道州制ウイークリー(81~85)

■道州制ウイークリー(81) 2018年1月27日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(7)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽地方税財政制度について28次答申ではーー

・国からの事務移譲に伴う財政需要の増加について適切な財源移譲を行うことに加え、偏在度の低い税目を中心とした地方税の充実などを図る。

・各道州や市町村における税源と財政需要に応じ、適切な財政調整を行うための制度を検討

道州制ビジョン懇報告では、①国、道州、基礎自治体が、それぞれ担う役割と権限に見合った財源をそれぞれ確保できるように税の性格によって分割された税源を分配するとともに、徴税等の方法も含めた税制の抜本的な見直しを行い、基礎自治体や道州にも偏在性が小さく、安定性を備えた新たな税体系を構築 ②道州及び基礎自治体には、それぞれに付与された権限分野において、課税自主権を付与 ③道州は道州債を発行することができる ④国の資産及び債権の取り扱い、経済及び財政格差の調整については今後検討

■道州制ウイークリー(82) 2018年2月3日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(8)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽欧州のリージョナリズム(Regionalism)❶ドイツ

リージョナリズムとは地域自治主義というべきもので、「地域の明白な特徴を推進し、中央政府と関係する単位の自立の程度を増大させる目的を持った、国家の一部における地域又はその他の組織による政治的活動を指す」。

ドイツは連邦および16州により構成される連邦制国家で、各州は国家として主権を有し、独自の憲法、政府および裁判所を備えている。州は、州の政府代表69名が構成する連邦参議院を通じて連邦の運営に協力する。協調型連邦制と称されており、立法及び財政等において連邦と州が協力している。

立法については、原則として州が立法権限を有し、連邦は広域で行う方が望ましい外交や通貨等について立法権限を有する。連邦全体において法的または経済的統一性の維持が必要な場合等に、連邦は法律を制定することができる。実態としては、州が立法権限を有する事項は地方自治、警察、文化、教育、放送等に限定されている状況である。連邦法はすべて連邦参議院の審議を経る。州の税収に関わる法律等、基本法で定める一定の類型の法律には連邦参議院の同意が必要。

財政については、連邦および州がその任務の遂行に要する経費は、基本的に別段の定めがない限り、各々が負担する。しかし、租税は主に連邦が立法する事項であり、州が自らの任務遂行に必要な財源を得るために税法を制定する余地は少ない。財政瑠欲の弱い州の支援として、各州相互および連邦と州の間の財政調整制度がある。

2009年の第2次連邦制改革では、均衡予算を実現するため、連邦、州および自治体の起債を抑制し、連邦は2016年から、州は2020年から原則として起債をせずに歳入歳出を均衡しなければならない。第3次改革では財政調整制度が見直しされる。

■道州制ウイークリー(83) 2018年2月10日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(9)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽欧州のリージョナリズム(Regionalism)❷フランス

フランスは単一国家。ナポレオン時代に中央集権体制を確立。19世紀後半に県の廃止と州の創設を求める州主義(Regonalisme)が起こったが、地方分権化改革はミッテラン政権による1982年の改革からで、州が地方公共団体として承認されるとともに、官選の県知事及び地方行政に対する国の事前監督が廃止された。

州(Regionレジオン)は2016年の改革で22から13に再編。県(デパルトマン)は101、コミューン(市町村)は36767。州は、経済発展に県の規模では十分に対応できなくなり、地域経済の受け皿として創設された。コミューンの半数は人口400人未満で、行政効率向上のため広域行政組織EPCIが設けられている。

地方公共団体の財政規模は、コミューンが最も大きく、県、州の順。歳入の内訳は地方税を中心とする税収が60%、国からの交付金が28%。歳出は人件費が35%、社会保障関係費が40%、その他が19%。州の所管事項は、経済開発と地域整備(企業誘致、鉄道整備、旅客運送等)を中心に、高校、職業教育、自然保護区、大気保全等に関する事項。県は、社会福祉手当給付、中学校、県道、港湾等に関する事項。コミューンは都市計画、近隣行政(コミューン道、戸籍、小学校、スポーツ施設等)である。

州、県、コミューンの行政府及び議会は全て同じ構造で、首長は議員の互選により選出され、その議会の議長を兼ねる。執行部(助役又は副議長)はすべて議員の中から互選で選出。国会議員は、地方議員の職を1つまで兼職することができ、大部分が兼職している。

近年以降の改革は、既存の3層制の非効率性を改善するとともに、大都市制度や広域行政組織EPCIの整備により、現代の行政需要に適した地方制度の構築を模索するものとなっている。

■道州制ウイークリー(84) 2018年2月17日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(10)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽欧州のリージョナリズム(Regionalism)❸イタリア

1948年施行の共和国憲法において、州(Regione)の創設等、地方自治を促進する立場がとられた。2001年に中央・地方関係を大幅に見直す憲法改正が行われ、州の立法権限強化、地方公共団体の財政自治権強化、国・地方間の行政権限配分の見直し等が実現した。ただし、「一にして不可分の共和国」(憲法5条)との文言は残されている。

地方制度は、20の州、109の県、8092のコムーネからなる3層制。州の任務は、医療・福祉、農業、観光。県は、環境保護、交通政策、教育(中等・芸術・職業)。コムーネは、国や他の地方公共団体に属さない住民サービス、地域整備、経済開発に関する事務がある。地方歳入の割合は、州が67.3%、県が4.6%、コムーネが28.1%となっている。

2013年の憲法改正委員会の最終報告書で国と州の間の立法権限や行政権限また地方公共団体のあり方についての論点が提示されている。特に委員会の多数意見として、近年の経済・金融危機の下で役割も限定されている既存の県を廃止し、州とコムーネの間に新たな広域団体を設置することや小規模な州の合併も提案されている。

 

■道州制ウイークリー(85) 2018年2月24日

◆21世紀の地方分権~道州制論議に向けて(11)

(国立国会図書館調査及び立法考査局『道州制調査報告書』から)

▽欧州のリージョナリズム(Regionalism)❹スウェーデン

戦後、高福祉・高負担の福祉国家として発展していく過程で、地方分権化を進めていった。福祉国家における福祉や教育の担い手として地方自治体の重要性が高まり、分権化が急速に進んだ。近年では、欧州統合や経済のグローバル化を背景に地域経済の競争力強化を目指す動きが見られ、地方自治体の地域の発展に関する責任を移譲する改革が行われている。

連邦制国家ではなく単一国家であり、地方制度は広域自治体(ランスティング)と基礎自治体(コミューン)の2層制である。ランスティングとコミューンの所管事項に重複はなく、両者の間に指揮監督関係はない。国は広域自治体と地理的範囲を同じくする行政区域(レーン)に地方行政庁(レーン庁)を置いているが、近年は権限を移譲され、リージョン(region)と呼ばれるようになっている。スウェーデンは20のランスティング(内3つがリージョン)、290のコミューンからなる。

ランスティングの所管事項は主に医療サービスで、費用は歳出の90%を占める。財源の71%はランスティング税で、保険方式はとっていない。税目は個人勤労所得税のみで、税率はランスティングが決定する。コミューンの所管事項は福祉サービスと教育で、歳出の71%を占め、財源はコミューンの個人勤労所得税のみ。税率はコミューンが決定する。国と地方の事務配分としては、社会保障分野では、国が経済的保障(現金給付)、ランスティングが医療サービス、コミューンが福祉サービスを担当している。教育分野では、国が高等教育(大学)、ランスティングが一部の専門教育(医療関係等)、コミューンが義務教育、高等教育を担当している。

地方議会に設置される執行委員会が地方自治体を代表し、日本の公選首長に相当する機関は存在しない。地方議員の多くは兼業。

カフェ塾(11)2010年11月

第11回Cafe塾

『関西広域連合と大阪府の府市統合』
〜 大阪府の政策を聞く 〜
講師:大阪府政策企画部地域主権課 中谷文彦氏

日時:平成22年11月13日(土)午後4時30分~8時30分

場所:カフェバー 楽
第11回カフェ塾 報告
先日11月13日(土)に、大阪府政策企画部地域主権課の中谷文彦氏をお招きし、「関西広域連合・大阪の府市統合―大阪府の政策を聞く」と題して、第11回カフェ塾を行いました。中谷さんには多くの資料を用意していただき、個人的見解も交えながら、熱く今後の関西・大阪地区の地域主権について語っていただきました。
主な内容
1. 大阪発「地方分権改革」ビジョン
2. 関西広域連合に対する期待
3. 大阪の府市統合問題に見られる
大都市制度の整理
どれも大きなテーマであり、今後の深まりが必要な分野です。 大阪発「地方分権改革」ビジョンにおいて、分権と集権をキーワードに市町村への権限移譲、大阪市との新たな関係作り―新たな大都市制度の設計、関西広域連合の拡充から遅くとも平成30年には「府内市町村を中核市に」、「新たな大都市制度の実現」、そして「関西州を実現」するという工程表が掲げられています。これらのプランは概ね納得できるものでしょう。 しかしこれは工程表であって、また一応のゴールを示すものですが、それによって何を実現するかがやはり明確ではありません。中央集権型システムを解体することが目的ではないはずです。
つまり、道州制―関西州を実現することで、国民国家体制が変わるのであって、国家の外部環境と内部環境の変化に対して国家体制を変えるという覚悟が国民にないと、実現できないことを私たちは目指しているのです。 それがなければ、国の権限移譲の受け皿として関西広域連合が今後拡充していったとしても、事務の効率化と広域行政の合理化は図れても、「戦略」は生まれてこないと思います。なぜなら、政治経済主体の関西州は一方の政治経済主体の日本国の国家戦略を理解していないからです。皮肉なことに道州制は地域問題ではなく、国家マタ―なのです。 この文脈で大都市制度も設計していかなくてはならないでしょう。 今回は一般に知られている制度として次のようなものが紹介されました。
i. 政令指定都市制度
ii. 大阪都構想をはじめとする都区制度
iii. 府県と市の権限を併せ持つ特別市制度から「都市州」構想。
さて、国家戦略として、さらに主権在民の道州制を考えるなら、コミュニティー=共同体の集合としての「都市国家」が中心と周辺をもつのは当然です。またこれら都市国家の「間」にこそ道州という広域政治体を設立する意味もあるのです。 少し抽象的な言い回しになりましたが、「未知の領域に踏み込む日本」を英国のエコノミスト誌が特集しています。具体論は変わらなくともその意味を十分理解しておくことが今後重要になってくるように思います。

カフェ塾(20)2012年5月

第20回カフェ塾報告

日時:平成24年5月19日(土)

場所:地下鉄長堀鶴見緑地線・「松屋町」下車、町屋カフェ「楽」にて

テーマ:「道州制の哲学」

講師:小倉 暁

先日8カ月ぶりに、道州制カフェ塾を再開しました。この8カ月の間に起こ

ったことで、道州制の関して大きな動きは、何といっても大阪維新の会の躍進

で、橋下大阪市長の誕生と府市統合本部ができたことでしょう。教育条例や職

員条例が可決され、ギリシャ化が避けられるならこれに越したことはないと思

います。

一方で道州制を推進する市民運動もテーマが見つけにくくなってきているよ

うに思います。すでに多くのテーマが大阪都構想の実現過程で実際の政治テー

マとして取り上げられているからです。地域主権型道州制を導入しようという

立場からは「維新八策」のように中央政府に何を突き付けていくかも、中身の

是非はともかく、提案され、地域発の道州制運動の体をなしてきつつあるよう

に思います。

この間、日本の政治経済状況が大きく変わったわけではなく、新興国の発展

から先進国がいかに衰退してきているかがより鮮明になってきただけです。

大阪地域は橋下市長の牽引だけでは旧来の低付加価値産業と高い失業率と生

活保護率から脱却できないでしょう。知識産業に大胆に産業構造を転換する必

要があるでしょう。そのために必要なことは短期的利得のための実学中心の教

育から、長期的国益につながるような「哲学」教育を重視することではないか

と思います。またそれを尊重する風土づくりも大切です。

今回、拙著「道州制の哲学」を題材に、ルソーの一般意志問題を取り上げま

した。主権や民主主義というものをその根本にさかのぼって考えようという趣

旨です。一般意志は単なる人民主権をいうわけではありません。表面的には矛

盾と屈折を抱えた難解な概念です。その一般意志と「維新八策」のなかでもい

われている「首相公選制」を取り上げました。一般意志から考える首相公選制

です。簡単に結論が出るテーマではないですが、引き続き「関西州サイバー議

会」でもこの「八策」や、「関西州に期待するもの」として、意見を募っていき

たいと考えています。

皆さんからの積極的な提案をお待ちしています。 (文責:小倉 暁)

カフェ塾(19)2011年9月

第19回 Cafe塾

長屋再生プロジェクト
-地域再生にかける思い・活動は、いかにして盛り上がったか-

講師: 六波羅 雅一 氏
( 六波羅真建築研究室代表・からほり倶楽部代表理事 )

日時:平成23年9月17日 (土曜) 16:30-18:30

場所:カフェバー 楽

第19回カフェ塾 報告

第19回カフェ塾を「御屋敷再生複合ショップ・『練』内のカフェ『楽』」にて行いました。今回はこの『練』をはじめ、空堀商店街界隈長屋再生プロジェクトを10年以上にわたって中心になって手がけられてきた「からほり倶楽部」代表理事で、自身でも建築研究室を主宰されている六波羅雅一氏をお迎えして、長屋再生、地域再生への思いを語っていただきました。

空堀地区は、大阪市中央区の松屋町と谷町に囲まれた戦前からの建物と、コミュニティが残る地域です。最近はマンション建設が進み、流入人口は多いものの、独自な伝統文化が希薄化しているともいわれています。六波羅氏も述べられているように、地域再生は建物企画ではない、地道な人の交流がもたらすものでしょう。古くから住んでいる人は、町の活性化は望んでいても、新しい行動にはためらいを感じているかもしれません。また新たに住人となった人たちの中には、互いに少し干渉的なコミュニティづくりが苦手な人もいるかもしれません。

コミュニティの崩壊・不活性は過疎地域での人口減少に伴う問題とは別に、こうした都会型のコミュニティ再生をどう実現していくのかの課題と議論を提起しています。その意味で、六波羅氏のグループがすすめる「長屋再生」は、都市コミュニティの再生に有効な切り口ではないかと思えます。ある種の「美意識」が人をつなぐ絆になっているからです。美意識は理屈でつくられるものではありません。歴史的な文化の蓄積が伝統として培われる必要があります。また美意識は価値や文化の創造に向けた「創造的破壊」の土壌でもあります。

古い町並みを保存することが目的化してしまうと、あとは観光誘致に傾くだけで、コミュニティの再生にはなりません。また美意識の掘り下げに重要な「猥雑な寛容性」を観光パッケージから排除してしまうことになります。当然ここでは、創造的破壊を生み出すような違和感が認められることも少ないのです。道州制文化は地域文化を大切にするところにあるという。それはコミュニティ文化であり、美の再発見に通じるものでなくてはならないのではないかと思います。

こうした観点からか、「からほり倶楽部」の運営の仕組みも自立したものになっています。 行政に頼らず、NPOでもない任意団体であることで、運営の自由度が確保されているのでしょう。ここは実際の組織運営の点で、ヒト・モノ・カネをどのようにマネージメントするかの知恵のいるところですが、硬直的に考えるのではなく、新しいアイデアを柔軟に生かしながらの運営は、実績がその正しさを証明しているように見えます。

さて、関西州ねっとわーくの会では、この7月に「関西州サイバー議会」を立ち上げました。その関係で2カ月ほどカフェ塾の開催がずれこみました。今後、Ustreamを使った新しいカフェ塾も開いていきますので、ご期待ください。

 

 

 

カフェ塾(18)2011年6月

第18回Cafe塾

関西州ねっとわーくの会 USTREAM動画 Live 配信
– これからのニホンノカタチ会議 –

シリーズ第2回 Producerの挑戦 (1)
「地域コミュニティの再生 〜政治の現場から〜 三藤雅道氏」

 

出演: 三藤雅道・小倉暁 (Cafe塾塾長) / 司会 近藤尚也

日時:6月16日(木) 21時40分-22時47分

場所:ユーストリームスタジオカフェ大阪 < http://www.ustcafeosaka.com/ >

配信URL …< http://www.ustream.tv/channel/これからのニホンノカタチ会議 >

第18回カフェ塾 報告

シリーズ第2回は、ゲストは、「地域コミュニティの再生」を掲げ政治の世界へ挑戦している三藤雅道氏です。消防での救急救命活動、会津での地域活性化事業の経験、そしてその体験を元に踏み込んだ政治の現場。三藤氏の体験を通してこれからのニホンノカタチ” を考えました。

生配信中には、大学生をはじめとする20代を中心にTwitter等を通じて質問や感想も活発に寄せられました。番組の様子は番組ページにアーカイブされていますので是非ご覧ください。

〜今後の展開〜

当番組は「これからのニホンノカタチ」を創っていくために、実際に活動されているゲストをお迎えしてお話を伺いながら、これから我々、そして若者が何を考え、どう行動していけばよいかを考えていきます。ご期待ください。 また、配信は大阪市西本町のユーストリームスタジオカフェ大阪で行っておりますので、足を運んでみてくだされば幸いです。

カフェ塾(17)2011年5月

第17回Cafe塾

関西州ねっとわーくの会 USTREAM動画 Live 配信
– これからのニホンノカタチ会議 –

シリーズ第1回 「道州制て何? 国は地方はどう変わるの?」

 

出演: 高松義直 (当会代表)・小倉暁 (Cafe塾塾長) / 司会 近藤尚也

日時:5月19日(木) 21時20分-22時50分

場所:ユーストリームスタジオカフェ大阪 < http://www.ustcafeosaka.com/ >

配信URL …< http://www.ustream.tv/channel/これからのニホンノカタチ会議 >

第17回カフェ塾 報告

今回からCafe塾は衣替えをし、Ustreamを用いて、ラジオ番組のような形で対談・討論をインターネットにて生配信しました。

道州制が導入される近い将来に地域社会を担うのは若い世代。しかし、従前のCafe塾をはじめとして、道州制の議論に参加する若い世代は少ないという実情があります。この現状を打破し、若い世代がもっと次の時代の社会の在り方を考える、そして実際に行動を起こせるキッカケを作りたい。そして、実際に行動を起こしている若い世代をつなげ、さらにその動きを活性化させていきたい。これをせずして、若い世代が育たずして、制度改革は行えません。そんな想いから、当会がハブとなり、若い世代向けの発信・相互コミュニケーションの場を創るという趣旨でこの番組をスタートさせました。

記念すべき第1回は当会代表の高松、Cafe塾塾長の小倉が出演し、「道州制とは何か?、道州制によって社会はどう変わるのか?」をテーマに視聴者からの疑問や感想もを取り上げながらお送りしました。生配信中には、大学生をはじめとする20代を中心にの延べ80人以上の方に視聴いただき、Twitter等を通じて質問や感想も活発に寄せられました。なお、実際の番組の様子は番組ページにアーカイブされていますので是非ご覧ください。

〜今後の展開〜

当番組はシリーズ化し、月に1度のペースで配信していきます。今回は当会のメンバーでお送りしましたが、次回以降は「これからのニホンノカタチ」を創っていくために、実際に活動されている若い世代のゲストをお迎えしてお話を伺いながら、これから我々若者が何を考え、どう行動していけばよいかを考えていきます。次回のゲストは、「地域コミュニティの再生」を掲げ政治の世界へ挑戦している三藤雅道氏です。ご期待ください。 また、配信は大阪市西本町のユーストリームスタジオカフェ大阪で行っておりますので、足を運んでみてくだされば幸いです。

カフェ塾(16)2011年4月

第16回Cafe塾

「大阪市の考える道州制イメージ」

 

講師: 大阪市政策企画室企画部 地域主権担当課長 東中秀成 氏

日時:平成23年 4月16日 (土曜) 16:30-18:30

場所:カフェバー 楽

第16回カフェ塾 報告

去る4月16日に、大阪市の地域主権担当課長である東中秀成氏を講師にお迎えして、「大阪市の考える道州制のイメージ」と題してカフェ塾を開きました。

巷間伝えられるような橋下VS平松の対立構図は別にすれば、広域道州制のイメージは私たちの考えるイメージとそれほど違いはありません。とりわけ関西は大阪・京都・神戸という伝統的な大都市を抱えているために、広域行政~関西州というものを考えた場合、トロイカ制 にならざるを得ません。これら大都市が、他の基礎自治体を引っ張ることになるのですが、たとえば大阪市にそれだけの覚悟があるのかといえば、現在の政令指定都市が居心地がいいのか、それ以上の権限と役割をもつことに消極的なように見えます。

大阪市は、「大阪市は基礎自治体である」という自己規定から区長の公選制には反対です。基礎自治体を分割することにももちろん反対ということになります。この巨大な基礎自治体は周辺の守口市や尼崎市、堺市との間で問題が生じれば「自治体間調整」が行われればいいと考えているのでしょうか。本来大阪府はそうした調整的役割が主だが、主導権をとって、基礎自治体である大阪市をはじめ、府内の基礎自治体に「指令」をすることに違和感をもってしまうというのは、極めて歴史的、感情的な問題であるように思えます。

今後の道州制議論において、大阪市、京都市、神戸市を基礎自治体と見るのかどうかは、基礎自治体とは何かという問題を別にしては語れません。基礎自治体が担うべき権限・役割・責任は、まさしく自治の範囲はどこまでかで決まってきます。昼間人口の多い巨大都市が基礎自治体としての機能しか果たさないというのは、常識的に見て無理があります。たとえば交通網の整理が関係自治体の水平調整だけで片付くわけでもないでしょう。中枢機能を担う都市の関西州全体から見たときの役割は、そこに住む市民だけの基礎自治体としての役割だけではないはずです。中枢都市の権限と責任の由来は関西州から来るのです。

 

カフェ塾(15)2011年3月

第15回Cafe塾

第1部 テ ー マ :各政党の描く地方分権の明日、道州制への考え方
〜自民党編〜

  講師 / 松浪健太 自民党衆議院議員

各政党の道州制、地方分権への考えの違いを考察する。各党から講演者を招致する、その第三弾、自民党です。

講師経歴:現衆院議員(大阪第10区選出)39歳。平成9年 早稲田大学商学部卒業 、 産経新聞社 社会部記者、平成14年10月 衆議院議員 初当選。安倍内閣において厚生労働大臣政務官、福田内閣において厚生労働大臣政務官留任、福田改造内閣において内閣府大臣政務官。 麻生内閣において内閣府大臣政務官。第45回衆議院総選挙にて3期目。

第2部 シンポジュウム:道州制で市民生活はどう変わる?

パネラー:松浪健太 衆議院議員(自民党)
江口克彦 参議院議員(みんなの党)
坂本充 新生燦都代表(元大阪府会議員)
高松義直 関西州ねっとわーくの会代表

コーディネーター:小倉暁 Cafe塾塾長

 

第15回カフェ塾 報告

去る3月13日(日)「関西州ねっとわーくの会」主催、第15回道州制カフェ塾が高槻市民会館で行われました。今回は「各党の描く~地方分権・地域主権の明日」シリーズの第3弾として自民党の松浪健太衆議院議員をお招きしました。

東北地方での大震災にもかかわらず200名以上の参加があり、カフェ塾としては最大規模の開催となりました。200名の参加者のほとんどは松浪議員の後援者の方々ということもあり、「ねっとわーくの会」としては、市民団体主催の道州制講演会・シンポジウムという枠組みを崩さず、誰もが参加できる会にしようということで腐心してきたところです。

実は、今回のカフェ塾では初めての試みとして複数ゲストによる「シンポジウム」も行いました。松浪議員と共に超党派の「道州制懇話会」を立ち上げられた「みんなの党」最高顧問の江口克彦参議院議員にも討論に参加いただきました。関西広域連合をめぐる評価ではネガティブ評価の松浪議員とニュートラル評価の江口議員というような違いはありましたが、ふくらみのある話になったのではないかと思います。また市民団体からのゲストとしては元大阪府会議員で独自に道州制人材養成塾を主催されている坂本充さんにも討論に参加いただきました。これからの関西の道州制運動の一つのかたちが見えてきたようにも思います。関西州ねっとわーくの会では、複数の市民団体・経済団体・教育団体・労働団体、行政・地方議員・国会議員が一堂に会し、関西の未来を決めていく草の根住民参加の「関西州サイバー議会」の立ち上げを構想しています。 関西広域連合が行政事務組合=団体自治の色彩が濃いのに比べ、関西州サイバー議会はまさしく民主主義の再興と住民自治を担います。「国の出先機関」の受け皿ができるのと、関西州の住民自治の受け皿ができるのとはわけが違います。そこを担っていこうと考えています。坂本さんのグループとの共同作業の意味はここにあります。是非かたちにしていきたいと思います。

また今回は初めてマスコミの取材が入りました。23日、朝日放送夕方 (午後4:50~) の「newsゆう+」で関西広域連合奈良不参加の問題とこのシンポジウムが報道される予定です (あくまでも予定ですが)。これを機会に多くの方に道州制に関心をもってもらえるのではないかと期待しています。

カフェ塾(14)2011年2月

第14回Cafe塾

「関西州における治水行政の視点」

 

講師:京都大学名誉教授 今本博健氏 (河川工学)
< http://imamoto.jimdo.com/ >

日時:平成23年 2月12日 (土曜) pm1:30-15:00

場所:大阪府ドーンセンター(天満橋)5階セミナー室

第14回カフェ塾 報告

今回のカフェ塾は、琵琶湖をいただく関西圏において治水・利水の現状と今後の課題について、河川工学の権威であり、行政を含めた広い見地から「ダムによらない治水」を提唱されている京都大学名誉教授の今本博健先生にお話を伺いました。

防災や治水という問題は自然が相手であるため、効果的対策といってもおのずと限界があります。最近でこそ「環境評価」を含む事前評価の重要性がいわれていますが、ある治水工事に成功したとしてもその成功が新たな環境負荷となり、別の災害の原因になる可能性もあるからです。われわれの科学技術というものが、世界や自然の対象を選択的に切り取ったところで成り立っているからでしょう。

また防災や治水は行政区分によって都合よく対策できるものではなく、そのため国や関連自治体が当初より広域的に対処してきたものですが、均衡ある国土開発ともに、とりわけ国の権限が大きい分野でした。しかし、逆に権限の大きさゆえに、その政策に誤りがあれば、マイナスの影響はとても大きいものになります。それゆえ、為政者は政策の評価に対して謙虚である必要があります。しかし「いったん始めたもの、予算の付いたものを元に戻すことは困難」というのが実態でしょう。

「なぜ、ダムによる治水がいけないのか」―そもそも日本の治水政策は、一定規模の洪水を河川に封じ込める「定量治水」といわれるものです。しかしこの考えでは、大きく次のような難点がありました。

  1. 対象を超える洪水には対応できない
  2. 治水目標になかなか到達しない
  3. さらに環境対応もできない

ダム治水の限界もここから来ます。ダムでは、1) 治水機能が限定的で、2) その効果も不確実です。また 3) 堆砂による治水機能の劣化を招き、300年後にはすべてのダムを埋めてしまうことになります。さらに 4) ダム建設によって、地域社会や自然環境を破壊するだけでなく、すでに 5) 建設残適地が少なくなってきており、条件的にもダム時代の終焉が近づいているのです。ダムによる治水がうまくいっていないのは、900基近くのダムがありながら、定量治水の方針下で水害を防いだ例がほとんどないというのも衝撃的です。

そこで今本先生が提唱されているのが、「非定量治水」です。これは限定的洪水だけでなく、あらゆる洪水を対象に防災の観点を強化することと、堤防を中心に流域全体で洪水を受け止めるという減災の考え方で成り立っています。防災には科学的予見、工学的対応、行政組織による長期的フォロー、財政的支援、そして地域住民による情報の共有化と協力体制の構築が必要です。自然を相手にしたものには、われわれ一人ひとりが謙虚でありたいものです。

カフェ塾(13)2011年1月

第13回Cafe塾

「THE 町興しプロデュース」
地方の窮状、デザインで行う地域活性化

 

講師:池田 毅 氏 ( 株式会社アイ工房社長 )

日時:平成23年 1月15日 (土曜) 16:30-18:30

場所:カフェバー 楽

第13回カフェ塾 報告

2011年最初のカフェ塾はこれまでの政治・行政・学問分野を離れ、民間の立場から「町おこし・地域ブランドの開発」を手掛けておられるデザイナ―の (株)アイ工房社長の池田毅氏をお迎えして、地域再生の現場におけるデザインプロデュースの役割とその開発実態について興味深いお話を伺いました。
道州制導入にあたって、政治・行政・商工会・事業者・生活者が一体となって地域再生を進めなくてはなりません。特に、過疎地域の産業基盤をどうつくっていくかは地域の雇用創出、地域財政の安定、住民福祉の向上のために第一義的に重要です。企業誘致が必ずしも成功をもたらさないことは、新興国の追い上げを勘案したときに容易に想像できることです。

池田氏のお話は地域の特産品の発見から始まります。高知・徳島で手掛けられた「ゆず」や「和紙」の特産品が広がりをもたらす秘訣をいくつか披露いただきました。たとえば和紙と竹を結び付けて「和傘」を特産化する。その地域にあるもの(自然物)を使わないと特産化しないということでしょう。それを物産館で売るだけでなく、特産品づくりを体験してもらうことで観光と結び付ける。この結び付ける活動は、特産農産物の販売をすでに廃校になった学校や幼稚園の施設を使うことで資源の掘り起こしにまで広がります。さらに氏の活動は障害者授産施設から生み出される産物のブランド化にも及びます。

こうした一見弱みに見えることも、視点を変えることで地域再生の豊かな資源となるということだと思います。恵まれないことは決して弱みではなく、そこにこそ本当のポテンシャルがあるのかもしれません。 これまでは商工会婦人部・青年部のまじめな取り組みから合同会社設立に至ったケースもあったそうですが、やはり地域のリーダーをどう育てていくかが課題だそうです。行政の単年度補助事業という形では継続性が担保しにくい構造にも問題があります。しかしデザインを地域再生に生かす試みは、町づくりの観点から今後ますます重要になってくるように思います。

 

ご紹介

池田氏の講演の中で登場しました。awanowaブランドと河野和真君のご紹介を致します。

awanowaブランドとは、池田氏がプロデュースしたブランドです。授産施設等で働く利用者の工賃を引き上げるため、また、授産品の販売促進を図るために「とくしま障害者授産支援協議会」が中心となって、各施設の若手職員からなる「ブランド研究会」を設置し、各施設間の意識共有化を図りながら実施しているものです。

そういう環境の中で、河野和真君は、先生から教わった針金細工を自ら工夫してワイヤーアートに高めてしまいました。日々独学で図鑑を見たり、PCに取り込んだ画像を見たりしながら制作にいそしんでいます。
「自由な発想とそれを助け、はぐくむ力」ここに日本の未来へのヒントがあるのかもしれません。