道州制ウイークリー(165)~(168)

■道州制ウイークリー(165)2019年9月7日

◆人口減少国家 日本の未来⑤全国で町が消えていく

(河合雅司『未来の透視図』より)

2015年を100とした時に30年後の2045年に人口がどのくらい減るのかを日本地図で示してみると、人口が半数以下になってしまう地域が、北海道から沖縄までかなりの地域に散らばっている。人口5000人未満の自治体が増えていけば、病院や銀行など地域に必要な社会インフラが存在できなくなる事態になりかねない。

北海道では、2045年に実に6割以上の自治体が人口5000人未満の小規模自治体となる。東北でも宮城を除く各県で、3割ほどが小規模自治体だ。北関東では群馬県の25%の自治体で5000人未満になる。東京都の周辺3県でも小規模自治体は確実に増えていく。

中部エリア9県では全県で人口減少が進む。小規模自治体が特に多い長野県では、45年には約半数の自治体が5000人未満となる。近畿エリアの三重、奈良、和歌山では小規模自治体の増加が顕著。奈良、和歌山は約4割が5000人未満となる。

四国4県もまた、人口減少が著しく進む。特に高知は5000人未満の自治体が6割を超える。中国エリアでは鳥取、島根で5000人未満自治体が約4割となり、人口規模全国12位の広島県でも1割の自治体が人口5000人未満となる。九州・沖縄でも全県で小規模自治体が増える。熊本は6割を超える自治体が5000人未満となる。

大都市圏は高齢化が目立ち、地方圏では高齢者の増加率は高くないが、労働者人口の減少が著しい。地域のサービスが消滅する人口規模をみると、2万人以下では美術館、研究機構、ペットショップ、英会話教室などが消える。1万人以下になると、救急病院、介護老人福祉施設、税理士事務所などがなくなり、5000人以下となると、一般病院、銀行などが消滅する。これまで当たり前だった生活ができなくなってしまう。

 

■道州制ウイークリー(166)2019年9月14日

◆人口減少国家 日本の未来⑥空き家急増、老朽化する生活インフラ

(河合雅司『未来の透視図』より)

誰も住んでいない家や集合住宅の空室が増えている。総務省の調査では、全国にある空き家は2013年時点で820万戸にものぼり、住宅総数(6063万戸)の13.5%を占める。このうち約6割に当たる471万戸はマンションなどの共同住宅だ。住宅が余っていながらも、都心部を中心にタワーマンションや集合住宅の着工は相次ぐ。野村総合研究所の試算(2016年)では、このままでいくと、2033年には住宅の3戸に1戸が空き家となってしまう。

全国には所有者が分からない、また連絡がつかない「所有者不明土地」が2016年時点で九州とほぼ同じ面積の約410万ヘクタールもある。これが年々拡大、2040年には16年の1.7倍に当たる約720万ヘクタールに増えると試算されている。北海道の面積の約9割に当たる。

1960年代に集中的に整備された社会インフラは一斉に老朽化が進む。2033年度には、道路橋の約63%、トンネルの約42%、水門などの河川管理施設の約62%が建設から50年以上となる。財政が悪化する中、インフラの刷新は難しい。インフラに係るコストは利用者が負担するが、人口減少に伴い利用者が減ると利用料だけでは賄いきれない事態が起きる。

水道管の法定耐用年数は40年だが、耐用年数を超えた水道管は、2014年に12%を超えた。それに対して水道の需要は2000年をピークにどんどん下がっている。2018年に成立した改正水道法により水道事業の民間委託がしやすくなったが、はたして参入する民間企業があるか、水道管の刷新を進めながら水道料金の大幅値上げを避けられるのか、見通しは決して明るくない。

 

 

■道州制ウイークリー(167)2019年9月21日

◆人口減少国家 日本の未来⑦戦略的に縮むための提言

(河合雅司『未来の透視図』より)

我々は発想を大胆に変えるときである。日本の人口減少はもはや避けられない。ならば、戦略的に縮むことだ。縮むことは必ずしも「衰退」を意味するものではない。戦略的に縮むには、日本人の総仕事量を減らすことだ。

第1のアイデアは、「便利すぎる社会からの脱却」である。24時間営業のコンビニエンスストアは当たり前の風景となった。だが、こうした「便利さ」を維持するには、膨大な人の手が必要である。すこし便利さを我慢することで、これらに携わっている人を減らし、その分、必要不可欠となる他分野へと人材をシフトすることができる。

第2のアイデアは、「国際分業の徹底」だ。賃金の高い国が「大量生産・大量販売」のモデルを続けることには無理がある。コンピューターの発達は、発展途上国の向上にあっても先進国の工場でつくるのと同じレベルの製品をつくることを可能にした。日本でしかつくれないもの、日本がつくった方がよいものに特化することだ。日本の得意分野に人材を集中させていくことで、成長分野を活性化させていくことが日本の豊かさを維持する上で不可欠といえよう。

第3のアイデアは、「居住エリアと非居住エリアの分離・明確化」だ。社会の支え手が減る時代おいては自治体の職員ですら十分に確保できなくなる事態が想定される。人口減少社会、少子化社会においては、住民がバラバラに住むエリアが広がっていく。こうしたエリアに行政サービスや公的サービスを届けるにはコストもかさむ。どのように届け続けるのかが大きな社会的問題となるだろう。行政マンや公共サービスの担い手が少なくなる中で,やりくりしていくには、住民側の割り切りも不可避だ。そこで、地域ごとに住民が集住するエリアをつくり、行政サービスや公共サービスはそこまで届ければよいことにする。

 

■道州制ウイークリー(168)2019年9月28日

◆人口減少国家 日本の未来⑧拠点国家を構想せよ

(河合雅司『未来の透視図』より)

第4のアイデアは、「働けるうちは働く」ということだ。60歳や65歳でリタイヤするのはあまりにももったいない。高齢になっても必要とされる人材となるには、スキルを磨き続けるしかない。働く期間を長くできれば、公的年金の受給を繰り下げることも可能となり、結果として年金受給額を増やすこともできる。

第5のアイデアは、「1人で2役をこなす」ことだ。空いている時間をうまく活用することで、勤労世代の不足の解消ともなる。人手不足による採用難が深刻化する中で、優秀な社員の流失を防ごうと思えば、複数キャリアを認めるしかない。

「大量生産・大量販売」というこれまでの成功モデルを投げ捨て、付加価値の高い商品やサービスを「少量生産・少量販売」するビジネスへとモデルチェンジすることだ。

「少量生産・少量販売」のモデルはヨーロッパに見つけることができる。そこで、人口が激減する日本においても、東京一極集中に代表されるような「集積の経済」一本槍のビジネスモデルから脱却し、「拠点国家構想」を目指すことを提言したい。

「拠点国家構想」とは、全国に人々が集まり住む拠点を定め、それぞれの地域の特性などを生かし、あるいは伝統工芸品などに使われてきた技術力を転用することによって、ヨーロッパのごとく高く売れる製品やサービスを少量生産する考えだ。「世界に通用するブランドづくり」に活路を見出そうというのである。

日本に残された時間はあまりに少ない。いま我々に求められているのは行動に移すことである。人口が減ってもなお、暮らしの豊かさが損なわれぬよう、この国をつくり替えることが急がれる。

 

道州制ウイークリー(165)~(168)

■道州制ウイークリー(165)2019年9月7日

◆人口減少国家 日本の未来⑤全国で町が消えていく

(河合雅司『未来の透視図』より)

2015年を100とした時に30年後の2045年に人口がどのくらい減るのかを日本地図で示してみると、人口が半数以下になってしまう地域が、北海道から沖縄までかなりの地域に散らばっている。人口5000人未満の自治体が増えていけば、病院や銀行など地域に必要な社会インフラが存在できなくなる事態になりかねない。

北海道では、2045年に実に6割以上の自治体が人口5000人未満の小規模自治体となる。東北でも宮城を除く各県で、3割ほどが小規模自治体だ。北関東では群馬県の25%の自治体で5000人未満になる。東京都の周辺3県でも小規模自治体は確実に増えていく。

中部エリア9県では全県で人口減少が進む。小規模自治体が特に多い長野県では、45年には約半数の自治体が5000人未満となる。近畿エリアの三重、奈良、和歌山では小規模自治体の増加が顕著。奈良、和歌山は約4割が5000人未満となる。

四国4県もまた、人口減少が著しく進む。特に高知は5000人未満の自治体が6割を超える。中国エリアでは鳥取、島根で5000人未満自治体が約4割となり、人口規模全国12位の広島県でも1割の自治体が人口5000人未満となる。九州・沖縄でも全県で小規模自治体が増える。熊本は6割を超える自治体が5000人未満となる。

大都市圏は高齢化が目立ち、地方圏では高齢者の増加率は高くないが、労働者人口の減少が著しい。地域のサービスが消滅する人口規模をみると、2万人以下では美術館、研究機構、ペットショップ、英会話教室などが消える。1万人以下になると、救急病院、介護老人福祉施設、税理士事務所などがなくなり、5000人以下となると、一般病院、銀行などが消滅する。これまで当たり前だった生活ができなくなってしまう。

 

■道州制ウイークリー(166)2019年9月14日

◆人口減少国家 日本の未来⑥空き家急増、老朽化する生活インフラ

(河合雅司『未来の透視図』より)

誰も住んでいない家や集合住宅の空室が増えている。総務省の調査では、全国にある空き家は2013年時点で820万戸にものぼり、住宅総数(6063万戸)の13.5%を占める。このうち約6割に当たる471万戸はマンションなどの共同住宅だ。住宅が余っていながらも、都心部を中心にタワーマンションや集合住宅の着工は相次ぐ。野村総合研究所の試算(2016年)では、このままでいくと、2033年には住宅の3戸に1戸が空き家となってしまう。

全国には所有者が分からない、また連絡がつかない「所有者不明土地」が2016年時点で九州とほぼ同じ面積の約410万ヘクタールもある。これが年々拡大、2040年には16年の1.7倍に当たる約720万ヘクタールに増えると試算されている。北海道の面積の約9割に当たる。

1960年代に集中的に整備された社会インフラは一斉に老朽化が進む。2033年度には、道路橋の約63%、トンネルの約42%、水門などの河川管理施設の約62%が建設から50年以上となる。財政が悪化する中、インフラの刷新は難しい。インフラに係るコストは利用者が負担するが、人口減少に伴い利用者が減ると利用料だけでは賄いきれない事態が起きる。

水道管の法定耐用年数は40年だが、耐用年数を超えた水道管は、2014年に12%を超えた。それに対して水道の需要は2000年をピークにどんどん下がっている。2018年に成立した改正水道法により水道事業の民間委託がしやすくなったが、はたして参入する民間企業があるか、水道管の刷新を進めながら水道料金の大幅値上げを避けられるのか、見通しは決して明るくない。

 

 

■道州制ウイークリー(167)2019年9月21日

◆人口減少国家 日本の未来⑦戦略的に縮むための提言

(河合雅司『未来の透視図』より)

我々は発想を大胆に変えるときである。日本の人口減少はもはや避けられない。ならば、戦略的に縮むことだ。縮むことは必ずしも「衰退」を意味するものではない。戦略的に縮むには、日本人の総仕事量を減らすことだ。

第1のアイデアは、「便利すぎる社会からの脱却」である。24時間営業のコンビニエンスストアは当たり前の風景となった。だが、こうした「便利さ」を維持するには、膨大な人の手が必要である。すこし便利さを我慢することで、これらに携わっている人を減らし、その分、必要不可欠となる他分野へと人材をシフトすることができる。

第2のアイデアは、「国際分業の徹底」だ。賃金の高い国が「大量生産・大量販売」のモデルを続けることには無理がある。コンピューターの発達は、発展途上国の向上にあっても先進国の工場でつくるのと同じレベルの製品をつくることを可能にした。日本でしかつくれないもの、日本がつくった方がよいものに特化することだ。日本の得意分野に人材を集中させていくことで、成長分野を活性化させていくことが日本の豊かさを維持する上で不可欠といえよう。

第3のアイデアは、「居住エリアと非居住エリアの分離・明確化」だ。社会の支え手が減る時代おいては自治体の職員ですら十分に確保できなくなる事態が想定される。人口減少社会、少子化社会においては、住民がバラバラに住むエリアが広がっていく。こうしたエリアに行政サービスや公的サービスを届けるにはコストもかさむ。どのように届け続けるのかが大きな社会的問題となるだろう。行政マンや公共サービスの担い手が少なくなる中で,やりくりしていくには、住民側の割り切りも不可避だ。そこで、地域ごとに住民が集住するエリアをつくり、行政サービスや公共サービスはそこまで届ければよいことにする。

 

■道州制ウイークリー(168)2019年9月28日

◆人口減少国家 日本の未来⑧拠点国家を構想せよ

(河合雅司『未来の透視図』より)

第4のアイデアは、「働けるうちは働く」ということだ。60歳や65歳でリタイヤするのはあまりにももったいない。高齢になっても必要とされる人材となるには、スキルを磨き続けるしかない。働く期間を長くできれば、公的年金の受給を繰り下げることも可能となり、結果として年金受給額を増やすこともできる。

第5のアイデアは、「1人で2役をこなす」ことだ。空いている時間をうまく活用することで、勤労世代の不足の解消ともなる。人手不足による採用難が深刻化する中で、優秀な社員の流失を防ごうと思えば、複数キャリアを認めるしかない。

「大量生産・大量販売」というこれまでの成功モデルを投げ捨て、付加価値の高い商品やサービスを「少量生産・少量販売」するビジネスへとモデルチェンジすることだ。

「少量生産・少量販売」のモデルはヨーロッパに見つけることができる。そこで、人口が激減する日本においても、東京一極集中に代表されるような「集積の経済」一本槍のビジネスモデルから脱却し、「拠点国家構想」を目指すことを提言したい。

「拠点国家構想」とは、全国に人々が集まり住む拠点を定め、それぞれの地域の特性などを生かし、あるいは伝統工芸品などに使われてきた技術力を転用することによって、ヨーロッパのごとく高く売れる製品やサービスを少量生産する考えだ。「世界に通用するブランドづくり」に活路を見出そうというのである。

日本に残された時間はあまりに少ない。いま我々に求められているのは行動に移すことである。人口が減ってもなお、暮らしの豊かさが損なわれぬよう、この国をつくり替えることが急がれる。

 

道州制ウイークリー(160)~(164)

■道州制ウイークリー(160)2019年8月3日

◆地方経済再生への道⑤道州制は国民的課題

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

交通ネットワーク、空港・港湾、物流、環境、研究開発、観光等、県境を超えた地域課題は枚挙にいとまがない。「行政区域を広域化すれば、その中で一極集中が起こり、他は取り残されるのではないか」という不安が生まれるが、企業や労働者といった民間経済主体は行政区域を意識して活動しているわけではない。企業は収益性に優れた地域に立地するし、労働者は就業機会や高い報酬を求めて移動する。府県の壁がある限り一極集中の利益は、その地域が独占することになる。道州制によって行政区域が拡大すれば、区域内で利益を再分配することも可能になるし、利益をブロック内のネットワーク整備にも利用でき、連携強化に結び付く。

ますます複雑化する国際社会にあって、外交、国防、安全保障、治安維持といった国が果たすべき役割の重要性は高まっている。少子・高齢化の進行は年金や医療保険、生活保護といった国による所得分配機能の強化を求めているし、景気政策、地球環境保全、骨格的幹線道路・鉄道といった、地方が十分にその機能を果たし得ない行政分野も多くなっている。こうした国の機能を強化するためにも、国およびその出先機関は地域に関わる行政から撤退し、道州をはじめとした地方に権限を移すべきである。

一足先に道州制を実現した国がある。かつて「日本と並ぶ強力な中央集権国家」といわれたフランスだ。82年の地方分権法によって、地域経済圏を州(レジオン)として完全自治化した。ヨーロッパ統一後の国境を超えた地域間競争に勝てる強い地方を作ることが目的であった。国家財政の悪化による地方への手厚い保護が不可能になったこと、「パリと砂漠」とも言われ、首都一極集中による国土構造の歪み是正など、フランスが置かれていた状況は日本とよく似ている。異なるのは、フランスが原状に合わせて、確実に改革を前進させていることである。道州制を国民的課題としてとらえ、実現の道を探ることが、日仏間の差を縮めることになる。

■道州制ウイークリー(161)2019年8月10日

◆人口減少国家 日本の未来①2040年のクライシス

(河合雅司『未来の透視図』より)

令和時代は、間違いなく少子高齢化、人口減少が進む時代となる。人口が減りゆくことを前提として、日本社会をつくり直さない限り、われわれは真の意味での平和や繁栄は手にできないであろう。

ひとたび少子社会になると、これを脱却するのは極めて難しい。少子化が「次なる少子化」をまねく悪循環におちいるからだ。少子化は「未来の母親」を減らす。合計特殊出生率が現行の1.4台半ばの水準で推移したならば、25歳~39歳の女性数は今後、大幅に減っていく。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2040年には、2015年の4分の3ほどに減り、2060年代にはおよそ半減となる。多少のベビーブームが起こったところで、日本の少子化は止まらない。

人口減少社会とは、どういう社会なのであろうか。人口は40年後に9000万人を下回り、100年も経たないうちに5000万人ほどに減る。2042年までは高齢者が増える。特に80歳以上が増えていく。少子化の影響で勤労世代は大きく減る。働き手世代が著しく減るのだから、「大量生産・大量販売」という戦後の成功モデルは成り立たたなくなる。警察官や消防士、自衛官などは「若い力」を必要とするが、こうした職種の担い手が不足すれば、社会そのものが成り立たなくなる。すでに過疎化が進んだ地域では、出生数の減少に加えて、人口流失が拡大している。やがて自治体機能を維持できなくなる市町村が全国的に続出することだろう。

こうした難題に挑むには、これから起こる「不都合な真実」から目をそむけず、正しく理解する必要がある。「変えられない未来」と今後の努力次第で「変えられる未来」を選別し、戦略を立てて新たな状況に適応していくことだ。

 

 

■道州制ウイークリー(162)2019年8月17日

◆人口減少国家 日本の未来②超高齢者大国日本の現実

(河合雅司『未来の透視図』より)

日本はすでに4人に1人が高齢者(65歳以上)という超高齢社会に突入しているが、「高齢者の高齢化」は進行し続ける。2050年には推定総人口の約4人に1人に当たる2400万人が75歳以上となる。一方、働き手の15~65歳の人口は2015年の7728万人から2040年には1750万人減少の5978万人となる。

少子高齢化が進む中、食料品といった生活必需品を売っている店舗であっても、客が減って経営が厳しくなったり、後継者がいなくて廃業を余儀なくされたりする例は多い。「買い物難民」がすでに3人に1人になっている県もある。東京圏であっても例外ではない。頼みの綱であるインターネットショッピングも、買い物を届けてくれる宅配便業者が取扱量の急増と人手不足でパンク寸前なのである。買い物の足となる乗り合い路線バス路線廃止も8560キロとなっている。すべてにおいて便利さを追求してきた社会は今、転換期にある。変わる社会に我々の「暮らし方」も転換を迫られている。

介護される方も介護を担う方も高齢者という「老老介護」が増加している。救急車で運ばれる患者の約6割が高齢者で、患者を診る医師の高齢化も進んでいる。70歳以上の診療所医師の割合は全国平均で19.2%。京都では4人に1人が高齢医師となっている。

延び続ける平均寿命だが、お金が足りない高齢者は多い。生活保護世帯の過半数は高齢者世帯である。特におばあちゃんの年金は男性に比べ4割少なく、寿命が長い女性の貧困は特に深刻である。

高齢化で介護の需要は高まるが、介護人材の供給は追いついていない。2025年には35万人が足りなくなる。

 

 

 

■道州制ウイークリー(163)2019年8月24日

◆人口減少国家 日本の未来③勤労世代の激減で縮むニッポン

(河合雅司『未来の透視図』より)

「技術者不足」で経済が大渋滞? 技術で繁栄してきた「技術立国」の日本であるが、その足元が揺らいでいる。経済産業省の「IT人材最新動向と将来推計に関する調査結果」をみると、IT産業の労働者は2019年をピークに減少に転じる。IT産業は情報化が進む世界で欠かすことのできない分野だ。IT産業だけではない。経産省が2017年度に企業を対象に行ったアンケート調査では、5年後に技術者がもっとも足りなくなる分野として、「機械工学」を挙げる企業が多かった。技術立国を支えた団塊の世代が退職し、若手を十分に採用できないとなると、エアコンやテレビといった家電の修理すら難しい時代が来るかもしれない。

財務省財務総合政策研究所のデータでは、経営者の高齢に伴う引退によって廃業する企業の数は今後5年間で100万社以上、25年には200万社近くになると予想されている。

家計消費支出に占める60歳以上の割合は半数を占める。一方の若者は、洋服もお酒も買わず、「車離れ」や「居酒屋離れ」「テレビ離れ」が当たり前となり、30歳以上の男女の1か月の食糧費、特に外食費はどんどん減っている。

勤労世代の減少は地域力の低下を招く。地域の消防団員は1990年代に100万人を割りこんで以来、減少が続いている。「町の守り手」である警察官や自衛隊員といった若い力を必要とする仕事の人員確保が難しくなれば、国防や治安、防災機能は低下する。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(164)2019年8月31日

◆人口減少国家 日本の未来④地方に子どもがいなくなる

(河合雅司『未来の透視図』より)

地方自治体で現実に進んでいるのは「無子高齢化」である。人口動態調査(2016年)では、福島県昭和村、奈良県黒滝村、同上北山村で2016年の年間出生数がゼロだった。文部科学省の調査では、毎年400~500校もの小学校が廃校になっており、統廃合の流れは止まる気配がない。無子高齢化が進む自治体では、いずれ役場職員や議員のなり手もいなくなる。自治体の存立自体が危ぶまれる事態が確実に進行しているのだ。2016年の年間出生数は初めて100万人を割った。2060年の年間出生数は50万人を割るとされる。

生涯結婚しない人たちは増加の一途。生涯未婚率は2035年には男性の3人に1人、女性の5人に1人となると予想される。母親の8割に当たる25歳~39歳の「出産可能な女性」の数は今後も減り続ける。2015年には1087万人いたが、2040年には814万人、2065年には612万人とほぼ半減してしまう。

女性の減少が最も少ないとされる東京都にも落とし穴がある。未婚者が多く晩婚化が進む東京は2017年の合計特殊出生率が1.21と全国最下位なのだ。女性が減らないといっても、出生率が低ければ人口減少を止めることは出来ない。女性減少率が2番目に低い沖縄県が全国1位の出世率(1.94)だが、そもそも人口規模が東京都とは大きく違うため、出生数の増加に大きく寄与する可能性は低い。

 

 

道州制ウイークリー(156)~(159)

■道州制ウイークリー(156)2019年7月6日

◆地方経済再生への道①東京一極集中の是正

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

東京一極集中が進む中で、地方経済の衰退が顕在化している。東京を中心とした首都圏のみが栄え、他地域は再分配で維持されるというのは、国土の健全な姿ではない。日本経済の活性化は地方経済の活性化によって実現すると捉えるべきだ。地方経済の再生は、地域に存在する民間活力を強め、財政への依存度の小さい「足腰の強い」経済構造を創出することである。そのためには、地域がその特性を活かし、多様で魅力ある地域づくりを主体的に進め、その成果を競うという地域間競争によってこそ、真の地方経済の再生が実現する。

東京一極集中は基本的に市場メカニズムに基づいて起こっているという主張がよくなされるが、東京一極集中は東京の首都としての有利性を前提とした市場原理によって起こっているのである。中央集権的な行財政シスエムの下では、企業が東京に本社を移すことで収益をあげようとするのは自然の流れだ。

第2点の「市場メカニズム」の問題は、「市場は万能ではない」ということである。これには東京集中によって発生する社会的費用は含まれていない。企業集中による混雑、オフィスの賃貸料、高い人件費、人口を送りだす地方に発生する諸問題、人口減による行政サービスのコストなども無視できない。こうした社会的コストを放置したままの東京一極集中は望ましい資源配分を実現しない。

地方経済の再生には、地方分権の推進、東京一極集中による社会的費用の回収など、東京一極集中を抑制する仕組みを一刻も早く模索する必要がある。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(157)2019年7月13日

◆地方経済再生への道②地方中枢都市の戦略的育成

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

成長性の高い産業は、人口や産業、情報インフラ、研究開発機関など、地域の集積の利益を非常に強く受けるものである。地方が自立的な経済発展を遂げるためには、こうした成長性の高い産業の立地が必要なことは言うまでもないが、そのためには地方の集積を促進することが不可欠である。それには広域経済圏としての各ブロックにおいて、地方中枢・中核都市の戦略的育成が求められる。

たとえば、都市的な要素を地方の生活に取りこむという場合、隣接するすべての地域が同種の機能を持つ必要はない。むしろ、一体化した地域の中枢部分に都市的機能を集積立地させ、周辺地域からはアクセシビリティ(アクセス、利用のし易さ)を高めることが望ましい。中枢都市の成長は、それを取り巻く地域の成長なくしては起こり得ない。つまり、地域政策は拠点主義によるのではなく、ブロック内でのネットワークづくりをはじめとした面的な政策を実施しる中で、ブロック内各地域の連携を強化しなければならないのである。

たしかに、地方における集積のメリットは、まず地方中枢都市が享受することとなろう。しかし、圏域内での交通・情報ネットワークが整備されることによって、その効果は次第に周辺地域に波及するはずである。東京を核として、放射線状に地方中枢都市が結ばれ、情報や交通手段の発達による東京への近接性は、「ストロー現象」によって地方の活力を東京が吸い上げている。

本当の意味でのネットワークが圏域内で形成されることによって、地方のエネルギーは圏域内で増加し、中枢都市と後背地の相乗効果が発揮されることになる。

 

 

 

■道州制ウイークリー(158)2019年7月20日

◆地方経済再生への道③個性形成型の地域づくり

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

自治体のこれまでの政策課題は地域間格差を埋めることであった。その結果、「隣の町に会館ができたからわが町にも」といった「他地域なみに」の発想に基づいた没個性的な地域づくりが生まれたのである。これからは、他地域と比較して遅れている面、劣っている面を対症療法的に改善する「問題解決型」の地域づくりから、他地域と比べて進んでいる面、優れている面を発見し、これを地域の主体的な創意と工夫によってさらに伸ばすという「個性形成型」の地域づくりに比重を移していかねばならない。不足する部分はお互いに他地域の力を借りればよいのである。「あれもこれも」ではなく、真にその地域にとって優先度の高いものを住民が主体的に選択することが、個性ある地域づくりに求められる。

地域づくりを成功させるためには、地域の活動主体に地域づくりに関しての共通の認識を持たせることが必要であり、そのためにも、地域の個性を活かした「地域目標」と「地域づくり理念」を明確にし、PRする必要がある。

地域の産業政策において自治体の果たす役割は大きい。内発型の地域振興にはイノベーター的なリーダーの存在が重要である。しかし、あらゆる地域で、個人にしろ企業にしろ、地域づくりのリーダーが出現する保証はない。その場合、自治体自らが、リスクを抱えてでも戦略的で組織的な行動によって、その役割を果たしていかなければならない。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(159)2019年7月27日

◆地方経済再生への道④道州制と地域再生

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

地域づくりへの広域的な取り組みは、複数の自治体が共同歩調をとらなければならない。「道州制」は、広域的な地域づくりの環境整備と捉えることができる。省庁再編後も、依然としてタテ割り行政の実態は変わっていない。企業誘致も補助金や税制上の優遇といった純産業政策では限界がある。従業員の生活環境、福祉、文化といった総合的な地域メリットを前面に押し出さなくては、「企業が地域を選ぶ時代」には対応できない。政策間の有機的な連携や総合性を欠いた「パッチワーク的」地域政策を改め、地域にふさわしい「選択と集中」を実現できる総合行政主体を構成する必要がある。それが道州制だ。

「道州制のようなエリアの大きい自治体の設置は地方分権の流れに逆行するものだ」という主張がある。だが、この主張は道州制を広域行政として捉えたものでしかない。道州制は地域づくりの主体を国から地方に移すことを可能にするという意味で、地方分権の重要な推進力なのである。

経済活動のグローバル化が進んだ今日、各地域は国境を超えて交流し、また競争している。こうした環境で地域が生き抜くためには、相応の規模と経済力を持たなければならない。人口規模と経済力を持つ地域が、その特性に応じた経済戦略に基づいて政策を推進すれば、労働力の減少や貯蓄率の低下によって縮小が予想されるわが国経済のかさ上げにつながるとともに、東京一極集中というゆがんだ国土構造の是正にも寄与するはずだ。

道州制ウイークリー(151)~(155)

■道州制ウイークリー(151)2019年6月1日

◆大前研一「わが道州制案」②

(大前研一『世界の潮流2019―20』より)

日本の地方にはポテンシャルがあると信じている。少なくとも道州が自治権を得てお互いに競い合うようになれば、今までのように中央からの金と指示を待っているだけの自治体とは抜本的に違ってくる。そして、この道州制が機能すれば、日本はポルトガルのようにはならず、再び輝きを取り戻すことができるだろう。

今の世界はメガリージョンの競争によって、繁栄を呼び込む時代になっている。自分の税金で栄えているところはないのだ。世界へ、あるいは大きな国では他の地方からヒト、カネ、モノ、情報を呼び込んで栄えるのだ。自国民に税金をかけて繁栄しようとしたり、他国を搾取して栄える植民地支配の時代ではない、ということを改めて肝に銘じていただきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(152)2019年6月8日

◆堺屋太一「日本の未来」

(堺屋太一『三度目の日本』より)

堺屋太一氏の絶筆。この国のあるべき未来を描いている。

一度目の日本は明治の「強い日本」。二度目は戦後の「豊かな日本」。三度目は、「楽しい日本」を創る。

「楽しい日本」を創るためには、官僚主導を止めることが第一条件である。官僚主導には5つの基本方針がある。1、東京一極集中 2、流通の無言化 3、小住宅持ち家主義 4、職場単属人間の徹底 5、全日本人の人生の規格化である。

アベノミクスでも、成長戦略の一環として「岩盤規制」を緩和し、官僚主導から政治主導へ変えようと改革を試みているが、現実にはなかなか進まない。問題は戦後の官僚主導をどこでどう断ち切るか、だ。

戦後の官僚主導がどこから崩れてゆくか。私は5つの局面があると思う。1つは少子高齢化。2番目は地方行政の破綻。3番目は大不況。4番目は国際情勢。次々と難題に直面するトランプ大統領、そのアメリカに取って代わろうとする中国、EUのさらなる分裂、ミサイル発射実験を続ける北朝鮮・・・すでにその端緒は見えている。

そして最後の5番目は、第4次産業革命である。第4次産業革命とは、分かり易く言えば、ロボットとドローン、自動運転、そしてビッグデータによる変化だ。どういう社会変化が起きるか、誰も議論していない。国際的に見ても、世界経済は伸び悩み、資源や食糧が供給過剰気味になる。全体的に経済を冷え込ませるであろう。

この時、戦後の官僚主導が築いた、「東京一極集中」をはじめとする「5つの基本方針」の弱点があらわになる可能性が高い。2020年以後の危機を乗り越え、いよいよ「三度目の日本」を目指さなければならない。

■道州制ウイークリー(153)2019年6月15日

◆分権の核心は地方税財政改革

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

地域がその特性を踏まえて創意工夫を発揮するためには、政策は多様でなければならないが、中央集権システムの下では地域政策における実験や技術革新は実現しにくい。国が意思決定を行う場合には、最終的にすべての地域が新しい試みを受けいれるという確信を持つことがなければ、特定の地域だけに新たな試みを行うにしても、どの地域がそれを望んでいるかの情報を正確に得ることは困難だし、特定の地域にのみ政策を講じることは公平性という点から躊躇しがちになる。国が新たな試みを全国的に実施すると、それを望まない地方も足並みをそろえなくてはならなくなり、その結果、財政に無駄が生じる。

新しい試みは、国が独占的に政策を担う場合よりも、多くの自治体がそれぞれの地域住民の満足を最大にしようと競争を続けて入る場合の方が実現しやすい。つまり、分権的であるほど多くの実験や革新が可能になるのだ。国と地方が協働して地域づくりを行う場合でも、政策形成プロセスは、国から地方へというトップ・ダウン方式から、地方から国へというボトム・アップ方式に転換されるべきである。

地方分権改革は機能不全をきたしている現行の意思決定システムの改革である。だが、「地方ができることは地方で」というスローガンを何度唱えても現実は変わらない。真の分権改革を実現するためには、それを担保する制度が不可欠なのである。それが地方税財政制度の改革であり、補助金や地方交付税といった国の財源移転を縮減し、税を中心とした地方の自主財源を拡充することである。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(154)2019年6月22日

◆真の「三位一体改革」

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

地方分権の推進と地方行政改革はいわばコインの表裏の関係にあるのであり、いずれが欠けても国民福祉の向上は望めない。

国民が負担する税金のうち自治体が自由に使える割合を大きくすることが地方分権の本来の目的ではない。このように理解するから、「地方分権が進めば、いまよりも無駄が多くなって税金が高くなるのではないか」「国に任している方がましだ」ということになる。これには、日本人の多くが「税金は召し上げられるもの」と考え、負担が小さくなることには関心を払うが、税金の使い途については無関心であることも関係している。だから、役人や議員は国、地方を151問わず、税金を自分たちが稼ぎ出したものであるかのように錯覚する。その結果が政治や行政への不信につながり、無関心をさらに助長することになる。

地方分権はこうした悪循環を断ち切る絶好のチャンスである。自治体を取り巻く大きな環境変化の中で、地方は大改革を遂げなくてはならない。そのためにも、第一に、国と地方の上下・主従の関係を対等な関係に改め、それを担保するための地方税財政制度の改革(三位一体の改革)を実現すること、第二に、これまでの国家財政に依存した地方経済を分権時代にふさわしい自立型のものに変革すること。第三に、「官から民へ」を含めて自治体の行政改革を徹底して進めることである。

これら三つの課題は相互に関連しており、連立方程式なのだ。式を解くためには、どの課題の解決も欠くことは出来ない。その意味では、地方税財政制度改革、地域経済の活性化、地方行政改革の三つをもって、真の「三位一体改革」ととらえなければならない。

 

 

■道州制ウイークリー(155)2019年6月29日

◆補助金の弊害、何が問題なのか

(林宜嗣『新・地方分権の経済学』より)

国の行政が省庁の壁によってタテ割りになりがちなことは容易に想像できる。補助金の交付に厳しい条件が付けられると、タテ割り行政がそのまま地方に持ち越されかねない。

地域づくりには総合的な視点が要求される。家やマンションが建てば、学校、道路、福祉施設、文化、交通といった様々な都市装置が必要であり、これがバランス良く整備されて初めて地域の住機能は向上する。ところが、補助金は、事業ごとにその時々の便宜と必要から生み出され、積み重ねられてきたことから、そこには、総合的に地域づくりを進めるという発想は少ない。

補助金によって地方の予算編成が歪められるという声も多い。1億円の自己財源がある時、補助金のつかない単独事業では1億円の事業しかできない。ところが二分の一の補助金率を持つ事業であれば、2億円の事業が可能になる。このような場合、たとえ住民ニーズからすれば優先順位が低くても、地方の予算は補助事業に引っ張られる傾向がある。補助金が「お墨付き」の役割を果たすのである。これに対して補助金の付かない単独事業には厳しい予算査定が加えられる。このように、補助金獲得行動を通じて、事業に関する国の優先順位に地方は従うようになる。しかも補助金の交付によって地方は事業の細部にまで干渉され、地域の特殊性が事業に反映されないとなれば、資源の浪費はますます大きくなる。

 

道州制ウイークリー(147)~(150)

■道州制ウイークリー(147)2019年5月4日

◆立法権と財政自主権を持った道州制へ

(塩沢由典『経済に国はいらない』より)

日本は、明治以来、中央集権でしょう。中央の官僚がいいと思ったものを、全国一律にうけわたす仕組みを作ってきた。補助金もそうです。それは無駄なく効果的だった。だけど、今は、漂流の時代。「坂の上の雲」が見えない時代でしょう。そういう時代には、別の形の思考にいかなければならない。日本では、中央集権を改めなければ上手くいかないでしょう。少なくとも、既成の解答はない。日本の国家体制を大きく変えなきゃいけない。

その一つの可能性が「道州制」です。これは、人によっては自治体の単位が小さすぎるから、もっと合併して、権限を集中させるべきだ、という文脈で使う場合も多いので、気を付けなければいけない。道州制という言葉だけでは問題があるのです。わたしが言っているのは、かなりの自由度を持った、立法権と財政自主権を持った地方政府をつくっていくという考え方です。もちろん、部分的に地方交付税みたいなものがあってもいい。ドイツだったら、州間調整というものがある。豊かな州とそうでない州のあいだで財政移転する。でも、基本は自分たちでやるということを根本に置かないと、おかしくなります。補助金に頼りだすといったことが起こる。そうなると、日本全体が衰退していきます。中心地もダメになるし、供給地域になっているところも、上手くいかない。まして、見捨てられた地域にお金をつぎ込んでも、上手くいかない。

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(148)2019年5月11日

◆関西は主体性を取り戻せ

(五百旗頭真『広論関西経済』読売新聞2019年5月4日付より)

作家・司馬遼太郎はかつて、東京を「世界の変電所」と呼んだ。送られてきた電力を変圧して消費地に送る変電所のように、東京に人材や権限を集め、世界の潮流を把握して全国に成果を伝えていく。日本の近代化が成功したのは、明治以降のこの仕組みがうまく機能したからだ。

昭和の後半ぐらいまではそれで良かった。それ以降は地方の自主性、多様性を育まねばならないのに怠り、過度な東京一極集中を招いた。

令和の時代に、関西は主体性を取り戻さなければならない。政府頼みでは駄目で、企業や自治体が根を張り、我々こそが日本と世界を動かすという気概を持つ必要がある。「東京にはないものが、自分たちでできる」と発信し、人を集めていくほかはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(149)2019年5月18日

◆第二の「極」へ個性磨こう

(五百旗頭真『広論関西経済』読売新聞2019年5月4日付より)

首都直下地震が憂慮される今、日本は複数の軸足を持たねばならない。もう一つの「極」になれるのは今、関西しかない。最終的には5~10の個性ある中心都市と地域を育てるべきだが、まずは二つ目の軸を作らなければ始まらない。関西が突破口を開く必要がある。

兵庫県は、日本の安全神話を覆した阪神大震災という未曽有の災害に見舞われた。それ以降、単に復旧させるのではなく、より良い地域を作る「創造的復興」の歩みを進めてきた。震災前は鉄鋼など重厚長大型の産業が中心だったが、今は科学技術立県を目指している。

関西の各府県も兵庫と同様に、独自の強みがある。大阪が商業・産業の集積地であるのは言うまでもない。京都は文化・観光の全国的中心地であるだけでなく、電子部品などハイテク産業や医療研究の先進地でもある。環境保護の取り組みでは琵琶湖を抱える滋賀が進んでおり、奈良は京都とともに伝統ある文化・観光の拠点である。

人間存在の本質は、「多にして一」だと思う。どんな人間も内面は複雑で多様性を持つが、一人の人間として統合されている。これは、地域も同じだ。

各府県の得意芸、個性が集まって「一」になる。関西のまとまりの悪さを『関西は一つ』ではなく、『一つ一つ』と揶揄する言い方があるが、「多」と「一」は両立しうる。それぞれの個性を磨き、多様性のある関西が全体として輝きを増せばいい。「多」の一つ一つの水準を高め、相互に連携を深めていく。これが関西発展の道だと思う。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(150)2019年5月25日

◆大前研一「わが道州制案」①

(大前研一『世界の潮流2019―20』より)

平成は日本にとって失われた30年だった。新元号、令和の時代に日本がやるべきことは、その失われた30年を取り戻す、これしかない。

しかし、すでに半ば機能不全に陥っている国にその力はないだろう。だから、道州制なのだ。

日本を北海道、東北、関東、首都圏、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄の11の道州に分割し、憲法を改正してそれぞれに自治権を与える。各道州は知恵を絞って世界からヒト、モノ、カネ、情報を呼び込み、各道州の首都は発展を競い合う。

1人当たりGDPと人口規模を繁栄の単位とすると、首都圏はカナダと同じである。関西は台湾とほぼ同じで、オランダよりも人口が多い。九州はベルギーに匹敵する。四国はニュージーランドと同等。このように日本を道州に分けた場合、ほとんどの道州は国家と肩を並べられるくらいの経済力があることが分かる。

 

道州制ウイークリー(143)~(146)

■道州制ウイークリー(143)2019年4月6日

◆ヨーロッパの道州制①

(神野直彦『人間国家への改革』より)

地方分権を推進しようとすれば、地方自治体の任務が拡大する。そうなると、任務の受け皿として統治機構を改革しようとする動きが胎動する。ヨーロッパでは、国民国家の機能を上方と下方に分岐させようという動きによって、下方に移譲された機能を受け皿として、道州制を導入しようとする動きが生じてくる。具体的には、フランスのレジオン、イタリアのレジョーネ、スウェーデンのレギオンなどの道州制の潮流である。

国民国家の機能としての産業政策が、EUという超国民国家へと上方に移譲されると、EU内部の地域間格差是正のために、構造資金を設けるようになる。この構造資金の受け皿として、道州制の導入が意図される。そのため、ヨーロッパの道州制の重要な任務は地域経済振興にある。

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(144)2019年4月13日

◆ヨーロッパの道州制②

(神野直彦『人間国家への改革』より)

フランスでは、レジオンという国の行政区画を1982年の地方分権化法で地方自治体とし、職業訓練を中心に地域経済振興を担うことを任務としている。イタリアのレジョーネをみると、EU構造資金の受け皿であるとともに、医療の担い手ともなっている。イタリアは日本と同様に小域別に医療保険が分立していたが、1978年の国民サービス法で職域別の保険を一本化し、レジョーネを医療サービスの提供主体としたのである。

スウェーデンでも90年代後半からEU構造資金の受け皿として、レギオンという道州制導入の動きが始まる。スウェーデンでは広域自治体としてランスティングが存在している。このランスティングの任務は、医療サービスの提供に絞られているといってよい。このランスティングと重ね書きするように、同じ区画でレーンという国の行政区画が存在する。レーンには地域経済振興を担う国の出先機関が存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(145)2019年4月20日

◆ヨーロッパの道州制③

(神野直彦『人間国家への改革』より)

スウェーデンでは、20あるランスティングを廃止して、6から9のレギオンに再組成するとともに、レーンの地域経済振興にかかわる権限もレギオンへ移すことを構想する。つまり、レギオンは医療と地域経済振興を担うことを任務として構想されたのである。

そのため、1997年からスウェーデンでは、手を挙げた地方自治体によるパイロット的なレギオン実験が行われた。しかし、道州制を推進してきた社会民主党から、消極的な中道右派へと政権が後退したため、レギオンへの移行は強制されず、現在ではレギオンとランスティングという二つの広域自治体が併存する事態となっている。

こうしてみていくと、ヨーロッパの道州制は、EUという超国民国家の形成と結びつき、地域経済振興と医療という役割を車の両輪として、いずれか一方あるいは両方を担わせることを目的に導入されていることが分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(146)2019年4月27日

◆日本の道州制への課題

(神野直彦『人間国家への改革』より)

日本でも道州制の導入が議論されているけれども、その目的は判然としない。強いて言えば、道府県という広域自治体の規模を大きくして行政コストを縮小することが目的のようである。しかし、公共サービスで「規模の利益」が動くと仮定しても、広域自治体をさらに大きくすれば、国民から「遠い」政府となり、ニーズに応じた公共サービスを提供する有効性は低下してしまう。職業別に分立している日本の医療保険を一本化する改革と結びつけるなどして、道州制がどのように国民の生活を向上させていくかを的確にしない限り、意味のある構想とは思えない。

道州制ウイークリー(138)~(142)

■道州制ウイークリー(138)2019年3月2日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ⑤

(関西経済同友会緊急アピールより)

一足飛びの「関西州」実現には困難が予想されるため、次のステップを踏むことを提唱する。

<ステップⅠ>

関西空港と伊丹空港の経営統合が成功している事例からわかるように、空港、港湾、道路などインフラの一体的整備と運用は、資源を有効に活用できる。総合力も発揮できる。関西には、多数の公設試験所や支援機関、大学、研究機関等があり、一元化された経済産業政策のもとに一体となって結束すれば、大きな効果を生む。インフラ整備や、経済産業政策等において府県と出先機関がそれぞれ独自に取りこむ仕組みを改め、一元的なビジョンと計画のもと、関西全域の資源を結合し、一体となって発展を目指すべきである。

(1)従来の委員に加え、国の出先機関の代表者を「関西広域連合」委員に委嘱する。

各出先機関の代表者も、メンバーに加わり、情報交換と協議の基盤をつくるとともに、関西全体の政策運営となって携わり、広域行政一元化の第一歩とすべきである。

(2)国に「関西広域担当相」(万博担当大臣と兼任とする)を創設し、「関西広域連合」委員に委嘱する。

大臣は、関西の政策実現にむけたパイプ役を担うべきである。

(3)「関西広域連合」にデジタル専門機関を創設し、ビッグデータの活用を目指す。

関西広域連合に、デジタル化・データ活用等の専門機関を創設し、政策や予算、投資の有効性・執行効率を高めるべきである。そして国・州・府県・市町村の行政サービスの再編成を目指すべきである。

 

■道州制ウイークリー(139)2019年3月9日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ⑥

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州へのステップⅡ>

(1)国の出先機関の業務を「関西広域連合」に移管し、自治体として執行する。

関西では関西広域連合が各出先機関の受け皿となり、「自治体」として一元的・一体的に広域行政(独自の広域産業政策、インフラ整備、保険・医療福祉、各種保険、環境政策など)を担う体制を目指すべきである。このうち、広域産業政策、インフラ整備については、国の出先機関の人員、権限、予算等をそのまま関西広域連合に移行する。なお、「道州制特別地域における広域行政の推進に関する法律」の適用を受けることで、関西は「道州制特別地域」となるべきである。

(2)府県を存続させ、必要業務を、府県から「関西広域連合」に移管する。

関西が関西州を目指すとしても、直ちに府県を廃止すべきでないと考える。①府県を廃止すると、市町村と「州」の間に大きな隔たり(距離及び規模)が生じてしまう。市町村と「州」の間で十分なコミュニケーションや協働をはかることは難しいと考える。②各府県には、歴史・文化・伝統・風土・気質などに根差す帰属意識があり、このような無形の価値は大切にすべきである。③府県業務のうち、本来的に府県レベルで担うべき業務があり、それらを「州」に吸い取ることは「近接性の原理」に反し、地方分権と言えない。④府県の廃止には府県の反対が強く、その意向を無視することは出来ない。

(3)デジタル化推進による行政効率化については次回に掲載。

 

■道州制ウイークリー(140)2019年3月16日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ⑦

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州へのステップⅡ>続き

(2)府県存続の補足

関西広域連合(ゆくゆくは関西州)で担う方が望ましい業務は、府県から関西広域連合に移管することが肝要である。すなわち、府県と関西広域連合の役割を見直し、再編成する。このことにより、スピード速い、効率的な、関西の更なる発展が期待される。府県を永続的に存続させるかについては、府県の役割が再編成される中で効率的な行政と住民サービスの観点で判断すべきと考える。

(3)デジタル専門機関によって、ビッグデータの解析を行い、政策立案への活用、電子政府による新サービスの提供、行政の効率化など、運用を本格化する。

デジタル専門機関を本格的に運用し、行政に活かす。行政効率を上げて、コストを下げる。住民サービスの向上をめざし、投資のアウトカムの検証をし、未来予測等を導入して政策決定に活かすことが重要である。行政サービスの効率を高め、新しいサービス、仕組みを創造するべきである。また、関西広域連合がデジタル技術を活用することにより、関西各自治体(府県・市町村)の業務を支援し、効率アップをはかることができる。特に、医療・介護・福祉においてビッグデータを活用し、効率化をはかることで、社会保障費の増大を抑えるべきである。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(141)2019年3月23日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ⑧

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州へのステップⅢ>

(1)フランスに見られるような議員兼任制度を採用し、公選議員による議会を設置する。

関西広域連合が関西の広域行政を一元的に担い、執行するに当たっては、その正当性が求められ、そのためには、住民による選挙で選ばれたる議員で構成される議会が必要になる。関西広域連合議員には、国会議員・地方議員との兼職を認め、幅広い視野から職務を遂行させる。複数の公選職を経験させることで、政治家としての力量を向上させる。兼職する議員の報酬は、所属自治体ないし国が折半するなど、歳費を抑える。

(2)首長を、議会から互選する。

首長は、準「議院内閣制」的に、議員から互選するのが望ましい。関西ほどの広いエリアの長を直接公選することは、政治的安定を損なう可能性もあり、慎重に考えるべきである。

(3)上記ステップを踏んで、「関西州」を樹立する。

上記ステップを踏んだ上で、必要に応じて法令の改正をはかり、「関西州」を樹立する。「州」の名に値するためには、自主課税権を持つこと、法律の上書き権を獲得すること、そして関西における諸大臣を設けることが目安となる。

まず、関西州を目指す議論と運動が盛り上がり、広く社会の理解を得ることが必要である。その上で、関西州の成立が成功を収め、そして全国に道州制への機運が高まることを期待する。

 

 

 

■道州制ウイークリー(142)2019年3月30日

◆新しい自治制の時代へ(関西州ねっとわーくの会)

激動する世界の中で、日本は発展か、衰退かの岐路に立っています。

国の再生と安定した社会基盤づくりには強靭な経済力が必須要件です。そのためには経済発展を展開する思い切った大地域圏を形成し、地域力を結合させなければなりません。経済拠点である大都市連携を包括するには、細切れの47都道府県から広域行政体への再編が必要です。大地域圏は少子高齢化による人口減少時代や経済社会の広域化にも対応し、競争力のある強い地域圏を形成する「広域行政経済圏」です。これが新しい自治の姿である「州制度」です。世界は今、メガリージョン(大地域圏)の時代です。

大地域圏「州」は、国主導型ではなく、連邦制でもなく、地域の自治による広域自治体です。各州で産業経済特区を形成し地域戦略を展開、公民学共同の産業技術総合研究センターを設置して一極集中ではない多軸、多様な高度技術研究開発を牽引し、さらに全国一律最低賃金の引き上げを段階的に行って地域格差是正をめざす改革です。府県再編、行政改革により行財政の効率化を図り、高齢社会を支える巨額の財政需要に対応していきます。州は広域地域戦略の司令塔となり、地域社会保障の基盤を強化、地域共同体が連なる新しい国づくりにつなげていきます。

州が大地域圏の広域行政を担う一方、現在の府県地域内に関わることは新たな中間的機関を設けず、関係市町村による広域連携部門を設置し、その地域に応じた施策をすすめていくのが望ましいでしょう。

新元号となり、2020東京五輪後の国策として、新しい国のかたちへ転換し、課題解決、改革へ進める時です。もはや「課題先送り」はできません。

 

道州制ウイークリー(134)~(137)

■道州制ウイークリー(134)2019年2月2日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ①

(関西経済同友会緊急アピールより)

関西経済同友会地方分権改革委員会は2018年7月に「関西州」を樹立し、地方分権の先駆けとなるべきという緊急アピールを発表しています。以下がその全文です。

2010年、関西では、地方自治体として「関西広域連合」が誕生し、府県をまたぐ広域業務に一定の成果を挙げてきた。しかし、府県の権限を持ちよる現在の組織や仕組みでは、機能を発揮するのに限界がある。とりわけ、府県の壁を越えた広域的なシナジー効果を発揮すべき産業振興政策を十分に打ち出せていないことに対して、その打開に向けては、政策決定に関する現状の権限や責任の抜本的な見直しが必要である。また広域連合委員会委員の出欠状況を見る限り、各委員が議論を積み重ね前進している状況とは言い難く、改善が必要である。

現在、「関西広域連合」では「広域行政のあり方検討会」が設置され、広域連合の役割や執行体制も含めた今後の方向性について、活発な議論が続けられている。

メガリージョンとしての世界との競争に勝ち、関西・日本が発展を遂げるためには、「関西広域連合」は、新しい責任と権限を拡大し、経済発展や持続可能な社会の構築等に前向きかつ実験的に取り組むべきである。また、デジタル技術の活用による、行政の効率化、政策の実効性評価、市町村の行政サービスバックアップを主導すべきである。そして近い将来委には、「関西州」を樹立し、地方分権の先駆けとなるべきである。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(135)2019年2月9日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ②

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州を目指すべき理由・1>

①インフラ整備や経済産業政策、医療福祉、各種保険など関西圏が一体となって取り組むことで、効率がよくなり成果が上がる。現在ように府県と出先機関がそれぞれ独自に取り組む体制は非効率である。

②関西圏全域を見渡した中で「全体最適」を目指して戦略的に投資ができる。「選択と集中」も可能になる。

③各府県の経営資源(公設試験所や支援機関、研究機関など)が有機的に一体化する中で、シナジー効果が生まれ、総合力を発揮できる。「知恵の囲い込み」がなくなる。例えば、研究機関から事業化まで橋渡しをする機能が格段に向上する。

④出先機関が自治体として一体化する中で、縦割り行政の弊害を極小化できる。住民に身近な存在となる中で、縦割りとならないよう住民の監視が効く。

⑤予算の執行にあたり投資効果をより厳格に見極める態勢になる。財政規律が働きやすくなる。

 

⑥から⑪までは次回に掲載

 

 

 

■道州制ウイークリー(136)2019年2月16日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ③

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州を目指すべき理由・2>

⑥自らの圏域(関西)のことを、「わが事」として自ら考え、自らがその結果責任を負うことにより、意欲が高まり、潜在能力が発揮される。関西のことをよく知っている人たちが政策立案に携わることにより、より関西に適した政策を遂行できる。

⑦全国一律に実施することが難しい政策を実験することができる。成功すれば、全国展開すればよい。失敗してもダメージは少ない。たとえば、ビッグデータを行政に活かすなど、デジタル技術の高度利用を実験していくべきである。

⑧関西という市場圏の中で、地産地消など互恵的な取り組み(生産・消費・流通・交換・融通など)が生まれやすくなり、新たなビジネスが生まれる。

⑨関西が反映することで、東京一極集中の各種リスク(災害リスク等)を分散できる。

⑩世界的な都市間競争を勝ち抜くためには府県単位の産業政策では不十分。また、国の政策では地域の独自性を活かせない。「関西」程度の大きな戦略を立案・推進していく自治体(=関西州)が不可欠。

⑪地方分権の必要性が主張されてから幾久しい。一定の地方分権は進んだが、目指す姿には程遠い。多くの地方が中央集権体制に順応してしまっている現在、全国一律に地方分権を進めたり、道州制を導入することは不可能である。関西にて、実験的に分権し、関西が地方の力を発揮して見せることで、全国への波及を期待する。

 

 

 

■道州制ウイークリー(137)2019年2月23日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ④

(関西経済同友会緊急アピールより)

緊急アピールは、具体的には次の様な姿を目指すべきと考える。

①府県を存続したうえで、関西広域連合を関西州に衣替えする。

②関西州は広域産業政策、広域インフラ整備につき、独自の調査・立案・調整・実行機能を持つ。

③関西州は、デジタル技術を行政に高度利用し、府県・市町村をサポートして、住民サービスの向上をはかる実験のプラットフォームとなる。

④②を満たすため、関西州と関連する地方出先機関とを融合、統合する。

⑤関西州が権限、財源を持てるよう、議員は公選とする。首長も選挙(互選など)で選ぶ。

道州制ウイークリー(134)~(137)

■道州制ウイークリー(134)2019年2月2日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ①

(関西経済同友会緊急アピールより)

関西経済同友会地方分権改革委員会は2018年7月に「関西州」を樹立し、地方分権の先駆けとなるべきという緊急アピールを発表しています。以下がその全文です。

2010年、関西では、地方自治体として「関西広域連合」が誕生し、府県をまたぐ広域業務に一定の成果を挙げてきた。しかし、府県の権限を持ちよる現在の組織や仕組みでは、機能を発揮するのに限界がある。とりわけ、府県の壁を越えた広域的なシナジー効果を発揮すべき産業振興政策を十分に打ち出せていないことに対して、その打開に向けては、政策決定に関する現状の権限や責任の抜本的な見直しが必要である。また広域連合委員会委員の出欠状況を見る限り、各委員が議論を積み重ね前進している状況とは言い難く、改善が必要である。

現在、「関西広域連合」では「広域行政のあり方検討会」が設置され、広域連合の役割や執行体制も含めた今後の方向性について、活発な議論が続けられている。

メガリージョンとしての世界との競争に勝ち、関西・日本が発展を遂げるためには、「関西広域連合」は、新しい責任と権限を拡大し、経済発展や持続可能な社会の構築等に前向きかつ実験的に取り組むべきである。また、デジタル技術の活用による、行政の効率化、政策の実効性評価、市町村の行政サービスバックアップを主導すべきである。そして近い将来委には、「関西州」を樹立し、地方分権の先駆けとなるべきである。

 

 

 

 

■道州制ウイークリー(135)2019年2月9日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ②

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州を目指すべき理由・1>

①インフラ整備や経済産業政策、医療福祉、各種保険など関西圏が一体となって取り組むことで、効率がよくなり成果が上がる。現在ように府県と出先機関がそれぞれ独自に取り組む体制は非効率である。

②関西圏全域を見渡した中で「全体最適」を目指して戦略的に投資ができる。「選択と集中」も可能になる。

③各府県の経営資源(公設試験所や支援機関、研究機関など)が有機的に一体化する中で、シナジー効果が生まれ、総合力を発揮できる。「知恵の囲い込み」がなくなる。例えば、研究機関から事業化まで橋渡しをする機能が格段に向上する。

④出先機関が自治体として一体化する中で、縦割り行政の弊害を極小化できる。住民に身近な存在となる中で、縦割りとならないよう住民の監視が効く。

⑤予算の執行にあたり投資効果をより厳格に見極める態勢になる。財政規律が働きやすくなる。

 

⑥から⑪までは次回に掲載

 

 

 

■道州制ウイークリー(136)2019年2月16日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ③

(関西経済同友会緊急アピールより)

<関西州を目指すべき理由・2>

⑥自らの圏域(関西)のことを、「わが事」として自ら考え、自らがその結果責任を負うことにより、意欲が高まり、潜在能力が発揮される。関西のことをよく知っている人たちが政策立案に携わることにより、より関西に適した政策を遂行できる。

⑦全国一律に実施することが難しい政策を実験することができる。成功すれば、全国展開すればよい。失敗してもダメージは少ない。たとえば、ビッグデータを行政に活かすなど、デジタル技術の高度利用を実験していくべきである。

⑧関西という市場圏の中で、地産地消など互恵的な取り組み(生産・消費・流通・交換・融通など)が生まれやすくなり、新たなビジネスが生まれる。

⑨関西が反映することで、東京一極集中の各種リスク(災害リスク等)を分散できる。

⑩世界的な都市間競争を勝ち抜くためには府県単位の産業政策では不十分。また、国の政策では地域の独自性を活かせない。「関西」程度の大きな戦略を立案・推進していく自治体(=関西州)が不可欠。

⑪地方分権の必要性が主張されてから幾久しい。一定の地方分権は進んだが、目指す姿には程遠い。多くの地方が中央集権体制に順応してしまっている現在、全国一律に地方分権を進めたり、道州制を導入することは不可能である。関西にて、実験的に分権し、関西が地方の力を発揮して見せることで、全国への波及を期待する。

 

 

 

■道州制ウイークリー(137)2019年2月23日

◆関西広域連合を進化させ「関西州」をめざせ④

(関西経済同友会緊急アピールより)

緊急アピールは、具体的には次の様な姿を目指すべきと考える。

①府県を存続したうえで、関西広域連合を関西州に衣替えする。

②関西州は広域産業政策、広域インフラ整備につき、独自の調査・立案・調整・実行機能を持つ。

③関西州は、デジタル技術を行政に高度利用し、府県・市町村をサポートして、住民サービスの向上をはかる実験のプラットフォームとなる。

④②を満たすため、関西州と関連する地方出先機関とを融合、統合する。

⑤関西州が権限、財源を持てるよう、議員は公選とする。首長も選挙(互選など)で選ぶ。