カフェ塾(9)2010年9月

第九回Cafe塾

水道広域化事業の具体例から道州制推進を考える
『オール大阪で見た大阪の水道問題』

 

講師:野村東洋夫 関西のダムと水道を考える会代表

日時:平成22年9月18日(土)午後4時30分~6時30分

場所:カフェバー 楽

<講師プロフィール>
関西のダムと水道を考える会を2001年7月に設立。以来、100回以上に及ぶ例会開催し 「紀伊丹生川ダム」「紀ノ川流域委員会」「淀川流域委員会」の主に利水問題に取り組み、現在は大阪府市水道統合問題に取り組んでます。意見書の提出や陳述、意見発表を継続して行い、精力的な活動を行っています。広域に及ぶ河川等問題の考察から行政の事情、地方分権など道州制にも造詣を持たれます。

 

第9回カフェ塾 報告

さる9月18日、「関西のダムと水道を考える会」の代表である野村東洋夫氏を講師に迎え、「オール大阪で見た大阪の水道問題」と題して、大変興味深い講演をしていただきました。
「関西のダムと水道を考える会」は10年近い活動の中で、「水」をテーマに関西地域の利水・治水・水道行政について、国や自治体に働きかけ、市民の立場で納得のできる説明を求めてきた団体です。

当初は水需要の増加を見込んで計画されていた関西地区のダム建設も、その多くが撤回され、現在、行政から公表される需要予測は、逆に今後低下するというものです。そんな中で大阪の府と市の間で水道事業の効率的統合の話が進んでいます。
この問題は橋下知事の掲げる「ワン大阪」と平松市長の「グレーター大阪」構想の対立とパラレルな問題を提起していますが、一層現実問題として、二つの役所―大阪市水道局と府水道部の相互不信と主導権争いといった対立の構図から、統合―解体―再編の難しさを物語るものとなっています。

現在は府の主導する「大阪広域水道企業団」に府下42市町村が参加することになっていますが、最大の自治体である大阪市はここに参加していません。またこの問題は、高度成長期に整備されてきたインフラの老朽化と再整備という、今後財政的にも大きな負担となる事業をどのように効率的に進めていくかという問題―行政の効率的一体化による指揮命令系統の一本化という問題、開かれた行政に市民がどうかかわるかという地方自治の本旨にまつわる問題など、「地域主権」と道州制を考える上でも重要なケースとなっていると思います。

 

カフェ塾(8)2010年8月

第8回カフェ塾レポート

第八回Cafe塾 奈良塾

分権時代を考える・講演と議員トーク
『議員から見た分権 明日の自治体』

 

■基調講演 「分権・道州制と市町村」 市川喜崇 同志社大学法学部教授
■市川教授と議員のトーク 「議員から見た分権ー明日の自治体」

講師:同志社大学法学部 市川喜崇(よしたか) 教授

日時:平成22年8月21日(土)午後3時00分~6時00分

場所:奈良県経済倶楽部 5F大会議室

□基調講演   3:00~4:10  市川喜崇法 教授
□議員トーク  4:20~5:30  浅川清仁奈良県議・天野秀治奈良市議・塩見牧子生駒市議
□質問タイム 5:30~6:00
<講師プロフィール>
松本市出身。1987年早稲田大学経済学部卒。福島大学助教授を経て2000年に同志社大学助教授、2004年に教授。専門分野は行政学・地方自治。研究テーマは、日本の中央ー地方関係、地方分権改革、道州制。

第8回カフェ塾 奈良サマースクール 報告

今回は奈良道州制塾サマースクールとして、「分権時代を考える 講演と議員トーク」を企画、市民約30人が参加した。

まず同志社大学法学部の市川喜祟教授が「分権・道州制と自治体について」と題して基調講演。道州制の意図する広域行政は府県連携、府県連合でかなりのことが可能なのではないか、道州の規模が自治体としての枠を超える中級国家並みとなり運営が難しいのではないかとの見方を示した。

続いて市川教授も加わり、浅川清仁奈良県議、天野秀治奈良市議、塩見牧子生駒市議による議員トーク。議員から見た分権時代についてシンポジウム形式で語り合った。議員からはそれぞれの自治体の課題についての説明の後、道州制について浅川県議からは「閉塞感打破のため国のかたちを変革するとき。地方でフットワーク軽く自由にできる体制が重要」と積極的意見が出された。天野市議、塩見市議からは分権の必要性、重要性を評価する一方、道州制については、まず広域連携を推進すべきではないか、移行プロセスが不明で奈良県内の町村が置き去りにされるのではないか、との慎重論も出された。 道州制について積極論と慎重論の両論が示された形になったが、道州制実現への視点と課題を考える上では、争点が浮かび上がったシンポジウムとなった。 なお、この会合は8月26日付読売新聞奈良版に掲載された。


読売新聞奈良版 (H22.8.26記事全文)  

道州制シンポ 県議らが意見ー 奈良
市民団体「関西州ねっとわーくの会」(高松義直代表)は、道州制の長所と短所について考えるシンポジウムを奈良市の経済倶楽部経済会館で開いた。 市民ら約30人が参加。浅川清仁県議は「国の閉塞感を乗り越えるためにも日本の形を変えることが重要」と主張。「インパクトが大きい道州制より、まずは広域連合を」(天野秀治・奈良市議)、「州内の格差が広がるのでは」(塩見牧子・生駒市議)といった意見も上がった。 シンポジウムに先立ち、同志社大の市川喜祟教授(地方自治)が「分権・道州制と自治体について」と題して基調講演。市川教授は「道州制が実施されると、欧州の中規模国家並みになる。奈良県のように人口1万人未満の市町村が4割を超える自治体でうまくやっていけるのか」と疑問を投げかけ、慎重な姿勢を示した。

 

カフェ塾(7)2010年7月

第7回カフェ塾

第七回Cafe塾

テ ー マ :国家統治のあり方 -これからの日本制度設計のために-

 

講師:岩波薫 法学博士 (大阪大学)・フィロソフィア経営法務研究会代表

日時:平成22年7月10日(土)午後4時30分~6時30分

場所:カフェバー 楽

 

今回は、一元代表制、二元代表制、政治主導、政党と内閣、あるいは政党と官僚の関係など、国家統治の問題は基本的なテーマでありながら、あまり整理されない形で報じられている問題について米英日を比較する形で講義をして頂きました。講義の後、質問に答えるという形で参加者の方々とディスカッションを通し、官僚統治、国民の信任、情報コントロールとマスコミュニケーションなど、更に問題に切り込みました。国家統治のあり方という 膨大なテーマをを短時間で行う強行軍でしたが、今後の制度設計に関する論議からやはりテーマは「道州制」へ。今回も大いに盛り上がった勉強会でした。

 

 

 

カフェ塾(6)2010年5月

6回カフェ塾

第六回Cafe塾 奈良塾

「道州制で何が変わるか 〜関西経済から道州制を見る」

 

講師:高松義直  (関西州ねっとわーくの会代表)

日時:平成22年5月29日(土)午後3時15分~6時00分

場所:奈良県経済倶楽部 5F小会議室

■関西州ねっとわーくの会からの報告

▽関西州ねっとわーくの会道州制カフェ塾 奈良塾開講のあいさつ
▽参院選 関西の候補者に道州制アンケートを行います
▽道州制フォーラム・「関西州議会」企画の中間報告
年内開催目指す 市民が議員、関西の課題を討議

■高松義直 道州制リポート
道州制で何が変わるか~関西経済から道州制を見る
―塩沢由典大阪市大名誉教授著「関西経済論」から

中央集権制から道州制に転換すると様々な効用があるが、導入すれば全て解決するものではない。関西が自ら議題を設定し、関西の諸問題に取り組むには、頭脳機能と神経機能が 働かねばならない。関西は世界の大都市圏としては4位の経済規模を持つ、有望地域だが、その利点を生かし切れていない。京阪神・関西の総合力を生かすには何が必要なのか。次代の産業構造を予測すれば、「ものづくり」から「創造産業」に移行せざるを得ない。その条件は何か。関西経済の発展・成長にとって道州制がどういう役割を果たすことができるのか、が本日のテーマです。

  1. 道州制で何が変わるか
  2. 関西の頭脳機能と神経機能
  3. 1日交流圏・関西の可能性
  4. 関西活性のカギ

 

■フリートーク

かきの補足、最後にフリートークを行いました。また、地域主権型道州制国民協議会との事情・関係説明を行いました。

<補足>

▼全国一律の失敗例・リゾート法<中央集権から道州制へ>
リゾート法は正式名「総合保養地域整備法」。1987年制定。全国41道府県42地域で基本構想が策定された。「ゆとりある国民生活の実現」と「地域振興」という目的が掲げられたが、真の狙いは内需拡大。第一陣の宮崎シーガイヤ、長崎ハウステンボスが会社更生法申請。2003年までに民間施設の整備進捗率が17%、採算の合わないゴルフ場やリゾート・ホテルが1000施設以上も残された。リゾート法の失敗は多面的であり、道州制の下でなら、すべての負の側面が防げたとは言えない。しかし、各州ごとに開始時期がずれ、先行じた州の失敗を見て開発に慎重になったところも半数近くはあったであろう。各道州が開発重点地域を選んだとすれば、共倒れはかなりの程度避けられたに違いない。
▼大阪府と大阪市の合併論<府県では狭い>
大阪府と大阪市については、しばしば、二重行政の故をもって、合併すべきだという議論がでる。しかし、それは基礎自治体と広域政府との役割の違いを混同したものである。二重行政は解消したらよいが、府市合併はあってはならない。もっとも、基礎自治体の機能強化のために、市を解体して、現在の区を基礎とし、首長と議会を持つ自治体(東京特別区に相当)を創設するというなら、話は別。
▼失敗した映像産業育成<21世紀の産業構造>
映像産業育成は、USJの解説前に唱えられていた。当時の市長、港湾局長、経済局長など、だれも言っていた。USJは解説されてから、周辺に映画産業と言えるものは1つの事業所もない。コンテンツ産業育成のい難しさ。東京では課題に気づくところから、正規の政策となるまでに数年をかけて対策を検討している。その後追いでは、勝てない。東京が興味を持たないニッチな領域に特化しなければ、コンテンツ産業は育たない。

カフェ塾(5)2010年5月

第5回カフェ塾


 テ ー マ
– 関西州議会はいかにして実現できるか II –

講師:小倉塾長

日時:平成22年5月15日(土)午後4時30分~6時30分

場所:カフェ「楽」

5月15日(土)第5回カフェ塾を行いました。今回も前回に引き続いて、「関西州サイバー議会の可能性」について話し合いました。以下はその報告です。

「現下の政治状況をどう見るか」

  1. 自民党、民主党の旧来の大政党(供給サイド)が依拠した後援会組織が民意の吸い上げ機能として劣化しているため、いわゆる無党派層が増えた。
  2. 小選挙区制の下で、二大政党が覇を競う構図は、対立軸がはっきりしている場合は機能するが、グローバル化と国民国家の行政国家現象の進展が進む中で無党派層が主流化すれば、そのボリュームゾーンの票を獲得するために対立する二大政党の政策は接近する。それにより、政党がよって立つべき結党の理念が見失われ、本来の支持者と無党派層の双方の支持を失い、政治不信を招く。
  3. 政党助成金の問題。支持母体がしっかりしていれば、そこが票と同時に活動資金を供給する。政党助成金が制度化されたのは、政治資金の流れが不透明で不正であるということがあったからであるが、本質的には、支持母体の劣化により、政党に資金が集まらなくなってきたからである。この問題は、政党が国費で運営されるほど公共性を持っているのか、「公の支配」=国費という側面とともに、結社の自由=良心の自由が国家の資金で保障されることが、政治に新風を送ることを阻害することにならないか、という問題がある。無党派=中心部分が主体的に政治資金を供給する体制が作れるのかが課題である。
  4. 政党は本来、政治的問題解決するために結集したものである。道具である。決して多数派をとることが目的でない。政治的問題が解決できないから、多数派をとることが目的になる。本来の課題を解決するためには現状の政治プロセスでは問題は解決できないという認識が重要である。
  5. この春、新党が続々誕生した。政策に違いを探すのは難しい。何が不満で新党ができるのか。新党をつくることで安定多数をとれる大政党がなくなるが、その安定多数をとるための野合に近い大政党の結集の仕方が不満としか思えない。しかし、理念先行させると小選挙区制の下では中心部分を取り込むことができない。結果どこも多数をとることができずに「連立」という野合に戻ることになるのではないか。ただ、連立することで政治的問題を解決することができるのかということが次に問題になる。政治的問題がどこにあるかがある程度共有化されているから政策が近接化する。しかし、民主党の政策に代表されるように一向にその政治的問題は解決しない。とすれば、そこに「政治的課題・問題」があるのではないのだろう。いま重要なのは、表面的な問題ではなく、たとえば少子高齢化が問題なのではなく、その対策を決定し、実行できない構造に問題があり、その構造に政党そのものが深く関与しているという自覚のなさが問題なのである。
  1. これは決して政党不要論ではない。政党に民意を吸い上げる仕組みの再興と世論を説得する見識を期待するのである。

「関西州サイバー議会を考える視点」

なぜ「関西州サイバー議会」を企画するのか。

  1. 橋下知事の「大阪維新の会」が人口30万の基礎自治体=特別区を大阪府内に20区つくることで、府市再編を図ろうとしている。この特別区には公選の首長と区議会が設置される。これはこれまでの権力関係の変更である。基礎自治体議会~大阪都議会~大阪都の廃止~関西州議会という一連の議会設定は行政の監視システムにとどまらず、責任主体として機能させなければならない。
  2. 民主主義の再興が道州制導入の大きな目的なら、基礎自治体議会~関西州議会の位置づけとその活性化は重要である。
  3. 直接性を重視した権力基盤をつくるために、たとえばⅰ100戸程度の自治会長を選挙で選ぶ。(300~400名で一人)ⅱ自治会長がコア自治体(3万~4万人)の合議機関(100名)を組織する(日当制)。ⅲコア自治体の合議機関から数名の代表を送り、基礎自治体(30万~40万人)の議会(30~40名)のオンブズマン委員会を形成し、基礎自治体の首長と議会を監視する。ⅳコア自治体の公務員と準公務員を採用する。執行組織を合議機関の下部に置く。コア自治体の首長を合議機関から選ぶ(報酬制)。任期2年多選可。ⅴ基礎自治体の首長と議会を公選する。解散・解職請求権を確保する。行政組織を整備する。基礎自治体はコア自治体の調整機関であると同時にコア自治体を指導監督する。ⅵ道州の議会・行政・首長・司法組織を整備する。
  4. 上記の「現下の政治状況」のところで述べたことを繰り返すが、たとえば少子高齢化が問題なのではなく、その対策を決定し、実行できない構造に問題があり、その構造に政党そのものが深く関与しているという自覚のなさが問題なのである。だから、権力基盤の移行が重要なのである。それを制度変更を待って行うのではなく、5年~10年後には導入しないと間に合わない道州制実施の前に道州制理念を内実のあるものにするために行うのである。
  5. また、現在様々な政治家連盟や新党母体ができているが、それらが果たして「民意を吸収する組織」となるかがポイントである。政治家のため、特定政党の選挙のためということになれば、道州制運動にとってマイナスであろう。
  6. そこで、「関西州サイバー議会」を立ち上げようということになるのだが、目的は三つある。第一は、道州制理念を実質化し、民主主義を再興する。 第二に政治家のため、特定政党の選挙のためということにならないように、民意をすくい上げ、議論の場を提供する。第三に研修ではなく、政策を決定し、提言する機関をつくる、ということである。
  7. 議会開催はサイバー議会であっても実際の集会が中心である。議会の構成は、市民議員、専門家議員、政治家議員等で構成される。だれでも参加できる。参加した段階で議員になる。議題は最初は議会事務局が準備するが、2回目からは議会で選ばれた執行部が提案する。議事進行はその都度選ばれた議長が取り仕切る。専門分野については公聴会を開く。議論後、議会提案をまとめる。関西州で何を実現しなければならないかが、これで明瞭になるだろう。第6回カフェ塾は奈良で5月29日に「関西経済論からみた道州制」と題して行います。今後、カフェ塾で学びながら、その知識が生かされる場として、「関西州サイバー議会」が実現されればいいと願っています。だれでも参加できますので、共に道州制の実現まで頑張りましょう。

 

カフェ塾(4)2010年4月

第4回カフェ塾レポート

 テ ー マ
– 関西州議会はいかにして実現できるか I –

講師:小倉塾長

日時:平成22年4月10日(土)午後4時30分~6時30分

場所:カフェ「楽」

さる4月10日(土)に第4回カフェ塾および「関西州ねっとわーくの会」の例会を行いました。今回は年度初めということで様々な政治的な動きが周辺で起きている中での開催となりました。橋下知事の府市統合~関西州実現構想の一環としての「大阪維新の会」の発足、国政レベルでの民主党の体たらく、各種新党の立ち上げ、さらに私たちの近いところでは「地域主権型道州制国民協議会」が東北に続いて、関西で政治家連盟を立ち上げるということまで聞こえてきています。 そこで今回の報告では、こうした背景がある中で道州制実現運動はどうあるべきか~仮想関西州議会は実現可能かを少し考えてみたいと思います。

  1. 国政レベルでの新党・ミニ政党の乱立は二大政党制と選挙時の所属政党の違いから民意を反映したものではないという意見について
    ◆国会議員を選ぶことと政党に所属することは本来別次元なので、所属政党の変更はありうる。
    ◆小選挙区制において国民が国会議員を選ぶより政党を選ばされることの矛盾が議会レベルで「多様性」として現れた。
    ◆大規模政党が求められるゆえんは、国会における「多数派」による権力行使を憲法が保障しているからである。この憲法は「法の支配」による近代民主主義を国家形成の基本原則にしている。
    ◆近代国家は権力の分立と相互制限、身分選挙から普通選挙に変換したことで成立しているが、現代は選挙人名簿を離れた非正規で被操作的な「大衆世論」が、投票率の低下により選ばれた正当な議会権力を制限している。
    ◆現代の民主主義にはマスメディア・ネットの介在が不可欠となっている。そのため身近な課題を解決すべき地方議員より防衛問題を論じる国会議員のほうが露出が多い分近しい存在と感じ、地方議員のほうが一部のサークル・利権集団が町内にあっても空疎な存在となっている。
    ◆民主主義に代わる制度が今のところない以上、いい民主制にしなければならない。民主主義の政治的意思決定は最終的には51:49の多数決である。言論による疑似戦争のごとき議会における深刻な論争を通じて、参加者が最終意思決定をすることが国民の利益にかなうと合意したときに多数で決する方法である。結果については過程における深刻な対立を乗り越えることがすでに含意されている。だから少数意見は尊重されなければならない。だから否決された側も結果を受け入れなければならない。ここには自らの権力についての信頼と誇りが個人の独立の自負心とともに共有化されている。この先「関西州議会」が実現されるときには、せめて日本近代化の過程で積み残されたと思われている「民主・独立」が具現化されることを願わずにはおられない。しかし、ある日突然民主主義の再興をはかる関西州議会ができるわけではない。ましてや誰かが作ってくれるわけではない。今から多様性を担保しながら、面倒な民主主義の過程に習熟しておく必要がある。

    1. 「地域主権型道州制国民協議会」関西支部長会議と政治家連盟
      ◆さる4月3日に江口克彦会長・村橋理事長主導下の「地域主権型道州制国民協議会」の関西支部長会議が京都で行われました。「関西州ねっとわーくの会」所属の会員・幹事は江口会長の「地域主権型道州制」の理念に賛同し設立当初から参加しています。よって形式的には「関西州ねっとわーくの会」は、国民協議会奈良県支部長と大阪中央区支部長、および当該支部所属会員、別支部所属会員、支部に所属しない国民協議会会員で構成されています。これは「関西州ねっとわーくの会」の活動に伴う参加時期の違いや参加方法の違いでこうした構成になっていますが、これはあくまでも形式的なことです。実質は「関西州ねっとわーくの会」主催の江口会長講演会、同志社大学とのコラボレーション・京都市長講演会、毎月のカフェ塾、今後の「仮想関西州議会」の自主的運営といった活動が中心になります。◆こうした活動は国民協議会の支持指令で行ってきたわけではありません。理解としては、地域の道州制実現活動があり、その結合体として国民協議会本部(東京)が出来上がり、中央政界に対しても実現に向けた影響力を持とうということだと思っていました。ところが、その前提として地域の活動は極めて脆弱であり、その力を結集して中央をつくる力はありませんでした。そこで逆転して中央指令で地域支部をつくり、地方の政治連盟・経済連盟をつくろうということになるようですが、そもそも中央に結集軸と質があるわけではないので、上意下達はなじみません。政治連盟等をつくっても、結局は脆弱な地域組織の問題は解決せず、選挙組織に衣替えすることが精いっぱいのことになります。そうした観点から「関西のことは関西で」ということで活動を重ねてきた「関西州ねっとわーくの会」が関西支部長会議で反論の機会もなく批判され、今後の独自活動に国民協議会の許可がいるとなれば、何のための地域主権か、無理解を超えて、別の意図さえ感じさせられます。私たちは政党色のない市民でしかないのです。

      ◆そこでこのたび、江口会長の地域主権型道州制実現にはこれからも賛意を表しつつ協力していこうと思いますが、村橋理事長主導下の国民協議会とは一線を画すべく、「関西州ねっとわーくの会」会員・幹事は国民協議会から脱会することにしました。理由はいくつかありますが、現状のままでは協力関係にある国民協議会の各関西支部に中央の許可なく企画の呼び掛けさえ自由にできないことや、独自活動の批判に対してこのまま黙過することはその批判を認めたことになり、運動に悪影響と判断したためです。

      ◆運動の方向そのものはこれからも変わりません。今後も多くの人や団体とかかわりを持ちたいと思っています。国民協議会とも協力できることはしていこうと考えています。本来の意味で「協議」ができる会になってほしいと願っています。

 

カフェ塾(3)2010年3月

第3回カフェ塾レポート

 テ ー マ
関西経済と道州制
– 関西経済は道州制によってどう変わるか –

講師:小倉塾長

日時:平成22年3月20日(土)午後4時30分~6時30分

場所:カフェ「楽」

3月20日(土)に第3回カフェ塾を開きました。
今回は「関西経済は道州制導入によってどう変わるか」をテーマに勉強会形式で行いました。参加者には事前に資料を送らせていただき、一部の概説を省いたにもかかわらず、時間が足らずに、「宿題」まで出す始末となりました。 もとより、このテーマは道州制導入の中心テーマであるため今後も繰り返し論議を深めていかなければならないものです。ただ残念なのは、ご存じのように道州制導入に賛成の関西財界からのものでさえ、正面からこのテーマを扱ったレポートを見たことがありません。出てますよ、と言われても他人事のような「規制緩和」待望と構想の整合性をあまり感じない「特区」構想、一般的な地方分権による仕事の割り振りプランでは、そもそも道州制を導入する意味すら見出せません。そこで、今回はいささか身の丈を超えるものとなりましたが、道州制を導入することで関西経済は変わりうるのかということをいくつかの視点から議論しました。

まず、<準備>として、現在の経済情勢をどう見るかということで「週刊ダイヤモンド」の昨年の特集「大不況の経済学」から経済学者の見方(統一的ではないが、伝統的ケインジアンの旗色は悪い)についての簡単なレヴューを行い、ついで歴史的な観点から水野和夫氏の「デフレの100年」・野口悠紀雄氏の意見を紹介しました。曰く、デフレは続く、資本分配率を引き上げる国民経済に変わる新たな富の蓄積方式を探る歴史的な転換期にある、バブルはまた起こる、現在日本国内には有望な投資先は少ない、溜まった資本は行き先を決めあぐねている、新興国の成長により先進国の市場占有率は低下する、等々。これらの全体観を基にして関西活性化研究会の「自立する関西」を一部紹介しながら、今回のテーマ「関西経済は道州制導入によってどう変わるか」に話を進めていきました。

ここからはさらに答えのない領域なのでレジュメに沿って、司会者が問題を提示し、みんなで討論する形式にしました。

  1. 広域圏の設定によってもたらされるものは何か」⇒「国内単一の標準化の効率性を広域圏設定の効率性が上回れるか」。 多くが行政効率と規制緩和に論点が収れんしがちですが、経営や資本で、地域でやっているものは、すでに地域でやっているわけで、改めて道州制を導入しなければならない理由にはならない。おそらくある種の公的企業、たとえば電力会社のようなものでない限り、地域による分割にはなじまない。 さらに、資料として用意した「平成20年近畿財務局の地域経済に対するレポート」には、大阪湾が薄型テレビや太陽電池の世界的集積地になりつつあることと、中小企業の産官学の取り組みとして、人工衛星「まいど1号」の紹介がありました。また地域連携の例として、兵庫と大阪のバイオメディカル事業を取り上げています。しかし、かつて高い世界シェアを誇っていた技術分野ですが、今や韓国・中国・ドイツなどに急追され、すでに水をあけられている技術分野でもある。さらに近畿財務局だからでしょうが、事実これらは道州制とは関係なく実施できるものです。道州制を導入すれば、活発な競争が巻き起こり規制緩和によって、新しい産業が生まれるのでしょうか。
  2. この問題を考えるヒントとして、次に「フィンランドモデル」の検討を行いました。人口規模的には関西のほうがずっと大きいですが、関西を「ミニ国家」とした場合には、フィンランドの政策は示唆に富むものです。ポイントは以下のようになります。
    1.「改革なくして成長なし」の危機意識の共有
    2.福祉国家の改革を通じた「成長なくして分配なし」を
    宣言できる信頼できる政府
    3.民間部門の拡大による「小さいが開かれたフィンランド経済」と、
    その方向にあるハイテク分野を中心にした特化型専門経済
    4.産官学の強力なタッグ。貿易産業省等の中心官庁のリーダーシップ
    5.民間を中心にした研究開発投資と公的ベンチャーキャピタルの充実
    6.民間企業によるノキア型クラスター形成の認識(東大阪型ではない)
    7.人材育成のための教育制度の充実
  3. この官民一体の生き残りをかけた経済産業政策を実施するために、基礎自治体から州政府にいたる統治機構において「民主主義の再興」が必要となります。「市民主体による潜在力の解放」と「権力の監視」・「財源規模の確保」が実現できる新しい権力基盤をつくる必要があるという帰結が考えられます。
  4. これは「広域化経済」~道州制の導入の大きな目的であり、日本経済復興の一つのシナリオとなるのではないでしょうか。

最後に、全体の課題として「道州制導入によるSWOT」分析をしてみようということで、強み・弱み・機会・脅威に分けて経済のみならず道州制を導入すればどうなるのかを考えてみることを参加者の「宿題」にしました。今回参加されなかった方でも別掲の資料等を参考に一度考えてみてください。ご意見をお待ちしています。

カフェ塾(2)2010年2月

第2回カフェ塾レポート

 テ ー マ
1. 地域主権国民協議会関西各支部の取り組みと今後の活動方向
2. 地方選挙の実際について   ‥ほか

パネラー:地域主権型道州制国民協議会関西支部長の方々 (高松 奈良県支部長・口野 南河内支部・小林 大阪淀川支部長・小倉 大阪中央区支部長)・大阪府議会議員秘書 三藤氏

ゲスト:地方分権政策に携わる官僚の方

日時:平成22年2月20日(土)午後4時30分~6時30分

場所:カフェ「楽」

沈滞した我が国の政治経済社会を何とかしたいという熱い思いが地方から沸き起こりつつあります。その時にテーマとなるのが道州制です。

そこで今回は地域主権型道州制の全国組織をいち早く立ち上げ、各地域での支部設立が相次いでいる「地域主権型道州制国民協議会」(江口克彦会長)の関西地域での各支部長の方々に集まっていただき、活動の現状とその展望を語っていただきました。

また、来年は統一地方選挙がおこなわれます。そこに向け若手の候補予定者の方にも来ていただき、きびしい地方選挙の実態と地道な活動を続けてこられているお話を伺いました。さらに、ゲストとして地方分権の業務に公務として携わっている方にも討論に参加いただき、お話を伺いました。

今回は関西州ねっとわーくの会メンバーやゲストを含めて14名の参加を得て、約2時間の座談会を行いました。急な告知にもかかわらず、ご参加賜りありがとうございました。

 

カフェ塾(1)2010年1月

第1回カフェ塾レポート

 ~講義内容~

「地域主権型の国のかたち」各地域での
“競争・成長”と”福祉向上”を両輪に
日本の輝きを取り戻そう!

◆ 役割分担
国 …現金給付による生存権確保や産業・雇用の基本ルール作り(最低限の基準+規制緩和)
広域地方政府 …競争を通じた成長によるパイの拡大
基礎地方政府 …セーフティーネットの充実(給付から積極的雇用政策へ)
*道州・基礎自治体の能力向上が必要。まずは関西などで先行モデルを実施。

◆国のかたちの各国比較 (4類型モデルイメージ)
1. 集権・分離型 …国がほぼ完結的に事務処理
2.分権・分離型 …一定領域国から独立して地方の責任で事務処理(個別事務を明確に授権)
アメリカ・イギリス   競争力 中~高
3.集権・融合型 …国に権限・財源を留保。執行は地方
ドイツ・日本   競争力  低い
4.分権・融合型 …国が大きな目標、指針を設定。
地方に実際の事務の企画、実施、 評価の裁量
スウェーデン    競争力  高い

「地域主権」確立のための改革試案~「地方政府基本法」の制定に向けて~
平成22年1月 大阪府知事 橋下 徹 (地域主権戦略会議構成員)

<目次>
はじめに~「地方政府基本法」制定にあたって
地方自治法の改正にとどまることなく、理念と全体像を明確に掲げ、自治体に関するあらゆる法律を対象にして、“国、地方のかたち”を根本から作り直す立法とするべき
「自立的な地域経営」を実現する「地方政府」像の提案
「地方政府」の役割
1基礎と広域
「地方政府」の存立基盤
2税財政自主権
3自主立法権
「地方政府」のガバナンス・マネジメント
4議会内閣制
5教育委員会制度改革
6監査制度改革
7公会計制度改革
8法的経営責任
9公務員制度改革

<地方行財政検討会議検討項目>
総則
○地方自治の理念の再構築
1.自治体の基本構造の在り方
○二元代表制を前提とした自治体の基本構造の多様化
○二元代表制以外の仕組みの検討
○基礎自治体の区分の見直し
○大都市制度の在り方   など
2.住民参加の在り方
○議会の在り方
○一般的な住民投票制度の在り方
○長の多選制限  その他の選挙制度の見直し など
3.財務会計・財政運営の見直し
○不適正経理事件等を踏まえた監査制度等の抜本的な見直し
○財務会計制度の見直し
○地方債・交付税の見直し
4.自治体の自由度の拡大(規制緩和)
○執行機関
○議会の組織・機能   など

講演後の主な質問

「議員が行政要職につけるように地方自治法を改正するとの記事が1/11の日経朝刊に出ていましたが、どのような変化が出てくるでしょうか?」
「関西州の運営主体は関西広域連合になるのでしょうか?」
「道州制に移行した場合、大阪市や堺市は分裂することになると思うが、反発することはないか?」
「京都府や兵庫県との折り合いは?大阪府にリーダーシップをとってほしいが、まとまるのか?」
「関西州の統一的な政策は何か?」
「広域連合はいつできるのか?」
「地方分権による地域格差を埋めるための交付税を「調整交付税」と名前を変え、規模を小さくするものが議論されています。東北や四国などを特区にすることで善政競争を促す流れからすると、「調整交付税」の役割と矛盾しますが、ご意見をお聞かせください。」
「例に挙げている国はアメリカ以外は社民主義である。その辺のことで、知事や財界の考えと対立するように思う。法人税を下げて、果たしてその分、企業が来るのか。むしろグローバル下の法人税値下げ合戦に国際的歯止めをかけるべきではないか。」
「道州制、地域主権についての啓もう活動はどのように行われていますか。また計画等はありますか。」
「関西広域連合の一番の狙いは何か?関西州のモデルをつくりたいのか、それとも広域で実施したほうが効率のいいものをまとめるためなのか?」
「新たな成長戦略とは何か?」
「関西州とした場合、もしくは大阪特別州とした場合の他州に比べた強みをどう考えるか?」
「医療制度の展望はどのようなものか。医療制度も分権するのか?」
「自発的に成長できる経済圏の条件で“種”を蒔くという話がありましたが、“種”がもともとない、もしくは“種”を植えることもできないような地域もあるかと思います。こういった地域については調整機能に頼らざるを得ないのでしょうか?
「行政マンということでトップダウンの議論が主でしたが、当会も民間ということで、ボトムアップで民間から道州制に向けた動きに対してどのような貢献ができるとお考えでしょうか?」
「大阪府の道州制案に対する各首長の反対意見中、最も多いものは何ですか?」
「制度面の改革と並行して、大阪に住む人々が誇りに思えるような印象向上や、大阪以外に住む人々に大阪の事実をよく知ってもらう情報発信の仕組みも変更していく必要があると思いますが、このような人の気持ちに働きかける取り組みについてどのように考えられていますか?」

以上、参加者からの質問票を原文のまま順不同で並べましたが、今回ご参加された方々の意識の高さと、現在の関心がどのあたりにあるのかを知ることができたと思います。今後のカフェ塾のテーマ設定の参考にさせていただきます。

最後に

最後に山地企画室長からは丁寧な応答をいただきました。ありがとうございます。その際「地域主権」を現実のものとしていくためには、市民・住民が主人公であるという自覚と大きな世論の後押しが必要であるという指摘がありました。「地域主権」の中身はこれから様々に議論されていくと思いますが、その中身をつくるのは我々自身であるというところを忘れずに今後も活動を進めていきたいと思っています。
ともに頑張りましょう。

 

道州制ウイークリー

■道州制ウイークリー(81) 2018年1月27日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(7)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽地方税財政制度について28次答申ではーー

・国からの事務移譲に伴う財政需要の増加について適切な財源移譲を行うことに加え、偏在度の低い税目を中心とした地方税の充実などを図る。

・各道州や市町村における税源と財政需要に応じ、適切な財政調整を行うための制度を検討

道州制ビジョン懇報告では、①国、道州、基礎自治体が、それぞれ担う役割と権限に見合った財源をそれぞれ確保できるように税の性格によって分割された税源を分配するとともに、徴税等の方法も含めた税制の抜本的な見直しを行い、基礎自治体や道州にも偏在性が小さく、安定性を備えた新たな税体系を構築 ②道州及び基礎自治体には、それぞれに付与された権限分野において、課税自主権を付与 ③道州は道州債を発行することができる ④国の資産及び債権の取り扱い、経済及び財政格差の調整については今後検討

 

■道州制ウイークリー(82) 2018年2月3日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(8)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽欧州のリージョナリズム(Regionalism)❶ドイツ

リージョナリズムとは地域自治主義というべきもので、「地域の明白な特徴を推進し、中央政府と関係する単位の自立の程度を増大させる目的を持った、国家の一部における地域又はその他の組織による政治的活動を指す」。

ドイツは連邦および16州により構成される連邦制国家で、各州は国家として主権を有し、独自の憲法、政府および裁判所を備えている。州は、州の政府代表69名が構成する連邦参議院を通じて連邦の運営に協力する。協調型連邦制と称されており、立法及び財政等において連邦と州が協力している。

立法については、原則として州が立法権限を有し、連邦は広域で行う方が望ましい外交や通貨等について立法権限を有する。連邦全体において法的または経済的統一性の維持が必要な場合等に、連邦は法律を制定することができる。実態としては、州が立法権限を有する事項は地方自治、警察、文化、教育、放送等に限定されている状況である。連邦法はすべて連邦参議院の審議を経る。州の税収に関わる法律等、基本法で定める一定の類型の法律には連邦参議院の同意が必要。

財政については、連邦および州がその任務の遂行に要する経費は、基本的に別段の定めがない限り、各々が負担する。しかし、租税は主に連邦が立法する事項であり、州が自らの任務遂行に必要な財源を得るために税法を制定する余地は少ない。財政瑠欲の弱い州の支援として、各州相互および連邦と州の間の財政調整制度がある。

2009年の第2次連邦制改革では、均衡予算を実現するため、連邦、州および自治体の起債を抑制し、連邦は2016年から、州は2020年から原則として起債をせずに歳入歳出を均衡しなければならない。第3次改革では財政調整制度が見直しされる。

 

■道州制ウイークリー(83) 2018年2月10日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(9)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽欧州のリージョナリズム(Regionalism)❷フランス

フランスは単一国家。ナポレオン時代に中央集権体制を確立。19世紀後半に県の廃止と州の創設を求める州主義(Regonalisme)が起こったが、地方分権化改革はミッテラン政権による1982年の改革からで、州が地方公共団体として承認されるとともに、官選の県知事及び地方行政に対する国の事前監督が廃止された。

州(Regionレジオン)は2016年の改革で22から13に再編。県(デパルトマン)は101、コミューン(市町村)は36767。州は、経済発展に県の規模では十分に対応できなくなり、地域経済の受け皿として創設された。コミューンの半数は人口400人未満で、行政効率向上のため広域行政組織EPCIが設けられている。

地方公共団体の財政規模は、コミューンが最も大きく、県、州の順。歳入の内訳は地方税を中心とする税収が60%、国からの交付金が28%。歳出は人件費が35%、社会保障関係費が40%、その他が19%。州の所管事項は、経済開発と地域整備(企業誘致、鉄道整備、旅客運送等)を中心に、高校、職業教育、自然保護区、大気保全等に関する事項。県は、社会福祉手当給付、中学校、県道、港湾等に関する事項。コミューンは都市計画、近隣行政(コミューン道、戸籍、小学校、スポーツ施設等)である。

州、県、コミューンの行政府及び議会は全て同じ構造で、首長は議員の互選により選出され、その議会の議長を兼ねる。執行部(助役又は副議長)はすべて議員の中から互選で選出。国会議員は、地方議員の職を1つまで兼職することができ、大部分が兼職している。

近年以降の改革は、既存の3層制の非効率性を改善するとともに、大都市制度や広域行政組織EPCIの整備により、現代の行政需要に適した地方制度の構築を模索するものとなっている。

 

■道州制ウイークリー(84) 2018年2月17日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(10)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽欧州のリージョナリズム(Regionalism)❸イタリア

1948年施行の共和国憲法において、州(Regione)の創設等、地方自治を促進する立場がとられた。2001年に中央・地方関係を大幅に見直す憲法改正が行われ、州の立法権限強化、地方公共団体の財政自治権強化、国・地方間の行政権限配分の見直し等が実現した。ただし、「一にして不可分の共和国」(憲法5条)との文言は残されている。

地方制度は、20の州、109の県、8092のコムーネからなる3層制。州の任務は、医療・福祉、農業、観光。県は、環境保護、交通政策、教育(中等・芸術・職業)。コムーネは、国や他の地方公共団体に属さない住民サービス、地域整備、経済開発に関する事務がある。地方歳入の割合は、州が67.3%、県が4.6%、コムーネが28.1%となっている。

2013年の憲法改正委員会の最終報告書で国と州の間の立法権限や行政権限また地方公共団体のあり方についての論点が提示されている。特に委員会の多数意見として、近年の経済・金融危機の下で役割も限定されている既存の県を廃止し、州とコムーネの間に新たな広域団体を設置することや小規模な州の合併も提案されている。

 

■道州制ウイークリー(85) 2018年2月24日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(11)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽欧州のリージョナリズム(Regionalism)❹スウェーデン

戦後、高福祉・高負担の福祉国家として発展していく過程で、地方分権化を進めていった。福祉国家における福祉や教育の担い手として地方自治体の重要性が高まり、分権化が急速に進んだ。近年では、欧州統合や経済のグローバル化を背景に地域経済の競争力強化を目指す動きが見られ、地方自治体の地域の発展に関する責任を移譲する改革が行われている。

連邦制国家ではなく単一国家であり、地方制度は広域自治体(ランスティング)と基礎自治体(コミューン)の2層制である。ランスティングとコミューンの所管事項に重複はなく、両者の間に指揮監督関係はない。国は広域自治体と地理的範囲を同じくする行政区域(レーン)に地方行政庁(レーン庁)を置いているが、近年は権限を移譲され、リージョン(region)と呼ばれるようになっている。スウェーデンは20のランスティング(内3つがリージョン)、290のコミューンからなる。

ランスティングの所管事項は主に医療サービスで、費用は歳出の90%を占める。財源の71%はランスティング税で、保険方式はとっていない。税目は個人勤労所得税のみで、税率はランスティングが決定する。コミューンの所管事項は福祉サービスと教育で、歳出の71%を占め、財源はコミューンの個人勤労所得税のみ。税率はコミューンが決定する。国と地方の事務配分としては、社会保障分野では、国が経済的保障(現金給付)、ランスティングが医療サービス、コミューンが福祉サービスを担当している。教育分野では、国が高等教育(大学)、ランスティングが一部の専門教育(医療関係等)、コミューンが義務教育、高等教育を担当している。

地方議会に設置される執行委員会が地方自治体を代表し、日本の公選首長に相当する機関は存在しない。地方議員の多くは兼業。