての「道州」あるいは「州」として広域行政単位に再編する区分の仕方については、第4次地方制度調査会答申(1957年)以来の様々な議論がある。この提言の再編区分は、現行衆院選挙制度の11比例ブロック単位に準拠した。

 比例代表ブロックの区分が論議された当時、すでに、将来の道州制移行を前提とする線引きであるべきだ、との議論があった経緯をも踏まえたものである。ただし、このうち、近畿ブロックについては、大阪府を分離し、「12州」とした。

<12州案>北海(北海道)、東北(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)、北関東(茨木・栃木・群馬・埼玉)、東京(東京都)、南関東(千葉・神奈川・山梨)、北陸信越(新潟・富山・石川・福井・長野)、東海(岐阜・静岡・愛知・三重)

大阪(大阪府)、近畿(滋賀・京都・兵庫・奈良・和歌山)、中国(鳥取・島根・岡山・広島・山口)、四国(徳島・香川・愛媛・高知)、九州(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(323)2022年9月24日

◆自治体再編で12州300市へ⑥

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

 新しいシステムは、国、地方ができる限り分業に努め、機能や権限を分担する形が望ましい。内政面の役割を縮小することによって国は、国際化への対応等、本来の仕事に重点的に取り組めるよう、体制を充実強化することができる。また、国の役割を整理、合理化することで、「簡潔で効率的な政府」となる。

 現在の国―都道府県―市町村間の上意下達の行政構造の下では、市町村には政策実施の裁量や権限がほとんど認められていない。補助金獲得の申請事務や陳情に多くの職員や時間を労し、国全体で膨大な無駄を生んでいる。

 基礎自治体として権限、財源移譲の「受け皿」となった「市」に一番近い生活関連行政の主体として、住民生活の基本的な行政サービスの提供を行うが、地域の実情に応じた独自のまちづくりや行政を担当する権限を持ち、行政や地域そのものが活性化する。また、市町村の統合によって職員や運営費のロスが減少、効率化を図ることができる一方で、同じような施設が乱立するという無駄が解消されるであろう。

 行政の効率化は、専門的知識や高度な技術を持った人材の確保につながり、企画立案能力が向上するとともに、施設の利用や福祉、保健業務、文化面でより高度なサービスも期待できる。

 自治体の主体はあくまでも、基礎自治体である「市」である。州はいわゆる「連邦制」は想定していない。州は「市」単独では行うことのできない業務や。広域での実施の方が効率的な分野のみを担当、調整機能を果たす。

 

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(324)2022年10月1日

◆自治体再編で12州300市へ⑦

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

 現在、国税と地方税の税収比率はおおむね6対4となっているが、歳出ベースでの国と地方の比率はおおむね4対6であり、その間の財政調整を地方交付税、国庫補助金などで行っている。州市制を導入するにあたっては、地方自治体の自主財源を充実させて、各自治体が自らの責任と判断で多様な行政を展開できるようにする必要がある。同時にそれは、情報公開の促進とあわせて住民にサービスと負担の関係を目に見える形で提示し、コスト意識を高めて、自治体の歳出膨張に歯止めをかけることにもなる。

 自主財源の充実のためには、中央と地方の事務配分に見合った税源を国から地方へ移転しなければならない。改革に当たって例えば地方でも担税力がある消費税を中心とした間接税を地方の基幹税源にする、もしくは所得税の相当部分を地方財源に振り替えるなど、思い切った税目の入れ替えなどが考えられよう。

 一方、地方自治体も財源が中央から降りてくるのを漫然と待つのではなく、自らの徴税努力で各地域からの税収を増やす努力を求められる。そのためには、国は、地方税法などの関連法令を見直し、税率や課税対象を制限する課税統制を緩和して、法定普通税や超過税率の適用を弾力化するなどの措置を取らなければならない。ただし、地方自治体の課税自主権、税率決定権は、あくまでも法律が定める一定の範囲内で行使される租税法律主義の原則を守る必要がある。極端に高い税率や、財源の裏付けのない人気取りのための減税などは、認められるべきでない。

 地方交付税交付金の役割には、地方自治体間の財政格差を平準化する調整機能と、各自治体の財源不足を国が産める保障機能の二つがある。ナショナル。ミニマムがある程度達成された現在、この保障機能は縮減し、地方交付税の総額を大幅に抑制すべきである。

 

 

 

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■12州構想ウイークリー(325)2022年10月8日

◆自治体再編で12州300市へ⑧

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

〇条例制定範囲の拡大

国から地方へ権限、財源の移譲が進むのに伴い、条例制定の必要性は一段と高まることが予想される。すでに、学説、判例で条例制定権の解釈は拡大し、自治体が独自の条例をつくるケースも増えている。しかし、憲法の「法律の範囲内」、地方自治体の「法令に違反しない限り」の解釈をめぐり、訴訟も絶えないのが現状だ。

 条例は自治体が地域の行政を自主的に責任をもって進めるため制定されるものである。その条例制定がスムーズに行われ、円滑に運営されて、地方分権の効果をあげていくには、国の法令による制約を緩和することが肝要だ。

 例えば、大気汚染防止法、水質汚濁防止法には、「条例で規定を設けることを妨げない」とする、いわゆる上乗せ、横出し規制を許容した規定がある。さらに、趣旨、目的、対象において合理的な理由があれば、条例制定が可能とする学説、判例もある。

 94年の読売憲法改正試案では、こうした趣旨を法律的に明確化するため、憲法の「法律の範囲内」を「法律の趣旨の範囲内」とするよう提言している。地方自治法もより一般的に条例制定権を拡大する必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

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■12州構想ウイークリー(326)2022年10月15日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」①

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

いまなぜ「地域主権型道州制なのか」

  • 現在の行政単位は狭すぎる● 国民の生活圏が拡大した現代では、徒歩や馬での移動を前提につくられた市町村や都道府県という行政単位は狭すぎる。同時に、広域な行政課題も増えてきている。環境、廃棄物処理、広域消防、救急病院などの問題は。現在の市町村、あるいは都道府県の領域ではなく、さらに大きな地域に入れなければ解決できない。
  • 人口減少時代の到来● 人口減少時代の到来も「地域主権型道州制」を求める理由になっている。このまま人口が減少していけば、多くの自治体で住民に十分な行政サービスを提供できなくなってしまう。人口の減少は中央集権的な国の在り方が東京一極集中を引き起こして、東京が人口を吸収していることに大きな原因がある。
  • 中央集権が無駄と墜落を生んだ● 中央集権は、ムダと墜落を生む元凶でもある。国が全国画一的に地域政策の基準を決め、運用の細部まで地方に指示し実施させてきたことが、ニーズに合わない社会資本の整備など多くの無駄を生んできた。中央集権のシステムは、地方の個性的な発展を阻害するとともに、財政の肥大化を招いて債務を拡大させてしまった。
  • 国際社会で競争に敗れてしまう● 東京圏・首都圏でなく、全国いたるところが繁栄するようにしなければ、日本はグローバル化が深化する今後の国際社会のなかで競争に敗れてしまい、近い将来、経済的にも二流国、いや三流国になってしまう可能性がある。世界と競争していくためには、日本の各地に少なくとも十数か所の繁栄の拠点をつくっていかなければならない。

 こうした問題を解決するには、都道府県よりも規模が大きく強い財政基盤のある広域自治体、すなわち道州をつくって、そこに国全体にかかわる政策領域以外の権限と税財源を完全に移譲し、地域のことは地域の判断と責任で行うようにする必要がある。

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(327)2022年10月22日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」②

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

「地域主権型道州制」の7つの意義

  • 日本全体を元気にすること● 明治以来の中央集権システムは、今日の流れに合わなくなり、体制疲労を超し、戦後最大の危機に陥っている。日本を活性化するためには、このシステムを大改造しなければならない。
  • 中央集権の打破● 中央集権体制によって、日本では東京、首都圏だけしか発展せず、他の全国の、あらゆるところが貧にあえいでいる。
  • 官僚主義の廃止● 官僚主義によって、日本の政治行政は、規制万能、責任回避、秘密主義、画一主義、権威主義、自己保身、前例主義、セクショナリズムに陥り、国家と国民を不幸にし始めている。
  • 生きがい、やりがいを感じる日本をつくる● 国民の生活は、中央集権体制によって画一化され、強制され、個性を奪われ、自由を阻害されている。
  • 国際都市、国際交流の拠点を多数つくる● グローバル化の時代に向けて国際都市、国際交流の拠点を多数つくっていく。
  • 地域個性を生み出し、特徴のある地域を創る● 日本はどこでも同じ、画一的で面白みがなかった。地域がそれぞれの特徴を発揮できるようにする。
  • 財政赤字の解消● 「地域主権型道州制」が日本の体制になれば、結果として財政赤字が自然に解消される。

 

 

 

 

 

よりよき社会へ国のかたち改革 《12州制》関西州ねっとわーくの会

■12州構想ウイークリー(328)2022年10月29日

◆日本を衰退させない「新しい国のかたち」③

(江口克彦著『地域主権型道州制がよくわかる本』より)

「地域主権型道州制」4つの原則

  • 第一原則「行政に市場メカニズム設定」●これまでは国が自治体の活動に対して様々なかたちで制約をかけてきた。これからは、道州同士、基礎自治体同士が自分たちの創意と工夫でよりよい地域社会を創るために競争ができる環境をつくらねばならない。競争によってこそ、日本全体の行政も経済もより効率的かつ効果的なものに発展していく。また、政策の立案・実施・評価の全てのプロセスにおいて,官と官,官と民、民と民で競争できるようにすることも重要。
  • 第2原則「顧客主義の徹底」●政治や行政は国民・住民のためにある。政治や行政にとって、国民・住民は「顧客」であり、そのニーズに応えることこそが政治と行政に与えられた本来の宿命である。これまでの行政は、法規に忠実であろうとするあまり、社会の変化に対して保守的になり、顧客である国民・住民のニーズに柔軟に対応ができなくなっていた。さらに、予算や人事などの経営資源の活用や政策を実施する段階でも、マネジメントに柔軟性がなくなり、生産性を低めている。
  • 第3原則「国民・住民参加の強化」●現在は、官僚エリートが情報を独占して政策を企画・立案するなど、政策決定プロセスを支配している。国民、政治、行政によるパートナーシップを深めることが重要だ。政策決定プロセスへの住民参加が積極的に行われる仕組みをつくっていかなければならない。
  • 第4原則「ネットワーク型組織の構築」●日本の公的な組織は、権限を上部組織に集中させ、そこで下された決定を下部組織に命令伝達するというタテ型の構造で運営されている。こうしたピラミッド型の統治機構は、分業によって企画大量生産を行う工業化の時代には有効な働きを見せた。しかし、情報化の時代、価値観多様化の時代、迅速で柔軟な意思決定が求めらる時代においては、うまく機能しない。変化はつねに現場で起きているのであり、ピラミッドの上部にいる官僚は、現場と離れ過ぎていて、その変化に柔軟に対応できない。情報が共有できる柔軟かつ迅速に意思決定ができるフラットなネットワーク型の統治構造に変えていく必要がある。

 

 

道州制ウイークリー(316)~(319)

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(316)2022年8月6日

◆これが「日本型州構想」④

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

「州構想」の実現には詰めなければならない論点、ポイントがたくさんある。第一は州制度の性格をどのような自治体とするのか。州構想は、知事・議会は公選、役割は広域自治体で自治権を持つ。第二は州制度のもと、国、州、市町村の所掌事務をどうするか。第三は各州の区割りをどうするか、いくつの州にするのか。第四は、「州構想」の制度を単一化するか柔軟性を持たせるかどうか。第五は、市町村(大都市、小規模町村を含め)と州の関係をどうするか。第六は、州政府の知事、議会、職員機構、旧府県の扱いなど組織設計をどうするか。第七は、現実に存在する地域間格差、税財政格差をどう調整するか。第八は、いつごろ、どんな政治勢力、どんな内閣がこれを実現するのか。

一般国民からすると、都道府県が州に変わる話は夢物語のようで不安かもしれない。130年の間に私たちの間に私たちの生活に都道府県という制度は定着している。

「州構想」は行政上の仕組みの合理化であって、地域としての都道府県を消す話ではない。東北州岩手、九州州佐賀というように、地域名として旧県名はそのまま生かされていく。甲子園の県対抗高校野球も地域名の県対抗としてそのまま残るであろう。要は行政上の合理化の話にとどまるのが州制度移行の話である。この先、国民は大増税を選ぶか、サービス大カットを選ぶか、それとも統治の仕組みを変えるか、そのいずれを選ぶかの選択になる。人口減が本格化する中、早晩、日本政治の最大の争点はここに収斂していく。「州構想」は、すでに政令市等の増大で府県行政は空洞化しているが、その実態をふまえ、大都市を強くすることで府県行政は代替させ、むしろ国の内政の受け皿となる広域政策の主体を創るものなのだ。

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(317)2022年8月13日

◆これが「日本型州構想」⑤

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

日本で出生率が高いのは九州だが、この特性をより伸ばすために、例えばこの九州7県を一つの「州」(九州州)にしたとする。そうすれば、九州が独自の政策として海外との交流を図り、経済活動を活発化させるという展開を描くことができる。県境に位置する市町村はどこも不便で寂れがちだが、これを州にし県境を外すことで甦る可能性がある。

福岡をハブ(拠点)空港にし、海運では北九州で韓国とのつながりを深めることも可能だし、それぞれ7県の持ち味を生かしながら広域政策として束ねていくなら経済力は数段増してくるのではないか。現在もオランダ並みの経済力を持っているが、「九州が一つ」になることでそれをはるかに凌ぐ発展が期待できる。もちろん、「ななつ星」の特急列車の名称のように七つの県のよさは失わずに大きく九州圏を州にすることだ。

日本海、東シナ海の対岸にはインド、中国、東南アジアという振興めざましい経済発展の地域が広がる。これまで東京中心にみると九州は端に位置したが、九州から見ると東京が端になる。「九州の自立を考える会」は、2014年に「九州の成長戦略に係る政策提言」をしている。それによると、九州が高い潜在力を有し、産業と雇用の創出効果が高いと思われる分野として、①観光資源、②農林水産業の経営力強化、③先端中小企業の育成とエネルギー供給戦略、④空港、港湾等の機能強化その他のインフラの整備,⑤スポーツの振興、スポーツ関連産業の育成等の五つの柱を設定している。うち、①の例でいえば九州各県、各都市等の地域連携と競争による「観光王国九州」の確立が可能である。まさに府県制のくびきを解き放した瞬間、新たな九州が顔を覗かせるという訳だ。

九州は今後、伸びていく潜在力が高い。ただ七つの県に分断されている今は、その能力が十分に生かされていない。それが州制度への移行で大きく変わる可能性が高い。巨大なアジアの市場への意近距離に立つ九州だ。これが一つの九州として独自の政策展開ができるようになると、飛躍的に成長する可能性は高い。

 

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■道州制ウイークリー(318)2022年8月20日

◆自治体再編で12州300市へ①

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

 国全体にわたる行財政運営の行き詰まり、高齢社会の到来などの時代状況を踏まえ、活力ある社会を維持・発展させるには,、官・民の役割の在り方を見直すとともに、中央、地方を通じた行政システム全体を改革する必要がある。中央省庁再編と併せて、国と地方の関係を新たな視点でとらえ、地域の個性的な発展と地方自治の自立・自己責任の原則を確立するため、政府・国会の主導により、現行の都道府県・市町村体制を12州・300市体制に再編する。

12州・300市体制

  • 2001年から5年間をめどに、全国3200余(当時)の市町村を300程度の「市」に合併・統合する。合併・統合された「市」および政令市を含む既存の一定規模以上の「市」を基礎的自治体として、権限、財源移譲の一義的な「受け皿」とする。
  • 基礎的自治体をすべて「市」以上の規模にしたうえで、国、都道府県から基礎的自治体への権限移譲を段階的に進め、2010年ごろまでに、都道府県を「州」に再編する。「州」の区分は、北海道州、東北州、北陸信越州、北関東州、南関東州、東京州、東海州、近畿州、大阪州、中国州、四国州、九州の12とする。
  • 市および州には公選の首長と議会を置く。
  • 政府・国会は2000年までに、以上のような地方制度再編、国・地方関係の改革に向け、具体的な基礎自治体の統合・州区分案、実施スケジュールを作成する。

 

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(319)2022年8月27日

◆自治体再編で12州300市へ②

(読売新聞社『21世紀への構想・1997年』より)

 中央と地方の役割

  • 国は、主に国の基本にかかわる統一的政策、国民全体の利益にかかわる分野を担う。 

①国家的基盤の維持(外交、防衛、司法、治安、通称、通貨、教育基本政策等 ②国民生活安定の確保(経済・労働政策、物価、エネルギー等) ③社会保障基盤(年金、医療保険、雇用保険等) ④統一基準の制定と監視(公正取引の確保、環境基準、労働基準等) ⑤州間の調整、国家プロジェクトの推進(基幹的交通体系等)、大規模災害対策等

  • 基礎的自治体である「市」は、身近な生活に関連する行政施策を自主的に進める。

①地域社会福祉(児童福祉、老人福祉等) ②医療・公衆衛生(生活廃棄物処理を含む) ③生活基盤にかかわる公共事業(下水道、都市計画,公園・道路、住宅等) ④教育・文化(保育所、義務教育、高校、図書館の運営等)

(3)「州」は、広域に及ぶ行政及び「市」間の調整を行う。

 ①幹線道路、空港、港湾等の公共事業とその管理運営 ②広域災害等の防止、復旧等 ③地域労働・雇用政策 ④環境保全

 

道州制ウイークリー

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■道州制ウイークリー(311)2022年7月2日

◆大変革の時代、「現状維持」思考からの脱却必要

(真壁昭夫著『ゲームチェンジ日本』より)

 いま世界経済は「ゲームチェンジ」を迎えていますが、バブル崩壊後のわが国全体には現状維持を重視する心理が強く働いています。経済学で「現状維持バイアス」といいます。これまでの行動様式を改めることができなければ、経済はかなりのスピードで縮小均衡に向かう恐れがあります。その結果、日本が世界第3位の経済大国の座を維持することも難しくなるでしょう。

 オンライン診療や感染症への対応力の向上という問題を考えただけでも、変化を過度に恐れるかのように、日本は過去の発想にしがみつく機関が長引き、それが当たり前になってしまったように思います。重要なことは変化を機敏に察知し、それに対応することです。政府の規制緩和が諸外国に遅れ、その結果として企業が旧来の発想から脱却できなければ,、わが国の経済の実力は低下するでしょう。

1990年初頭のバブル崩壊後、我が国の経済は失われた30年を超える長期の低迷に落ちりました。要因の一つは、世界経済の構造変化への対応が遅れたことです。特に、グローバルな規模でのデジタル化への対応の遅れは見逃せません。わが国では新しい、自由な発想を実現するよりも、雇用を守るために、リスクを取らないことが優先されてしまいました。問題は、日本の産業政策の発想が過去の成功体験から脱却できなかったことです。

いまわが国の社会心理を覆っているのは、「人口の減少によって,労働と資本の投入量が減少する、だから経済の成長は望めない」という考え方です。そこには。「イノベーション」の考え方が抜け落ちています。わが国の政治の意思決定を見ていると、口先では改革が重要であるとはいうものの、いざ規制などの改革を進めるとなると既得権益などの反対にあって抜本的な改革が難しくなるケースが続いてきました。「現状維持バイアス」にとらわれて、従来の発想を続けている限り、成長を目指すことはかなり困難と言わざるを得ません。

 

 

 

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■道州制ウイークリー(312)2022年7月9日

◆現代社会に合わない47都道府県体制

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

戦後言われ続けてきた多極分散型の国土形成も、職住近接の地域づくりも、地方分権の推進もいつの間にか旗が下ろされている状態だ。改革なき政治が続く日本である。この先に何が来るか。

「東京頼み」をだらだら続けるばかりの政府。政府は「東京一極集中」が問題だと口では言うが、やっていることは東京減反どころか、いまだ東京は日本の機関車だと見立て、様々な特区指定や規制緩和のさらなる巣心を図っている。

日本は平成20年の1億2800万人をピークに人口減少期に入り、今は毎年数十万人単位で減っている。現在100万人以下の県は香川、鳥取、和歌山、佐賀、福井、山梨、徳島、島根、高知の9県だが、25年もするとそれに奈良、長崎、岩手、石川、大分、宮崎、青森、富山、山形、秋田の10県が加わる。政令市の指定要件である実質人口70万人にも届かない県の続出は何を意味するか。府県を広域自治体とし市町村を基礎自治体としてきた自治制度が根底から崩れていることを意味する。

明示23年(1890年)、交通機関が馬、船、徒歩の時代につくられた47都道府県体制は広域化、高速化の現代社会に合っていない。行政圏と生活圏(経済圏)が大きくズレてしまっている。

「隣にあるからウチにもつくる」という「フルセット行政」の横並び意識で不要なハコモノやサービスが増え、非効率な行政が続き、日本財政を悪化させている。こうした状況をどう打開するか。広域自治体と言いながら「狭域自治体」化した47都道府県を賢くたたみ、もっと力の発揮ができる少数の広域自治体に創り変えることだ。47都道府県を再編統合し、約10の広域圏からなる「州」とする「廃県置州」で東京一極集中は止まり、創意工夫で各地に元気と活力が湧き出てくる。その結果、ムダは省かれ企業も人口も地方分散が進む。

 

 

 

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■道州制ウイークリー(313)2022年7月16日

◆これが「日本型州構想」①

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

その時代にふさわしい「国のかたち」を設計する。それが政治の役割である。明治維新から150年、時代は大きく変わった。本格的な人口減少時代を迎えた日本をどうするか。「新たな国づくり」を本格的に議論すべき時期ではないのか。いまの統治機構「国→都道府県→市町村」の三層制とそれに連なる膨大な出先機関、外郭団体をそのままにする限り、この先、何度増税を繰り返しても1200兆円を超える財政赤字は消えない。むしろ増えるばかりだ。

バブル崩壊後、日本の国と地方の歳出合計は160兆円を超える動きだが、一方、税収など歳入は100兆円に届かない。こうしたワニの口のように開いたギャップ(赤字)を借金(赤字国債・地方債)で穴埋めする財政運営が続く。歳出の160兆円が私たちへの行政サービスに回るならまだしも、その半分近くは公債費、人件費、管理費など統治機構を維持するための間接経費に消えている。何度増税しても国民に豊かさの実感がないのは、こうした背景による。

この先は「人口が右肩下がり社会」へ向かう。人口減少時代に合う簡素で効率的な統治機構に衣替えする改革が不可欠だ。100万人に達しない県が続出する見通しの中、80~100万人規模の政令市が20近くある。こうした広域自治体と基礎自治体が逆転する現象の続出は、自治制度を根底から揺るがす。130年前にスタートした47の都道府県は、広域化した現代に合っていない。

私たちの日常は、経済も生活も県境に関わりなく広いフィールドで行われている。地方自治のエリアは実際都市と行政都市が一致していることが大原則である。拡大した実際都市(圏)に会う新たな行政都市(圏)の創設、人口の大幅な減少のトレンドを加味した広域自治体の再構築は待ったなしだ。47都道府県体制を解体再編し、広域圏を単位に約10の州をつくり、日常生活に合った広域行政圏の仕組みを創るべきだ。それが道州制である。この改革で財政面だけでも20兆円近いカネが節約できるとされる。消費増税10%分をカットできるということだ。

 

 

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(314)2022年7月23日

◆これが「日本型州構想」②

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

これまで「幻の改革」構想と揶揄されてきた道州制だが、実は日本はすでに道州制の素地はできている。20政令市、約60の中核市をそれぞれ政令市→特別市、中核市→政令市に格上げし、この都市自治体に多くの府県業務を移管する。その上で内政(厚労,、国交,文科など)に関わる本省業務、ブロック機関の業務、残存する都道府県の仕事を融合するかたちで「州」政府を創設し、内政の拠点とすれば道州制は実現できる。

ただ、手垢にまみれた「道州制」という表現に代え、日本型州構想という表現を使いたい。これまで北海道の「道」を意識し、「道州制」と呼んできたが、北海道州、九州州と「州」で呼称を統一すれば、もはや道州制と呼ぶ必要はない。

よく県がなくなるので反対だという人がいるが、日常に定着している都道府県名は地名として残るし、カウンティ(郡)という州の出先機関としてしばらくは残る。甲子園の47都道府県対抗高校野球も残る。なので生活上何の支障もない。自治体としての府県機能は即廃止というより、新特別市、新政令市区域外の市町村を補完するカウンティ(郡)として残し、これまでの県の下にあった「郡」が半世紀かけて次第に自然消滅したようにカウンティとしての府県を辿ればよいと考える。ソフトランディングの改革の進め方だ。

日本を「州構想」に移行させる狙いは3点にある。第一に、日本を地方分権の進んだ地方主導型の国家体制に変えること。第二に、東京一極集中を抑え、各圏域自立できる活力ある競争条件を整えること。第三に、国地方の統治機構を簡素化し、効率的で賢い統治システムに代えること。州構想移行で、各州は国から移された財源や立法権、行政圏、一部司法権をフルに使い、自立を始める。内政の拠点となる各州は広域政策の主体として、道路・空港・港湾などの広域インフラの整備、科学技術の振興、州立大学などの高等教育、域内経済や産業の振興、海外都市との交易、文化交流、雇用政策、州内の治安、危機管理、環境保全、医療保険など社会保障サービスを担当する。

 

 

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(315)2022年7月30日

◆これが「日本型州構想」③

(佐々木信夫著『元気な日本を創る構造改革』より)

 「州構想」への移行で国は外交、防衛など国家的な役割、州は広域政策を担い、市町村は基礎行政を担うように変わる。役割分担が明確になり、経営責任の主体もハッキリする。しかも三者は縦ではなく、役割の違う対等な横(水平)の関係に置き換わる。各州は、公選の州知事、州議会を別々に選出する二元代表制の政治機関を持つ地方自治体となり、国の出先機関や47都道府県が統合され、内政の総括権限や財源は各州に移る。国の地方へのかかわりは財源調整と政策のガイドラインを示す役割に限定され、各州が「内政の拠点」になる。

「州構想」への移行は日本各地を元気にする、それが大きなならいだ。各州は国から移った財源や立法権、行政圏、一部司法権をフルに使い、自立を始める。ただ、この州構想に対し、地域間格差が拡大し、勝ち組、負け組がはっきりする、小規模な町村が寂れるといって反対する意見もある。しかし、そうだろうか。現在の47都道府県のままで格差もなく町村も寂れないといえるのか。話は逆ではないだろうか。

広域州にすることで州内の核となる大都市がその州を潤し、町村は広域州の中で財政調整の恩恵を受ける訳で、細切れの47都道府県時よりむしろよくなる。 州制への移行で各州は課税自主権をフルに使い、州の意思で財源を集めることができる。場合によっては、政策減税も可能となる。こうして各州、各市町村は国から干渉されず、自らの意思によって課税し、税率を決定し、徴税できる。人や企業の流れを独自税源で呼び込むこともできる。

 

道州制ウイークリー

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(307)2022年6月4日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代① 脱「国民国家」

(大前研一著『経済参謀』より)

「どうしたら日本経済は低迷から抜け出せるのか」といった質問を受ける。――21世紀は「メガリージョン(大都市とその周辺都市で構成される新しい経済活動単位)の時代であり、もはや田中角栄的な「国土の均衡ある発展」は不可能である。にもかかわらず、いまだに政府は「日本」や「日本経済」という次元で考え、国家の均一的な発展を目指している。だから、いくら景気対策や経済政策をやっても効果がないのである。中国のような独裁国家は別として、アメリカにしろEUにしろ、繁栄は「国家」という枠組みの中で創り出せるものではなくなっている。新しい産業が興る完全な規制緩和を行い、世界から富・人材・企業・智恵を呼び込んだメガリージョンだけに繁栄が訪れるのだ。

「日本はどうすればよいのか」という問いに答えるなら、「国家という前提を」捨てよ、と言いたい。国防、外交、金融政策は国家が担うとしても、それ以外の領域は国民国家を卒業し、新たな地域国家像を模索すべきである。そうしなければ、21世紀にトランスフォームして、「繁栄の方程式」を手に入れることはできないのだ。もともと私は日本を11の地域に分けて立法、行政お、司法、徴税の権限を与える「道州制」の導入を提唱してきた。その考えは今も全く変わっていないが、道州レベルではなく1都市、1地域でもメガリージョンが誕生すれば、繁栄の起爆剤になると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(308)2022年6月11日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代② 繁栄の方程式

(大前研一著『経済参謀』より)

今、起きているのは経済のボーダーレス化、グローバル化です。モノ、カネ、情報が軽々と国境を飛び越えるようになれば、ビジネスも国境を越えて発想していかなくてはなりません。ネット隆盛の時代に国民国家という国境の中だけの枠組みで考えていたら、企業は死に絶えるしかない――というのが「ボーダレス・ワールド」の基本的な考え方です。ボーダレス化やグローバル化が進んだ今の世界では、「国家」の枠組みにしがみついて「あの国が我々の脅威だ」「移民・難民が仕事を奪う」と叫べば支持者が集まてくる、という状況がいたるところで見られます。「自国ファースト主義」や「ポピュリズム」がはびこっているのが現状です。現実を見れば、「ダイバーシティ(多様性)」が世界をリードしていて、国民国家という時代遅れの枠組みにこだわっていたら、富も人材も不足して、国が落ちぶれ、国民が貧しくなるだけです。

人・モノ・カネ・情報が国境を越えて集まってくる地域「メガリージョン」というものが世界にいくつか見え始めていて、アメリカ、中国、インドでそれぞれ3か所ぐらいに集約されます。繁栄に寄与する人材というものを、歴史的な流れから見てみると、18世紀から20世紀にかけて工業社会が広がり、国民国家というものが形成されました。そこでは、経済単位は国家(国境)となり、中央集権の政府主導ですべてのルールが決まっていました。

自分の国が反映するために富を生み出し、輸出して、また稼ぐ。稼いだカネを国民に分配する。大量生産・大量消費・輸出主導の経済システムの中では、指示通りに迅速・正確な作業をこなす均質な労働力が重宝されてきました。日本はこのルールの下で繫栄し、世界第2の工業大国となりました。

しかし、その次のフェーズではボーダレス・ワールドになって、かつ、インターネットが登場して情報化・ネットワーク化の時代となり、国家に代わって「メガリージョン」という新しい経済単位が生まれつつあります。ここでは、民間・起業家主導でルールが決まります。今後の繁栄の方程式を知るためにも、いま先行しているメガリージョンで何が起きているのかを知ることが重要です。

 

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(309)2022年6月18日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代③ アメリカの経済圏

(大前研一著『経済参謀』より)

アメリカの西海岸の「パシフィック・ノースウエストといわれるバンクーバーからシアトル、ポートランドなどを含む経済圏があります。この地域は、人によっては山脈名に由来する「カスカディア」と呼びます。ここはイノベーション産業がけん引する経済が好調で、ワシントン州とブリティッシュ・コロンビア州がイノベーション産業で相互補完的な連携により、さらなる経済発展を目指さす動きもあります。バンクーバー~ポートランド間で高速鉄道建設計画やバンクーバー~シアトル間で自動運転用高速道路構想もあります。

ベイエリア経済圏で拠点となっているのは、スタンフォード大学です。サンフランシスコからサンノゼまで車で1時間というエリアに世界中から人、カネ、モノが集まっています。代表的な企業は、アップル、グーグル、メタ、テスラなどです。これらの巨大企業に続く会社として次々とユニコーン企業が誕生しています。

GAFAMに続くような急成長をしているIT企業やユニコーン企業の創業者も移民や留学生が起業した例が多くなっています。大学や大学院が人材交流の場になっています。スタンフォード、UCLA,、ハーバード、MITといった大学をキャッチャーとして、そこに世界中から優秀な学生を集めます。アメリカにはスタートアップを助けるいろいろな仕掛けがあります。このホップ・ステップ・ジャンプというプロセスが大事なのです。日本の場合は、まず大学というのが単なるアカデミックな学びの場となっていて、世界から優秀な若者を呼び込みません。世界中から才能がある人材が集まってきて、彼らの欲望や野心を事業化していける場があるかどうかなのです。

 

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(310)2022年6月25日

◆メガリージョン(大地域圏)の時代④ 道州制の先駆「九州」

(大前研一著『経済参謀』より)

中国にも3つのメガリージョンがあります。北京・天津・河北を含んだの京・津・冀の地域です。精華大学や北京大学、中国科学院などの研究機関、あるいはネット検索大手のバイドゥやパソコンメーカーのレノボなどの本社があります。次にグレーター上海。上海市と浙江省や江蘇省、安徽省の一部を含む長江デルタ地帯を高速鉄道網で結び、発展しています。アリババ、アントグループの本拠地です。もう一つが深圳を中心とするグレーターベイエリアです。隣の広州、珠海など珠江デルタに広がっています。深圳の人口は1400万人となり、1人当たりGDPは中国の都市としては、圧倒的に1位です。テンセント、ファーウェイ、ドローン最大手のDJIなど急成長を遂げたスタートアップ企業が集積しています。

インドでは、ニューデリー、ムンバイ、チェンナイ、コルカタを高速道路や高速鉄道で結んで、「黄金の四角形」とか「ダイヤの四角形」と呼ばれる壮大なインフラ拡充策が進められています。それらの大都市から離れた南部のベンガロールはインドのシリコンバレーとも呼ばれています。

日本では、東京、名古屋、大阪、福岡の中で元気なのは福岡です。商業の中心地・天神エリアで大規模な再開発プロジェクトが進行中です。しかも九州は、福岡だけが元気なわけではない。九州新幹線と高速道路網の整備により、九州としての一体感が醸成されて相乗効果が生まれてきている。さらに台湾の半導体メーカーTSMC(台湾積体電路製造)が熊本に工場を建設する。もともと九州は三菱電機、ソニー、東芝、NEC、沖電気などが各地に半導体工場を建設し、「シリコンアイランド」として成長したが、韓国への技術流失や製造コストが安い海外への工場移転などで徐々に寂れてきていた。しかTSMCの進出によって「シリコンアイランド」復活の足掛かりができたといえるだろう。九州は、韓国や中国、東南アジアに近いという「地の利」がある。ビジネスにおいても生産拠点としてもメリットが極めて大きい。道州制=クオリティ国家の延長線上にあるメガリージョンの最適モデルである。

道州制ウイークリー(303)~(306)

 よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(303)2022年5月7日

◆道州制の推進が少子化対策につながる

(村井嘉浩宮城県知事『人口急減と自治体消滅』より)

 地方が人口減少・少子化対策に取り組むには、地域特性を生かした施策の展開や街づくりが重要。国から地方への大幅な権限移譲が必要で、東京一極集中を改善し、東北全体で人を呼び込むには道州制の推進が重要だ。

 人口の減り方は県内でも市町村別、地域間で差があります。東京一極集中といわれますが、宮城も仙台一極集中です。仙台一極集中というのは、仙台都市圏は力があるということで、仙台から離れれば離れるほど問題が深刻になっています。これはまさに日本の縮図です。

 東京一極集中是正のために、知事会などは会社が集積しづらい地域の法人税率を低くして、企業を地方へと誘導した方がいいのではと主張しています。確かに一つの考え方と思います。しかし、東京や大阪や愛知など大都市圏などは猛反対するでしょう。そんなに問題は簡単ではないのではないかと思っています。企業はもっと有利な法人税率の地域が世界中にいくらでもあります。そうした中で本社機能が東京にあるのは、東京に魅力があるからです。それよりも地方が自ら力をつけていくことが重要と思います。東北6県だと1000万人の規模になります。東北が一つになるぐらいの大同団結ができれば、東京に勝てるような地域づくりをすることは十分可能です。

 地方自治体でできることがあるとすれば、道州制の推進です。東北を一つにまとめれば、例えば空港機能は、現在の9つの空港をA空港とB空港に集約して他の空港をなくす、また港もいずれかを選択的に大きくする、大学も集約することでレベルの高い大学をつくることができます。そうすれば、若い人がこぞって田舎に集まってくるでしょう。国が一律に「こうすればうまくいく」と示すのではなく、地方が自分の頭で考えられるように権限を移譲する、地方公共団体のスケールを大きくするということが、長い目で見れば少子化対策につながると思います。県単位でやろうとすると、国が決めたこと以外何もできません。権限と財源がないからです。

 

 

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■道州制ウイークリー(304)2022年5月14日

◆人口の一極集中は権力が一極集中だから

(佐竹敬久秋田県知事『人口急減と自治体消滅』より)

 産業構造の変化をとらえた地方の産業の活性化――国も我々地方自治体も、なかなかそのための解決策を見いだせないでいます。企業誘致活動はしても、企業はなかなか来ない。内発的な産業をどう生かすかが県に求められています。当然、企業誘致もありますが、ある程度、地域の中のいろいろな基盤や可能性を産業化するというのが、大きな流れです。産業は創意工夫で成り立つものではありません。今の産業政策であっても、地方への産業の再配置をする。思い切って企業や大学の地方への再配置までしないと、難しいのではないでしょうか。

 産業政策なしの人口の地方分散はあり得ません。日本の場合、産業の分散と人口分散を相当意識的にやらないと、黙っていたら東京に行ってしまいます。例えば、地方自治体で農地転用許可権限を国から市町村に移譲してほしいと言っていますが、国は岩盤規制の緩和は頑として認めません。これでは市町村の特性を生かせません。思い切って相当なところまで市町村に権限を任せると、市町村の責任でやらざるを得なくなります。権限があると、やる気も出てきます。今、権限はほとんどなく、この範囲でやりなさいとなっているから、やることの精度が低いんです。

 人口が東京一極集中になっているのは、権力の一極集中になっているから、そうなるのです。人口は権力のある所に集まります。結局、分権が必要なんです。自分たちの町だから自分たちで何とかしなければならないと、権力が自分たちの近くにあればそういう発想が出てきます。上から目線でああしろ、こうしろと言ったって、全然動きません。権力の集中の影響がまわりまわって人口減少となっているんです。

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(305)2022年5月21日

◆地方の特性生かした取り組み推進

(吉村美栄子山形県知事『人口急減と自治体消滅』より)

人口減少の歯止めには、地方の特性を生かした取り組みの推進が重要だと思っています。山形は3世代同居率が最も高い県です。家族を中心に、子育てや介護など福祉的な機能を内包しています。人口減少の中で経済成長するためには、女性も男性もともに働き、育むことができる社会の構造が必要です。具体的な取り組みとして、「ものづくり産業」で働く女性の異業種間交流を進め、付加価値の高い製品開発や販路開拓につながるような施策を考えています。

人口減少は、国家的な喫緊の課題です。政府を挙げての少子化対策、女性の活躍促進に向けた施策の充実化を図ることが大事です。中央主導で一律にやるのではなく、地方の実情にあわせた独自の取り組みに対し、財政支援を含め、国策で取り組んでいただきたいと思います。

中央一極集中を是正し、地方への人口分散を進めるため、政府は十分なリーダーシップを発揮し、産業の分散、再配置を強く推し進めることが極めて重要です。企業の本社や研究開発機能、デザイン、マーケティングといった事業所関連サービス産業を支援対策に追加するなど、「企業立地促進法」の大幅な拡充をしていただきたいと考えます。また、法人関係税の税率を大都市圏より低くするなど地方へ企業分散を促す制度を求めます。移転こそが企業の最大メリットとなるような制度拡充や創設が必要です。税制度改革の一方で、日本海側の社会資本整備を合わせて進めるべきです。社会資本整備は産業分散の基盤であり、災害時の太平洋側と日本海側の補完性や代替性確保にもつながり、地方創生には 欠かせません。

 

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(306)2022年5月28日

◆東京一極集中に歯止めをかける

(片山善博慶応大学教授『人口急減と自治体消滅』より)

20年以上前に国会等の移転に関する法律、いわゆる首都機能移転法ができて、首都機能の移転、分散という国の方針を決めている。その着眼は、東京一極集中は地方の疲弊を招き、国全体のバランスが取れなくなるという点と、首都直下型地震などが起きた時のリスクがあまりにも高いので、分散させようという機運が一時期盛り上がりました。しかし現在、それがほとんどできていない。この法律をもう一回見直すというか再生させ、実行することを政府がまずやるべきだと思います。

いろんな政策には地方に対する植民地政策のような側面があります。例えば農業では、地方は原材料をつくり、付加価値をつけるのは都会という、あたかもプランテーション農業のようなことをやってきました。第二次産業なんかも全部そうです。本社は東京にあり、地方には工場を移転しよう、支店をつくろうという支店経営でした。何が問題かというと、付加価値の高いもの、そういう分野は全部東京に残し、付加価値のつかない生産性の低い部分だけ地方に移そう。まるで中国や東南アジアに製造拠点を移すのと同じような発想です。

この政策は変えないといけません。地方で付加価値の高い仕事をする。そうすると、試験研究機能とか高等教育機能が必要になります。そうすると、それを支える国立大学や道府県の試験研究機関がありますから、そこにもっと光を当てる、こういうことをやらねばならないと思います。いま、地方の国立大学では、運営交付金を減らされています。そこで何を削るかというと、図書費と研究費ということになる。そうではなくて、そういうところにおカネをつけて、地方で試験研究機能、研究開発機能、高等教育機能とかさらに活気が出るような手を打つことが、ベーシックな部分での一極集中を防ぐことにつながるのではと思います。

 

道州制ウイークリー(298)~(302)

よりよき社会へ国のかたち改革 《道州制》関西州ねっとわーくの会

■道州制ウイークリー(298)2022年4月2日

◆集積のメリットを競え

(小峰隆夫法政大学大学院教授『人口急減と自治体消滅』より)

 働く人の割合が下がってくる人口オーナスの悪循環を小さくしていくには、地域における自律的・安定的な雇用機会を増やし、地域から都市部への生産年齢人口の移動を小さくしていくことが必要だ。そのためには、次のような方向で地域づくりのイノベーションが必要だ。

第一は、「誰が担うのか」だ。かつての地域づくりでは、国が地域政策の主役だった。基本的な方針は国が策定する「全国総合開発計画」によって示され、国の政策が次々に立案されていった。しかし、それによって「金太郎あめのように、どこでも同じような」開発が繰り返されるようになり、地域の個性が失われていった。全国一律の開発は批判を浴び、全国開発計画は廃止された。地域の再生は、まず当の地域が積極的に地域資源を生かして活性化を図ることが不可欠だ。そのためには地方が開発の主役になり、自治体、企業、大学、NPO,市民など多様な主体が地域づくりに参画していく必要がある。

第二は、「どんな方向を目指すのか」だ。かつての地域づくりでは「集中」を抑え「分散」を促進するというコンセプトが維持されてきた。今や、集中への動きが経済社会の大きな流れになっており、集中のメリットが発揮されやすい時代になっている。今後はむしろ「集中化」を志向し、各地域が集積のメリットを競い合うような方向へ進むことが必要だ。政策的に無理に集中を抑制し、分散を図ろうとすると集中の利点が発揮できなくなり、地域の活力をそぐことになってしまうだろう。

第三は、どんな手段を使うかだ。かつての地域づくりでは、公共投資の拡大を中心としたハード路線が中心だった。今後は、歴史的な伝統や人間同士の信頼関係などの「ソーシャル・キャピタル」をベースとして地域を成長させていくという考え方や、大学、研究拠点,、起業環境などの知的環境などの知的資源を組み合わせることによって地域の成長力を高めていくという発想を強める必要がある。

 

 

 

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■道州制ウイークリー(299)2022年4月9日

◆「国土の均衡ある発展」論は日本の衰退招く

(八田達夫アジア成長研所長『人口急減と自治体消滅』より)

 日本の長期データでも過去40年の経済協力開発機構(OECD)各国のデータでも、経済成長率と人口成長率は基本的に無関係だ。したがって出生率に人為的に介入する理由はない。しかし、自然に伸びるはずの人口を人為的に抑えている制度は正すべきだ。

 生産性の向上には二つの異なった源泉がある。第一は、技術革新である。工業的なものはもちろん、経営上の技術革新もある。第二は、低生産性部門から高生産性部門への資源の移動である。経済成長すると必ず成長部門と衰退部門が生まれる。しかし、衰退部門は往々にして強い政治力を持つため、生産性が高い部門への資源の流入を阻止する制度的障害を設ける。参入規制はその典型だ。参入規制のような資源移動の障害を取り除くことが「構造改革」である。

 戦後における石油の輸入自由化で、1950年代に隆盛を極めていた石炭業界はつぶれ、大量の失業者が出て地元の町は疲弊する。輸入自由化に対して激しい反対運動が起きた。60年代の高度成長は、石炭産業の犠牲がなければ実現しなかっただろう。斜陽産業をしっかり衰退させるメカニズがなければ、経済全体は成長しない。同様のことが地域についても言える。衰退地域から生産性の高い成長地域に資源が自由に移動することによって、国は成長する。「国土は不均衡に発展」するものだ。

 1970年代からは、「国土の均衡ある発展」論に基づく地方へのばらまき政策によって、大都市圏に対する極端な人口抑制政策が行われてきた。年間の三大都市圏への人口流入数は、ピーク時の10分の1まで落ちた。大都市圏への人口流入抑制策は、①公共投資の地方ばらまき。②農業への保護、③地方交付税による地方への過剰な再配分④工場等制限法などである。しかし、首都圏への人口流入を人為的に減らすことは、消滅しつつある市町村とその役場のしばしの延命には役立つが、「国土の均衡ある衰退」をもたらすことになろう。65年から2010年まで、100万人超の大都市の人口が伸びた。増加率は、首都圏よりも札幌、仙台、広島、福岡などの支店都市が高かった。小都市の人口減少対策として、中都市を強化し、多極集中で中都市と大都市が共存することで、日本は成長することができる。

 

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■道州制ウイークリー(300)2022年4月16日

◆官民連携による積極投資で地域の魅力高めよ

(川崎一泰東洋大学教授『人口急減と自治体消滅』より)

 地域経済においては、人口減少社会の影響はもう既に各地で顕在化している。過疎化の進行により地域コミュニティの維持が困難になる限界集落の発生、中心市街地の空洞化などにより商業集積の荒廃、住宅地にも空き家が目立つようになるなどの減少がそうである。こうした地域は人口減少により、農地、商店街、住宅地にそれぞれ耕作放棄地、空き店舗、空き家が発生し、集積の経済性、規模の経済性が受けられなくなり、ライフラインの維持管理に非効率が生じ、インフラの維持が困難となり、人口流失が加速するという悪循環に陥っている。

 日本創生会議が示した「消滅可能性都市」の推計は必ずしも過疎地だけの問題ではなく、大都市圏でも消滅可能性都市が発生することを示し、警鐘を鳴らした点に大きな特徴がある。

 これまでは、日本全体では人口も経済も成長してきたことから、人口が減少していく自治体に対して、公共事業や補助金などを通した所得再配分を行うことができた。ところが、日本全体で人口が減少し、経済成長も鈍化する中、従来通りの所得再分配は困難になる。しかし、積極的な投資により地域の魅力を高めることこそが消滅を防ぐ方法だと考える。ただし、公共投資の非効率性は数多く指摘され、市場メカニズムを軽視してきたことから、多くが維持困難な状況に陥っている。したがって、投資主体は民間が中心となる官民連携の形が望ましい。

 アメリカ地方政府で運用されている「増加税収財源措置」(TIF=Tax Incremental Financing)の導入により、投資の選択と集中を図る方法を提案する。TIFは特定地域の再開発プロジェクトの事業費の一部を、その地域内で再開発に伴う資産価値の増加分から生じる財産税増収分を担保とした債権発行で調達し、実際の財産税増収分で償還する仕組みである。この仕組みは政治的力学によりゆがめられてきた公共投資の失敗を投資家のチェックにより選択させるものである。

 

 

 

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■道州制ウイークリー(301)2022年4月23日

◆中央集権システム解体で住民自治再生を①

(穂坂邦夫地方自立政策研究所理事長『人口急減と自治体消滅』より)

 人口減少社会に危機感を持たない国と地方。国の仕送りを受ける地方はひたすら高度成長期の無原則で高い行政サービスを今も取り続けている。この最大の原因は現行における中央集権システムといえる。日本式中央集権システムとは、遠い指揮官による地方の支配構造である。現在の95%以上の地方自治体はジオ分たちで徴収する地方税をはるかに超える国の地方交付税交付金や補助金によって運営されている。これでは、地方の主権者である住民は無関心にならざるを得ない。無関心な住民に選ばれる首長や議員は、国への依存体質に陥いる。

 国の支配によるこのシステムは地方に対して一律的行政運営を求めざるを得ない。個性を失った地方が次々に誕生する。首長はひたすら国の指示待ち姿勢を貫くことになる。このシステムの欠陥は同時に膨大な無駄遣いにもつながる。これまで地方自治体の自由な発想を促進する様々な施策がとられてきたが、いずれも成果を上げることはできなかった。その原因は「集権システムの幹は何一つ手を付けず、小枝だけその都度切り取ってきた」からである。

国は根幹である権限や財源を地方へ移譲することを嫌い、その都度、枝葉末節の政策を取ることで身をかわしてきたからである。国の施策の柱である地方の活性化と再生を目指す地方創生事業も従来の繰り返しと言わざるを得ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

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■道州制ウイークリー(302)2022年4月30日

◆中央集権システム解体で住民自治再生を②

(穂坂邦夫地方自立政策研究所理事長『人口急減と自治体消滅』より)

 地方を再生する第一点は、地方自治体自身の「危機意識」の醸成が不可欠である。自治体自身が危機感を持ち、自己責任を大原則として、ありったけの知恵と工夫を発揮しなくてはならない。

 第二は、地方における雇用機会の拡大である。雇用の機会を拡大すれば、人口の流失を防ぐだけでなく、都市からのUターン組も期待できる。地方への企業誘致にしても、全国一律に行うのではなく、地方の実態に応じて税制の工夫や情報システムの整備を自由に行うことができれば、もっと拡大する。アメリカは大企業が各地に分散している。自由な財源があれば特産物もインターネットを活用した地方の智恵により大都市圏と直結できる。移住政策も現場からの発想によってもっと成果を上げることができる。観光事業も極めて重要である。今のような「個性なき一律的街づくりではない。各地域に様々な文化が根付いている日本を世界の「ラストリゾート」と位置付けることだ。

 約100兆円を消費する地方自治体も開放する。役所の民営化である。特に市町村の業務の75%は民間人で業務を行うことができる。働く場さえあれば地元を離れることはない。国と地方が発想をともに転換し、真剣にその気になりさえすれば地方は再生し、大都市一極集中は是正される。さらに国と地方の役割分担が確立され分権が進むと地方の自己責任が明確になる。中央集権システムによって失われた地方の自立心が回復し、地方交付税交付金や補助金の30兆円の無駄も削減される。

 人口減少社会を乗り越える唯一の方策は本質に切り込んだ中央集権システムの解体である。中央集権を残したままでは、地方を再生し、大都市一極集中を是正することは不可能である。中央集権からの脱却は決して難しいことではない。国と方の役割分担を明確にするとともに、それぞれの行政経費に応じた財政の分配を行う。これからの国は交付金や補助金で地方を縛る付けるのではなく、地方自身に自己責任と危機感を持たせなければならない。これからの国家は、外交、防衛、通貨、金融などに特化し、全力で取り組むことだ。